芝野棋聖はなぜ3連勝できたのか?名人戦とペア碁最強位戦
「みむ囲碁ラジオ」は、プロ棋士40年で囲碁サロンと子ども囲碁道場を運営する三村智保九段が、囲碁の情報を短く伝える番組です。第350回は、ニュースレター「みむいご通信」71号の棋戦ニュースを音声で届けています。
最初の話題は名人戦です。第51期名人戦挑戦手合七番勝負の第5局が9月30日と10月1日に三重県鳥羽市の戸田屋で打たれ、芝野虎丸棋聖が白番中押し勝ちを収めました。
芝野棋聖は第1局と第2局を落としたあと3連勝し、名人奪取まであと1勝に迫っています。
三村九段は、芝野棋聖の打ち方の変化に注目しています。大技を控え、実利を取る作戦に寄せていることで、序盤から前半戦にかけて評価値を落とさなくなったと見ています。
芝野棋聖は実利作戦に寄せてきていますね。大技を控えて攻めすぎないように意識しているのかもしれません。
(芝野棋聖は)前半戦で評価値を落とさなくなったんです。
三村九段によると、名人戦の第3局から第5局は似た展開でした。一力遼名人がわずかな不利を感じて勝負手を打ち、芝野棋聖がそれに正確に応じて差を広げています。
前半戦
芝野棋聖が実利作戦で評価値を落とさずに進める
勝負手
一力名人が微小な不利を感じて勝負手を打つ
的確な対応
芝野棋聖が勝負手に正確に応じる
差の拡大
芝野棋聖が差を広げて勝ち切る
名人戦の第6局は、10月14日と15日に千葉県木更津市の龍宮城スパホテル三日月で打たれます。三村九段は、これまでの流れどおりなら手付近で優位に立った側が勝つと予想しています。
続いては、世界ペア碁最強位戦2026です。9月26日と27日に名古屋城本丸御殿で決勝トーナメントが行われ、藤沢里菜七段と一力遼九段のペアが優勝しました。
藤沢・一力ペアは、準決勝で日本勢同士の対戦となった上野愛咲美六段・井山裕太九段ペアに白番中押し勝ちを収めました。決勝では、中華台北の楊士軒六段・許皓興九段ペアに146手まで白番中押し勝ちを収めています。
楊・許ペアは、もう一方の準決勝で中国の王詩偉八段・王星昊九段ペアに黒番の時間切れ勝ちを収めて決勝へ進みました。
普段の国際棋戦では中国や韓国の棋士のほうが強い一方で、三村九段は、ペア碁については日本の棋士が少し得意なのかもしれないと話しています。
ペア碁最強位戦の主催者のページでは全局の棋譜が公開されています。4人のうち誰がどの手を打ったのかまでわかる点を、三村九段は面白いと紹介しています。
韓国発の女子国際棋戦、仲邑菫六段が見せた成熟した勝ち方
次の話題は、IBK企業銀行杯女子囲碁ワールドマスターズです。2021年に始まった韓国国内の女流棋戦が、今年から国際棋戦に広がりました。
三村九段は、韓国の囲碁界が盛り上がっていると感じています。韓国はプロ棋士の採用枠を日本よりはるかに広く取っていて、名前を知らない若手棋士も多いうえ、賞金額にもその勢いが表れているといいます。
IBK企業銀行杯の持ち時間は、最近増えているフィッシャー方式 ── 持ち時間に加えて、1手指すごとに一定の時間が加算される時間制度。チェスで広まり、囲碁でも国際棋戦などで採用が増えていますで、各30分に1手ごとに20秒が加算されます。
私はフィッシャーの経験が一局もないんですが、多分(フィッシャー方式は)かなりの早碁でしょう。
日本代表は抽選のくじで対戦相手が決まり、柳原咲希二段は韓国女流ランキング1位の金恩持九段と、上野愛咲美六段は仲邑菫六段と当たりました。
柳原二段の対局は一目半差でした。ただし三村九段は、相手が確実に勝つために後半を固く打ったことで差が縮んだだけで、基本的には完敗だったと評価しています。
上野六段と仲邑六段の一局について、三村九段は高く評価しています。上野六段の剛腕に対し、仲邑六段は時に柔軟に受け、時に殴り返す手を織り交ぜて、非常に成熟した勝ち方を見せたといいます。
上野六段と仲邑六段の一局は、「みむいご通信」の「新しい定石」コーナーで図を使って取り上げられています。
棋聖戦では、第51期のパラマストーナメント ── 下位の者から順に勝ち上がり、勝つたびに上位者と対戦していく勝ち抜き方式のトーナメント。上位シードほど少ない勝利で挑戦権に届きますが始まりました。Bリーグ優勝の大西竜平七段が、Cリーグ優勝の藤田明彦八段に白番中押し勝ちを収め、挑戦者まであと4連勝です。
棋聖戦の挑戦手合七番勝負は、2027年1月13日に開幕します。
天元戦から名人戦第6局まで、10月の注目対局は?
最後は、これからの注目棋戦です。10月7日からは第52期天元戦の挑戦手合五番勝負が始まり、一力遼天元に井山裕太五段が挑戦します。
翌8日からは、第45期女流本因位戦の五番勝負が始まります。藤沢里菜女流本因位に、上野梨紗四段が挑戦します。
10月13日からは第52期新人王戦の決勝三番勝負で、後藤一二段と柳原咲希二段が対戦します。新人王戦の決勝では、三村九段が立会を務めます。
そして10月14日と15日は名人戦の第6局です。一力名人は2勝3敗の角番で第6局を迎えます。
「みむいご通信」では、毎週こうした棋戦ニュースに加えて、今週の問題や新しい定石を届けています。「ミムラ 囲碁」で検索すると三村九段のブログが表示され、そこから「みむいご通信」に登録できると案内されています。
まとめ
第350回は、名人戦で芝野棋聖が勝ち方を変えて3連勝した流れを中心に、日本勢が好成績を残したペア碁最強位戦、韓国発の女子国際棋戦、10月の注目対局までをコンパクトに伝える回でした。
- 名人戦は芝野虎丸棋聖が実利作戦で3連勝し、名人奪取まであと1勝に迫っている
- 世界ペア碁最強位戦2026は藤沢里菜・一力遼ペアが優勝し、三村九段は「協調性」が日本勢の強みかもしれないと話している
- IBK企業銀行杯では、仲邑菫六段が上野愛咲美六段との一局で成熟した勝ち方を見せたと評価されている
- 10月は天元戦、女流本因位戦、新人王戦、名人戦第6局と注目対局が続く





