ノーヒントで始まる「思いつき企画」
今回の収録は前回からの2本撮りで、エラさんが5分休憩のあいだに思いついたテーマでスタートします。バーティさんはタイトルを一文字も知らされないまま、レコーディングに臨んでいます。
僕は全く今から何の話題でやるかを知らされないまま、今レコーディングスタートをしたところなんで。
エラさん自身も、この思いつき企画には不安があるようです。これまで二人が「外れ回」だと思っている回と同じ空気を感じていると、正直に打ち明けています。
僕がこれいいなと思ったのは大体そうなっちゃうので。
そんなハードルの上がった状態で発表されたテーマは「諦めることについて」。バーティさんは「どっちにも転がりうるテーマですね」と受け止めます。
バーティさんは諦めが悪い?「諦めが肝心」との板ばさみ
エラさんから「諦めはいい方ですか?」と聞かれたバーティさんは、即答で「悪いですね」と答えます。ただ、バーティさんにとっての諦めの悪さは、良い意味ばかりではないようです。
まあ引くに引けないとか。わずかな可能性にダラダラすがっちゃうとかいう方の意味で諦め悪いなっていう自負はあるかな。
エラさんは、世の中には「初心を貫いて続けたほうがいい」という風潮がある一方で、「諦めが肝心」という言葉もあると指摘します。どちらが正しいのかというより、諦めるということの捉え方そのものが違うのかもしれない、というのがエラさんの問題意識です。
ルフィもイーサン・ハントも、なぜ諦めないのか
エラさんは、スパイ映画やチームで悪いことをする作品が大好きです。例に挙がるのはミッション:インポッシブル ── トム・クルーズ主演のスパイアクション映画シリーズ。主人公イーサン・ハントが不可能に見える任務に挑みますシリーズ、007、オーシャンズシリーズ、そして漫画の『ワンピース』です。
エラさんがこうした主人公たちを好きな理由を考えてみると、「全員諦めが悪い」という共通点に行きついたといいます。
なんか諦めるということ自体がもう頭にないじゃないですか、彼らって。
エラさんが挙げる場面のひとつが、ワンピース初期のバラティエ編です。ドン・クリークに網で捕まり海へ落とされても、ルフィは手足を出して抵抗し、サンジが「なんで諦めねえんだ」と驚きます。
映画ではシリーズでいちばん好きだという『ゴースト・プロトコル』も、見ている側が「これはダメだ」と思う最後のピンチから逆転する展開です。エラさんは、こうした主人公のようなおじさんになりたかったと語ります。
その諦めという文字が最初から存在しないみたいな。そういうおじさんになりたかったなぁ。
これに対してバーティさんは、「主人公が諦めたら台無しですよね」と野暮なツッコミを入れます。「もういっか、海賊王」という漫画はないし、「今回はクライアントにごめんなさいするか」というスパイもいない、というわけです。
エラさんも、スポーツ漫画のように主人公が少しブレる等身大の熱さも認めています。それでも、エラさんが惹かれるのは1mmも諦めを浮かべない主人公だといいます。
60歳で「サマソニを目指すんじゃ」は美談か執着か
バーティさんは、年齢を重ねてから諦めないことの難しさを、自分に置き換えて考えます。42歳のバーティさんが60歳になって夢を語る姿を想像すると、見え方は分かれそうです。
わしは今からサマソニを目指すんじゃと。出るんじゃと、わしは。っていうのが、美談になるのか、諦めの悪い執着してるジジイになるのか。
バーティさんは、世の中の大半の見方は後者だろうと話します。以前の回で話題にしたキングカズについても、「還暦でもまだ頑張っている」と見る人もいれば、「衰える前に有終の美を」と願う人もいます。
エラさんは、キングカズはルフィに近いと感じています。やめる選択肢がゼロの状態で、弱音の予兆すらない姿勢が、エラさんにとっての理想だといいます。
姿勢としてはあれが僕は理想ですね。もうなんか本当にもうゼロゼロのもう弱音ゼロ。
話はさらに、ステージ上で倒れてそのまま亡くなるような舞台人の在り方へ広がります。バーティさんは、地方の小箱で倒れても数十人の記憶にしか残らないと、「舞台の高さ」の問題を指摘します。例として、ライブ中に撃たれて亡くなったダイムバッグ・ダレル ── アメリカのヘヴィメタルバンド、パンテラのギタリスト。2004年、別バンドでのライブ中に銃撃されて亡くなりましたの悲劇にも触れています。
一番よくないのは「中途半端にズルズル」
エラさんは、諦めない人に憧れる一方で、スパッと諦めて次へ進む人もかっこいいと感じています。矛盾するようでも、どちらにも惹かれるというのです。
そこからバーティさんが導いた答えは明快でした。
しかもバーティさんは、そのズルズル型が自分だと認めます。経営者として判断するなら「絶対に辞めてバイトした方がいい」と言い、エラさんも「それは僕もですよ」と同意します。
ルフィやイーサン・ハントのように、諦めるという発想そのものがない
「これはもう無理」と切り替えて、次へ進む
どちらも振り切っているからこそかっこいい。その真ん中でダラダラ続けることが一番よくない、というのが二人の整理です。
バンドで「売れる」ことは、もう諦めている
バーティさんは、バンドで売れることについてはもう諦めていると明かします。エラさんは「諦めない方がいいですよ」と返しますが、バーティさんには理由があります。
多く見積もってどのバンドにも1%売れる可能性があるとすると、売れたいバンドは広報やブランディングでそれを2や3に広げる努力をします。今のバーティさんたちはそれをしていないので、売れるとしたら宝くじに当たるようなものだというのです。
1%の可能性
どのバンドにも、ほんのわずかに売れる可能性がある
広げる努力
広報やブランディングで、2%、3%へと可能性を高める
今のバーティさん
努力をしていないので、売れても宝くじのような事故になる
仮に、例えばじゃあ僕らがもう10年前とかに出したMVしかないですけど、あれをね、誰かが不意に見つけちゃって売れたとしましょう。
他の今頑張ってる僕が関わってる若手バンドマンたちの気持ちとかを思うと、なんかね、ごめんねって思う。
バーティさんは、40歳を超えても売れようと頑張っているバンドマンは全然かっこ悪くないと話します。ただ、半年も練習していない今の自分たちは完全に道楽で、そのまま売れても映画化なんて見ていられないと笑います。エラさんは「バーティさんの情熱大陸を見たい」と返しています。
諦めない先は「リアルな目標」か「夢」か
エラさんは話しながら、諦めないことの「ベクトル」が違うのではないかと気づきます。再生回数100万回のような現実的な目標と、SLIPKNOTやLinkin Parkと対バンするような夢とでは、諦めない姿勢も変わってくるというのです。
絶対コリーと対バンしてやるぞ、死ぬまでにみたいな。
バーティさんはこれを、オリンピックで金メダルを目指すのか、出場を目指すのかの違いにたとえます。どこをゴールにするかで、諦めるかどうかの意味が変わるという視点です。
UFCのティム・エリオットにみる「かっこいい諦め」
バーティさんが「ただ語らせてほしい」と持ち出したのが、好きな格闘技の話です。UFC ── アメリカを拠点とする世界最高峰の総合格闘技団体。階級ごとにチャンピオンと1〜15位のランキングがありますに参戦中の朝倉海選手は、名前が売れていたこともあり、初戦でいきなりチャンピオンとのタイトルマッチを組まれ、敗れました。
次の相手は、当時ランキング10位で40歳手前のベテラン、ティム・エリオット選手でした。朝倉選手が難なく勝って再浮上する流れかと思われましたが、勝ったのはティム・エリオット選手の一本勝ちでした。
俺がこの年で今からタイトル戦線に絡めるとは思ってないけど、俺ぐらいに勝てなきゃUFCでチャンピオンにはなれないよと。
バーティさんによると、ティム・エリオット選手はこうした門番的な立ち位置で戦っているそうです。日本人として朝倉選手を応援していたバーティさんも、思わずかっこいいと感じたといいます。
エラさんは、この話こそ自分の理想だと受け止めます。チャンピオンは諦めていても、年齢やコンディションを踏まえた最善のパフォーマンスという目標は諦めていないからです。
UFCのチャンピオンを目指す
チャンピオンは諦め、挑戦者の前に立ちはだかる壁になる
バーティさんは、15位以内に入ること自体がごく限られた精鋭で、その年齢で維持しているだけでもすごいと付け加えています。
北九州・小倉で「手強いおじさんバンド」になる
バーティさんは、レベルは全然違うと断りつつ、北九州・小倉の小さなシーンで同じ立ち位置をやりたいと話します。去年、近所のライブハウスの周年イベントに出たときは、自分たち以外が全員20代だったそうです。
売れるために日々頑張る現役バンドの中に、その年3本目のライブというおじさんバンドが混ざった形です。勝ち負けのないバンドの世界でも、「今日一番のライブを見せてやろう」という意気込みで臨んだといいます。
なんか手強いおじさんみたいな。
エラさんは、冒頭の諦めの話は目標の大きさや高尚さとは関係なく、自分が決めたものに愚直に取り組む姿勢がかっこいいのかもしれないと言います。
ただし二人とも、最初から中堅を目指すべきではないという点では一致しています。甲子園に出ている選手が「ウエスタン・リーグのナンバーワンになる」と言うのは早すぎで、一度は一軍を目指してみていい、という話です。
オーシャンズ13とキングカズ、「その時なりのベスト」を探す
エラさんは終盤、『オーシャンズ13』の好きな場面を紹介します。大ピンチで凄腕のパートナーに「こんなことが起こらない限り無理だ」と言われたとき、ブラッド・ピットとジョージ・クルーニーの役は「じゃあそれやろうよ」と返すのです。
本当に最後の1秒まで諦めずに、もうこれじゃないと無理だよがあるんなら、じゃあそれやればいいじゃんみたいな。
バーティさんはこれを「その時にできるベストを」と受け止めます。エラさんも、どうしても「もうダメかも」がよぎる中で、ひょうひょうと最後の手段を探るおじさんが渋いと話します。
キングカズについても、目標がJ1でプレーすることならもう諦めているはずで、「サッカーをやり続ける」ことが目標なら見え方が変わる、とエラさんは考えます。
15年続くバンドと、この番組の「続ける」目標
バーティさんは、メンバーは知らないけれど勝手に「北九州のティム・エリオット枠」でやるつもりだと宣言します。バンドは結成から15、6年続いていて、エラさんは「やめないのがすごい」と称えます。
この番組も同じで、『コテンラジオ』のようなPodcastのスターを目指して始めたわけではありません。狭く深く、誰かに一定数届いて面白がってもらえればいい、という目標を二人は確認します。
そこは諦めずに。うん、ここもダラダラやっていきましょう。
エラさんは「予想どおり変な感じになった」と謝りますが、バーティさんはティム・エリオット選手の話ができて満足だと笑います。好きなことを語れたおじさん二人の、満足した締めくくりです。
まとめ
エラさんの「諦めない主人公になりたかった」という憧れから始まった雑談は、UFCのティム・エリオット選手の話を経て、自分なりに決めたゴールを最後まで諦めないという、おじさん相応の答えにたどり着きました。
- 諦めないかっこよさも、スパッと諦めるかっこよさもあり、一番よくないのは中途半端にズルズル続けること
- 売れる可能性を広げる努力をしていないなら、売れることはもう「諦めている」のと同じ、とバーティさんは考えています
- ティム・エリオット選手のように、チャンピオンを諦めても「壁として立ちはだかる」ゴールは諦めない生き方があります
- まず上を目指し、自分を知ったうえでゴールを決め直し、その時なりのベストを愚直に探すことが大切です
- 15年続くバンドもこの番組も、「続ける」ことを諦めない目標として二人は大事にしています


