たまったお便り20通と、Sakana AI「Fugu」のスイミー理論
「おちつきAIラジオ」の今回は、リスナーからのお便りを返す特別回です。かねりんさんによると、お便りは20通ほどたまっており、2人は全部読んだうえで、番組内で取り上げるものを選んで紹介すると話しています。
番組の最後に(コメントを)返そうと思っても、2時間ぐらい喋ってっから、コメント返ししたら3時間番組なっちゃうんで。
1通目は、みっこさんからのお便りです。みっこさんは、6月23日の速報回で扱われたSakana AIの「Fugu」について、調べながら聞いていたと書いています。
魚AIふぐの発想には単体の強さを競うだけでなく、複数の異なる強みを見取り関係付け、全体として高い知性を生み出そうとする思想があるところが素敵だな。その点において、共同、調和、場の設計を重んじる日本発らしさが伝わってくる、このような印象を持ちました。
かねりんさんは、小さな魚が集まって大きな魚に見せる絵本になぞらえて「スイミーだよね」と反応します。しぶちょーさんも、Fuguは複数のモデルから良いものを選び出すオーケストレーション ── 複数のAIモデルや機能を指揮者のように振り分け、組み合わせて1つの仕事をさせる仕組み。単体の性能ではなく組み合わせ方で成果を高める考え方ですが強みのモデルだと説明しました。
かねりんさんは「一瞬話題になって、すぐ静かになった」印象を語りますが、しぶちょーさんの見方は違います。日本でもモデル開発が大事だという気持ちは続いており、Fuguは結構ポジティブに受け取られ、課金して使おうとする人も多いと話しています。
教師だけがGeminiを使える学校で、先生は何に不安を感じているのか
みっこさんのお便りは、後半で本題に入ります。みっこさんは地方の公立小学校の教諭で、勤務する自治体では早ければ夏休み明けから、子どもの学習ツールとしてGeminiが導入される予定だといいます。
学校教育にAIが導入されると、授業に活用できることが広がりそうで期待感が高まる一方、たくさんの心配事があります。一番の不安はAIを使う以前の情報リテラシーの教育や、勤務校のICT環境が十分ではない中、授業で子どもたちにAIを活用させて本当にいいのだろうか、ということです。
しぶちょーさんは、ここでいうICT環境 ── 情報通信技術を使うための設備やネットワークの状態。学校ではタブレット、パソコン、Wi-Fi、授業支援システムなどを指すことが多い言葉ですを「スマホとかタブレットとかWi-Fiとかそういう話」と噛み砕きます。かねりんさんは、先生の不安を「一段飛ばしじゃないの?」という感覚だろうと受け止めました。
私が勤務する学校では、昨年度より教師だけ学校のタブレット、パソコンでGeminiが使えるようになりました。それ以前は、教師それぞれが個人で所有するパソコンで、それぞれのAIを仕事に活用していたという実態があります。
個人のAIで仕事をしていた状態について、2人は「シャドーAI的な」「ガバガバだね」と苦笑します。そのうえでしぶちょーさんは、学校ですでにGoogle Classroomなどを使っている自治体があることから、Googleのインフラがあれば自然にGeminiを選ぶことになり、Geminiの作戦勝ちかもしれないと見ています。
みっこさんによると、同僚の先生にもAIを使う人と使わない人がまばらにいて、情報教育やICTに長けた人がいるかどうかで学校ごとの差が大きいそうです。しぶちょーさんは、学校のICT化には推進役が欠かせないと話します。
旗振る人がいないとやっぱ結構きついんじゃない。
しぶちょーさんの知り合いには、ITエンジニアとして地域おこし協力隊に入り、長野で地域のICT教育に取り組む人もいるといいます。一方で、国から「数学を減らしてAIを学ばせる」ような方針が出てSNSで炎上していた件にも触れ、「AIって数学でしかないのに」と矛盾を指摘しました。
子どもの学びに特化したAIは、システムプロンプトで作れるのか?
みっこさんのお便りには、詳しくない先生が多い現状だからこそ、子どもの学びに特化した独自のAIがほしいという要望が書かれていました。
例を1つ挙げると、対話型AIでも子どもとの対話が学習の目的からずれると、ずれていますよと指摘したり、教師を呼ぶ仕組みがあったりするといいなと思います。このような仕組みが1つあるだけでも教師はとても助かります。なぜなら教師、特に小学校の教師は、1つの教室に基本1人で子どもの学びを見取らないといけないからです。
しぶちょーさんは、この要望は専用アプリがなくても実現できそうだと答えます。AIに裏で役割を指示しておくシステムプロンプト ── 利用者の入力とは別に、AIの振る舞いや役割をあらかじめ指定しておく指示文。「あなたは算数の先生です」のように前提を与えますに「この教科の話からずれたら正しく導いてください」と入れておけばよく、GeminiならGemの指示文で設定できるという考えです。
この教科に対して言って、ずれてたら自分で判断して正しく導いてくださいぐらい裏に入れとけば、なんか別にできる気がするけどね。
かねりんさんは、小学校では担任の先生が基本的にすべての教科を教えると知って驚きます。そのため、先生全体のAIリテラシーを底上げしないと、クラスごとの偏りが大きくなると感じたようです。
タブレットが壊れる本当の原因は、学校の机の狭さ?
みっこさんは、これまでのICT活用授業でも、タブレット学習では子ども一人ひとりの活動が把握しにくく、個人に任せっぱなしになりがちだったと振り返っています。しぶちょーさんは、自分の子どもの授業参観で見た光景を話しました。
うちの子は全然提出してなくて。結局先生がうちの子のとこ来て、こうやってこうやって押して押してみたいな。
なんか効率化されてるようで効率化されてねえなと思いながら見てたね。
iPadで教科書の図に丸を付け、前の大画面に送って発表する仕組みはあっても、結局先生が一人ずつ操作を手伝いに回ることになっていたといいます。
話はハードウェアに移ります。しぶちょーさんによると、学校のタブレットは故障率が高いというニュースがあり、その原因は机の大きさだったそうです。
机の大きさは昔のまま
教科書、筆箱に加えてタブレットという新しい道具が増えた
置くものが減らない
机の上がいっぱいになり、タブレットの置き場所が足りない
子どもが落とす
カバーを付けていても、落とす前提の設計になっていない
故障率が上がる
学校のタブレットの故障が異常に多くなる
そう、そういうレベルでICTに対応してないのよ、学校って。
しぶちょーさんは、こうした物理的なレベルでもICTが入りきっていない感覚が、お便りを書いたみっこさんの不安の背景にあると推察します。そこにいきなりGeminiが入ってくるのだから、「どうすりゃいいんやろ」という気持ちになるのではないか、という見立てです。
2人は、学校の業務アプリが県の教育委員会などの入札で決まるのではないかと推測します。しぶちょーさんは、学校のネットは遅く、アクセス制限が厳しく、使いやすいという話をあまり聞いたことがないと話しました。
陳腐化しない知識を教える学校に、賞味期限の短いAIをどう組み込むか
しぶちょーさんは、講演などで大学・高専・高校の先生と話す機会が多く、どの先生も「AIをどう教えるべきか」に悩んでいると話します。その悩みの根っこには、学校が教える知識の性質があるといいます。
学校ってさ、基本的に普遍的なこと学ぶ、学ばせるのね。
しぶちょーさんによれば、1年前に教えたプロンプトの書き方をそのまま教えると「この人やべえな」となるほど、AIの使い方は賞味期限が短い知識です。番組でいえば、速報回と深掘り回でバランスを取っているのに対し、学校は「深掘り回全振り」の場所だとたとえました。
足し算や引き算のように、時間が経っても錆びつかず陳腐化しない
プロンプトの書き方のように、1年前のやり方がすぐ古くなる
それでも先生たちは、社会に出てすぐ使う技術をまったく教えなくていいのか、という葛藤を抱えています。ところが先生自身も忙しすぎてキャッチアップできておらず、専門教科を抱えながら新たに勉強する余裕もないそうです。
かねりんさんが「本来は担当の教員が1人いないとダメなくらいの話」と言うと、しぶちょーさんも同意し、外部から話せる人を呼ぶことが大事になっていると話しました。
夏休みの生成AIセミナーに生徒が来ない、という現実
先生たちが悩んだ末の工夫として、しぶちょーさんは外部講師の招へいや、夏休みに有志の生徒だけを集める生成AIセミナーを挙げます。授業の枠はすでにいっぱいで、正規の時間には収まらないからです。
意外と来ないです。
みんな遊び行っちゃうから。
かねりんさんは、自身が関わる社団法人の活動で、高校生が地域の課題を見つけてビジネスを考える探究学習 ── 生徒が自分で問いを立て、調べたり外部の人と関わったりしながら答えを探す学習。高校では「総合的な探究の時間」として実施されていますをサポートしていると話します。ただ、先生にとっては余分な仕事でもあり、学校ごとに熱量がまったく違うのが現状だそうです。
AIもそうだよね。なんかそういうことに問題意識抱えてさ、やろうって思う人たちじゃないと、そもそも別にまあいいじゃんで済んでっちゃうんでしょ。
しぶちょーさんは、上から「Geminiを使える環境があればできるっしょ」とぶん投げられている可能性もあると見ています。そのうえでみっこさんには、まず先生自身がGeminiを使いこなすことを勧め、要望の多くは簡単な仕組みで実現できると伝えました。具体的な悩みがあれば、お便りやDMで相談してほしいとも呼びかけています。
かねりんさんは、公式Webサイトにはお便りとは別に問い合わせフォームがあるのに、そちらには誰からも連絡が来ていないと明かし、設計を見直すと話しました。
「しぶちょー」の由来は、中学でナイフを持ち歩いた友人「店長」
2通目は、「青森から山口まで走る男」さんからのお便りです。1周年イベントの告知回を「2人の内面に迫るBL回」と表現したうえで、しぶちょーさんの名前の由来を尋ねています。
小学校の頃からのあだ名です。
しぶちょーさんによると、老け顔でコンビニの店長っぽい友達が「店長」と呼ばれていて、その近くの役職がいいと考えたのが始まりでした。「支店長」は店長と紛らわしく、「エリアマネージャー」は小学生には横文字すぎたため、日本語版のエリアマネージャーとして「支部長」に落ち着いたそうです。小学4年生ごろから、すべてのハンドルネームを支部長にしているといいます。
その「店長」は、中学校で良くない方向に尖っていったそうです。しぶちょーさんは、店長が靴箱でバタフライナイフをパタパタさせていて生活指導の先生に見つかり、校庭を2周ほど追いかけっこした末に逃げ切った話を明かしました。
社会人になってから一回あったけどね。
しぶちょーさんによれば、社会人になって再会した店長は更生していて、自分の会社を立ち上げていたそうです。しぶちょーさんは「店長がいての支部長」であり、自分は反面教師としてまともに育ったと笑います。
お便りには「緑のアフロに加えて、緑の唇も再現するのか」という質問もありました。しぶちょーさんの答えは「めんどくさいのでアフロまで」です。1周年イベントについては、かねりんさんが「Spotifyのアンケートで絶対行くと答えたのは1人だけ」と弱気になりますが、しぶちょーさんに押されて頑張ると宣言しました。
「主婦に生成AIは難しい」IT企業で働く主婦からの反論
3通目は、笹米さんからのお便りです。6月30日の速報回で、かねりんさんが「主婦こそAIを使うべき」と話したことへの反対意見として届きました。
子どもが生まれる前まではPCの前から離れない人間でしたが、子どもが高校生まで育った今でもまだまだ主婦の立場では無理です。ワーカホリック時代にいろんなタスク管理ツールを使いましたが、台所作業、洗濯をしている濡れた手ではスマホの操作すらできていません。
もしひねり出すとしたら、子どもが保育園、学校からもらってきたプリントをスマホのカメラで撮影すると、必要な持ち物や予定がわかるようなものなら作りたくなるかもしれません。主婦に勧めるより、主婦の周りの人に主婦の作業が楽になるようなものを提供するという形もいいのかなと考えています。
笹米さんは、家事をしながら夫が試した生成AIなどの実行結果を聞かせてもらい、勉強しているとも書いていました。2人は「ITな一家だね」と感心します。
かねりんさんは、主婦の周りの人が作るものについて、当事者でない人にどこまでわかるのかという疑問を口にします。
でもさ、主婦の気持ちは主婦にしかわからんと思うよ。
しぶちょーさんも、夫婦のトラブルの多くはわからないことが原因だと応じます。しぶちょーさんの妻は、しぶちょーさんが夜な夜な何を話しているのか知らず、アフロのキャラクターのことも聞かれたことがないそうです。プライベートに干渉しすぎない夫婦だといい、しぶちょーさんは主婦業を積極的に手伝い、最近は土日の料理も作っていると話しました。
クリームパスタとイギリス生活。定時前に帰るイギリス人と、残業する日本人
しぶちょーさんの得意料理はクリームパスタです。半年間イギリスに出張し、会社の先輩や同期と一軒家で同居していたころ、後輩として先輩に作り続けるうちに得意になったといいます。
拠点はウスターソース発祥の地ウスターで、ロンドンまで一人旅をしたこともあったそうです。しぶちょーさんは、ネイティブの店員よりも英語が母国語でない店員のほうが話しやすかったと振り返ります。
かねりんさんに半年間で何が変わったかを聞かれ、しぶちょーさんは「働くのってあんまり偉くないんだなと思った」と答えます。2012年入社で、2015年ごろに渡英した当時は、残業こそが正義という感覚で働いていたそうです。
チャイムが鳴ってせきたって帰るんじゃなくて、チャイムが鳴った瞬間にはもう着替え終わっていて、もう会社を出るみたいなね。
しぶちょーさんによると、定時を過ぎるとオフィスは日本人だけが残る「日本の会社」になり、現地の人に笑われていたそうです。イギリス人は家族との時間を大切にし、休み時間も働いて早く帰り、裕福な人ほど田舎の広い家で暮らすといいます。
| 観点 | イギリス | 日本 |
|---|---|---|
| 退社 | 定時前に着替え終えて帰る | 残業を限界まで使う |
| 仕事の密度 | 休み時間も働いて早く終える | どうせ遅くまで働くからとダラダラしがち |
| 給与の仕組み | 年俸制で残業しても変わらない | 残業代が出る |
| 豊かさの形 | 田舎の広い家で家族と過ごす | 都会の土地が高く、お金持ちが住むイメージ |
で、日本に帰ったら、この働き方を俺もするんだと思ったけど、あの日本来て1週間でね、元の感覚に戻ったわ。
しぶちょーさんは、年俸制か残業代が出るかという仕組みが違う以上、イギリスの働き方だけを日本に持ち込んでも合わないと考えています。それでも、ワーカホリックすぎるのも良くないと感じ、仕事と生活のバランスが大事だと思うようになったそうです。
「家族は大事でしょ」が呪いになるとき
しぶちょーさんのバランス論に対し、かねりんさんはまったく違う感覚を示します。
いや、やりたいこと思いっきりやるのが人生でしょみたいな。
それぐらいで壊れるならもう壊れていいですみたいな感覚ですね。
しぶちょーさんは「行けるとこまで行けるかどうかも才能の1つ」と受け止めつつ、自分なりの一線を示しました。
話はさらに、かねりんさんの家族観へと進みます。かねりんさんは、「家族は大事でしょ」という言葉が当然の合意のように語られることに違和感があるといいます。
ある種呪いという側面があると思っているので、家族っていう血縁って。
かねりんさんによれば、親族というだけで付き合う時間や大切にすべきという圧力が人生に食い込みすぎるため、意図的に弾かないと自分の人生を守れない感覚があるそうです。ただ、大事な面と呪いの面の両方があり、その中で自分をどう保つかに葛藤していると話しています。
かねりんさんは、家庭環境が悪かったわけではなく、やりたいこともさせてもらえたと振り返ります。そのうえで、親から無言の圧力を浴びつつ硬い組織で半生を過ごし、結果的に弾けたのではないかと自己分析しました。しぶちょーさんは、家族に何かを強制された経験がないため環境による違いはあると認めつつ、「呪い」という言葉の意味はわかると応じています。
隣に住む父と、実家の「三点セット」
かねりんさんの父親は、名古屋魅力探検ラジオで取り上げた倉橋岳さんの父のように、あえて危険な場所に子どもを連れて行く育て方をする人ではありませんでした。2人はそうした例も挙げながら、親の愛情のかけ方はさまざまだと話します。そこからしぶちょーさんは、父親の心はよくわからないと打ち明けました。
しぶちょーさんの両親は離婚しており、小学校を超えたころから父親とは一緒に暮らしていないそうです。ただ、実家には母親が住み、再婚した父親がその隣の家に住むという珍しい状況だといいます。
帰ると、だから子供連れて帰るとさ、おばあちゃん、おじいちゃん、おじいちゃんの奥さんっていう、なんかその三点セットを子供に見せて、「あの人は誰なんだろう」みたいな感じになってるんだけど。
母親と父親の再婚相手は同時に呼べないため、しぶちょーさんはバランスを取りながら行き来しているそうです。父親はいろいろ支援してくれたものの、思春期に父親像がすっぽり抜けていると話しています。
かねりんさんは、父親の役割は物心がついてからのほうが重要で、そこで頑張るほうが「コスパがいい」と話します。これにしぶちょーさんは、幼少期に父親がサボると子どもへの影響は小さくても妻のヘイトがたまると、以前も話した「愛情曲線」の話を持ち出しました。最後は「夫が生成AIの活用をサポートすれば愛情曲線が高まるかもしれない」とお便りの話題に戻しています。
AIの電力消費は、本当に減らせないのか
4通目は、ポッドキャストのイベントで会ったというタカミさんからのお便りです。テーマはAIのエネルギー利用でした。
以前、有料版限定だったAIモデルが無料版でも使えるようになったり、有料版でも利用回数の制限が緩和されたりと、その度によりエネルギー消費の少ないAIの運用技術ができたのかなと思っていたんですが、最近AIのエネルギー問題について調査している人の話を聞く限りそうでもないようで。
AIが電気を食うなら発電所を買えばいいじゃない、AIが水を使うなら効率のいい冷却技術を探せばいいじゃないという取り組みもそこここで聞きますが、そうではなく、そもそもAI自体が使用するエネルギー消費を抑えようという方向の取り組みは全くないのかと疑問に思うところがあります。
ローカルLLM規模の小規模な言語モデルでもできることが増えてきた今、何でもかんでもパラメータ数の多いクラウドLLMで処理すれば完璧としてしまっていいのかどうか。もう少しタスクに合わせて小規模なモデルを使うことも考えていいのでは?
2人は「発電所を買えばいいじゃない」という言い回しに、マリー・アントワネットの「パンがなければケーキを」を重ねて笑います。しぶちょーさんは、その言葉は実際には言っていない説もあると補足しました。
大きいモデルで戦わない日本の戦略と、AIを小さくする技術
しぶちょーさんは、大きなモデルですべてのタスクをこなすのは効率が悪く、用途に合わせて調整した特化型モデルを使うほうが効率的だという話は以前から出ていると答えます。医療なら医療に特化したモデルを作るという方向は、日本の戦略でもあるといいます。
その理由について、しぶちょーさんは「勝てないから」という面もあると認めつつ、タスクを絞るならそのほうが効率的だからだと説明します。モデルが小さければハードウェアも小さく済み、電力やコストを抑え、外部のデータセンターにAPIでつながずにローカルで動かせるという利点があります。
さらにしぶちょーさんは、大きいモデルは内部の動きがわからないブラックボックスで、中の挙動を調べる研究は脳の活動を観察する生物学に似ていると紹介しました。そのぶん無駄もあり、それを減らす技術が進んでいるといいます。
医療など分野を絞った小さなモデルで、ローカルでも動かしやすくする
統括役が処理を振り分け、1回の実行で使うパラメータを総数より減らす
大きなモデルのエッセンスを取り出して、小さなモデルに移す
しぶちょーさんは、性能向上がすでに体感しにくくなっているとして、今後は「同じ性能を半分のパラメータで」という縮小の方向に進むのではないかと予想します。その例として挙げたのが、高性能なGPUを入手できない環境で小さなモデルを作ったとされるDeepSeek ── 中国のAI企業、またはそのAIモデル。低コストで高性能なモデルを公開して話題になり、開発手法をめぐる議論も起きましたです。
ただし、しぶちょーさんは最新の動向を追えているわけではないとして、このテーマは調べたうえで深掘り回で扱いたいと話しています。
AIより動画が電気を食う? 大量生成は「アート」なのか
しぶちょーさんは、AIの電力消費は増え続けているものの、以前話したとおり、データセンター全体でみれば10%ちょっとだと説明します。Netflixやショート動画のほうが多く使っているのではないか、という見方も示しました。
しぶちょーさんによれば、生成AIで作ったショート動画や、10万曲を機械的に作ってアップロードするような「数打ちゃ当たる」ビジネスも増えています。番組の切り抜き動画も、データセンターのリソースを使っていると話しました。
そこから話は、番組でたびたび出てくる「アート」の定義に移ります。かねりんさんは、何でも「アートと言ったもん勝ち」になるのは嫌だとし、自分たちの番組がなぜアートで、大量生成ビジネスがなぜアートではないのかを言語化したいと話しました。
そうじゃないとね、その無限生成AIばくちビジネスと一緒になっちゃうからね、俺らの番組。
かねりんさんは、複数の「おちつき」シリーズを横断することで知識が混ざり合う状態を「技術収斂」と表現します。言葉を思い出すまでの脱線も含めて、2人らしいやり取りが続きます。
しぶちょーさんは、かねりんさんを「行動のすべてが自己表現につながっているアーティスト」だと評します。これに対してかねりんさんは、ある速報回で聞いた「意味なんてねえから、いちいち意味とか考えんじゃねえよ」というアーティストの言葉に触れ、理屈は後付けでいいと思えて気が楽になったと話しました。その後、X運用とショート動画の出し方についての相談が続きます。
妻が育児の自動化を拒んだ理由は「愛着形成」だった
最後のお便りは、「なにわの虹のママ」マリさんからです。しぶちょーさんが、哺乳瓶を固定する治具を作りたかったが妻に止められたと話したエピソード86への感想が届きました。
赤ちゃんにミルクをあげる時間って、その時は大変に思えるのですが、あっという間に過ぎ去ってしまう宝物のような時間なんですね。しっかり抱っこして目を合わせて笑い合うあの瞬間は、赤ちゃんの心に一生ものの安心感を育てる愛着形成の大切なひとときで、子どもの成長にとってすごく大きな意味があるそうです。
奥さんが自動化を拒んだのは、楽をする罪悪感からではなく、子どもにとって何が最善かを真ん中に置いて考えられたからだと思いました。ママとしては大変な作業を一緒に耐えること以上に、子どもにとって大切な価値観をシェアして、一緒に親の目線を合わせてもらうことが一番嬉しかったりします。
マリさんのお便りは、先ほどの笹米さんとは反対の立場から、主婦とAIの関係にも触れていました。
私はママ、主婦こそAIの最高のパートナーと思っています。本当に大変なのは手を動かすこと以上に、ワンオペの中で今日のご飯どうしよう?から始まり、1日に何回も小さな選択を繰り返して脳みそがパンパンになっちゃうこと。私は夫の単身赴任中、AIにこの孤独な思考の整理を手伝ってもらって救われました。
マリさんは、宮崎真里さんの『AI×家事』を読んでヒントが多かったとして、しぶちょーさんに妻へのプレゼントを勧めています。
お便りを読んだしぶちょーさんは、「記憶がないから何をやっても同じ」ではないことを、男性はつい論理で考えてしまうと振り返ります。母親は妊娠した瞬間から母親になる一方、父親は生まれた後から始まるため、気持ちの助走がないまま環境が一変するという話にもなりました。しぶちょーさん自身は、生まれた瞬間から我が子という感覚があったそうです。
答え合わせ。AIは家事ではなく「選択」を減らすために使う
しぶちょーさんは、2つのお便りを比べて、マリさんの視点に可能性を感じたと話します。具体的な家事の作業にAIを使うのではなく、小さな選択の繰り返しで頭がいっぱいになることを避けるために、思考の整理や判断にAIを使うという考え方です。
濡れた手ではスマホすら触れない。主婦本人より、周りの人が主婦の作業を楽にするものを提供する形もある
大変なのは手を動かすより小さな選択の繰り返し。AIに思考の整理を手伝ってもらって救われた
しぶちょーさんが挙げた使い方は、壁打ちや優先順位づけです。家事がたまっているときに状況を伝え、何から手を付けるかを決めてもらえば、あとは体を動かすだけになるといいます。
しぶちょーさん自身も、決めることが面倒なため、朝はプロテイン、昼はゆで卵、夜は蒸し野菜やオートミールと、毎日ほぼ同じものを食べているそうです。土日に1週間分の料理をまとめて作って冷凍するなど、思考の回数を減らすことは大事だと話し、そこがAIが主婦の味方になれる部分だと結論づけました。
一方でかねりんさんは、仕事から人生まで「今日何すればいい?」とAIに聞いて従う未来には、少し違和感をにじませています。
主婦のつらさは作業量ではなく「孤独」なのか?
かねりんさんは、外で働く夫も同じくらい大変なのに、なぜ主婦の大変さばかりが語られるのか、という疑問を投げかけます。しぶちょーさんも以前、同じことを考えたことがあると応じ、自分なりの答えを語りました。
しぶちょーさんの考えでは、主婦のつらさはタスクの負荷より、社会的に認められにくいことにあります。社会での仕事も厳しいものの、頑張りが成果や成長、承認として返ってくる機会があります。
競争もあり厳しいが、頑張った分が報酬、成果、承認として返ってくる
表に出にくく、終わりなく繰り返し、やって当たり前で感謝も報酬もない
しぶちょーさんは、この状態が20年続けばおかしくなると話します。そのため、主婦業の問題の根っこには孤独感があると考えており、自分は「ありがとう」を意識して伝え、妻が1人になれる時間を作るようにしているそうです。かねりんさんは「めちゃくちゃいい夫」「優良物件」と持ち上げました。
孤独の解消にAIを使うことについて、しぶちょーさんは、マリさんのように夫が話を聞けないときには助けになると認めます。ただし、本来は時間を作ってでも夫が話を聞くほうがいいという考えです。
しぶちょーさんが強調したのは、話を聞くときに意見や対策を言わないことです。原因を探って改善策を考える「なぜなぜ分析」のような製造業のやり方は技術者が陥りがちで、求められているのは共感だといいます。2人は、表面上の相づちがうまいGPTの音声会話を見習うべきかもしれないと笑い合いました。
エンディング。1周年イベントと、新しい決め台詞探し
2時間を超えてお便りをだいぶ返せたところで、番組は締めに入ります。個別の具体的な相談や依頼は、公式ページのフォームから該当するカテゴリで送ってほしいとの案内がありました。
告知では、毎週火曜の速報回と深掘り回の週2回配信、月額980円のコミュニティ、10月3日昼過ぎに東京で開く1周年記念イベント、スポンサー募集が紹介されました。1か月、2か月、3か月、1回限定など、プランは相談に応じるそうです。
収録後には、終わりの決め台詞を作りたいという話が出ます。「おちつきスリープ」の「ぐっすりーぷ」や、名古屋魅力探検ラジオの「それじゃあよー、また会うみゃー」「ご無礼します」を参考に、「お茶どうぞ」「えいえい愛」などの案が出ました。100回ぐらいまで試しながら固めていく予定で、リスナーにも意見を募っています。
まとめ
今回の回では、主婦とAIをめぐる正反対のお便りを比べることで、AIは手が離せない作業そのものより、小さな選択の連続を肩代わりする場面で力を発揮しやすいという答えが見えてきました。一方で、育児の愛着形成や家族の孤独のように、AIではなく人がそばにいることが大切な領域もはっきり示されています。
- 小学校でのGemini導入は、先生のリテラシーやICT環境、机の広さといった「そもそも」の課題を抱えたまま進んでいる
- 学校は陳腐化しない知識を教える場所であり、賞味期限の短いAI活用をどう教えるかに多くの先生が悩んでいる
- AIの電力問題には、特化型モデル、MoE、知識蒸留など、モデルを小さく効率的にする方向の取り組みがある
- 主婦にとってのAIの価値は、家事の手作業より、優先順位づけや思考の整理で選択の負担を減らすことにある
- 育児の愛着形成や主婦の孤独には、自動化やAIより、パートナーが共感して話を聞くことが求められている





