プレゼン上手でも負ける? 前回の学びと「大失敗」の告白
前回のエピソードで高村さんはプレゼンの学びをシェアしていて、黒田さんにとっては「審査員とイメージを一致させることが目的」という話が目からウロコだったそうです。
(プレゼンは)みんながスタンディングオベーションするような感動を作らなあかんと思ってたんですけど、審査員とのイメージの一致をさせることが目的っていう話とか、目からウロコでした。
高村さんは、知り合いのスタンドアップコメディアン・善治郎善治郎さんの言葉を紹介します。日本人は読み書きは学ぶけれど、話す・聞くの授業がないので、海外に比べてそこが弱いという指摘です。
だから相手にも同じ映像が浮かぶよう努力することが、日本でのプレゼンのポイントなのだろう、と高村さんは考えています。
そうやって実践し、表彰もされてきた高村さんですが、最近「めちゃくちゃ挫折というか、大失敗」をしたと打ち明けます。
RISE関西の敗者復活枠で何が起きた?
高村さんが出たのは、ミキ堂山ミキ堂山さんたちが立ち上げた、関西から世界を盛り上げようというビジネスフォーラム「RISE関西RISE関西」のピッチコンテストです。エンタメもフィーチャーされていると聞き、関西でエンタメなら面白そうだとエントリーを考えました。
ところが締め切りはとっくに過ぎていて、残っていたのは、勝ち残れば1人だけ決勝に行ける敗者復活枠。高村さんは「これいったろ」とエンタメ全振りで申し込みます。
(結果は)負けて。で、理由としてはゴリゴリのディープテックが来たから、そっちが勝ったっていう。
このコンテストは、エンタメ要素は入っていても、ビジネスとして跳ねるかどうかが優先されるものでした。非営利型の社団法人で活動する高村さんとは、そもそもフィットしていなかった面もあったそうです。
「芯の部分がなかったよね」という指摘
大会後、副代表で「裏のボス」のような人が、エントリーした人向けに壁打ちやフィードバックの時間を設けてくれました。高村さんが話を聞きに行くと、一発目にこう言われます。
プランはプレゼン慣れしてるし、分かりやすかったしいいんだけど、芯の部分がなかったよねって言われて。
説明は丁寧で、仕組みもわかるし、社会課題も明確。そこは問題ないとしたうえで、何のために、なぜやりたいのか、どうなりたいのかが見えてこないと勝ち上がれない、という指摘でした。
他の人に言われたら「そういうプレゼンもありますよね」と斜めに受け取ったかもしれない、と高村さん。けれど現場を見てきてビジネスをバリバリやっている人だからこそ、審査員と同じレベルの視座でのフィードバックだと感じたそうです。
大衆向けのピッチが「この子に賭けたい」を遠ざけた?
その人は、審査員の立場から見ればプレゼンは理解できるけれど「この子に賭けたいと思わない」とも伝えました。これが高村さんに深く刺さった理由は、最近のピッチが観客側に向いていたからです。
決勝プレゼン行って、喋る時とかも基本観客側をケアしてる感じがあって。審査員も観客の一人みたいな感じで。
「面白いだろう、みんなでやろうぜ」という民主的なプレゼンは、失うものがあまりありません。終わったあとに声をかけてくれる人も、関わりたいと言ってくれる人もいます。
一方で審査員は「面白いですね」くらいで終わってしまい、「君のプランすごく良かったよ」と言われることが最近なかったそうです。
観客をケアし、わかりやすく民主的。共感や関わりの声は集まるが、審査員の評価は「面白いですね」止まり
なぜやるのか、その先に何があるのかという芯をぶつけ、審査員に「この子に賭けたい」と思わせる
高村さんが観客寄りにしていたのは、政治的に尖った表現が切り抜かれると危ないので、気を使っていたからでした。その意図自体はあるものの、勝ちに行くべき場面でも同じことをしていたと振り返ります。
それはなんかローリスクローリターンみたいな構図に自分から行ってたんだなと。
「政治や社会への不満をもっとぶつけてこい」という言葉に、高村さんはそれが必要なタイミングがあると納得し、解像度が上がった感覚だったと話しています。
実績が増えるほど「Why」が薄まるのはなぜ?
黒田さんは、合格点を取りに行く安全な道を選ぶと、HowやWhatばかりになり、Whyで突き動かす部分が薄まると受け止めます。
高村さんの団体は5年以上活動しています。実績がつき、計画が立ち、「この数に着地して、この売上になります」と話すようになると、淡々とした分かりやすいプレゼンになっていくそうです。
創業期
がむしゃらで、野心や魂があった
継続と安定
形になり、実績ベースで話すようになる
計画的な語り
数字や見通しを淡々と伝え、分かりやすいが野心が見えにくい
ギアの切り替え
大失敗をきっかけに、熱量をぶつける表現へ戻る
なんか一つの選挙啓発プロジェクトでしかない。そこじゃねえだろと。それをブレイクスルーするんだろうというところの魂を忘れてたというか。
黒田さんは、熱量を伝えられれば実績と熱量と実績の両輪が回って一番強いと応じます。高村さんにとって、熱量をどうぶつけるかは今の研究テーマで、乗り越えないと次の表現に行けないと感じているそうです。
熱量だけで優勝した黒田さんの初ピッチ
黒田さんは、屋敷タカジン屋敷タカジンさんの「タカジンフェロータカジンフェロー」に出て優勝した経験を語ります。初めてのピッチで数字はまったく話さず、熱量だけで勝負したそうです。
粗削りすぎるけど、熱量とか絶対僕はこれやりたいんでやるんだ、こんなおもろいことやりません?みたいな。もうそれだけで勝負したんですよ。
審査員の心が動き、「映像審査やったら落ちてるみたいな」現場でしか成り立たない熱量が伝わったのだろう、と黒田さんは振り返ります。
いま黒田さんは書類審査のピッチコンテストに申し込んでいます。紙だけで熱量を伝えるのは難しく、事業計画書を作るほど実績やWhat・Howに寄り、Whyを忘れそうになるといいます。
(事業計画書は)綺麗なんですけど、え?なんで君がしたいの?とか、その熱量の部分とか、めっちゃこいつ熱いやつやなみたいな思いをどうぶつけたらいいのかなっていうのを今気づかされました。
黒田さんは「優勝できそうな気がします」と宣言し、取れたら高村さんに焼肉を奢る約束まで飛び出しました。
無農薬野菜をどう並べるか、という泥臭さの演出
高村さんは、構成を作れる人ほど泥臭さを出すのが難しいと話し、無農薬野菜のたとえを持ち出します。
整ってれば整ってるほど、そこに泥に行く勇気ってめっちゃ大変やと思ってて。どう無農薬野菜を見せるかみたいなところですよね。
綺麗な棚に照明を当てて「無農薬です」と見せるのは違うし、地べたに置くのも違う。どうしたら輝くのか、そのバランスを今ブラッシュアップしているところだそうです。
黒田さんの「初心に帰ったんですよね」に、高村さんは「一周回った」と応じ、土しかない場所でイベントをやるような感覚も面白そうだと話しています。
ダンスもライブも、技術の先にある「まっすぐさ」
黒田さんはダンサーとして、ダンスもまったく同じだと話します。スキルが身につくほど上手くはなるけれど、まっすぐ入ってこなくなることがあるそうです。
この動きとかが下手くそなんですけど、音楽に純粋に乗ってる時の方が刺さったりするんですよ。
実際、黒田さんはダンスを始めて半年でダンスバトルに優勝しました。相手はダンス歴2年、3年、4年の人たちで、できることは少なくても、音がまっすぐ伝わって刺されば勝てたといいます。
ただ、それだけでは下手は下手。黒田さんは、技術がある上で熱量を出せたら最強で、だからこそ一周回ることが大事だと話します。
高村さんも、最近いいと思うのはシンプルに音楽を楽しみながらライブするアーティストだといいます。曲の完成度以上に、本人が楽しそうに弾いているのが溢れ出ている人です。
プレゼンに関してもおそらく同じで、この人ワクワクしながら喋ってるなとか、多分計画してないけど、なんか脱線してるけどそのままもう。
枠を作ったうえで「容量を空けておく」
高村さんは、チェックボックスを作って人にブラッシュアップしてもらう枠づくりも必要だとしたうえで、仕組み化ではない部分に今の感性を入れ込まないとプレゼンは面白くない、と話します。
黒田さんは「全国初でこれをやり遂げるんで、助けてください」と言うくらいの方が刺さるかもしれない、と考えます。
高村さんはSNS投稿にも重ね、無反応が予想できても、恐れずに呼びかけたいことをとことんやるべき場面があるといいます。
なんかがむしゃらになるとか、やりたいことをまっすぐにやってみるみたいな、容量をちょっと空けといた方がいいな。
黒田さんは、準備しても起きる想定外への対応こそが自分のイメージを超える部分だと応じ、芸人がアドリブで互いに笑ってしまう瞬間が好きだと話します。
それって枠を超えてるから、実際自分らも面白いなって思ってるっていうのは人にも伝わるじゃないですか。
何のために出るのか、いつかやりたいを手前に
黒田さんは、ピッチコンテストに出る目的を問い直します。なぜ優勝したいのか、応援してほしい場所や一緒にやりたい人がいるのか。ただ賞金を稼ぎに行くだけなら、ずれてくるだろうといいます。
高村さんは、いつかやってみたいを一回手前に持ってくる感覚で挑戦することが大事だと話します。ポッドキャストやフェス、イベント、スクールを続けつつ、突拍子もないけれど確実にやりたかったことを引き出してみたいそうです。
僕とハル君で新しいものが生まれる可能性があるし、自分だけで絶対生まれないものが、掛け合わせの数によって新しいものが生まれる可能性があるので。
日常の会話も全部プレゼン
黒田さんは最後に、プレゼンはプレゼン大会だけのものではないと話します。勉強やダンスを教えることも、不満や希望を伝えることも、すべてプレゼンだという考えです。
「結論から言う」がよく言われる一方で、結論を言わない方がいい滑らない話もあるように、場所や性格によって伝え方は違います。黒田さんは、小さな挑戦と大きな挑戦の両方を持てれば人生も楽しくなる、とまとめます。
高村さんは「プレゼンから壮大な話になりましたね」と笑い、黒田さんは前回からのポイントを日常会話でも試してみると話して、回を締めくくりました。
まとめ
プレゼン慣れした高村さんの大失敗は、分かりやすさや実績だけでは「この人に賭けたい」と思わせられないことを教えてくれました。整った構成の上に、なぜやるのかという熱量をどう乗せるか。ダンスやライブ、お笑いの話も交えながら、二人はその両立を探っています。
- RISE関西のピッチで負けた高村さんは、「芯の部分がなかった」と指摘された
- 観客向けの安全なプレゼンは、ローリスクローリターンになりやすい
- 実績が増えるほどWhat・Howに寄り、Whyの熱量が薄まりがち
- 技術や準備の上に、まっすぐな熱量や想定外を受け入れる余白を持つことが大事
- 自分の思いを相手に伝えることは、日常のすべてがプレゼンになる






