ばたこ家の「二階建て」絵本タイムとは?
この回のテーマは「読み聞かせ」です。ヒヤマさんは、加藤映子さんの著書『ハーバードで学んだ最高の読み聞かせ』を読みながら、なんとなく続けてきた読み聞かせを見直したいと話を切り出します。
料理でいうと、とりあえずめんつゆ入れたらうまくなるみたいな、それぐらいの解像度で(読み聞かせを)やってる感覚あって。
ばたこさんもこの本を、長女の読み聞かせを始めたころの3年ほど前に読んだそうです。ばたこさんの家では、お風呂のあとから寝るまでの10〜15分ほどが、毎日の絵本タイムになっています。
ばたこさんの家の絵本タイムは2回に分かれています。まず家族全員が同じ部屋に集まって読み、歯磨きのあとに姉妹がそれぞれの部屋に分かれて、親と1対1で読む時間があります。
1対1の時間は、姉妹に邪魔されずに本当に読みたい本を楽しめる特別な時間です。一方で全員で読む時間には、次女が持ってきた絵本を長女が横で聞いていたり、長女が次女に読んであげたりすることもあるそうです。
2回に分けた理由のひとつは、姉妹で眠くなるタイミングが違うこと。それでも最初はみんなで一緒にいたい、という気持ちにも応えられる形になっています。ヒヤマさんはこれを「二階建ての読書術」と呼んで面白がっていました。
ヒヤマさんの家も、寝る前の読み聞かせがメインです。狙いは睡眠導入で、そのうえで語彙や想像力、親子のコミュニケーションにも良さそう、という漠然としたイメージで続けてきたといいます。
読み聞かせは「学習」か「コミュニケーション」か
ヒヤマさんが調べた範囲では、読み聞かせがいちばん効くのは語彙力や言語発達、つまり話す力と聞く力でした。加えて、前後の文脈をつかんで話をストーリーとして理解する力や、親子のつながりにも効果があるとされています。
ヒヤマさんは、コミュニケーションを重視するのか、理解力や語彙を伸ばしたいのかによって、読み聞かせの読み方も微妙に変わりそうだと気づいたそうです。
ばたこさんがここに付け加えたのが「本を好きになること」です。ばたこさんは子どものころ図書委員をやり、図書カードをクラスでいちばん書くほどの本の虫だったといいます。
すごいその読書体験が自分の中でめちゃくちゃあったので、本好きになってほしいなと思うし、読書は楽しいものであるというのを一緒に体験するみたいな(ことが重要)。
ばたこさんの家は本がたくさんある家ではなく、学校の図書館や市民図書館に通って本を読んでいたそうです。知識を読み込む力は一生続くものだから、という考えが根っこにあります。
ヒヤマさんによると、この本の前半では日本とアメリカで読み聞かせの位置づけが違うことが紹介されています。日本では親子のふれあいの時間という意味合いが強く、アメリカでは問いかけを通じて言葉を引き出す学習の場という意味合いが強いそうです。
本で紹介されている調査では、読み聞かせに語彙の獲得を期待する親の割合に大きな差があったといいます。
なぜこんな違いが出るのか、とばたこさんが尋ねると、ヒヤマさんは文字と音の対応関係の違いを挙げました。ひらがなの「あ」は必ず「あ」と読むのに対し、アルファベットのAには複数の発音があるため、英語では語彙を獲得しないと読めるようにならず、その手段として読み聞かせが有効だったそうです。
ばたこさんは、英語を家庭で学ぶおうち英語 ── 親が家庭の中で子どもに英語を身につけさせる取り組みの通称。英語の絵本や動画、語りかけなどを日常に取り入れる方法がよく知られていますの界隈でも、英語の本をたくさん読ませる「多読」がよく言われると話し、つながりを感じていました。
読み聞かせ中に質問はしたほうがいい?
ヒヤマさんが紹介したアメリカ型の読み聞かせのもうひとつの特徴は、読んでいる途中や読んだあとに質問をして対話することです。「どう思った?」「なんでそう思った?」と意見を求める質問をよくするそうです。
ヒヤマさんは、自分の読み聞かせが一方向的で、子どもが静かに話に集中し、想像の世界を邪魔しないことを重視していたと振り返ります。同じ本でも、対話型にすると得られるものが変わるのでは、と考えたそうです。
ばたこさんは、この「質問するか・しないか」について、正反対の2つの考え方に触れてきたといいます。
ひとつは小学校受験のときに先生から言われた方法です。『おむすびころりん』で悪いおじいさんには小判が出なかったのはどういうことだと思う?と、答えがなくてもいいから考えを持たせるために「聞け」と言われたそうです。
もうひとつはシュタイナー教育 ── オーストリアの思想家ルドルフ・シュタイナーが提唱した教育法。子どもの発達段階に合わせ、芸術や想像力を重んじることで知られていますの考え方で、こちらは逆に「聞くな」だったといいます。
(子どもには)ちゃんと考えはある。で、それを反芻させることが重要であって、無理に言語化させる必要ない。
「聞け」。答えがなくても、考えを持たせるために問いかける
「聞くな」。子どもの中で反芻させればよく、親が説明する必要もない
ばたこさん自身は、入り口は本を好きになってもらうことと考えて噛み砕いて読みつつ、最終的には語彙の獲得を重視して、難しい言葉が出てくる絵本をあえて選んでいるそうです。
ばたこさんの家の子どもたちはもともとよく喋るタイプで、対話は意識しなくても自然に起きていたといいます。この日も3歳の次女と『あかちゃんのうまれたひ』を読んでいると、次女が自分から質問を口にしたそうです。
「これお誕生日いつなのかな」とかさ。それぐらいだけどな。「おじいちゃんなんで一緒に病院行かなかったんだろう」とか。
対話型の読み聞かせ「PEER」の4ステップ
ばたこさんの家のような子どもと対話する読み方は、本の中でダイアロジック・リーディング ── 対話型読み聞かせ。親が一方的に読むのではなく、問いかけや応答を通じて子どもの発話を引き出す読み方ですとして紹介されています。子どもの発話の機会を増やし、聞かせ続けない読み聞かせです。
本で紹介されているのが「PEER(ピア)」という方法で、4つの頭文字からできています。
ばたこさんは、問いかけは子どもから勝手に出てくるのであまり意識していないものの、受け止めて広げるのはよくやるといいます。「なんで病院におじいちゃんいなかったんだろうね。じゃあ誰がいたと思う?」という返し方がその例です。
ヒヤマさんの家の5歳の息子は、逆に黙って集中して聞くタイプです。質問で集中を遮りそうで控えていましたが、20話ほど入った昔話集の、話のあとのクイズがきっかけで変化があったそうです。
一陣終わって、「じゃあここからクイズです」みたいな感じにすると、向こうも積極的に聞くから。
いまではクイズのない本でもヒヤマさんが自分でクイズを作り、そのあとに「面白かった?何が面白かった?」と感想も聞くようになったといいます。
語彙については、ばたこさんは難しい言葉が出たときに意味を聞くそうです。この日も長女と『おしり探偵』を読んでいて、「しわがれた声ってどういう声でしょうか?」と問いかけたといいます。
何度も読む絵本では、最初は難しい言葉を言い換えて読み、回を重ねるごとに元の言葉に近づけていくのも効果的だったそうです。一方ヒヤマさんの家では、原文に忠実に読む妻と比べられて、言い換えると息子に「そんなこと言ってないよ」と指摘されるとか。ばたこさんも、時間がなくて1行飛ばしたらバレたと笑っていました。
「読み聞かせ」という言葉はミスリード?昼と夜の読み分け
ヒヤマさんが本を読んで考えたのは、成長とともに読書の主導権を親から子どもへ移していくことです。
読み聞かせっていうワード、実は良くない、良くないというかミスリードやなと思うよね。
0〜2歳のころは「聞かせる」性質が強くても、だんだん対話が増えていくので、会話の要素をもっと入れたほうがいいとヒヤマさんは話します。ちなみにばたこさんの家では、夜の時間を「絵本タイム」と呼んでいて、読み聞かせとはあまり言わないそうです。
ただしヒヤマさんには悩みもあります。夜に会話を盛り上げると目が冴えてしまうので、昼と夜では読み方を変えたほうがいいのでは、という点です。
恐竜トリケラトプスのシリーズの戦闘シーンも、敵キャラを演じて臨場感たっぷりに読む
テンションが上がらないよう、抑揚を抑えめにして穏やかに読み終える
ばたこさんの家では、仕掛け絵本のような遊び系の絵本は寝室に持ち込まないようにしているそうです。最初の線引きは親がして、子どもが持っていきたがればたまに許す程度だといいます。とはいえ、好きな絵本を読んで満足して眠ってもらうのがいちばん、とも話していました。
3歳・5歳・0歳で読み方はどう変わる?
話は、子どもの年齢による読み方の違いに移ります。6歳の長女は読み聞かせを聞きながら、自分でも文字を追っているそうです。
3歳の次女に対してばたこさんが意識しているのは、登場人物ごとに声色を変えることです。「おばあちゃんが言いました」と読むより、おばあちゃんらしい声を出したほうが想像しやすいから、という理由です。
ヒヤマさんの家の0歳の次男には、日中に読むことが多く、読み手のテンションも高め。『もいもい』や『だるまさん』のように、視覚と聴覚で楽しませることに主眼があるといいます。
| 年齢 | 子どもの様子 | 親の読み方 |
|---|---|---|
| 0歳 | 絵と音で楽しむ | 日中に、テンション高めで楽しませる |
| 3歳 | 登場人物の気持ちに反応する | 登場人物ごとに声色を変える |
| 5〜6歳 | 話の世界に浸る・文字を自分で追う | 対話やクイズを取り入れる |
ヒヤマさんは、本の方法をそのまま当てはめるのではなく、子どもの発達や興味を観察しながら読み方を合わせるのが大事だと話します。そのうえで、5歳の息子には対話を意識した読み方が合いそうだと感じているそうです。
ただ、ヒヤマさんの息子は感想を言うのがまだ得意ではなく、「パパはどう思った?」と聞き返してくることも多いとか。ばたこさんは、それも学んでいる途中なのだろうと受け止めていました。質問攻めにはせず、ほどほどにするのが良さそうだと2人の意見は一致しています。
絵本は買う派?借りる派?繰り返し読む意味
ばたこさんは絵本を基本的に買う派で、同じ本を何度も読むことを大事にしています。
何回も何回も読むことでちゃんと自分の中に入っていくから、それの語彙を学習するもそうだし、その感情を理解する、物語の奥行きを知るみたいなところが(ある)。
本の選び方としては、以前は年齢別に分かれたくもんの推薦図書をひたすら買っていたそうです。また『ぐりとぐら』のように気に入ったものがあればシリーズで揃えます。登場人物を知っていると、子どもも物語に入りやすいからです。
ヒヤマさんの家にも『クレヨンのくろくん』がたくさんあるそうですが、中身が見えない本屋で買ったら、シリーズの中の「自由にお絵描きしましょう」というタイプで、寝る前に開いて驚いたというエピソードも飛び出しました。
一方のヒヤマさんは、図書館で借りることが多い派です。選ぶ楽しさや出会いを通じて、知的好奇心を持って良かった・悪かったを経験してほしいという狙いがあり、気に入ったものがあれば買うそうです。本屋では2人の家庭とも、子ども自身に選ばせているといいます。
何年後かに読むと、絵本の見え方が変わる
絵本を手元にストックしておく良さは、何年か経って読み返したときの変化に気づけることです。ばたこさんは最近、次女のために『11ぴきのねこ』を買い、長女と一緒に読み直したそうです。
長女は「大きな魚が貝を枕にしてるやつでしょ?」と意外な細部を覚えていた一方、ねこたちが魚を食べてしまい家まで持ち帰れなかったというオチには、改めて「そういう話だったんだね」と反応したといいます。
ヒヤマさんの家では『忠犬ハチ公』で、息子の受け取り方の変化を感じたそうです。
犬と暮らす、ワンワンのお話として楽しんでいた
飼い主の先生が亡くなる場面で「かわいそうだね」と泣き、登場人物の気持ちに寄り添うようになった
ヒヤマさんは息子の成長に思わず興奮してしまい、「すげえな」と褒めかけたものの、違うと思い直して「悲しかったよね」と寄り添ったそうです。
同じシリーズばかり読むのが悩み、というヒヤマさんに対して、ばたこさんは「とことん深掘りでいい」と答えます。1冊を50回ほど読めばたいてい飽きるので、そのタイミングで「お化け好きだったじゃん」と好みに合いそうな本を差し込むそうです。
何度も読んでくたびれた絵本には味がある、という話でも盛り上がりました。ばたこさんの家の『はらぺこあおむし』はビリビリで、テープに日付を書いて補修していたため、次女に読むときにとても懐かしかったといいます。ヒヤマさんの家の『ころりんぽい』は、長男が遊びすぎて飴のパーツがひとつも残っていなかったそうです。
読み聞かせをどう習慣にする?2つの家庭の仕組み
ヒヤマさんによると、本には一度に長く読むより、毎日少しずつ読むほうがよいと書かれているそうです。そこで最後は、読み聞かせを習慣にするための工夫を2人で紹介し合います。
ばたこさんの家の「全員で読む時間」と「1対1の時間」の二部制は、意図して作ったというより運用の中で自然にそうなったものです。次女が保育園で昼寝をするようになって寝つきが遅くなり、部屋に分かれたあとの時間が長くなったといいます。
全員で読む本は持ってきた順の先着順で、次女にまだ選ぶ意思がなかったころは長女が選び、次女に読んであげていたそうです。上の子が下の子に読み聞かせするのは、いろんな意味で効果がありそうだと2人とも話していました。
ばたこさんの家は時間制で、Alexaのタイマーで区切っています。眠くない長女は横でばたこさんも本を読みながら、自分で続きを読むこともあるそうです。
ヒヤマさんの家は冊数制で、寝室に入る時刻によって読める冊数が決まります。たとえば5時半に寝室に入れば4冊、1冊はだいたい5分ちょっとで読み終わるそうです。
全員で読んだあと、部屋に分かれて1対1でも読む。Alexaのタイマーで時間を区切る
寝室に早く入るほど多く読める。5時半に入れば4冊
ヒヤマさんの家では、たくさん読みたい息子が歯磨きやトイレをてきぱき済ませるようになり、早く寝室に入って本を読み、少し話して寝るというリズムが定着したそうです。ばたこさんの家でも、絵本タイムがなくなるのを嫌がって子どもたちがやることを早く済ませるといいます。
ばたこさんの次女と長女は、同じ本を読んでも反応するポイントが違うそうです。長女は事実について「ここ違ったね」とコメントし、次女は「この子どう思ったのかな」と人の感情についてコメントするといいます。
あ、だからこの子はこういうところに気づくんだなっていう観察が私の中に蓄積されていっております。
寝る前以外の時間に、どう本を手に取らせる?
最後にばたこさんが挙げた悩みは、寝る前しか絵本を読まない今の形から、子どもが暇な時間に自分で本を読む習慣へどう移るか、ということです。ヒヤマさんもまさに同じことを相談したかったと応じます。
ヒヤマさんは、子どもが本好きになるには親が本を読む姿も大事だと考えています。ただ、子どもが起きている時間に親が本を読む余裕はほとんどありません。だからこそ、子どもが自分で本を楽しめるようになる方法を知りたいと話していました。
ヒヤマさんが次に試したいのは、対話を中心にした読み方を深めることです。夜は目が冴えてしまうので、土日の昼か平日の朝に、もうひと枠の読書タイムを作りたいといいます。
ばたこさんも、買ってきたその日だけはその場で読むことに触れ、いろんな場所に絵本を置いておくことが大事かもしれないと話します。ヒヤマさんも、大人も身近に本があれば手に取るように、本へのアクセスを大事にしたいと応じました。
次回は、未就学児から一歩進んで、子どもが自分で本を読むようになる時期や、大人の読書についても深掘りする予定だそうです。
まとめ
読み聞かせは、なんとなく良さそうだから続けるものから、目的に合わせて磨けるものへ変えられそうです。対話や繰り返し、昼と夜の読み分けを取り入れつつ、子どもの様子を観察しながら主導権を少しずつ渡していくのが、2つの家庭に共通する考え方でした。
- 日本では読み聞かせはふれあい、アメリカでは言語学習の場と捉えられる傾向があり、語彙獲得を期待する親は88%対46%と差がある
- 対話型の読み聞かせ「PEER」は、問いかけ・受け止め・拡張・反復の4ステップで子どもの発話を引き出す
- 年齢や時間帯、子どもの性格によって合う読み方は違い、質問はほどほどがよさそう
- 同じ絵本を何度も、何年も読むことで、語彙や物語の奥行き、子どもの成長が見えてくる
- 時間制や冊数制など、寝る前の仕組みに組み込むと習慣になりやすく、次の課題は日中の読書







