10歳でぷよぷよ世界一、囲碁の目にはどう映る?
三村智保さんは、ぷよぷよで日本の10歳の少年が世界チャンピオンになったというニュースを耳にし、それを囲碁の世界と比べてみたいと話を始めます。ニュースはしっかり読んだわけではなく噂で聞いた程度で、少年の名前やプレイ内容もわからないと前置きしています。
三村さんは自分を「天才には程遠い、凡才も凡才」と位置づけたうえで、40年のプロ生活のなかで天才を近くで見てきた立場から語ると述べます。
まあ10歳というのはすごいですね。囲碁の世界から見ても、10歳で世界優勝は、ちょっと囲碁の世界では考えられないですね。
三村さん自身も家のNintendo Switchでぷよぷよに触れたことはあるものの、パズルゲームは得意ではなく「負けるイメージしか湧きません」と笑います。
10歳で世界一になる少年について、三村さんは反射神経やパズルの上手さだけではないはずだと想像します。やり込みの量に加え、勝ち負けだけでなく自分の改善点を見つめながら練習を続けられる賢さがあるだろう、という見立てです。
才能というかね、そのやり込みの量もすごい。それをひたすらやり続けることもできるし、その上達に向かってやると。ただやるんじゃなくてね。
囲碁の最年少世界チャンピオンは16歳
囲碁で最も早く世界チャンピオンになった例として、三村さんは韓国の李昌鎬九段を挙げます。16歳での世界優勝で、プロ試験に通ったのは10歳か11歳だったといいます。
李昌鎬さんの師匠は、韓国のタイトルを総なめにし「帝王」と呼ばれた曹薫鉉九段です。李昌鎬さんはその内弟子として住み込みで修業し、13歳ごろから師匠のタイトルを次々に奪っていきました。
14歳ごろには師匠を倒して韓国の最強者になり、朝に師匠の奥さんの車で一緒に対局場へ向かい、2人で試合をすることもあったそうです。
子供がね、天才少年が大人を凌駕するということは、囲碁界でもたくさんあることです。それの、もう本当に一番最も激しい例ですけども。
その後に続いた天才として、三村さんは中国の陳耀燁九段が15歳で世界戦の準優勝まで進んだ例も挙げます。三村さんの整理では、囲碁の天才は10歳ごろにプロ試験を通り、頂点までは早くても5年という感覚です。
プロ九段が10歳の子に負けた日
三村さんは、自身が10歳の子どもに互先で負けた体験を語ります。相手はのちに11歳で中国のプロ試験に通った中国人の子で、日本に住んでいた時期に三村さんの道場へ来ていました。
中国のプロ試験ってとんでもないレベルが高い。日本のプロ試験よりもだいぶ高いんですけど。
その子は学校にもあまり行かず、ひたすら囲碁の練習をしていたようだと三村さんは推測します。中国のプロ棋士には、6歳ごろから鍛え上げて10歳でプロ並みになるパターンが多いといいます。
もうね、鍛え上げられていて、読みにミスがなくて。まだ抜かれたっていうほどではないけども、相当強いなと思いましたね。
さらに、今世界最強と言われる韓国の申真諝九段にも、10歳のときにプロ九段と互先でいい勝負をしたという伝説があると紹介されます。
こうした例から、三村さんは囲碁の天才は10歳で並の九段と同じくらいまでは到達するものの、そこから世界チャンピオンまではまだかなり差があると述べます。
囲碁に必要な「読み」と「戦略」、先に完成するのは?
三村さんによると、囲碁で求められる能力は大きく2つに分けられます。1つは、広い碁盤を全局的に見て優先度を決め、作戦を立てる戦略的思考です。
もう1つは、目の前の局面で最善手を探し、相手の応手を10手ほど先まで想定して確かめる能力です。相手の別の選択肢も3つ4つ確認し、自分の手が実は成立しないケースまで素早く正確に見抜く必要があります。
この2つ目の能力を、囲碁用語で読み ── 囲碁で、実際に石を置く前に、自分と相手の着手を頭の中で何手も先まで想定し、結果を確かめる思考のこと。棋力を支える基礎能力とされますと呼びます。三村さんは、パズルを解く能力に近いものだと説明しています。
読みに加えて、最終的なポイント差で勝敗が決まる囲碁では、自分が0.5ポイント上回っていると見通す計算能力も欠かせません。三村さんはこれもパズルを解く能力の一種かもしれないと話します。
局面ごとの最善手を何手も先まで確認し、ポイント差を見通す。天才少年は10歳で完成する
全局を見て優先度と作戦を決め、損得を判断する。習得が難しく、後から身につく
三村さんの見立てでは、天才少年は読みと計算は10歳で完成し、戦略や判断は後から来るといいます。プロのレベルではパズル的な能力が果てしなく必要になり、そこは子どもが得意な領域だからです。
後から戦略を付け加えて、世界チャンピオンの出来上がりということになるのではないかと。
ただし三村さんは、これは自分が体験していない、見ていないレベルを下から覗き上げるように話しているものだと断っています。
8歳の仲邑菫に負けた衝撃と、日本の最年少記録
三村さんは、仲邑菫 ── 日本の女流囲碁棋士。10歳で英才特別採用推薦棋士としてプロ入りし、史上最年少でのプロ入りとして大きな話題を集めましたさんと初めて打ったときのことも振り返ります。当時仲邑さんは8歳で、プロ九段の三村さんに置き石2つのハンデだけで挑み、三村さんが負けたといいます。
すごい見た目もちっちゃくて、ちょこんと座ってる子に、しかも私負けたんですよ。で、びっくりしちゃって。
仲邑菫さんは毎日膨大な練習をこなし、10歳でプロ初段になりました。プロ試験ではなく推薦によるプロ入りでしたが、その時点で下のほうのプロには勝てる力があったと三村さんは話します。
仲邑さんは13歳で女流棋聖のタイトルを取り、これが日本の女性プロ棋士の優勝最年少記録として今も破られていないそうです。天才女流棋士の藤沢里菜さんの名前も挙がり、13歳での優勝は突き抜けた記録だと評されます。
男性の最年少記録は19歳か20歳ごろで、最近本因坊になった福岡航太朗さんや、20歳で名人などになった芝野虎丸さんが例に挙がります。こうした棋士は13〜14歳でプロ試験に通り、トップを取るまでに6〜7年かかるといいます。
| 棋士 | プロ入り | 到達した記録 |
|---|---|---|
| 李昌鎬九段(韓国) | 10歳か11歳 | 16歳で世界優勝 |
| 陳耀燁九段(中国) | 発言なし | 15歳で世界戦準優勝 |
| 仲邑菫さん(日本) | 10歳(推薦) | 13歳で女流棋聖 |
| 芝野虎丸さん(日本) | 13〜14歳ごろ | 20歳で名人など |
日本のトップを取った棋士でも、そこから世界のトップまではさらに差があると三村さんは付け加えます。
ぷよぷよの世界一はなぜ響くのか
あらためて三村さんは、10歳での世界チャンピオンを「本当にすごい」と繰り返します。ぷよぷよの競技環境や、本気で取り組むプロフェッショナルが世界にどれほどいるかはわからないとしつつも、それでもすごいという評価です。
囲碁を打つ人でさえ100万人と言われているので、ぷよぷよは当然ね、10倍はいるんじゃないかな。やったことがあるというレベルで言えば10倍。
三村さんは、世界優勝という肩書きは「天才だ」と言われるだけよりも分かりやすく、ニュースとしての威力が大きいと話します。
最後に三村さんは、囲碁でも日本の天才少年を育てて世界チャンピオンにする日を夢見て、日々指導を続けていると語って番組を締めくくります。
まとめ
ぷよぷよの10歳世界チャンピオン誕生を受けて、三村智保さんは囲碁の天才が10歳で並の九段に並ぶ一方、世界の頂点までにはさらに年月がかかると語りました。その背景には、読みは早く完成し、戦略は後から身につくという囲碁ならではの能力の構造があります。
- 囲碁の最年少世界優勝は李昌鎬九段の16歳で、10歳での世界優勝は囲碁界では考えにくいとされる
- 囲碁の天才は10歳ごろにプロ並みになり、頂点までは早くても5年ほどかかる
- 読みと計算は10歳で完成しうるが、戦略や判断は後から身につく能力とされる
- 三村さん自身、10歳の中国の少年や8歳の仲邑菫さんに敗れた経験がある
- 世界優勝という分かりやすい実績は大きな反響を呼び、囲碁でも天才の育成が夢見られている


