キャンプは「自然体験」と「没頭体験」の塊?
今回のテーマはキャンプです。体験の話、旅の話に続く体験シリーズ第3弾で、収録は8月31日、夏の終わりに行われました。
ヒヤマさんの出発点は、キャンプって大人も子供も楽しめる最高体験の一つなんじゃないかという仮説です。これをばたこさんに承認してもらいたい、という構成で話が進みます。
これまでの体験の話を聞くと、やっぱキャンプって大人も子供も楽しめる最高体験の一つなんじゃないかと思って。
ヒヤマさんの主張はふたつあります。ひとつめは、キャンプが自然の中でおこなう体験だという点です。日常からは得られない五感への刺激があると話します。
川のせせらぎや鳥のさえずりといった音、いろんな種類の緑、夜の焚き火など、キャンプは視覚・聴覚・嗅覚すべてを刺激します。焚き火で焼く肉やキャンプで作るカレーが妙に美味しく感じる、という感覚もその一例です。
その結果、やっぱ大人も子供もなかなか日常生活では解き放てない心の野生、野心を取り戻せる場所なのかなと思ってるんで。
ふたつめは、没頭体験に紐づく点です。キャンプには人も交通量も少なく、インターネットもそんなに繋がらない。子供を悪い意味で迷わすような余計なものがないと話します。
名前のない遊びに没頭できる空間として、かなり最適化された空間がキャンプ場なのかなと思ってて。
なぜ自然に触れると子どもは育つのか
ここでばたこさんが「なぜ自然に触れ合うといいのか」を本から引きます。本の中で一番大きなポイントとして語られていたのは、自然が偶然に満ちた世界であるということでした。
おっしゃる通り、文明とは必然である。
で、自然とは偶然である。
人工物は必然で作られていますが、自然は偶然です。風が吹いて寒いから上着を着る、虫が来たからどう退治するか考える。そうやって偶然に対応していくことで、最適解を考え出す力が生まれる、という考え方です。
ちょうどヒヤマさんは先週キャンプに行っており、息子さんがトノサマバッタを追いかけていた場面を紹介します。後ろから行くと飛ばれるので、前から行ったらどうかと試したそうです。
トノサマバッタって実はこう前にしか飛ばないんじゃないかみたいなことを考え出して、前から行ったらどうなるんやろみたいな試したんよね。
結局バッタのほうが一枚上手で捕まらなかったものの、これはまさに偶然からの体験だと二人は捉えます。想像できないことを誘発される、その環境に身を置くことが大事だという話です。
ヒヤマさんはここでVUCAという言葉を持ち出します。 VUCA ── 変動性・不確実性・複雑性・曖昧性の4つの頭文字。世の中の変化が読みにくくなり、予測より変化への適応が重要になった状況を指すビジネス用語。
子どもにとっての生きる力とは、偶然に起きた事象にどう振る舞うかの経験値を上げること。トノサマバッタの事例のように、自然界にはそういう機会が多いという結論につながっていきます。
なぜ二人がキャンプに惹かれるのか、という問いには、二人とも幼少期にキャンプを経験してきた原体験が大きいのでは、という話になりました。
ずっと箱入りで、「そんなこと知らないわ、自然怖いわ」と思って生きてくると、行こうと思わないんじゃないかな。
オライリー本を予習して臨んだキャンプ
ヒヤマさんは先週のキャンプ前に、2冊の本を予習していったそうです。技術書で知られるオライリー社が出している本でした。 オライリー ── 動物のイラストが表紙に描かれた技術書で知られる出版社。技術書以外の書籍もときどき出している。
1冊は「生き物としての力を取り戻す50の自然体験」、もう1冊は「子どもが体験するべき50の危険なこと」です。どちらも、自然体験を通じて想像力や対応力の基礎を経験できる、という論旨だと紹介します。
内容の例として、紙コップに水を入れてお湯を沸かすとどうなるか、木登り、道草を食べる、スライム作りなどが挙げられます。想像できそうでいて意外とやったことがない体験が並んでいます。
「子どもが体験するべき50の危険なこと」のほうは、もっとデンジャラスな内容もあります。
- 電池を舐めてみよう
- 車を運転しよう
- 完璧なでんぐり返しを決めよう
- 目隠しで1時間過ごそう
- 一人で歩いて帰ろう
1つ体験するだけで一皮むけそう、自信や刺激になりそうな遊びが紹介されているとのことです。ただし実際のキャンプでは、本の内容は一つも実行しなかったと打ち明けます。
もう全然着いたらもう子供の野生が解放されて自由気ままに遊んでた。
息子さんがやったのは、まずいい感じの木の棒を見つけること。麦わら帽子をかぶって木の棒を持ち、ひたすらバッタを追いかけるのがメインの活動だったそうです。
キャンプ場は山を切り開いて作られていることが多く、開拓中の道なき道がちょこちょこあります。息子さんは階段風の木を見つけて、自分から冒険に出かけていったといいます。
自分から「道あるからここ行こう」つって、なんか木の棒を前にして。
最終的には川で頭を洗い出すほどワイルドになったそうです。二人は、大人が見ているキャンプ場の景色と、子どもが見ている冒険度は全然違うのだろうと話します。
子供が見てるキャンプ場の視界って、その冒険度全然違うんやと思うんよね。
赤ちゃんもハイハイ大興奮、キャンプの刺激
キャンプ場には0歳の赤ちゃんも一緒だったそうです。道の冒険には付き添えませんでしたが、いつもより興奮して高速ハイハイで歩き回っていたといいます。
なんかやっぱり零歳児でも感じるものがあるんかなと思った。
自宅の賃貸マンションでは、白いクロスに囲まれた限られたスペースでのハイハイになりがちです。緑いっぱいのキャンプ場は、赤ちゃんにとっても刺激がまったく違うのだろう、と語られます。
大人にとっての楽しみも話題になります。外で入れるコーヒーが無駄に美味しく感じたり、普段はしないのにホットサンドを作りたくなったり、という現象です。
あん時だけ急にホットサンド浮上するよね、俺らの脳内を。
やっぱ火を見るとね、焼きたくなる。
女の子とキャンプ、そして川で溺れた記憶
ここで話題は、女の子を育てる親の視点に移ります。ばたこさんはポジティブに考えつつも、娘たちの入りは悪そうだと話します。理由は虫が嫌いなことです。
家の中にちょっとコバエとかさ、蚊がいるだけで、「いや、ちょっとママ虫、ちょっとそこパチンして」とか言ってくるからさ。
ばたこさん自身は毎年キャンプに行っていました。断片的な記憶の中で一番強く覚えているのが、川で溺れた体験です。
水深50cmもない浅瀬の川で、ビーサンが脱げて背泳ぎのような姿勢になり、流れが強くて立ち上がれなくなったといいます。小学2〜3年生の頃の出来事です。
あと十メートルぐらいしたら滝、ちっちゃい滝があったから、死んでたかもしれない。
父親が気づいて急いで助けに来てくれたそうです。その瞬間を、お父さんがヒーローに思えた瞬間だったと振り返ります。
怖いなと思いつつも、やっぱりなんだろう、あ、これが自然なんだって思えるというか。
この体験については、当時はライフジャケットを着けるような安全意識がまだ低かったのでは、と二人は話します。危ない経験ではありましたが、結果的に助かったこともあり、いい経験だったと語られました。
そのほかにも、みんなで釣ったニジマスをその場で焼いて食べた思い出や、飯盒炊飯のおこげ、朝方のキャンプ場のトイレの雰囲気まで、断片的な記憶が語られます。
キャンプ場のトイレ、ちょっとホラー体験あるよね。
ハードルを下げて自然と触れ合う入り方
キャンプに行きたくない理由として挙げられがちなのが「虫」と「汚い」です。ただ最近はキャンプ場が増えたことで差別化が進み、トイレなどの衛生面はかなりきれいになっているとヒヤマさんは話します。
初心者向けの入り方として、グランピングが挙げられます。虫との接触を減らせるうえ、ばたこさんの長女もグランピングは楽しかったと言っていたそうです。 グランピング ── あらかじめ設営されたテントや設備が用意され、手軽に自然を楽しめる宿泊スタイル。ホテル並みの快適さが特徴。
ただしグランピングは値段が高く、ほぼホテルと変わらないこともあります。一方でキャンプはグッズさえ揃えば、キャンプ場自体の料金は高くないため、長い目で見るとコストが下がる、という違いが整理されます。
寝床については、ヒヤマさんが完全遮光テントをおすすめします。二人とも睡眠環境にこだわりが強いためです。設営も引っ張るだけで立ち上がり、簡単だといいます。
アルペンが出してる完全遮光テント、ほんまに真っ暗やった。
さらに手軽な一歩目として、日帰りのデイキャンプが提案されます。焚き火台とホットサンドメーカーを持って行き、あとはスーパーで買い物してコーヒーとホットサンドを作るだけで十分楽しいそうです。
キャンプの一歩目として何を買うかという話では、焚き火台がおすすめとして挙がりました。最近は直火禁止のキャンプ場が多く、焚き火をするための台があるとのことです。
裏技として挙がったのが、周りにキャンプ好きな人がいたら連れて行ってもらうことです。良さを知らしめたいのか、キャンプ好きにはホスピタリティの高い人が多いといいます。
子連れで行くなら、子ども同士が遊んでくれる二世帯での参加も、大人の負担を減らす方法として挙げられました。
子供は一緒に遊んでほしいのに、どうしてもテントの設営とか料理の準備とかでちょい忙しいから落ち着くまではなかなかね。
ヒヤマさんが大人として一番好きな時間は、子どもが寝た後に夫婦で焚き火を見ながら話す時間だそうです。旅の回で語られた「一人物思いにふける時間」の、夫婦版かつ自然版だと表現します。
自然の隣にある「死」を視界に入れる
楽しい話が続いたあと、ヒヤマさんは自然の隣には常に死のリスクがつきまとうことを忘れずに紹介したいと切り出します。読んだのは「子ども版 これで死ぬ」という本です。
タイトルはパンチが効いていますが、内容は真面目です。海・山・川で実際に起きた子どもの事故事例が紹介されており、川や海は特に事故が多いといいます。
山、海、川はもうめちゃくちゃリスクあるっていうのが、この本を読むと無視できない事実としてあるなっていう形で。
この本のスタンスは「危ないから自然に行くのをやめましょう」ではありません。自然の素晴らしさを等身大で味わうためにも、リスクを大人が知っておく必要があるという考え方です。
知識がないと「危ないからやめよう」とガードレールを引いてしまいがちだ、とばたこさんも共感します。子どもは危険の境目が分からないまま突っ込んでいくからこそ、大人が知識を蓄えておくことが大事だと話します。
夫婦でね、一緒に読んで共通言語にしておく方がいいのかなと思うね。
ばたこさんの川で溺れた体験も、まさにこのリスクの実例です。流されながら「このまま死ぬのかな」と思った記憶があり、履いていた濃いめのピンクのビーサンの色まで覚えているといいます。
川は急に深くなる場所があり、キャンプ場に隣接した小さな川でも起こりうる出来事です。二人は、自然だから何でもやっていいわけではない、というところがセットだと確認します。
危ないからやめようと機会を奪う。子どもは危険の境目が分からないまま
事故事例を知って想像し回避する。等身大で自然の素晴らしさを味わう
キャンプでしか得られない栄養
最後に二人は、キャンプの根っこにある価値を語り合います。怖い話もしたものの、自然からしか得られない栄養は大人にも子どもにもある、というのが結論です。
そこで子供が主体的になって、自分でなんかこう学びを得るというか、自分で五感をちゃんと通じて、あ、こういうもんなんだなっていう経験を得ることがすごいやっぱ重要だよね。
焚き火に落ち葉を突っ込んで燃えるのも、マシュマロを火に入れたら丸焦げになるのも、すべて大事な体験だとヒヤマさんは話します。
旅行だとどうしても物事を詰め込みがちですが、キャンプはいい意味でやれることが少ない。だからこそ、これまでの回でも出てきた「名前のない遊び」がしやすいのでは、と締めくくられます。
大人が多分ゆったりめのチェアで焚き火見ながらコーヒー飲んでて、子供が遊んでる姿をぼんやり眺めるっていうのが。
ばたこさんは、まず夫にこのポッドキャストを聞かせるところから、と話します。9月・10月の連休に娘二人を連れてデビューできるか、検証してみる流れになりました。
まとめ
キャンプを「自然体験」と「没頭体験」の塊として捉え直し、子どもが偶然に満ちた環境で主体的に学ぶ価値を確認した回でした。同時に、自然の隣にある死のリスクを大人が知っておくことの大切さも語られています。
- キャンプは五感を刺激する自然体験と、余計なものがない没頭体験が掛け合わさった場である
- 自然は偶然に満ちた世界で、そこに身を置くことが対応力や生きる力を育てる
- 入り方はグランピングやデイキャンプからハードルを下げ、キャンプ好きに乗っかるのも手
- 大人の楽しみは、子どもが寝た後に夫婦で焚き火を見ながら話す時間
- 自然を等身大で楽しむために、川や海の事故リスクを大人が知り共通言語にしておく




