前回のおさらいと、父と母で違う「二階建て」の話
前回、2人は書籍「父親の科学」をベースに「いい父親とはなにか」を考えました。ヒヤマさんの仮説は、父親は「父」と「親」の二階建てになっているというものです。
ヒヤマさんによると、一階部分は親として子どもにいい環境を用意すること。二階部分は父として意図的にリスクやノイズを混ぜ込み、社会と子どもをつなぐ橋渡しをすることだと整理しています。
一方で、母親についてはこの整理が難しいという話になりました。ばたこさんが「切り離しきれない」と話したことで、父と母の違いがあらためて浮かび上がっています。
(母親は父と親を)やっぱり切り離しきれないというか。
今回はその続きとして、実際に1年の育休を取っているヒヤマさんが、6ヶ月が過ぎた時点で何を感じているのかを実体験ベースで語っていきます。
男性の育休取得率、実際は何パーセント?
まずヒヤマさんが持ち出したのが、男性育休の現在地です。ばたこさんに「世の中の男性はどのくらい育休を取っていそうか」と質問しました。
(男性の育休取得率は)20パーぐらいじゃない?
ヒヤマさんが示したのは、2025年7月発表の厚生労働省の調査結果で、最新の男性育休取得率は40.5パーセントという数字です。
ばたこさんは「思ったより多い」と驚きつつ、実感としても長女が生まれた2020年ごろより、次女のころのほうが周りに育休を取る男性が増えたと振り返りました。
ただし政府の目標は「取る・取らない」の二元論が中心で、期間まではまだ論じられていないとヒヤマさんは説明します。まずは取ることをゴールにしている段階だという整理です。
半年以上の育休は男性の何パーセント?男女で真逆の傾向
話は育休の「期間」に移ります。ヒヤマさんによると、女性は9割以上が6ヶ月以上の育休を取っていて、半年以上が支配的です。
男性で半年以上取る人はどのくらいか。ばたこさんは「育休を取る人の5パーぐらい」と予想しました。
ヒヤマさんが手元のデータを見ると、男性は1ヶ月以内が全体の85パーセントほど、3ヶ月以上が15パーセントほど、半年以上は5〜6パーセントでした。
これを人数に置き換えると、100人いれば40人が育休を取り、そのうち5パーセントなので約2人。100人いて2人ほどが半年以上の育休を取る計算になります。
9割以上が6ヶ月以上の育休を取り、半年以上が当たり前
1ヶ月以内が約85パーセント、半年以上は5〜6パーセント程度
ヒヤマさんの家庭では、1人目のときはヒヤマさんが延べ3ヶ月、妻が1年の育休を取りました。今回は立場が逆で、個人事業主の妻が早めに仕事へ戻り、ヒヤマさんが1年の育休を取っています。
1年育休を半年過ごして、いちばん前に来る結論は「幸せです」
育休を半年過ごしたヒヤマさんの結論は、幸福度がとても高いということでした。仕事を休むだけの価値もリターンもあると話します。
ただし、これまで仕事に強く従事してきたぶん、孤独感や寂しさもあるといいます。ライフスタイルに占める仕事の割合が時間としても意識としても強めだったからこそ、そこにぽっかり穴が開いた時期もあったそうです。
それでもトータルすると、そんなことはどうでもよくなるくらい幸福度が高い。これが今の現在地だとヒヤマさんはまとめました。
ヒヤマさんは、この幸福度の高さの背景にオキシトシンの分泌があるのではと推測しています。前回話したとおり、育休前後で分泌量がかなり変わっていそうだという印象です。
さらに、子どもは1日平均で300〜400回ほど笑うのに対し、大人は15〜20回程度しか笑わないといわれる話も紹介されました。子どもにつられて笑うぶん、育休中は自分の笑顔の回数も増えているといいます。
なんか異様に可愛いよね。(我が子は)
仕事中絶対しない顔してるなっていう自覚あるもんな。
育児のやりがいと、二人目を「リード」して得られたもの
ヒヤマさんは、家族に人生の優先順位を置けていると噛みしめる瞬間が多いと語ります。「このために育休を取った」と感じられること自体が、自己肯定感につながっているそうです。
その意思決定ができた自分を褒めたい。(家族との時間を最優先に置くという意思決定)
育児のやりがいについても、仕事より責任があると2人は話します。目の前の生命を預かること、そして子どもがすくすく育つ環境や機会を責任を持って用意することの重さです。
例えば予防接種です。うっかり機会を逃すと病気のリスクが上がってしまう。はしかのように、2回打てば罹患率が大きく変わる病気もあります。親の判断が子どもの健康にそのまま影響してしまう重さを、2人は語り合いました。
ヒヤマさんは、1人目のとき3ヶ月の育休では、この感覚にはならなかったと振り返ります。当時は妻が1年育休で、自分は相対的にフォロワー寄りの立場だったからです。
離乳食とかは妻に預けてた部分もあったりするし、(1人目の育休後は)どうしても相対的にはフォロワー寄りのポジションやった。
今回は自分が二人目の育児をリードする立場だからこそ、AIに聞いてファクトを確かめるようなことも増え、日々の反応速度が上がっていると話します。
これに対しばたこさんは、ファクトと実体験は別だと指摘します。本を読めば正しいことは載っていても、実際どうかは蓋を開けてみないとわからないというのです。
おしゃぶり取らなければいけないのか。じゃあ取り方どうする?でも取ったら泣く。どうしようみたいな。
だからこそ、SNSのつながりや児童センターに聞くといった動きに、オーナーシップの差が出るのではないかとばたこさんは話しました。
産む側には「取るか」の選択がなかった、という男女差
ここでばたこさんが投げかけたのが、育休を取るという意思決定そのものの違いです。ヒヤマさんは「育休を取ってよかった」と語りましたが、ばたこさんにはその意思決定がなかったといいます。
(私は)育休を取るという意思決定はしなかったんだよ。
産休から地続きで、そのまま育休に突入するものだった。あったのは「取るか取らないか」ではなく「いつ戻るか」の選択だけだったとばたこさんは振り返ります。
ヒヤマさんは、産休はまごうことなき当事者性があると受け止めます。体に子が宿っている時点で圧倒的な当事者であり、そこが父と母の視点の違いだと2人は確認しました。
体に宿ってるから、まあ圧倒的当事者なわけよ、その時点でもうすでに。
一方でばたこさんは、下の子を産んだあとに上の子としっかり向き合う時間が取れてよかったとは考えたものの、「育休を取ってよかった」という取る取らないの意思決定はなかったのが面白い、と語りました。
どっちもオーナーの育休は、夫婦の練度が試される
女性は9割以上が6ヶ月以上の育休を取るという傾向は、男性と真逆です。ヒヤマさんは、女性にとっては6ヶ月ほど取るのが当たり前で、論点は6ヶ月か1年かになっていくのだろうと話します。
ばたこさんは、育休を長く取った人ほどオーナーシップが強めになりそうだと指摘します。予防接種は3〜5歳まで続くため、1年目にしっかりオーナーシップを持った人が、その後の幼児期にも影響しそうだというのです。
この点はオキシトシンの出る条件の違いともつながります。父親は幼児の興奮や刺激的な反応でより分泌され、母親は愛情たっぷりの触れ合いで分泌されるとされます。どちらがオーナーかで、赤ちゃんの体験も変わるのではと2人は話しました。
では夫婦どちらもがオーナーの場合はどうか。2人とも1年育休を取るようなケースでは、夫婦のチームワークや関係の練度が試されると2人は見ています。
なまじ二人とも一年間育休やからちょっと油断するとか、(相手が)やってくれるでしょと思い合っちゃう。
うまくいったときの効果は測り知れない一方で、油断やお互いの様子見がトラブルにつながることもありそうだと語り合いました。
ただしばたこさんは、親ができるのは環境を整えることだけだと釘を刺します。子はもともと個性を持って生まれてくるため、どちらがオーナーだったから良かった・悪かったと突き詰めないほうがいい、というスタンスです。
だからその幸福度が高いです以上でいいと思うんだよね。
育休で失ったもの①:社会との接点と「ママさん」と呼ばれる日々
ここからヒヤマさんは、あえて育休で失ったものも語ります。ポジショントークにならないよう、と前置きしたうえで挙げたのが「社会との接点」です。
失ったものはやっぱり社会との接点。は確実になくなってるなっていう気はしていて。
別の言い方をすると、シンプルに寂しい。孤独ではないものの、大人と一緒にいないという意味での孤独感があるといいます。仕事上の接点は育休前後でかなり純減したそうです。
そもそもこのポッドキャストを始めたのも、大人と喋りたい、あわよくば子育ての意見交換をしたい、という下心からだったとヒヤマさんは明かしました。
日中に話す相手は、ママ友、幼稚園の先生、かかりつけの先生くらい。9時から2時ごろまでは基本的に子どもと2人だといいます。
かかりつけの先生に至ってはもう俺のことママさんって呼んでるからね、多分。
平日の日中に男性が来るとは思われず、突っ込みもしないうちに「ママさん」と呼ばれ続けている。アイデンティティを失いすぎていると、ヒヤマさんは笑い交じりに話しました。
ばたこさんも「男女問わず寂しいものは寂しい」と共感します。それまで週5で会っていた人たちと会わなくなるのだから、寂しくて当然だという受け止めです。
仕事に戻りたくなる時期は?一人目と二人目で違った心境
ヒヤマさんは、ばたこさんに「早く仕事に戻りたくなったか」を尋ねました。ばたこさんの答えは、一人目と二人目で違ったといいます。
下の子のときはほとんど戻りたくならなかった一方、上の子のときには「戻りたい」という焦りがあったそうです。復職しなきゃ、戻ったときのポジションは、といった葛藤があったといいます。
でもやっぱりなんかみんなに置いてかれちゃうみたいな葛藤もあったんだと思ってて。
二人目ではそれが吹っ切れて、「育児に没頭しよう」という心境になった。育休二周目で、スタンスがある程度安定したのだとばたこさんは振り返ります。
ヒヤマさんは自分の状況を、チームを持つ中間管理職と説明します。上司もメンバーもいる中で見送ってもらったぶん、戻ったときに何をするのかという漠然とした不安がゼロではないといいます。
ただし、その不安は最初の頃が強く、今は落ち着いてきたそうです。子どもの成長でできることが増え、離乳食や保育園を考えるうちに、仕事のウェイトが押し出されている感覚だと語りました。
さらにばたこさんは、復職して大変だったことの1つとして「耳」の話を挙げます。もともと文字を読むのは得意だったものの、会議で話が聞き取れなくなっていたというのです。
耳が一番つらかったかな。(復職後は)話が全然聞き取れなくて。
想像していなかったところに影響が出る。これは取ってみないとわからない、とばたこさんは話しました。ヒヤマさんは、この立場になってはじめて、長期育休から復帰する人の不安が本当の意味でわかったと受け止めています。
テストステロンとコルチゾール、育休で変わる心身
ヒヤマさんは前回話した、育児で男性ホルモンのテストステロンが下がるという話を持ち出します。実感はないものの、もし本当なら今かなり下がっているはずだと言います。
妻からは「穏やかになった」と言われるそうです。ただしヒヤマさんはこれをテストステロンの低下というより、コルチゾールの減少ではないかと見ています。
ばたこさんは、仕事は良くも悪くも攻撃的になり、脳のスイッチも違うと指摘します。育休中は攻撃性が薄まっている可能性があり、だからこそ「仕事に戻れる気がしない」という話に戻ってくる、と2人は笑い合いました。
復職後の壁は「脳の切り替え」、そして「ママちょっと怖い」
ばたこさんが復職して大変だったことランキングの1位に挙げたのが、脳の切り替えができないことでした。一人目の育休明けの実体験です。
仕事から帰り、お迎えに行って、家で遊んでいるとき。長女に言われた言葉が忘れられないといいます。
(家で遊んでいるときに長女から)「ママちょっと怖い」って言われたのよね。
頭のどこかで仕事のことを考えていた。時短でも帰りの電車でスマホのやりとりをして、切り替えられなかったのだとばたこさんは振り返ります。リモートだと余計に起きそうな話です。
その切り替えのために、ばたこさんは工夫を重ねました。意図的にSlackを見ない、通知を全部オフにする。そして帰りの時間に、あえて別の情報へ意識を移すようにしたといいます。
- 仕事終わりは通知を全部オフにする
- 帰りの電車でTwitterや子育て系の情報にわざわざ触れる
- 子どもの連絡帳や写真を眺める
視覚的に仕事の情報を遮断し、頭の中を子育てのものに入れ替える。今ではオンオフを急に切り替えられるようになり、これはスキルだと感じているそうです。ヒヤマさんも深掘りしたいと関心を示しました。
育休の孤独をどう紛らわす?ばたこを救ったSNS
ヒヤマさんは、約1年の育休を取ったばたこさんに、当時の孤独感へのアプローチを尋ねました。一人目はコロナ禍で、夫がフルリモートだったため、昼にプチ雑談ができたぶん寂しさは薄らいでいたといいます。
それでも3ヶ月ごろに強い孤独を感じ、ばたこさんはXを始めました。情報が欲しくなり、ワイワイ繋がれる友達が欲しくなったからです。ここから「ばたこ」というアカウントが生まれました。
一方ヒヤマさんは、このポッドキャストのためにアカウントを作ったものの、フォロワーがばたこさん1人だけ。社会的にもSNS的にも孤独な「ダブル孤独」だと苦笑します。
社会的にも孤独やし、SNS的にも孤独なんでダブル孤独なんですけど。
ばたこさんは、ママ垢は横のつながりが広いと話します。SNSで仲良くなった人と実際にランチやアフタヌーンティーに行くこともあり、月齢が近い人という共通項がありがたいそうです。
SNSがある時代に生まれてありがたいなと思っております。
育休後半戦の過ごし方は「上の子との時間を大事にせよ」
最後は残り半年の過ごし方についてのフリーディスカッションです。ヒヤマさんが、ばたこさんの育休後半戦の過ごし方を尋ねました。
ばたこさんが挙げたのは、下の子の育休後半に、上の子と最後の二人きりの時間を大事にしたことです。旅行にも行き、ヒヤマさんの住む福岡に遊びに来たのも、そのタイミングだったといいます。
土日に夫へオペレーションを渡して下の子を預け、上の子と2人で出かける。ばたこさんはこれを意識的に続けていました。
夫に下の子預けて、もうこういう風にやれば大丈夫だからみたいな感じで、もうオペレーションを用意して渡して上の子と出かける。
なぜそこまでするのか。ばたこさんは、上の子が復職後に優しくなれると考えているといいます。下の子にも、忙しくなる親にも優しくなれる。そういう日常が取りづらくなることも織り込んでの時間です。
さらに理由として、下の子とは後々べったり過ごせる時間が来るからだと話します。ばたこさん自身が下の子で、上の兄が高校生になり自分が中学生のころに母と二人で出かけた記憶があるそうです。
ヒヤマさんも、上の子との二人旅を意識してきたと応じます。福岡から関西の実家に二人で帰ったり、二人目が生まれる前に上の子と東京へ旅行に行ったりしたそうです。今年の夏休みも計画したいと話しました。
ばたこさんは、大がかりな旅行でなくてもいいと言います。いつもの公園で、本気で遊び切るだけでも十分だというのです。
抱っこ紐に下の子を入れていると、上の子の遊びは遠目に眺めるか声かけくらいになってしまう。だからこそ、上の子と本気で遊ぶことに意味があると2人は語り合いました。
ヒヤマさんは、自分がアグレッシブな遊びを持ち込みたがるのは、そこにドーパミンを得ているからかもしれないと自己分析しました。ばたこさんは、公園でアグレッシブに遊ぶのも大事だと後押ししています。
下の子がまだ鬼ごっこやかくれんぼをできないと、上の子は手加減される側になり物足りなさが残る。だからこそ、上の子と本気で遊んであげることが大事だという結論にたどり着きました。
まとめ
1年の育休を折り返した父の実体験から、幸福度・孤独感・上の子との時間という育休のリアルが語られた回でした。得たものも失ったものも正直に共有しつつ、後半戦の過ごし方まで具体的に掘り下げています。
- 最新の男性育休取得率は40.5パーセントまで上がったが、半年以上取る男性は約5〜6パーセントで、女性の傾向とは真逆
- 育児をリードする立場で育休を取ると、幸福度・やりがい・反応速度が上がる一方、社会との接点が減り孤独感も生まれる
- 復職後は「脳の切り替え」や「耳での聞き取り」など想像しづらい壁があり、通知オフや情報の入れ替えで対処できる
- 育休の孤独はSNSやポッドキャスト、パートナーとの会話で紛らわせる。ばたこさんの育休はSNSに助けられた
- 育休後半戦は、下の子の育児が軌道に乗るぶん、上の子と二人きりの時間や本気で遊ぶ時間を意識的に作るとよい




