「手作りモンテ教具はゴミに」というお便りから
この回のきっかけは、3歳半の娘を育てながら2人目の出産を控えるリスナーからのお便りです。これから約1年の育休に入るにあたり、ばたこさんとヒヤマさんが実際にどんな知育をしてきたのかを聞きたい、という内容でした。
知育って具体的にどんなことされていますか?お二人の取り組みは体験格差の話で少し出ていましたが、0歳、1歳くらいだとおうちモンテ、早期ほにゃららなどがXではよく取り上げられているかと思います。1人目は手作りしたモンテ教具はゴミと化し、子供にもはまらなかったなという苦い思い出が。お二人の経験談やお考えをお聞きしたいです。
お便りの苦い思い出は0〜1歳の話です。そこで2人は、3歳くらいまでをイメージしながら、乳幼児期の知育について話していくことにします。
そもそも知育って何?モンテッソーリとシュタイナーの違い
ヒヤマさんは話の冒頭で、冷静に考えると知育が何なのかよくわからない、と率直に切り出します。ばたこさんは、体育に対しての知育、つまり知的能力を育むことだと言葉どおりに受け止めつつ、0〜3歳の幼児教育の文脈でよく聞く言葉だと話します。
ばたこさんにとって、知育のわかりやすいキーワードの一つがモンテッソーリ ── イタリアの医師マリア・モンテッソーリが考案した教育法。子どもの自発的な活動を重んじ、整えた環境と教具を通じて自立を促すのが特徴ですです。実際に何冊か本を読み、子どもへの向き合い方の参考にしてきたといいます。
ばたこさんが挙げたのは、モンテッソーリ教師あきえさんの『モンテッソーリ教育が教えてくれた「信じる」子育て』と、島村華子さんの『自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方』の2冊です。どちらも、親が子どもとどう対峙するかという姿勢が書かれている点が参考になったそうです。
子供を大人が動かす、何かをしなさいって言ってやらすというよりかは、子供自身がこう伸びる力をどうサポートしてあげるかみたいなところ(が学びだと)認識しています。
ばたこさんは、モンテッソーリの知育はIQを伸ばすことそのものより、その下地になる子どもの土台を一緒に作ることと結びついている、と捉えています。
ヒヤマさんが「同じぐらい耳にする」と挙げたのがシュタイナー ── オーストリアの思想家ルドルフ・シュタイナーの思想に基づく教育法。芸術や季節のリズムを大切にし、発達段階に応じた教育を重視しますです。ばたこさんは独自の解釈だと前置きしたうえで、2つの違いを説明します。
子どもが自立するためにどうサポートするか。のびのびと任せ、口出しをしない
素地は同じだが、「ならぬものはならぬ」と言い切る。くどくど説明せず、ダメなことは短くダメと伝える
一方でヒヤマさんの家庭では、こうした教育法をほぼ意識していなかったそうです。理系だったこともあり、数学的・論理的な思考に効きそうな遊びやおもちゃを、自分も一緒に楽しめるからという理由で選びがちだといいます。
単純に一緒に遊ぶの楽しそうやから選んでるぐらいなんで、どっちかっていうと俺が知育されてるかもしれない。
ばたこさんは、何のおもちゃを買ったかより、どう遊び、どう体を使い、どんな環境を用意したかのほうが大事ではないか、と話の方向を定めます。
子どもが急に何かにハマる「敏感期」とは
ばたこさんが子育ての初期に知って役立ったのが、モンテッソーリの考え方の一つである「敏感期」です。年齢や発達段階によって、特定のものや動きに強く惹かれる時期がある、という考え方です。
ばたこさんが挙げる例はとても身近です。0〜1歳でティッシュを延々と出し続ける、物をひたすら並べる、1〜2歳で「これはこう並べないと嫌だ」とこだわる、もう少し大きくなると看板の文字や数字を延々と読む、といった姿です。
うちもなんか長女が延々とこう、(車に乗っている時に)ナンバープレート人の読んでる時とか。
ばたこさんによれば、物を並べるこだわりは「秩序の敏感期」にあたり、イヤイヤ期もここに入るのではないかとのこと。ヒヤマさんは「秩序立ってないから嫌だとかそういう話?」と、腑に落ちた様子です。
敏感期にはおおよその時期が定められていますが、個体差があるのでずれることもあります。ばたこさんは、敏感期そのものより、そういうものがあると知っておくことに意味があると話します。
気づく
「最近やたら数に興味があるな」と子どもの様子に目が留まる
見立てる
「敏感期に入ったかも」とアンテナが立つ
用意する
興味に合わせたおもちゃを渡す、会話で問いかける、環境を整える
親が起点に入れるよりは、子供のその敏感期とか、子供のその関心を踏まえて、適切なテーマというか、グラウンドを用意してあげるのが大事ってことだよね。
そして、個人差がある以上、最後は「観察」に戻ってきます。ヒヤマさんは「絶対観察出てくるのよな」と、番組でおなじみになった結論に笑います。
塗り絵が字を上手にする?好きな遊びは姉妹でも違う
旬の時期に何を提供するのかと聞かれたばたこさんは、知育といっても書く練習ではなく、工作やごっこ遊び、塗り絵など「遊ぶこと」をとても大事にしてきたと答えます。
3歳の次女が塗り絵に興味を示したので、たくさんやらせているそうです。ばたこさんによると、塗り絵は手首が柔らかくなり筆圧も強くなるので、字を書くのが上手になるといいます。
筆圧濃くないと上手に字書けないんだよ。塗り絵はめちゃくちゃ効果的です。
ほかにも積み木やボードゲーム、マグネットで立体を組み立てるピタゴラスなどを取り入れてきました。ただし、ばたこさんは「これが伸びるからこの遊びをやらせよう」と考えたわけではないと強調します。
ばたこさん家の定番は、少し興味がありそうなら小さいものを買ってみて、ハマったら広げるというやり方です。期待して買ったのに結局使わない、ということがよくあるからです。
知育として効いているかの答え合わせは、ばたこさんいわく「できない」。長女は2歳半で50ピースのパズルを余裕でこなしていましたが、同じ家にいる次女はパズルにまったく興味を示しませんでした。
家にいっぱいあるパズルほとんど埋もれてるんだよね。やっぱ個体差は大きいです。
次女はストーリー性のあるごっこ遊びが好きで、シルバニアのお人形遊びの中でお金を出して一緒に計算する、といった入り口を試しているそうです。ヒヤマさんの家はごっこ遊びはほとんどなく、ジェンガや、テレビのピタゴラスイッチを見て自作の装置を作るなど組み立て系が多いといいます。
興味を「広げる」か「深める」か
ばたこさんは、本人の興味を拾うことがとても重要だと話します。工作が好きなら材料を増やし、興味のある図鑑を置き、国旗の本を買う。少しでも入り口があればすかさず置いておく、というやり方です。
ヒヤマさんは、恐竜にハマっている長男を例に、興味の一歩目からの広げ方には2つの方向がありそうだと整理します。
恐竜の神経衰弱から、次は英単語の神経衰弱へと、遊びの形を軸に横へ広げる
ひたすら恐竜をマニアックに掘っていく
ばたこさんは「深まるものは勝手に深まっていかない?」と問いますが、ヒヤマさんはそれも個体差だと返します。長男は図鑑をひたすらめくるタイプではないそうです。
ばたこさんの長女は、ハマると掘り続けるタイプです。ポケモンにハマった時は、ずっとポケモン図鑑を読んでいて、そのおかげでカタカナの読み書きがとても上手になったといいます。
0〜2歳は「体を作る」が知育になる
10か月の次男を育てるヒヤマさんが、興味の濃淡がまだ見えない0〜2歳では何を意識したかと聞くと、ばたこさんの答えは「ひたすら体を作ってました」でした。
ばたこさんは、3歳までに脳がぐんと大きくなるのは体からの影響が大きいと考えています。そこで紹介したのが、文部科学省の幼児期運動指針 ── 文部科学省が2012年に策定した、幼児期の運動のあり方を示す指針。毎日合計60分以上体を動かすことなどを目安として示していますです。
ばたこさんによると、この指針は立つ、座る、寝転ぶ、ぶら下がる、走る、跳ぶ、避けるといった36の動きを定義していて、満遍なくやることが脳の発達にも結びついている、という内容です。どんな動きをしたらよいかのガイドブックも、文科省のサイトで見られるそうです。
ヒヤマさんは、長男が5歳ごろに投げる・蹴るに関心を持ち始めた経験と重ねます。投げる・蹴るは全身をつなげる回転運動なので、その手前に0〜2歳の立つ・座るといった連動があるのだろう、と納得した様子です。
乳児期についてばたこさんが強調するのは「エンドレスハイハイ」です。立ち始めてからも、家の中で「よーいドン」と手押し車をやっていたといいます。ハイハイは体幹に効くと言われていて、ばたこさんは小学校で座っていられない子が多いという話にも触れます。
ヒヤマさんの家では、裸足で過ごすことや、子どもと一緒にやる青竹踏みを取り入れています。親指の力でバランスを保つので、神経の発達に良さそうだと考えているそうです。
子供なんて体動かしてなんぼやと思う。
なぜリビングの一等地に雲梯を置いたのか
ばたこさんの家のリビングには、大きな雲梯があります。きっかけは、長女がブランコ以外は公園で遊ばないインドア派で、「公園行く?」と誘っても「行かなーい」と返ってくることでした。
家にでかい遊具があったらやるんちゃうかと思って。ってか何よりね、体幹つけさせたかったんですよ。
ばたこさんがこだわったのは置き場所です。2階の空き部屋も考えたものの、それではわざわざやりに行かないと考え、リビングのテーブルの真横に置きました。物を置かない家を目指して建てたのに「そんなの程遠かった」と笑います。
効果はてきめんでした。「ご飯だよ」と声をかけると雲梯をやってから席に着き、果物を切る1〜2分の間に、雲梯についたブランコで遊んでいるそうです。
ヒヤマさんも2〜3歳の頃、ジャングルジムとブランコと滑り台が一体になった遊具を、邪魔だと思いつつ置いたといいます。2人がたどり着いたのは、知育も体育も、子どもの視界に入る導線が大事ということでした。
雲梯と登り棒のおかげで握力がついた、とばたこさんは話します。長女は今2Bの鉛筆を毎日4〜5本持っていくのに、ほぼ全部がすり減って帰ってくるほど筆圧が強く、ずっと字を書いていてもつらくないそうです。
ヒヤマさんの家ではソファーで飛び跳ねるのを許していて、毎朝ピタゴラスイッチを見ながら跳ねているとのこと。ばたこさんはソファーがくたくたになるのが嫌でトランポリンを買い、リビングには雲梯、登り棒、鉄棒、トランポリンまで揃っています。
総合運動公園が家の中に。
ヒヤマさんの言葉はセクション冒頭の時刻とずれますが、2人はこの話を「日常の中に溶け込んでいるのが効いている」とまとめます。
体幹へのこだわりと、発達の本が教えてくれること
ばたこさんが体幹にここまでこだわるのは、自分自身のコンプレックスだったからです。子どもの頃はふにゃふにゃしていて、スポーツを始めてからだいぶ体幹がついたといいます。
ばたこさんは、知育の話から体の話へ逸れたようで、実はつながっていると考えています。手指を使う微細運動 ── 指先など小さな筋肉を使う細かな動き。つまむ、ひもを通す、ボタンをとめるなどが代表例ですと、全身を使う粗大運動の両方をやることが、IQにも結びつくだろうという見立てです。
ここで話題に上がったのが、2人とも読んでいる『発達がわかれば子どもが見える』です。ばたこさんは2020年発行の版、ヒヤマさんは2009年の初版を持っていて、思わず版の違いに盛り上がります。
やっぱり知育ってほぼ、特に0歳児に関しては体を動かすこととイコールなんよね。
ヒヤマさんが次男に合わせて10か月の項目を見ると、手指と目の協応や模倣について書かれていて、左右の手に積み木を持って打ち合わせる動きが紹介されています。ばたこさんは、パチパチと手を叩くと子どもがまねするのも模倣だと、かわいい場面を思い出します。
お便りへの答えは3つ、2人目は上の子の轍を通る
改めてお便りへの答えを聞かれたばたこさんは、なんとか式の理念に沿ったわけでも、代表的なおもちゃがあるわけでもないと断ったうえで、3つに整理します。
ヒヤマさんは、これが感覚統合の話に近く、体を動かして脳とうまくつなげることがベースになりそうだと受け止めます。ばたこさんは感覚統合のために延々とブランコをやらせていたそうで、ブランコは三半規管が鍛えられ、乗り物に酔いにくくなると話します。
(うちは)最近車酔いを訴え出すことが増えたから、ブランコ不足やったかもしれない。
ヒヤマさんは、どこに効かせたいかで内容を変える筋トレのように戦略的にできれば理想だとしつつ、結局は子どもの興味ありきだと話します。ばたこさんも、今この子が何にハマっているかに寄り添うのが先だと同意します。
2人目の0歳児に向けたアドバイスを求められたばたこさんは、正直あまり記憶がないと打ち明けます。上の子がいると1対1で向き合う時間が少なく、次女の模倣先は親ではなくお姉ちゃんだったからです。
お姉ちゃんがこれやってるから私やるがめっちゃ多くて。
ヒヤマさんは、試行錯誤というテーマに重ねて、興味の矛先を見極め、伸ばし、親が必要だと思うものへつなげることを繰り返してきたのだと総括します。上の子の1歳のクリスマスにあげたミニキッチンを、今は下の子のほうが使っているという話も出て、おもちゃを取っておく大切さにも触れます。
増え続けるおもちゃは一軍・二軍・三軍で回す
お便りにはもう1つ質問がありました。知育をするとおもちゃが増え、きょうだいの分でさらに散らかるという悩みです。
相談の要旨: おもちゃが多すぎる場合、子どもがいる中でどうやって部屋を整えているのか、ばたこさんの工夫を知りたい。
ばたこさんは「全然参考にならない話」と前置きしつつ、おもちゃを一軍と二軍に分ける方法を紹介します。入れ替えの采配をするのは、ヒヤマさんいわく「監督」のばたこさんです。
| 区分 | 置き場所 | 扱い |
|---|---|---|
| 一軍 | 1階リビングの遊び場 | 普段はこれで遊ぶ |
| 二軍 | 2階など見えない場所 | 興味が出たら出してくる |
| 三軍 | 二軍よりさらに奥 | 1年使わなければ売る |
最近お人形遊びが好きだなと思えば2階のシルバニアを出し、電車を使っていなければプラレールを上に上げる、という具合です。ヒヤマさんも、昔ハマったのに視界にないだけで遊んでいないものがあると共感し、自宅のバランスストーンがまさにそうだと話します。
片付けは、大きな箱にとりあえず入れて棚にしまうスタイルです。モンテッソーリのおしゃれに整えた棚には憧れつつも、ばたこさんは「我が家は無理」と、効率を優先しています。
子どもが作ってきたぐちゃっとした折り紙などは、見えない上の箱に入れ、1週間何も言われなければ処分するそうです。3日後くらいに「あれどこ行った?」と聞かれてドキッとすることもあるので、1週間の猶予が効いているようです。
ヒヤマさんは、子どもの関心を整えるという意味で物の整理にも意味があり、だからモンテッソーリにも棚のアプローチがあるのだろう、と話を結びます。
まとめ
特別な教育法やおすすめのおもちゃより、子どもの興味を観察し、体を動かし、目に入る場所に環境を置く。そんな日常の積み重ねが、2人の家庭の知育でした。
- 敏感期という考え方を知っておくと、子どもの今の興味に気づき、合わせた物や問いかけを用意しやすくなる
- 好きな遊びは姉妹でも違うので、小さく試してハマったら広げるのが無駄が少ない
- 0〜2歳はハイハイや全身の動きなど、体を作ることがそのまま知育につながると2人は考えている
- 雲梯をリビングの一等地に置いたように、視界に入る導線が遊びを日常に溶け込ませる
- おもちゃは一軍・二軍・三軍に分け、興味を見ながら入れ替えると、散らかりにくく遊びも続く





