北海道の農家と津和野の創作者、YouTube歴の違う2人
今回のハナウタさんの1人目は、あぴちゃんです。北海道で野菜農家をしながら、管理栄養士・料理研究家としても活動し、YouTubeチャンネルは登録者が7500人ほどいると自己紹介しています。
もう1人のももさんは、島根県津和野町に住み、創作活動をしています。人の話を聞き、その人の思いや考えを絵や文字、色で可視化する仕事もしているといいます。
私は2週間前にYouTubeを始めました。
YouTube歴およそ2年のあぴちゃんと、始めたばかりのももさん。経験の差がある2人だからこそ、この回のテーマにそれぞれの立場から答えられる組み合わせになっています。
最初のコーナーは、最近ハナウタしたことの紹介です。ももさんは、秋の涼しい空気や晴れた日の光が美しいと単純に思うことが多いと話します。
一方のあぴちゃんは、大のポケモン好き。今年はポケモン30周年で、さまざまな会社がコラボしているため、ピカチュウグッズを買いまくっているそうです。
最近のお気に入りは、THERMOSさんの保温バッグのピカチュウのが可愛いし使いやすいし、しかも2500円ぐらいで買えるんですよ。
あぴちゃんはそのバッグを2個買い、1つは保存用、1つは実用にしているといいます。汚したら保存していたほうを使うつもりだそうです。
「今さらYouTubeは遅い?」の答えは、早さより理由
次のコーナーは、ため息さんからのお便り紹介です。ももさんが読み上げたのは、まさにこの回の2人にぴったりの悩みでした。
今更YouTube始めるのは遅いですか?
ももさんは、何かを始めるときに躊躇したり心配になったりすることは、結構多いのではないかと受け止めます。
2週間前にYouTubeを始めたももさんは、すでに横長の長めの動画を3本、簡単に作ったショート動画を5本ほど公開しています。始めたばかりで楽しい時期だと話しています。
「遅い」と感じる気持ちがあったかを聞かれ、ももさんは、YouTubeが情報インフラとして使われるようになって10年以上たつなかで、自分が先発隊ではない感覚はあったと認めます。
金の盾銀の盾を見せつけられちゃうとね。
ただ、ももさんにとって大事だったのは、始める時期ではありませんでした。
先行者が10年以上前からいて、金の盾・銀の盾を見ると「先発隊ではない」と感じる
ももさんが重視した軸。遅さは脳裏をかすめても、自分がやる理由があれば始められる
ももさんの話からは、「遅い」という不安は消えなくても、判断の軸を自分がやる理由に移すことで一歩を踏み出せる、という姿勢が見えてきます。
あぴちゃんの1本目は、なぜ自己紹介ではなかったのか
あぴちゃんがYouTubeを始めたのは2年ほど前です。InstagramやFacebookの延長のような感覚で、文字、画像の次は動画で発信してみようと考えたといいます。
発信してきたものの媒体が、なんかちょっとレベルアップしちゃったみたいなイメージ(が)自分の中ではあって。
あぴちゃんは、顔出しをしない方法もあるなかで、自分のキャラクターで発信したいと考え、顔を出すことにしました。世界中に顔をさらすことへの迷いもあったものの、好奇心旺盛な性格で「えいっ」と始めたそうです。
あぴちゃんは遅いか早いかは考えなかった一方で、今のタイミングで世界に出てよいのかどうかは気にしていたと振り返ります。
最初の1本をアップするのがすごく勇気がいるんですね、YouTubeって。
あぴちゃんは、1本目で何を作るかに悩み、最初は自己紹介をしなければいけないと思い込んでいたといいます。結局は自分の好きなことや思いつきから、えいっと出したのが最初の動画でした。
出してみると、あぴちゃんの最初の動画は意外なほど再生されなかったそうです。だからこそ、自己紹介は不要だったと気づいたといいます。
逆に自己紹介なんてしても、誰も見てないのに自己紹介したら、ちょっとなんか白けるなみたいな感じじゃない?
誰も見てくれないだろうから、最初は自己紹介をしないといけないと思い込んでいた
好きなことや思いつきから出せばよい。最初は誰も見ていないので、自己紹介はしなくてもよかった
あぴちゃんはそのうえで、数人、数十人の視聴者が待ってくれていることに価値を見出せると、動画を上げるのが楽しくなると話します。その気づきに早い段階で至れれば、次の動画、次の動画と出し続けられるという見立てです。
農家の日常を見せると、スーパーの野菜の向こう側が見える
ももさんは、あぴちゃんが普段どんなことを発信しているのか、出していて楽しいのはどんな時かを改めて尋ねます。あぴちゃんの答えは、農家としての自分の日常を発信している、というものでした。
あぴちゃんによれば、農業は多くの人にとって身近な職業ではなく、農家がどんな暮らしや気持ちで食材を生み出しているのかは知られていません。作る現場を公開する機会はなかなかなく、やらなくてもいいと考えてオープンにしない農家も多いといいます。
それでも、買う人や食べる人の側には、作られる現場を見てみたいという好奇心や、見えるところから買いたいという気持ちがあるはずだと、あぴちゃんは考えています。見ることで得られる安心もあるという考えです。
この天候でこんなに白菜、キャベツ、レタス高くなるならしょうがないな。でも買って応援しなきゃなとか。
あぴちゃんはこれを「大人の食育じゃないけど」と表現し、生産者の努力を消費者に分かってもらう必要があると話します。スーパーに並ぶみかんや大根、玉ねぎの向こうで、生産者がどれだけ時間を費やしているかを想像してほしいという思いです。
あぴちゃんは、日常の発信がYouTubeを通して多くの人に届いている手応えを、コメント欄や再生数の伸び方から感じているといいます。さらに、YouTubeの再生数がECサイト ── インターネット上で商品を販売するサイトのこと。農家が自社の野菜を直接消費者に届ける手段としても使われていますの売れ行きにもダイレクトに反映されるそうです。
日常を発信する
作業や暮らしなど、普段は公開されない生産現場を動画で見せる
視聴者が想像する
忙しい季節の大変さや、天候と野菜の値段の関係に思いを巡らせる
応援につながる
コメント欄の反応や、ECサイトでの購入に反映される
ももさんは、あぴちゃんのチャンネルのコメント欄には応援のエネルギーがあふれていると話します。生身で動く人や自然、農作業の風景は、文字や画像だけより情報量が多く、あぴちゃんの熱が伝わっているのだろうと受け止めています。
あぴちゃんにとっても、コメントは自分の力として循環しているそうです。視聴者が知らなそうなことを見つけるとまた発信したくなり、ネタが尽きないといいます。
あぴちゃんは札幌出身で、農家の生まれではありません。嫁いでから農業を始めた身として、YouTubeを通じて最初の新鮮な気持ちを取り戻し、農業の面白さをより感じられるようになったと話しています。
画家になりたいわけではない、ももさんがYouTubeを始めたきっかけ
話は、ももさんがYouTubeを始めたきっかけに移ります。ももさんはもともと気になってはいたものの、自分が何を言うことがあるのだろう、という気持ちがあったといいます。
自分自身が出ていくことの意味みたいなのを、あまり感じてなかったんですよね。
ももさんは、絵や作ったキャラクターなど、自分が反映された作品を出すことはこれまでもしてきました。ただ、最終的な作品に至るまでの過程で自分が何を感じているかを知ってもらうことが、作品の受け取りやすさにつながると感じる時があったそうです。
ももさんは語ることに苦手意識があり、避けてきた部分もあったと明かします。それでも言葉にしないと伝わらないと自覚したことが、1つ目の理由でした。
2つ目の理由は、自分は画家に憧れはあっても、画家になりたいわけではないと最近わかったことです。
どっちかっていうと、日常の中に作るとか描いてみるとか、その過程で自分が何を美しいと感じるかとかを、もっと(見つけたい)みたいなところが。
日常の中での創作と、その過程を言葉にすること。ももさんにとって、その2つを同時にできる場所が動画だったといいます。
「じっくりゆっくりたっぷりのびのび」を届けたい
あぴちゃんは、作品作りや子どもとのお絵描き、工作などを見せることで、視聴者に何を感じてほしいのかをももさんに尋ねます。
あ、これだったら表現自分もできるかもとか。
ももさんには、どこかから引用したわけではない「じっくりゆっくりたっぷりのびのび」という言葉があるそうです。焦らないゆっくりした時間の中でしか見えない感じ方があり、忙しいとそれを忘れてしまうといいます。
忘れてます。
ももさんは、自分の動画がそのゆっくりした空気感を思い出させ、癒しになればと考えています。実際に「癒される」とコメントしてくれる人が多く、それが次の表現への意欲につながっているそうです。
ももさんが住む津和野町は人口6000人ほどの小さな町です。ももさんは広島市で生まれ育ち、7年前に島根に移り住んで、結果的に島根で結婚して暮らしているといいます。
あぴちゃんは津和野町を、時の流れがゆったりした、外国人がイメージする日本のような場所だと表現します。ゆったりした津和野を見てみたい人は、ももさんのYouTubeを見てほしいと勧めています。
2年続けられた理由は、YouTubeの「目の前の人参」
ももさんは、あぴちゃんに一番聞きたかったことを切り出します。始めたばかりのモチベーションが高いのは当たり前で、2年以上続けるのは並大抵のことではないと感じているからです。
どういうことを経て今に至ってるのかっていうのが、何段階みたいなあるんですか?
あぴちゃんの答えは、YouTubeには投稿者のやる気を引き出す仕組みが裏側にある、というものでした。YouTubeは誰もが学べる教育媒体のような場所で、先生にあたるYouTuberがいなければ収益が生まれないといいます。
そのためYouTubeの管理画面では、チャンネル登録者数や視聴者数、あと何人・何時間で収益化 ── YouTubeでは一定の条件を満たすとパートナープログラムに参加でき、動画に広告が付いて投稿者に収入が入るようになりますできるかが、わかりやすく表示されるそうです。あぴちゃんは、その目標が見えやすいことに支えられたと話します。
あぴちゃん自身は、まず登録者100人を目標にしました。100人程度なら知り合いや、これまでのSNSのつながりで達成できるといいます。そこからは自分で目標を立て、動画を出して少しずつ積み重ねていきました。
動画を出し続けるうちに、それまで1000回から3000回ほどしか再生されなかったショート動画が、ある日5000回、1万回、10万回とバズるといいます。あぴちゃんのことを知らなかった人が見に来て、チャンネル登録してくれるようになるそうです。
あぴちゃんは、その間にロング動画も何本か出していきます。ショート動画を見た人がロング動画で長く視聴してくれることで、収益化の条件の1つである長尺動画の総再生時間4000時間に近づくという流れです。
それも自分の中で本当に分かりやすい、目の前の人参みたいになってて。
あぴちゃんは、幸運にも半年で収益化できたといいます。飽きないうちに収益化に乗れたことが良かったと振り返り、長引くと「本当に見てくれているのか」と気持ちが離れ、登録者も離れてしまいかねないと話しています。
趣味の範疇で続け、津和野という舞台を活かす
あぴちゃんは、あぴちゃんもももさんもYouTubeを仕事ではなく趣味でやっているとして、趣味の範疇で続けることがポイントだと話します。撮影にも編集にも時間がかかるため、ほかのことがおろそかにならないようにする必要があるからです。
もう10時だみたいなね。
ももさんは、YouTubeが暮らしを豊かにしてくれるきっかけの1つとしても機能していると受け止めます。あぴちゃんも、収益化すると1日に何千円か稼いでくれることもあると話しています。
ももさんは、全然見られなかった動画が少しずつ見られるようになる積み重ねが、自分を支えてくれると実感しているようです。ももさんの当面の目標は登録者50人で、現時点で49人まで来ているといいます。
総再生(時間)、4000時間を考えると、なんかもうまだ、やるしかないみたいな感じ。
あぴちゃんは、ももさんには津和野という舞台を上手に活かしてほしいと話します。外国人も絶対に見に来るはずだといいます。
さらにあぴちゃんによれば、YouTubeは時間のある年齢層の高い人もよく見ていて、60歳以上の視聴者も多いそうです。その世代には津和野に行きたい、昔行ったことがあるという人が多く、今の津和野の風景や、そこでの創作活動、移住者目線の暮らしは刺さるだろうと見ています。
ももさんも、あぴちゃんの動画を見て北海道らしさを感じると話します。普段見ない景色には新鮮味があり、あぴちゃんは大きな農機の迫力に驚くコメントが寄せられることを紹介しています。
どんだけお金かかるの?っていうコメント(が)だいぶ多い。
「これペイできるのか」と心配してくれる視聴者もいるそうです。あぴちゃんは、真剣に農業をしないとペイできないからこそ、自分のチャンネルは毎日真剣に農業をしている様子を見せていると話します。
自分は見ないあぴちゃんが、2歳の子のためにトラクター動画を作る
話題は、視聴者としてYouTubeで何を見ているかに移ります。ももさんは、自分と似た創作活動をする人の、癒される系のチャンネルをよく見ているといいます。
あぴちゃんは、自分はほとんど見ないと答えます。見る暇がないそうで、作り手として参考にしているチャンネルもないといいます。
あぴちゃんの家には子どもが4人いて、テレビにFire TV Stickをつないでおもちゃ系などの動画を見ています。末っ子の2歳の子はトラクターが好きだそうです。
そんなにトラクターのYouTubeばっかり見るなら、ママがトラクターのYouTube作ってやるかと思って。
あぴちゃんは実際にトラクターの動画を作り、「見て見て」と子どもに見せているといいます。ももさんは驚きながら、子どもは同じ動画を何度でも見るから再生数も回ると笑います。
あぴちゃんは、子どもと祖父母世代はYouTubeを見る時間があるとして、今年はその層をくすぐる回があってもいいのではないかと考えています。
暗渠の動画が10万回再生、何がバズるかわからない
あぴちゃんが最初にバズったのは、10万回ほど再生されたショート動画でした。内容は畑の暗渠 ── 地中に埋めた排水路のこと。農地では、穴のあいた管を埋めて大雨の水を抜き、水はけを良くする土地改良に使われます作りです。
あぴちゃんの畑では、大雨が降ると水浸しになるため、プラスチックのパイプである暗渠管を通して水を抜くそうです。あぴちゃんの家では、この暗渠管をセルフで畑に通しているといいます。
ユンボで溝掘って、管通して砂利入れて土を戻すだけの動画なんですけど。
あぴちゃん自身も「こんなのバズるの?」と驚いたそうです。アナリティクス ── YouTubeの分析機能。動画を見た人の年齢層や性別、再生時間などを確認できますで確認すると、40代から60代の男性が多く見ていて、農家の人がこっそり見に来たようだったといいます。
ノウハウを出す
ユンボで溝を掘り、管を通して砂利と土を戻す暗渠作りをショート動画にした
想定外の層に届く
40代〜60代の男性が多く視聴し、10万回ほど再生された
試す大切さを知る
何がいつバズるかわからないので、色々上げてみるとよいと考えるようになった
あぴちゃんは、ノウハウ系の動画はバズりやすいとも話します。どうやっているのか知りたくて、止めながら何度も見るからだといいます。
あぴちゃんは、ももさんにも子ども向けの工作やお絵描きを勧めます。あぴちゃんの娘は工作が好きで、流行っているスクイーズのような感触遊びのおもちゃを自分で作っているそうです。
ももさんは、子どもとどう準備して楽しんでいるかを見せる、大人も一緒に作れる動画のアイデアに「めっちゃ勉強になります」と応じ、この回は締めくくられました。
まとめ
「今さらYouTubeは遅いか」というお便りに対し、2人の答えは時期ではなく、自分がやる理由と続ける仕組みにありました。始めたばかりのももさんと、2年続けて半年で収益化したあぴちゃんの話は、これから始める人の具体的な手がかりになりそうです。
- ももさんは、遅い早いよりも自分がやる理由があるかを大事にして、YouTubeを始めた
- あぴちゃんは、最初の1本は自己紹介でなくてよく、好きなことから出してよかったと振り返っている
- あぴちゃんは農家の日常を見せることで、野菜の向こうにいる生産者を想像してもらいたいと考えている
- YouTubeの数値目標が「目の前の人参」になり、あぴちゃんは半年で収益化して飽きずに続けられた
- 暗渠作りの動画が10万回再生されたように、何がバズるかはわからないので色々試すとよいと話されている





