夜景を撮るなら、なぜ16mm F1.4を選ぶのか
最初のコーナーはガジェットレポートです。この番組でカメラを取り上げるのは、実はこれが初めてだと神森さんは話します。
神森さんが使っているのは富士フィルムのX-H2というミラーレスカメラです。X-H2 ── 富士フィルムのミラーレスカメラ。高画素センサーと強力な手ぶれ補正が特徴。2023年2月から使っていて、その前は同じ富士フィルムのX-S10を使っていました。
なんで変えたかっていうと、まあ完全に物欲だったんですが。
ただ理由は物欲だけではありません。X-S10に比べてセンサー周りが良くなり、手ぶれ補正がさらに強力になった点も大きかったそうです。X-S10の頃は星や風景をよく撮っていました。
先週、神森さんは富山県富山市へ行きました。撮り歩く時間は多くなかったものの、カメラを持っていくときにいつも悩むのがレンズ選びだと言います。
今回連れて行ったレンズは2本。SIGMAの16mmと、18-50mmのズームレンズです。16mmを選んだのは、夜景を撮るためでした。
暗いところで撮るには、光をたくさん取り込める明るいレンズが必要になります。その目安になるのがF値で、数字が小さいほど明るいレンズです。F値 ── レンズが取り込む光の量を表す数字。値が小さいほど多くの光を取り込め、暗い場所でも撮りやすい。この16mmはF1.4で、かなり明るいレンズです。
16mmは星撮りでもよく使っているレンズだそうです。広角の10-18mm F2.8も持っていますが、広角すぎると写真のサイドが煽られる感じになるため、今回は16mmを選んだと話します。
星撮りから物撮りまで、2本のレンズをどう使い分けたか
16mmは、もともと星撮りで使い込んできたレンズです。神森さんは2020年冬から2023年秋まで宮古島に住んでいて、その途中でX-S10を購入しました。それ以前はLUMIXのG8というマイクロフォーサーズのカメラで星を撮っていたそうです。
宮古島では、スターリーナイトという光害をカットするフィルターをかませて星の写真を撮っていました。光害カットフィルター ── 街灯などの人工光の影響をやわらげ、夜空の星をより見やすく撮影するためのフィルター。
16mmの前に使っていたのはSAMYANGの10mm、12mmというマニュアルフォーカスのレンズでした。設定が面倒だったため、オートフォーカスのレンズが欲しかったところに、ちょうどSIGMAからオートフォーカスの16mm単焦点が出て購入したそうです。
星撮りでは三脚が必須です。シャッターを切ってから十数秒も開放し続けるため、手持ちでは撮れません。
一方、今回の旅では、ご飯などの物撮りには18-50mmのズームレンズを使いました。富山名物の白エビ丼もこのレンズで撮っています。
そして16mmで撮ったのが、富山市にある「世界一美しい」と言われるスターバックスからの風景です。夜と朝の両方に行くつもりでしたが、朝は行けず、撮れたのは夜の写真だけでした。
そのスターバックスがある環水公園の雰囲気がとても良かったと神森さんは話します。ライトアップされた公園に、噴水のショーが定期的に行われていたそうです。
夜景では、星撮りのように十数秒も開放するわけではなく、シャッタースピードは100分の1や10分の1程度でした。そのため、強力な手ぶれ補正とレンズ側の補正で、手持ちのまま100枚ほど撮れたと言います。
非常にいい写真は撮れました。
行き先で入れ替わる2本のレンズ、置いていったレンズ
前回のオープニングで触れた渡嘉敷島へ行ったときも、レンズは2本持っていました。ただし今回とは違う組み合わせです。
渡嘉敷島のときは、広角側に16mmではなく10-18mmを選び、それに18-50mmを組み合わせました。晴天だったため、ダイナミックな風景を煽った形で撮りたく、10-18mmをメインで使ったそうです。結局、18-50mmはあまり使わなかったと言います。
同じ「2本」という縛りの中でも、行き先と撮りたい絵によって中身が入れ替わります。夜を撮るなら明るい単焦点、青空の下で広く撮るなら超広角という選び方です。
16mm F1.4で夜景、18-50mmで白エビ丼などの物撮り
10-18mmでダイナミックな風景、18-50mmはあまり出番なし
今回置いていったのが、タムロンの18-300mmという高倍率ズームレンズです。1本で大抵のことができますが、ズームするとF値が5.6や6.3まで下がり、明るさの面では弱くなります。
晴天時には十分使えるものの、とにかく重いのが難点だと言います。遠景を引き寄せて撮るのは得意なレンズですが、今回は荷物を軽くしたくて持っていきませんでした。
やっぱね、改めて思うんですが、やっぱり明るいズームレンズ欲しいですね。
18-100mmや18-200mmあたりで明るいレンズが欲しいものの、そうなると価格もかなり高くなりそうだと神森さんは話します。カメラとレンズのリンクは概要欄に貼られています。
ものづくり競技大会に「ウェブデザイン」という職種がある
続いてはワークトークです。富山へ行った目的は、若年者ものづくり競技大会の競技員としての参加でした。
若年者ものづくり競技大会は、ものづくりの技能を競う全国大会です。若年者ものづくり競技大会 ── 厚生労働省と中央職業能力開発協会が主催する、若手の技能者を対象としたものづくりの全国大会。今年で第21回、8月1日と2日に富山で開催されました。主催は厚生労働省と中央職業能力開発協会です。
選手は原則20歳以下で、まだ就職していない、技能を習得中の若者が多いのが特徴です。職業能力開発施設や工業高校、専門学校などで技能を学ぶ人たちが全国から集まります。今回は15職種、333人の選手が参加しました。
その15職種の中に、ウェブデザインという職種があります。神森さんは、この職種の競技員を2008年から続けています。
ものづくりって聞くとね、旋盤とか建築大工とかそんなイメージがあると思うんですが、ウェブデザインもものづくり職種の一つとしてちゃんと入っております。
神森さんがいたのは、富山産業展示館(通称テクノホール)の会場です。全体は3つの会場に分かれ、テクノホールは東館と西館に分かれて10職種が行われていました。
神森さんがいた東館では、自動車整備、IT・ネットワークシステム管理、ウェブデザイン、グラフィックデザイン、造園が行われていました。西館ではメカトロニクス、機械製図、電子回路組み立て、ソフトウェアアプリケーション開発、ロボットソフト組み込みが行われていたそうです。
残りの2会場は高岡にあり、電気工事、木材加工、建築大工、旋盤、フライス盤が行われていました。同じ建物の中に多様な職種が並び、造園の何かを割る「カンカン」という音を聞きながら、ウェブデザイン職種の選手はサイトを作っていたと言います。
2時間半で2課題、17年で変わった競技の中身
競技の中身は、2日間で課題が2つあります。初日がアプリケーション制作、2日目がマーケティングサイトの制作で、それぞれ2時間半で行われました。
単にウェブサイトを作ればいいという競技ではありません。プログラミングの知識も要求され、幅広い知識が必要になります。それを2時間半ずつでやりきる競技です。今回はウェブデザイン職種に22名が出場しました。
2008年から関わっていると、課題の中身も大きく変わってきたと神森さんは話します。関わり始めた頃は、マーケティングサイトだけを1日4時間ほどかけて作る競技でした。当時はスマホ向けサイトを作ることもなく、PC向けのサイトを4〜5時間弱で作っていたそうです。
今はマーケティングサイトの制作時間そのものが短くなり、その中でスマホとPCの両方に対応する必要があります。さらに、当時はまったく作らなかったウェブアプリケーションも課題になっています。
神森さんが2008年から関わり続ける理由は2つあります。1つは、これから業界に入ってくる未来のウェブデザイナーが、今どんなことをやっているのかを見たいという思いです。
もう1つは、そういう若者に少しでもウェブ業界とつながってもらいたいという思いです。大会の時期になるとSNSで参加を伝えたり、開催地の制作関係の友達に「遊びに来てよ」と声をかけたりして、大会そのものを知ってもらう活動を個人的に続けています。
技能五輪、そして2028年愛知の国際大会へ
この大会は、一般の方も無料で見学できます。会場に行けば競技の様子をそのまま見られ、最近はライブ配信も行われています。
この大会の上には技能五輪全国大会があり、毎年おおよそ秋から冬にかけて開催されます。神森さんは、そちらでも競技員を務めています。
さらにその上には国際大会があります。2年に一度の開催で、今年は上海で行われ、2028年には愛知で開かれることが決まっています。神森さんは国際大会には関わっていないものの、興味深い場だと話します。
ウェブの仕事をしている方でもですね、ウェブデザインが競技の職種に入ってるってことは、ぜひですね、これを機会に知っていただけるとすごく嬉しいなと思って。
こうした大会があること自体があまり知られていないため、機会があれば一度覗いてみてほしいと呼びかけています。公式サイトのリンクは概要欄に貼られています。
フラメンコとマッシュアップしたら、失敗から見えたこと
最後のコーナーはSuno AI Labです。先週は、和風のアンビエント曲とユーロビートをマッシュアップした「Hands to the Sky (Japanese Mix)」を紹介しました。Suno ── テキストから楽曲を生成するAI音楽サービス。
和風でこれだけ面白いものができるなら、各国の楽器を使った曲と掛け合わせれば、その国っぽいものができるのではないか。そう考えた神森さんは、「Hands to the Sky」の各国版を作るプロジェクトを立ち上げました。
好きなDepeche Modeなど、UKのアーティストが別ミックスを多く作ることにあやかった試みだと言います。Depeche Mode ── イギリスの電子音楽バンド。多数のリミックスやバージョン違いを発表してきたことで知られる。
作り方は2段階です。まずその国とわかる楽器を使ったゆっくりしたインスト曲を新しく作り、次にそのインストをベースにオリジナルとマッシュアップします。ベースをインスト側にするのは、Japanese Mixと条件を揃えるためです。
今回はフラメンコです。曲名は「Hands to the Sky (Flamenco Mix)」。当初はSpanish Mixと呼んでいましたが、出来上がりが完全にフラメンコっぽかったため名前を変えました。
ただ、最初はうまくいきませんでした。1本目の素材は、カホンやパルマス、手拍子を入れ、ギターのかき鳴らしも指定した、いかにもフラメンコらしい曲でした。カホン ── 箱型の打楽器。フラメンコなどで使われ、上に座って手で叩いて演奏する。パルマス ── フラメンコで用いられる手拍子。リズムを刻む重要な要素とされる。
これをベースに3回マッシュアップしましたが、どれもフラメンコ側に強く引っ張られ、「Hands to the Sky」の歌がなかなか入ってきませんでした。そこで素材から作り直します。
パーカッションを全部抜き、原曲に合わせてキーをCマイナー、テンポを75BPMに指定して作り直しました。できたのはギター1本と低い持続音だけの、とても薄い曲でした。ChordAIで解析するとテンポは65で、指定より遅く出てきたそうです。
薄い素材で一発成功、そこから分かった2つのこと
この薄い素材でマッシュアップをかけると、一回で当たりが出ました。2曲生成され、どちらもフラメンコギターの弾き語りが30秒ほど続いてから、あっさりとイントロが入る構成でした。聞き比べて採用を決め、アウトロがしつこかったもう1曲は却下しています。
結果、ChordAIの解析ではCマイナーの151、尺は4分47秒になりました。原曲がCマイナーの151なので、キーもテンポも原曲のままです。ベースにした素材が65だったため、原曲側に引っ張られずにいたことになります。
コード進行も面白かったと神森さんは話します。冒頭はスパニッシュなスローサウンドらしいコードで始まり、その後Cマイナーの形に落ち着いていきます。イントロだけフラメンコの弾き語りがおしゃれに入ってくる曲になりました。
今回分かったことは2つあります。
- マッシュアップはガチャ前提で、同じ組み合わせでも生成のたびにキーやテンポが変わる
- 素材が薄いほどマッシュアップは通りやすい
楽器を重ねると「Hands to the Sky」が入る隙間がなくなります。ギター1本と低い持続音だけにしたら、結果的に正解だったという結論です。
お気に入りはイントロと間奏のスパニッシュギターです。素材が薄かった分、フラメンコらしさが綺麗に残ったと話しています。
まとめ
旅のカメラ選び、ものづくり競技大会、フラメンコとのマッシュアップ実験の3本立て。行き先で入れ替わるレンズも、17年続く競技員の活動も、失敗から見えた楽曲制作のコツも、いずれも神森さんの実体験に根ざした話でした。
- 旅に持っていく2本は、行き先と撮りたい画で入れ替わる。夜景は明るい単焦点、晴天の広い風景は超広角
- ものづくり競技大会にはウェブデザイン職種があり、2日間で2課題、それぞれ2時間半で競う
- 神森さんは2008年から競技員を続け、未来のウェブデザイナーと業界をつなぐ活動をしている
- 大会は一般も無料で見学でき、ライブ配信もある。2028年には愛知で国際大会が開催予定
- マッシュアップは生成ごとに結果が変わるガチャ前提で、素材が薄いほど原曲が通りやすい




