目標は立てていい、でも「立て方」と「運用」がセット
岡島さんは、前回「目標をあまり立てない方がいい」という話をしたにもかかわらず、収録時点で今年の目標を立ててしまっていたと打ち明けます。
これに対して玉置さんは、目標を立てること自体は否定しません。自身も目標を立てると話します。
いいんですよ、別に。立てることは。私も目標を立てます。
ただし、立てるだけだとマイナスの方が多いと言います。そのうえで大事なのが、目標の「立て方」と、立てた目標の「運用」だと整理します。
前回話した「良かった・悪かった」ではなく「勝ち負け」での振り返りを踏まえ、勝ちを増やし負けを減らすための改善を目標として持つのはOKだと話します。
目標を立てた瞬間、脳は「もうやった」と満足する
なぜ人は目標を立てたがるのか。岡島さんは「やってる感を出したいから」と答えますが、玉置さんは目標が人に及ぼす影響を調べて、驚くべき事実に行き着いたと言います。
目標って、立てた瞬間に脳がこう判断するんですよ。「よし、私はちゃんとやっている」。
つまり目標は、立てた時点で脳が安心してしまうというのです。岡島さんは「何かを達成するための目標なのに、立てた時点で達成感が得られてしまう」と、その二律背反ぶりに驚きます。
脳の中で起きているのは、こういうことだと玉置さんは説明します。目標を立てて未来を想像すると、多くの場合「こうなったらいいな」という良い未来を思い描きます。
すると、それだけでドーパミンが出てしまうのだと言います。
ドーパミンが出ちゃうと脳は一仕事終えたっていう認識をして。
実際には立てただけで何もしていないのに、脳はやった気分になってしまう。試験前に勉強計画を立てただけで達成感を得た、あの感覚と同じだと例えます。
自己イメージのキラキラと、脳が言い訳を探す仕組み
玉置さんは、目標の危うさはまだあると続けます。多くの人は年末年始の休みに「なんとかになる」「なんとかする」と目標を立てますが、具体的な行動計画に落とせている場合は少ないと指摘します。
このとき人は本能的に「私はこういう人間でありたい」という物語やアイデンティティを求めており、キラキラした自己イメージを脳内に浮かべると言います。
なんかちょっと自分の良くなった感じがするんですよ、脳が。良くなっちゃったらもういいじゃないですか、それで。
玉置さんは、脳にとって行動は大変なものだと説明します。失敗するかもしれず、時間も取られ、疲労もする。一方で目標設定は安全で、今すぐ気分が良くなるドーパミンが出る行為です。
だから脳は、行動と目標設定なら目標設定を取りたがるといいます。
さらに脳は整合性を取りたがり、違和感を放っておきたくない性質があります。目標を立てたのに達成していないと、そのギャップが居心地悪くなります。
行動力のある人はそこで「だから頑張ろう」となりますが、そうでない人の場合、脳は後付けで言い訳や理由を探し始めると言います。
「いや、忙しかった」とか「タイミングが悪かった」とか、「本来やらなくても良かった」とか、そういうことを考え出す方に脳は走り出すんですって。
岡島さんは、生存のための動きが事前にインプットされているようなイメージだと受け止めます。玉置さんも、脳は合理的にエネルギーを節約する臓器だと応じます。
だって行動するよりも言い訳考える方が省エネじゃないですか。
年始に目標を立てたくなる「フレッシュスタート効果」
玉置さんは、目標設定には心理的な効果も働いていると話します。多くの人は3月4日のような中途半端な日ではなく、区切りのタイミングで目標を立てたがります。
年始、誕生日、月初、週明けといった区切りで目標を立てたくなるのは、過去の失敗をリセットできるような錯覚があるからだと言います。
新しい章に入った感じがして気分が良くなる。けれど実際には、12月31日と1月1日で何一つ変わっていないと玉置さんは指摘します。
でも変わったっていう錯覚を起こさせる効果が、その区切りにはあるらしいんです。
岡島さんは、暦はこちら側で勝手に決めているだけだと納得します。玉置さんは、こうした事実を分かったうえで目標と付き合うことが大事だと話します。
目標を立てるなら「行動計画」までセットで落とす
玉置さんは、大事なのは壮大な目標やよく練り込まれた目標を考えることではなく、目標に行動計画まで落とし込んだものを作ることだと言います。
理由はシンプルです。立てたときにドーパミンが出て気持ちよくなっても、それが冷めた後に行動計画は残るからです。
脳は目標で動かない、むしろマイナスだってことが分かっていれば、それが冷めた後にちゃんと動ける状態にしておくことなんですね。
行動計画に慣れていない人向けに、玉置さんは現実的な落としどころを示します。12月までにこうなると決めるなら、せめて1月末までにどうなるかを決めておく方がいいと言います。
1カ月後くらいなら先が見えるので、そのために何をするかを細かく落とし、ファーストステップを決めてしまうことをすすめます。
ファーストステップは1分でできることまで小さくする
例として、玉置さんは「今年こそ英語が話せるようになる」という雑な目標を挙げます。岡島さんも「話せるってどこまで?」と、その曖昧さに共感します。
ここで玉置さんは、自身が実際にAIと壁打ちした経験を紹介します。まずマーケティングでよく言う「ペインの明確化」から始めたと言います。
何が嫌で、何が障害になっているのかという自分のペインを言語化し、いつまでに解決したいのかを定める。そこから始めると、自分の目標を言語化しやすいと話します。
そして重要なのが、ファーストステップを本当に小さくすることだと強調します。多くの人は自分を信用しすぎているといいます。
三十分でできることであれば自分が動くだろうみたいなこと思ってますけど、三十分でできることめちゃめちゃハードル高いんですよ。
玉置さんは、ファーストステップは1分や30秒でできることに置いた方がいいと言います。ダイエットしたいなら、最初の一歩はスマホで「ちょこざっぷ」と検索するだけでいい、というくらいの小ささです。
目標管理より「行動条件」を決めるという提案
岡島さんは、一人で立てた目標を追跡し続けるのは難しいと指摘します。会社のチームで振り返りのタイミングがあれば強制力が働きますが、個人では続かないというイメージです。
玉置さんも、実際に目標管理は難しいと認めます。そのうえで提案するのが、行動の条件を決めるというやり方です。
英会話なら、細かいステップを刻んで管理するのではなく、「朝一番でDuolingoを一問やる」と決めてしまう方がおすすめだと言います。
これはif-thenルールで、状況(if)に行動(then)を結びつけるものです。玉置さんは、朝起きてすぐ、歯磨きをしているとき、トイレに入ったときなど、必ずやることをifに置くのがおすすめだと言います。
自分をこうマシン化していくというか、自動化していくんですよ。
ポイントは、意志の力を必要とせず、判断を挟まず、秒で実行できる状態にしておくことです。一秒でできることができるようになったら、5分、10分と少しずつ伸ばせばいいと言います。
成果ではなく「やった回数」を数える
玉置さんは、達成したかどうか、たとえば英語力が伸びたか体重が減ったかに一喜一憂すると折れやすいと指摘します。体重は増えることもあり、英語力の伸びは分かりにくいからです。
さらに、成長は右肩上がりに増える感覚ではないと言います。最初のレベル0からレベル10くらいまではトントン拍子で上がりますが、その後は難しくなっていきます。
必ず成長実感が減る設計になってるんですよ。
だからこそ、見るべきは成果ではなく「やった回数」だけだと玉置さんは言います。しかも、やったという事実自体でドーパミンが出るというのです。
岡島さんは、これは成果目標より行動目標の方が折れづらいという話だと整理します。玉置さんも、行動目標なら英語が上達していなくても痩せていなくても、「今日もやった」が積み重なり、長期的には結果が出やすくなると応じます。
体重や英語力など結果を基準にする。結果は上下するため一喜一憂しやすく折れやすい
やった回数を基準にする。実行するだけでドーパミンが出て継続しやすい
「続ける」より「戻れる」設計にする
玉置さんは、連続で続けることにこだわらない方がいいとも話します。毎日続けるミッションを自分に負わせるより、サボっても戻れる設計にしておく方が大切だと言います。
毎日続けるっていうミッションを自分に負わせるよりも、サボっても戻れる設計にしておきましょう。
時間や曜日、場所が決まっていれば、そこからリスタートしやすくなります。岡島さんは、自分の運動の例を挙げます。
一日おきで行こうとすると、用事で一度途切れたままだらだらとやれなくなっていたと言います。ところが火・木・土のように曜日を決めると、火曜をサボっても「木曜が来たからまたやろう」と再開しやすかったそうです。玉置さんはこれを「復帰設計」と呼びます。
玉置さんは、if-thenで行動を決め、行動した回数だけを数え、サボっても戻ってこれる設計にしておく。この組み合わせが、一年間続けたときに一番結果を出すとまとめます。
目標は「やばい」、それでも希望のある話
岡島さんは、自分の今年の見通しを話します。4月ごろまでの毎月の動きは決めているものの、週ごとまでは落としておらず、3月・4月の成果を見て四半期ごとに立て直すつもりだと言います。
この数年を振り返っても一年後は全然違うため、一年という単位は長いのではないかと感じているそうです。玉置さんも、環境が変化し成長段階にある今は、それくらいが健全だと応じます。
話は前回の「勝ち筋」にもつながります。勝ち筋はなかなか固まらず、固まらないままの人もいます。そういう人こそ、目先の行動を変えていく積み重ねが大事だと玉置さんは言います。
モチベーションをとか、意欲とか意志の力がなくても、自分をその軌道に乗せる方法を取った方がいいですね。
岡島さんは、目標を立てないと「サボっている」という圧が世の中にある気がすると話します。けれど目標を立てても達成しづらくネガティブなスパイラルに陥りやすいなら、むしろ立てない方が成果は出やすいという話は希望があると受け止めます。
最後に玉置さんは、目標を立てた人は行動計画まで落とし、カロリーのかかる管理をしていく方がいいと念を押します。岡島さんも、自分の目標は行動目標なので、行動計画を詳細に立てて追跡までセットでやってみようと締めくくります。
まとめ
目標は立てた瞬間にドーパミンが出て脳が満足し、達成意欲が下がってしまう。だからこそ、行動計画や行動条件までセットで設計し、成果ではなく「やった回数」を数えることが、結果的に成功へ近づく近道だと語られた回でした。
- 目標は立てた時点で脳が満足し、行動意欲が下がりやすい
- 年始などの区切りは「やり直せた」という錯覚を生むフレッシュスタート効果が働く
- 目標を立てるなら行動計画まで落とし、ファーストステップは1分でできるほど小さくする
- 目標管理より、状況と行動を結びつけるif-thenルールで「行動条件」を決める方が続きやすい
- 成果より「やった回数」を数え、続けるより「サボっても戻れる」設計にする


