予定が埋まると疲れるのは体力のせい?
本題に入る前に、岡島さんは最近予定が埋まりがちだと話します。ただし岡島さんの基準では、1日に打ち合わせが2件入る日が続くだけで「大変だな」と感じるそうです。
玉置さんが、予定の前後にソワソワして手につかなくなるタイプかと尋ねると、岡島さんは「めちゃくちゃそうですね」と認めます。打ち合わせや外出が終わると疲れて何もできなくなり、ロスの時間が多いといいます。
とにかくなんか体力がなくて、打ち合わせとか外に出るとかが終わると、なんか「ふぅ」ってなって、何もできなくなって、ロスの時間が多いですね。
これに対して玉置さんは、対人の疲れは「慣れ」だと答えます。出社していた頃は朝から晩まで30分刻みでミーティングが入っていても特別疲れなかったのに、リモートになって久しぶりに対面のミーティングをすると、とても疲れたそうです。
久しぶりにその対人ミーティングをするとむっちゃ疲れるんですよ。だからもうこれ慣れなんだなと思って。
一方で岡島さんは、人生で一度も出社して働いたことがなく、話すより机に向かって作る仕事が中心だったため「一生慣れれなそう」と話します。玉置さんは、予定を毎日少しずつ入れるより「人と会う日」としてまとめ、その日は早く終わって休む方が楽な人もいると提案しました。
岡島さんは話しながら、自分の予定はそもそも忙しくなさすぎるのでは、と気づきます。「今メタ認知しました」と笑いつつ、予定の組み方を試してみると話を締めくくりました。
順調でも自信がないのはなぜ?「サンタの袋」のたとえ
今回のテーマは、自分の市場価値の見積もり方です。玉置さんがこのテーマを提案したのは、キャリア逆転塾ヒトハタの受講生と話していて、客観的には順風満帆に見える人でも「自信がない」と口にすることがとても多いからだといいます。
確かに私はこれを積み重ねてきましたっていう確固たる自信がないという方って案外多いんですよ。
玉置さんは、この漠然とした不安を「サンタの袋」にたとえます。入社した時に、サンタクロースが担ぐようなズタ袋を一つもらい、やった仕事を一つずつそこに入れていくイメージです。
入社直後の人は、初めての仕事を興奮やときめきとともに丁寧に眺めながら袋に入れます。ところが忙しさや摩擦、さまざまな感情が生じ始めると、どんな仕事や経験だったのかを吟味しないまま「終わった、終わった」と放り込むようになります。
その生活が10年、20年と続いたある日、袋の中に何が入っているかと聞かれても答えられない状態になる、と玉置さんは説明します。中身を一つも査定していないので、全部ガラクタかもしれないという恐れもつきまといます。
一個一個ちゃんと何が入ってるのか、どういう価値があるのかなんて査定もせずに入れてるので、それ全部もしかしてガラクタかもしれないっていう恐れもあるんですよね。
同期で一番ではなくても昇進や昇給をしてきて、外から「普通にキャリアを積んでいる」と見られる人でも、確証が持てないことがあります。玉置さんは、そういう人はサンタの袋の中身を開けて整理するしかないと言います。
ヒトハタの受講生には伴走コンサルタントが付いて一緒に棚卸しをしますが、玉置さんによれば、対話した方が早いだけで自分一人でもできる作業です。そこで今回は、自分で積み上げてきたものを整理する方法が語られます。
仕事はたった3種類。市場価値を決める希少性と需要とは
玉置さんはまず、仕事の構成要素を3つに分けます。手順が決まっていて人が手を動かす「作業」、人や情報を動かす「コミュニケーション」、そして「判断」です。
| 種類 | 中身 | 例 |
|---|---|---|
| 作業 | 手順が決まっていて、人が手を動かすこと | 入力、作成、チェック |
| コミュニケーション | 人や情報を動かすこと | 依頼、報告、合意 |
| 判断 | どうするかを決めること | マニュアルで対応できない場面での決定 |
すごく乱暴な言い方すると、仕事ってこの3種類しかないんです。
一見どれにも当てはまらない仕事も、組み合わせで説明できるといいます。企画は判断とコミュニケーションのミックスで、会議もコミュニケーションと判断、マネジメントも判断とコミュニケーションでできています。袋の中のガラクタは、必ずこの3つのどれかだということです。
次に玉置さんは「価値」の意味を絞り込みます。満足感や達成感も自分にとっての価値ですが、自信が持てずに悩む人が気にしているのは多くの場合、市場価値、つまり今なら転職市場でどう評価されるかです。客観的な価格は市場でしかつかないからだと玉置さんは説明します。
そして、客観的な価値としての市場価値は「希少性」と「需要」で決まるといいます。宝石が高くプラスチックが安いのは希少性の違いで、どれほど珍しくても誰も必要としないものには値段がつきません。
なんか全然こう上がらないけど、全くおいしくない魚とか、なんかね。
岡島さんの「珍しいけれどおいしくない魚」というたとえに、玉置さんも「それは全然値段つかないですよね」と応じました。
AIで仕事が減るのはなぜ?希少性で見る作業とコミュニケーション
玉置さんは、AIに仕事を取られるという不安も、この希少性と需要の枠組みで説明できると話します。AIによって労働力の供給が増え、AIで需要を満たせるなら、人に対する市場の需要がそもそも少なくなるというわけです。
玉置さんによれば、事務職の募集はすでに減ってきています。今いる事務職の人を削減するのは日本の労働環境では起こりにくいものの、新規採用を控えることはどの会社にもできるため、今の人数でAIを使って生産性を上げ、人は採用しない動きが起きているといいます。
一方で、専門スキルがあると給料が高いという話は「伝説ではなく事実な部分がある」と玉置さんは言います。特定の訓練・資格・経験がないとできない作業は、希少性が上がるからです。
お医者さんがやる手術って作業なんですよ。判断プラスですけれども。
手術は、手を動かす部分については手順の決まった作業ですが、訓練・資格・経験が必要なので高い報酬が得られます。自分の作業が希少性の高いものか、希少性は高くないが需要が高いものかは、こうして仕分けられます。
コミュニケーションも同じです。店舗でお客さんの質問に決まった答えを返すのは誰でもできるため市場価値は低く見積もられますが、人質を取った犯人と交渉するのは訓練や経験なしにはできず、希少性も市場価値も高いコミュニケーションになります。
玉置さんは、対面の会話だけでなく文字で伝えることもコミュニケーションに含めます。通訳や翻訳はAIによって自動化されると供給過多になり、仕事や報酬が減っていきます。書くというコミュニケーションが代替されつつあるライターの仕事も同じ構図だといいます。
ライターやばいですよ。ライターやってたんで。
ライター出身の岡島さんは、この話を切実に受け止めていました。
営業の価値は何で決まる?専門知識とポータブルスキル
営業もコミュニケーションの一つです。玉置さんは、誰でもできる説明をする営業と、達人と呼ばれる営業とでは市場価値がまったく違うと話します。
たとえば、AIを使って問い合わせフォームに何千通、何万通と営業メールを送り、反応があれば対応するだけの営業は、専門性が低く市場価値も低いといいます。
営業ってなんかその個人の、センスに紐付くように思われてるんですけども、基本は、手順とかノウハウとかやっぱ死ぬほどあるんですよね。
玉置さんの見方では、営業はその場面でどの手順やプロトコルを使うかを判断し、適切なコミュニケーションを積み重ねていく地道な仕事です。それを経験や学習で多くこなしている人ほど市場価値が高くなります。
専門知識がないとできないコミュニケーションもあります。研究者に資材を売る商社の営業は、研究内容や資材の専門知識がなければ会話もできず、研究者のどんな困りごとを解決できるかを説明し、質問に答える必要があります。
ただし難しいのは、その専門知識は業界や商品を離れた瞬間に価値を失うことです。同じ営業担当者が魚の販売に移れば、資材や研究分野の知識は役に立ちません。一方、相手の反応に合わせて蓄積したノウハウや方法論を使って営業する力は、魚の販売でも使えます。
特定の資材や研究分野の知識。その業界を離れると価値がゼロになる
相手の反応に応じてノウハウや方法論を使って営業する力。別の業界でも通用する
この他の業界に行っても通用する部分が、そのポータブルスキルって言われてる方な、持ち運びできるスキルなんですよね。
玉置さんは、希少性や専門性で分類した後、もう一段階「他でも使えるか」で分解すると話します。転職市場は広く市場全般の評価になるため、ポータブルスキルが高い方が価値は上がるからです。
岡島さんが、ソフトスキルとハードスキルという分類と同じかと尋ねると、玉置さんは自分ではソフトスキルという言葉をあまり使わないと答え、話はポータブルスキルに戻りました。
「責任の重さ」の正体は?判断と影響範囲の関係
3つ目の要素である判断について、玉置さんは経験とともに増えていくものだと説明します。入社間もない人には、マニュアルで手順が決まった仕事が与えられ、そこには判断業務がありません。
経験を積むと、マニュアルでは対応できないイレギュラーなことが起こり始め、そこで判断業務が発生します。そして玉置さんは、会社でいう「責任」は判断の対価だと言います。
要は、その責任の重さっていうのは何かっていうと、間違えた時の影響範囲とか規模なんですよ。
管理職の給料が高いのは責任があるからだと言われますが、責任を負えるとは、影響の大きい判断を適切にできるということです。報酬を払う側は、その影響範囲に関する判断を適切にしてくれることを期待しています。
判断を任される
間違えた時の影響範囲が大きい判断を任される
期待値で報酬が払われる
その判断を適切にすることへの期待として報酬が払われる
失敗すると責任を取る
判断を誤れば報酬カットや返還という形で責任を取る
ニュースで見る報酬カットや報酬返還も、この構図で説明できると玉置さんは言います。影響の大きい判断を任せるから期待値で報酬を払っていたのに、判断に失敗したので責任を取ってください、という仕組みです。
年数を重ねて給料が上がっていく過程では、作業とコミュニケーションだけで上がる場合もありますが、多くはどれだけ判断業務をしてきたかが見られています。玉置さんは、判断は経歴が短くても単価が上がりやすい領域だと話します。
そこで査定では、本人があまり意識していない過去の判断を掘り出し、その判断を間違えたらどれだけ影響があったかを算定します。影響範囲の大きい責任をミスなく完遂していたなら、市場価値は当然上がってくるといいます。
量や苦労は価値になる?手術とパン工場、100ページの資料
作業にも責任はありますが、間違えた時の影響範囲は基本的に小さいと玉置さんは言います。新入社員にマニュアルを渡して核爆弾のスイッチを押させることはなく、そうした行為はもはや作業ではなく判断だからです。
岡島さんが、医者の手術は作業でも患者の健康に関わるから報酬が高いのかと確かめると、玉置さんは同意し、さらに「変数」の視点を加えます。手術は対象の患者が毎回違うので、マニュアルがあっても変数が大きく、作業の中で判断が占める割合が大きくなります。
対照的に、工場でパンを作る作業は材料も工程もあまり変わらず変数が小さいため、難易度は下がり、判断業務もほとんどないといいます。
玉置さんは、量や大変さが価値を決めるわけではないとも強調します。100ページの資料を作ったとしても、ミスした結果が「部長に怒られる」程度で修正すれば済むなら、責任は軽く、市場価値が高いとは見なされません。
一方、同じ100ページでも、ある会社の価値を算定するための会計レポートなら会計知識という専門知識が必要なので、市場価値は高くなります。
ミスしても部長に怒られて修正すれば済む。影響範囲が小さく市場価値は高く見なされない
会社の価値を算定する基礎資料で、会計の専門知識が必要。市場価値は高い
コミュニケーションでも同様です。役員プレゼンで合意が得られなければプロジェクトが止まり、数十億の損失が生まれるなら、かなり責任の重いコミュニケーションです。
個人的には多分ダメージ大きいんですよ。今日遅刻しましたって報告することは。
課長に遅刻を報告するのは本人にとってはつらく重い行為ですが、市場価値が高い話ではない、と玉置さんは整理します。個人的な重さと、市場での責任の重さは別物だということです。
「当たり前」の罠と、キャリアの横ばいが危ない理由
こうして整理すると、自分がやってきたことはすべて分類できます。ただし玉置さんは、ここに一つ罠があると指摘します。
結構その自分に自信がないっておっしゃってる方っていうのが、いや、これは当たり前だから希少性がない、専門性がないっていう風に見てしまっていることがちょっとよくあるんですよね。
自分の判断は誰でもできると思い込む癖があると、市場価値を客観的に測れません。玉置さんたちが外から「それは当たり前じゃないですよ」と指摘できるのが、他者と対話しながら棚卸しする良さだといいます。ただし、自分でも客観的に判断すればよいだけの話だとも付け加えます。
逆に、作業・判断・コミュニケーションのすべてで価値が低い方しかやっておらず、それが長く続いているなら、市場価値はずっと横ばいです。玉置さんは「それはちょっと焦った方がいいかもしれない」と話します。
理由は、転職市場ではまだ年齢という変数が大きく効いているからです。企業によりますが、たとえば40歳を超えるとマネジメント経験があってほしい、といった期待値があるといいます。
全業界に当てはまる基準があるわけではないものの、募集する企業は社内の人材を抽象化して、25歳ならこれくらい、30歳ならこれくらいという期待値を多かれ少なかれ持っています。横ばい期間が長いと「30歳なのにまだ第二新卒のようなことしかしていないのか」とマイナス評価を受けることがあります。
悩むのではなく考えるには?現在地と目標の差分を埋める
玉置さんは、全員に転職を勧めているわけではなく、今の会社で勤め上げる選択肢も当然ありだと話します。ただし社内でのキャリアアップも、今回と同じ市場の原理で動いているといいます。
だからこそ、働くことでどんな経験値を積み、価値が上がっているのかは意識した方がいいというのが玉置さんの考えです。現在までに積み重ねたものがわかり、目標が立てられれば、あとは差分をどう埋めるかという課題解決になります。
袋の中身も目標も曖昧で、何かが足りない感じがずっと続き、悩む
現在地と目標がわかり、差分を埋める課題として考えられる
岡島さんは、玉置さんがよく使う「お化けが怖いのは見つめていないからで、凝視するとカーテンが揺れているだけだったりする」というたとえを思い出し、サンタの袋の話と同じだと気づきます。
何も持ってないかもしれない、全部ゴミかもしれないと思ったらめちゃめちゃ不安じゃないですか。
さらに目指すところも曖昧だと、満足度100パーセントで完全に幸せだと言い切れない限り、誰もが不安になってしまうと玉置さんは言います。
玉置さんは、自分には希少性や専門性がある、この部分は市場で需要が高いだろう、と思えることが根拠のある自信につながると話します。
よくある誤解は、能力や頭の良さに自信の根拠を求め、頭がよくなる本を買ってしまうことだといいます。玉置さんによれば、自分がやってきたことが土台になる自信こそが強い自信で、頭がよくなってもそれほど自信にはつながりません。
さらに、作業・判断・コミュニケーションの難易度を、今より少し背伸びして届く範囲に自分で設定して達成していけば、それも確実に自信になります。転職するならその力が鍛えられる場所へ、社内なら判断業務ができるポジションへの異動や、上司への業務の提案でチャンスをつかみに行く選択肢もあるといいます。
岡島さんは、人的資本・社会資本・金融資本の考え方に重ねます。金融資本は証券口座で残高や運用成績が見えるのに、自分の能力という人的資本は数字に出ないので、残高がわからないまま生活している状態ではないかというのです。転職する気がなくても履歴書を書いたり面接を受けたりして客観的な意見をもらうのは、まさにこの現状把握のためなのだろうと話しました。
玉置さんは、今いる場所で棚卸しができ、働くことで目盛りが右に動いている状態なら、転職の必要はまったくなく、自信を持って働けばいいと応じます。
背伸びの仕事が自信を育てる。学び直しと岡島さんの焦り
受講生の中には、自信がないからもう一度勉強し直したいという動機の人もいます。玉置さんによれば、コンサルティング会社で徹底的に研修を受けたような人はまれで、多くの人は見よう見まねで考えて仕事をしているため、それが合っているのかわかりづらいのが正直なところだといいます。
そのため、一番は積み上げてきたものを今回の方法で精査することだとしたうえで、学び直しで自信をつけるのも一つの方法だと玉置さんは話します。
終盤、岡島さんは「焦り始めました」と打ち明けます。影響範囲の小さい判断ばかり重ねてきていないか、ライターとしてやってきたことはAIで希少性が薄れているのではないか、と感じたからです。
やばい、影響範囲の小さい判断を重ねてきていないかなと思って。焦り始めました。
玉置さんは、袋の中身を見ることに加えて、背伸びした仕事をしているかどうかも大事だと話します。最初は無理かなと思うくらいの仕事をしていると、案外成長しているそうです。
逆に、できる範囲の仕事ばかり続けていると成長が止まっている可能性があり、難しいことに取り組む気持ちや筋肉が弱っているかもしれないといいます。玉置さん自身も、定期的に少し無理めなことをやるよう心がけているそうです。
岡島さんは最近の挑戦として、玉置さんに勧められて始めたYouTubeの動画制作を挙げます。最初は動画がわからないと思いながら取り組んでいたものの、だんだん勘所がわかってきて楽しかったと振り返りました。
最後に岡島さんは、独立後の自分は市場価値をふわっとさせたままでいいと甘えていた部分があったと反省し、振り返りをしようと強く思ったと語ります。玉置さんは「ぜひやってみてください」と応え、岡島さんもリスナーに棚卸しを勧めて番組を締めくくりました。
まとめ
順調に見えても自信が持てないのは、積み上げてきた仕事という「サンタの袋」の中身を査定していないからだと玉置さんは言います。仕事を作業・コミュニケーション・判断に分け、希少性・需要・責任の重さ・持ち運べるかで一つずつ測れば、漠然とした不安は解決できる課題に変わります。
- 仕事は作業・コミュニケーション・判断の3種類に分解でき、企画や会議、マネジメントもその組み合わせ
- 市場価値は希少性と需要で決まり、AIで供給が増える仕事は価値が下がりやすい
- 責任の重さとは判断を間違えた時の影響範囲で、量や個人的なつらさは市場価値と別物
- 業界固有の知識とポータブルスキルを色分けし、「当たり前」と思い込む罠や年齢による横ばいの評価に注意する
- 現在地と目標を明確にし、背伸びした仕事を続けることが根拠のある自信につながる





