PMは天職か、器用貧乏の結果か
PM属人化ラジオは、PMとして働くやましょーさんとすぅさんが、現場でよくある出来事やPMの考え方をゆるく話す番組です。初回は「PMに向いている人、向いていない人」という話題から始まります。
やましょーさんは、PMの仕事を自分にとって天職に近いと感じています。自由度が高いことに加え、いろいろな人との関係調整や論点の整理が好きなので、楽しく取り組めているそうです。
一方のすぅさんは、自分はPMに向いていないと思っていると話します。それでも器用貧乏なところがあり、困ったときにPMを頼まれることが多く、結果としてPMをやっているといいます。
ああ、それでいうと結構逆で、多分PM向いてないなって思ってはいる。
割と器用貧乏なところが多分元々あるから、結構あの困った時にお願いされるケースが結構あるなっていう感じがするね。
すぅさんが自分をPM向きではないと考える理由は、自分のスタイルを貫こうとする意志の強さです。プロジェクトの規模が大きくなるほど関係者との調和を重視する場面が増え、そこでハレーションが起きたり、自分のストレスになったりする可能性があると話しています。
やましょーさんは、すぅさんのように何でもこなせるスキルがあれば、PMが求められている今の世の中では市場価値が上がると返します。すぅさんの「何でも屋がね」という自嘲に、やましょーさんは「何でも屋としての天性の才能」と笑って応じました。
大規模プロジェクトは本当に大変なのか
すぅさんの話を聞いたやましょーさんは、プロジェクトの大きさによってもPMとの相性がありそうだと考え、自分も大規模プロジェクトには向いていないと感じたといいます。
すぅさんによると、小さなプロジェクトは関係者が少なく、関係構築がしやすいため動きやすいそうです。ただし人数規模が大きいほうが結果として得られる成果も大きいため、大規模なプロジェクトもこなせるようにならなければと常に思っているといいます。
やましょーさんも、数百人規模のプロジェクトでは利害関係の調整だけで1週間かかることもあると話します。
関係者が少なく、関係構築がしやすいため動きやすい
関係者の利害調整が大変だが、成果の大きさがある
ただ、すぅさんは最近、規模が大きいから大変だとは言い切れないとも感じています。開発する人数が多いだけで、実際にやり取りする関係者の数は規模が変わってもあまり変わらないケースが多く、人月の多さだけでは大変さを測れないという見方です。
密にやり取りできる人数は片手で数えるほど
やましょーさんは、すぅさんの話を人が認知できる人数の限界と結びつけます。ミーティングを企画していても、あくまで感覚としつつ、7人以上いても議論の質はあまり変わらないと感じているそうです。
密にコミュニケーションを取るべき人って、大体もうなんか片手で数えれるぐらいの人数が僕的には限界な感じはするんで。
やましょーさんの考えでは、関係者の人数が増えても、キーパーソンとしっかりつながっていればプロジェクトはうまくいきます。逆に関係が分散しすぎると前に進んでいる感じがせず、関係構築だけで終わってしまうこともあるといいます。
すぅさんは、毎週の定例に20人ほど連れてくる人もいると具体例を挙げます。オンラインでは聞いていない参加者も多いため、その時間でタスクを処理してもらったほうがよいかもしれないという見方です。
二人は、関係する人数はできるだけ少なくしていくべきだという点で一致します。すぅさんは、AIによってそれがしやすくなってきているとも付け加えました。
AIがないとPMとして働けない体に
話題はAIとPMの関係に移ります。やましょーさんは、AIのおかげでPMとして見渡せる視界が圧倒的に広がったと感じており、今はAIがないとパフォーマンスがまるで出せない体になったと話します。
いや、まるで出せないですよ。逆に今までどうやってたんだろうって。
すぅさんが振り返るのは、AI以前のプロジェクトの立ち上がりです。新しいプロジェクトが始まると、Confluence ── アトラシアン社が提供する社内向けのドキュメント共有・ナレッジ管理ツール。仕様書や議事録などをチームで蓄積するのに使われます(会話では「コンフル」)の情報を目で全部読み、わからない点は細かく人に聞いていたといいます。そのために2〜3週間、下手をすると1ヶ月かかることもあったそうです。
やましょーさんも、更新が途中で止まったパワーポイントや、正しいかわからないのに自信満々に書かれた仕様書を思い出します。確認しようにも作った人は退職していて誰も知らない、という迷路のような仕様に立ち向かうことが、1〜2年前にはよくあったといいます。
Confluenceの資料を目で全部読み、人に聞き回って2〜3週間から1ヶ月かかる
大量の資料から真剣に読むべきものにたどり着くまでが一瞬になった
すぅさんは、便利な世の中になった一方で、よりスピードを求められる負担も大きくなったと話します。やましょーさんも、資料のスクリーニングが速くなった分、自分たちに求められる判断の質と量が増えていると感じています。
やましょーさんは最近、Claude Code ── Anthropicが提供する、AIがコードの作成や編集などの作業をエージェント的に進める開発支援ツールですで片方のプロジェクトのセッションを進めている間に、もう片方のセッションが自分の判断待ちになっているといった状況が多いそうです。その様子を、ジャグリングをしている気分と表現しています。
ドキュメントだけでは意思決定できない
すぅさんは、AIで資料を読みやすくなっても、存在しているドキュメントだけから意思決定するのはなんだかんだ難しいと感じています。
だからやっぱあんだけ人とこうやって喋って、その人とかを知るとか、その人の判断軸なんだろうなみたいなところとか。
すぅさんにとっては、人と話して相手を知り、その人の判断軸を探りながら進めていくほうが、結果的に大事だという考えです。
そこでやましょーさんは、すぅさんの業務時間を「AIとの対話」「AIから離れて自分で調べたり考えたりする時間」「人と話して議論する時間」の3つに分けるとどのくらいの割合か、と尋ねます。
すぅさんの答えは、6・2・2くらいという配分です。2割の自由時間は、頭を使ったりアイデアを考えたりする研究時間のようなものだといいます。そのうえで、人と話す時間をもっと増やしたいと考えているそうです。
新しいアイデアはなぜ人との会話から生まれるのか
すぅさんが人と話す時間を増やしたい理由は、人と話すことで生まれるアイデアのほうが価値があると感じているからです。
AIと対話してたらやっぱり自分の中の答えに、なんか理由付けをしようみたいな感じの対話になりがちだったりするから。
すぅさんは、人間としての意見をもらえる会話からこそ新しいアイデアや発想が生まれると考えています。新しい発想はほぼ人との会話からしか出てこないのではないか、とまで感じているそうです。
やましょーさんは、議論には発散と収束の2つがあるという話を持ち出します。収束に向かう場面では資料を速くきれいにまとめられるようになり、ミーティングをしなくても決められる機会が増えました。一方で発散したいときは、AIとやるより人と話したほうがずっと論点やアイデアが出るといいます。
資料を素早くまとめられるため、ミーティングなしでも意思決定しやすくなった
AIとやるより、人と話したほうが論点やアイデアが多く出る
やましょーさんも、発散のための時間を意図的に広げたいというすぅさんの考えに共感し、自分もその時間が今は足りていないと感じているそうです。
現場を横で見るほうが速くて質が高い
すぅさんは、自分だけで事業をやる場合は人と話す時間が少なくてもよいかもしれないと前置きします。しかし、お客さんがいる場合や、本当の課題を持つ人の問題を解決するプロジェクトでは、その人に直接話を聞くほうが圧倒的に速く、質も高いといいます。
机上の空論でね、なんかその一般的ななんか業務フローを聞くとかいうよりか全然意味があるし、なんかそっちの時間にどれだけ充てれるかみたいなところが勝負な気はする。
具体的には、実際の業務を見せてもらったり、目の前で一緒にやったりすることです。この話は、やましょーさんに強く刺さりました。
ちょっとAIと対話して、そのなんかサーチした一般的な業務フローを書くぐらいだったら、確かにもう張り付いて横で画面見せてもらった方がいいやって、今すごい反省しました。
やましょーさんはちょうど業務設計をしなければならない状況にあり、AIで一般的な業務フローを調べて書こうとしていた自分のやり方を振り返ったといいます。
AIに答えを求めなくなった
やましょーさんの話を聞いて、すぅさんは昔に比べてAIに答えを求めることがかなり減ったと気づきます。以前はAIに答えを聞いてそれをコピペして渡すこともありましたが、最近はほとんどなくなったそうです。
今のすぅさんにとってAIは、あくまで自分の意見を集約するための道具です。言葉に意味を持たせて伝えるため、そしてその言葉を自分の考えに結びつけるために人と話している、という使い方をしているといいます。
AIに答えを聞き、それをコピペして渡す
自分の意見を集約するためにAIを使い、意味を持たせるために人と話す
やましょーさんは、話すネタを作ったり自分なりの意見を持ったりするために、6・2・2の中の2割の自由研究のような探索の時間があるのだろうと受け止めます。
すぅさんも、探索しているときが一番頭がフリーで、いろいろなところに生かせると話します。そのため、予定をあまり詰め込まないことが大事だという考えです。
やましょーさんは、午前中はあえて作業や自由研究に充て、午後にやらなければならないことをこなす形で、意図的にインプットの時間を取っていた時期のほうが、その後の生産性が上がっていたと振り返りました。
AIでは代われないPMの存在価値とは
すぅさんは最初の話題に戻り、PMの存在価値はこれから個人的にもっと上がってくると感じていると話します。
ただ本当に作業するとか回すだけだと本当に人いらなくなるけど、やっぱそういったいろんな人との潜在的な課題だったりとかをちゃんと捉えて。
(関係者の気持ちを捉えて、)それをどう形に言語化していくか、それでどう進めるかみたいなところって、やっぱ人だからできる部分な気はしてる。
すぅさんは、それはAIでできるイメージをまだ持てないだけかもしれないと留保しつつ、苦手だけどPMとしてそこをもっと伸ばさなければと思っているそうです。
やましょーさんは、足で稼ぐ、関係性で仕事を作るといった泥臭い価値は昔からあったものだと指摘します。そのうえで、こうした価値が今改めて注目されているのではないかと問いかけました。
すぅさんは、AIに「あれしろ、これしろ」と言われても人はやらないと続けます。やましょーさんも、AIと約束した締め切りを自分はいくつ守れたのだろうと笑い、すぅさんは信頼している人にお願いされたらやるのが当たり前だと話しました。
やましょーさんは、信頼する人からのお願いなら優先してやるとまで言い切ります。人を動かすのは人との信頼関係だという点で、二人の意見は一致しました。
番組は今後も気が向いたときに、ゆるくPMについて話していくそうです。二人はコメントで意見をもらえると続けられると呼びかけ、初回を締めくくりました。
まとめ
PM属人化ラジオの初回では、PMの向き不向きから始まり、AIで情報処理が速くなった今だからこそ、人と話し、現場を見て、信頼関係で人を動かすことがPMの価値になるという話へとつながりました。
- やましょーさんはPMを天職に近いと感じ、すぅさんは向いていないと思いつつ器用貧乏ゆえに頼まれてPMをしている
- プロジェクトの大変さは人数規模だけでは測れず、密にやり取りすべき相手は片手で数えるほどが限界という見方が語られた
- AIで資料の読み込みは一瞬になった一方、判断の質と量への要求は増えている
- 新しい発想や本当の課題は、AIとの対話より人との会話や現場の観察から生まれやすい
- 人を動かすのは人であり、関係者の気持ちを捉えて言語化し進めることがAI時代のPMの存在価値になる


