「顧客の声」を扱うフライルと、投資家ALPHAの顔ぶれ
株式会社フライルは、コンタクトセンターやCX ── カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)の略。商品やサービスとの接点全体を通じて顧客が感じる価値や満足度を指しますの業務を担うAIエージェント「Flyle」を開発・提供するスタートアップです。今回、大型の資金調達を発表したばかりで、そのラウンドをリードしたのがベンチャーキャピタルのALPHAです。
ALPHAの立岡恵介さんは、1年ちょっと前に200億円の1号ファンドを組成し、現在は投資活動の真っ最中だと話します。投資テーマはAI、ハードウェア、宇宙など幅広く、メインはシリーズAのアーリーステージです。
立岡さんは2013年ごろ、まだVCの黎明期だったGLOBAL BRAINに入り、12年ほど投資経験を積んだうえでALPHAを創業しました。今回の配信では、財部さん自身の苦労や、AIが盛り上がるタイミングに「ドンピシャ」の事業を届けたいと語っています。
財部さんによると、フライルの事業は大きく2つあります。1つは「AI VOC分析」で、電話、メール、チャット、アンケートの回答など、企業に蓄積する大量の顧客接点データを一元集約し、全社のCX改善に生かすプロダクトです。
もう1つが、直近に発表した「AIオペレーター」です。お客様の問い合わせに、人の代わりにAIが24時間応対するAIエージェントのサービスです。
フライルの特徴は、AIオペレーターで工数削減や人手不足を補う側面と、創業以来のVOC分析でデータをコンタクトセンターに閉じずに全社の顧客体験へ生かす側面、その両輪を回せる点にあると財部さんは説明しています。
離職率30%超、コンタクトセンターの悪循環とは?
コンタクトセンターの市場について、財部さんはまず「人手不足が非常に深刻な領域」だと指摘します。採用難を感じていると答えた企業が7割を超え、年間の離職率も30%を超える業界だといいます。
財部さんの見立てでは、こうした構造的な人手不足のため、大量の問い合わせを今の人員ではさばききれません。それが顧客体験の毀損、つまりお客様の満足度低下につながる悪循環に陥っているといいます。
そのためコンタクトセンター各社はAI活用に積極的に情報収集をしているものの、社会への実装はまだ一部にとどまっています。フライルはその中心で、コンタクトセンター領域のAI変革を手伝う立ち位置にあると財部さんは話します。
コンタクトセンターの具体像について、財部さんは、商品やサービスについて問い合わせる際のメールやチャット、電話の裏側で、今もほとんど人が対応している場面が一番わかりやすいと説明します。
一方で、コンタクトセンターには単に問い合わせをさばくだけでなく、顧客接点を担って満足度や売上のアップサイドにつなげる「攻めのコンタクトセンター」を意識する会社もあり、種類はさまざまだといいます。
2〜3兆円の市場と、月10万件の声が「宝の山」になった理由
投資家の目線から、立岡さんはまず市場の大きさを挙げます。統計上のコールセンター市場はざっくり1兆円ですが、大企業は一部を内製化しているため、本来のマーケットは2〜3兆円ほどあるのではないかと見ています。
さらに、VOC分析などコンタクトセンターの周辺領域が3000億〜4000億円ほどあると言われており、そもそも市場が大きいと立岡さんは話します。
立岡さんは、生成AIなどの技術革新で新しく生まれた市場の1つがVOC ── Voice of Customerの略で「顧客の声」のこと。問い合わせ、アンケート、レビューなど、顧客から寄せられる意見や要望の総称ですの分野だと考えています。大企業では、コールログだけでも月に10万件ほどあるといいます。
十万件のコールログですよ。非構造化データなわけですよ。
で、ここ(10万件のコールログ)からお客様の声だってなんか抽出するわけですけど、できます?
いや、むずそうですね。
立岡さんによれば、4〜5年前まではチェリーピックで一部を拾うか、なんとなくタグ付けしてそれらしい分析をする程度しかできませんでした。それが今は処理できるようになり、この2〜3年で小さかった市場が急に大きくなった感覚があるといいます。
立岡さんは、そこに強烈にヒットしたのがフライルだと話します。コンタクトセンターの側でも、既存の2〜3兆円の一部がAIに移り、大量処理と心地よい顧客体験が実現すれば、さらに市場が広がる「正のスパイラル」の過渡期にあると見ています。
AIへの移行
既存市場の一部の業務がAIに置き換わる
処理量の拡大
より大量の問い合わせを処理できる
体験の向上
お客様がより心地よい体験を得られる
市場の拡大
さらに市場が大きくなっていく
PM向けSaaSから、国内最速の「VOC×LLM」へ
フライルがこの領域に気づいたのは、生成AIの波より前だったと財部さんは話します。創業初期のフライルは、プロダクトマネージャー向けのソフトウェアから始まりました。
当時のフライルは、カスタマーサクセスや営業が顧客から集めた要望やフィードバックを開発チームに連携し、ロードマップや開発の優先順位の意思決定に使うSaaSを、2020年以降に提供していました。
そのPM向けSaaSにも徐々に大企業から引き合いが来るようになります。財部さんによれば、大企業はVOCの件数が桁違いで、スタートアップが月数十件〜数百件なのに対し、大企業では数千件、数万件、月10万件という規模になるといいます。
財部さんたちはAI機能を開発しないと処理が追いつかないと考え、2021年後半ごろから、体制を整えてAI機能をリリースしたいと話し合っていました。ChatGPTが台頭する前のことです。
これまで自分たちがやりたかったことが前倒しでできるかもしれないということで、結果的には2023年の頭に、多分国内で最速ぐらいのタイミングでVOCかけるLLMの領域でサービスを立ち上げることができたんじゃないかな
社名の由来は「フライホイール効果」
社名のフライルは、財部さんが大好きな本『ビジョナリー・カンパニー』に出てくるフライホイール効果 ── 「はずみ車効果」とも訳される考え方。重いはずみ車を押し続けると、勢いがついて回転が加速していくように、小さな好循環の積み重ねが大きな成長を生むことを表しますという言葉を、名前らしく変えたものだといいます。
財部さんがこの社名に込めたのは、企業の本質的な成長サイクルを支援したいという思いです。競争環境や顧客ニーズが移り変わるなかで、変化を捉えて選ばれ続ける企業やサービスを支えたいと話します。
財部さんは、PM向けSaaSでも大企業向けのVOC分析でも根本は変わっておらず、ミッションはぶれずにここまで来られたと考えています。
中高生で「なぜか」起業に惹かれた原点
財部さんが起業や会社経営に興味を持ったのは、中学・高校のころからでした。財部さん自身、今振り返っても「なぜか」としか言いようがないといいます。
高校時代の財部さんは、ライブドアのニュースが世間をにぎわせていたころ、内容をよく理解しないままテレビを食い入るように見ていたそうです。ビジネス本も、わからないなりに買って読んでいました。
ただ当時の財部さんの身の回りには経営者も起業家もおらず、具体的なイメージはありませんでした。ビジネスへの興味から慶應の経済学部に進むと、起業やビジネスに関心のある友人が周りに出てきます。
財部さんにとっての転機は、大学2年生のとき、友人の誘いで参加したヘッジファンドのインターンでした。実態はかばん持ちで、オーナーの引っ越しを手伝い、壺を運ばされたこともあったといいます。
(ヘッジファンドのオーナーの)この壺を割ったらもう人生終わるんだろうなとか
財部さんは、この経験を通じて、会社を経営しリスクを取って挑戦する人のイメージが具体的になり、そこからのめり込んでいったと振り返ります。
震災の2週間後に渡米、サンディエゴで入ったスイッチ
財部さんは大学2年の終わりに1年休学し、アメリカのサンディエゴに留学しました。孫正義さんの本『志高く』で、退路を断ってアメリカへ渡る「脱藩」のエピソードなどを読み、早くからグローバルな視点でビジネスを学ぶのは面白そうだと思ったのがきっかけだといいます。
財部さんにとって、2011年は人生の転機でした。渡米は3月25日か26日ごろで、その直前の3月11日に東日本大震災が起きています。
あの時に結構自分が普段当たり前に享受している社会インフラだったりとか、日本の素晴らしい環境みたいなものって、こういったことで揺らぎ得るんだなとか
東京に住んでいた財部さんは、状況を打破しようとするリーダーたちの姿をテレビ越しに見て、気楽に生きていた自分にスイッチが入ったと話します。将来、日本や社会の役に立てる人になりたいという思いで渡米できたことは、結果的にいいタイミングだったと振り返ります。
アメリカでは、マーク・ザッカーバーグを描いた映画『ソーシャル・ネットワーク』や、同じ2011年に亡くなったスティーブ・ジョブズのスタンフォード大学でのスピーチにも影響を受けました。現地でアントレプレナーシップを専門にする先生からも学んでいます。
財部さんは、帰国するころには日本で起業家になって社会をいい意味で変えたいというモードになっていたといいます。おいなりさんの言葉を借りれば「バキバキ」の状態で、2年生までの友人からは別人に見えたのではないかと話しています。
寝袋で365日中350日、学生起業で知った事業の面白さ
帰国後の財部さんは、すぐ起業すべきか迷いながら、外資系金融機関のインターンや、ベンチャーの短期・長期インターンを掛け持ちし、大学3年の前半はインターン漬けの生活を送りました。
しかし財部さんは、外資系のジョブや事業企画インターンは「シミュレーションゲームの域を出ない」と感じ、長期インターンも補佐的な立場で学べるのは一部だと感じました。自分で事業全体を回さないと、起業家としての成長は遅いと考えたといいます。
そこで財部さんは大学3年の後半に、就活生をイベントで集客して企業とマッチングする新卒採用支援の事業を始めます。事業全体を回すのは面白く、一気にのめり込んでいきました。
財部さんは就職活動もひと通り行い内定も得ましたが、事業家としてこのまま続ける道を選びます。大学4年はほとんど学校に行かず、会社に寝泊まりして365日中350日ぐらい寝袋で生活しながら事業に打ち込んだそうです。
Twitterで見つけた創業1期目のZUUへ、マンションの一室から上場まで
財部さんの学生起業の事業はうまく立ち上がり、メンターの支援を受けながら実務を一通り担ったことで多くを学べたといいます。ただ人材事業で、当時の実力では線形の成長しかイメージできず、圧倒的に大きな事業を作れる感覚はなかったそうです。
卒業間近、事業を支えてくれた社会人に引き継ぐ目処が立ったこともあり、財部さんは修行を積める環境に飛び込むことを考えます。そのときTwitterで見つけたのが、ZUUの創業者である富田さんでした。
財部さんは、金融業界を変えるという富田さんの志に共感しました。野村證券で伝説の営業マンと言われた人物のそばで、社会人として突き抜けた人から学ぶべきだと考え、起業のバトンを他のメンバーに渡したといいます。
ZUUとのコンタクトはTwitterのDMで取り、面接はマンションの一室だったそうです。当時のZUUは創業1期目で、その後、創業から5年で上場しました。
自分自身のこのキャリアとしては、本当に、あのマンションの一室から、上場みたいなプロセスを経験させてもらえたので、本当にいい経験をさせていただいたなと思ってますね。
ZUUでの財部さんは、事業立ち上げの営業やマーケティング、採用や評価制度設計まで何でも担いました。後半は新規事業の立ち上げ責任者や、当時メインだったメディア事業の責任者も務めています。
ドラマーの父と看護師の母が育んだグロースマインドセット
迷わず飛び込める財部さんの自己肯定感はどこから来たのか。おいなりさんの問いに、財部さんは両親の影響が大きいと答えます。父親は元ミュージシャンのドラマーで、30代前半か半ばまでバンドで生きていこうと音楽を続けた努力家だったそうです。
看護師の母親からは、センスや能力を褒められたことはほとんどなく、「努力家で、努力できてすごいね」と言われて育ったといいます。そのため財部さんは、うまくいかなくても努力で乗り越えられると、物心ついたころには思えるようになっていました。
財部さんはこれを、キャロル・ドゥエックの著書『マインドセット』にあるグロースマインドセット ── 能力は生まれつき固定されたものではなく、努力や学習によって伸ばせると捉える考え方。反対に、能力は変わらないと考えるのが「フィックストマインドセット」ですと重ね、フライルの採用方針にも掲げていると話します。
で、なんか「能力を、あの、固定的なものと捉えるんじゃなくて、能力っていうのは頑張れば、努力をすれば、あの、変えられるよね」みたいなことを、あの、思えているかどうかっていうのが、まあグロースマインドセットだと思うんですけど
社内で「失敗してきてなさそう」と言われる財部さんですが、本人は失敗は山ほどしてきたと話します。ただ、つらかった記憶はあまり残っていないそうです。
客観的に見てハードだったのは、ZUUで新卒2年目のとき、役員、マネージャー、財部さんの3人の営業チームから2人が同時期に辞めた局面です。財部さんは次の人が採用されるまで、新規営業と既存顧客の対応を一人で乗り切ったといいます。
あえて「何もしない1年」、PM100人に聞いて決めた創業領域
財部さんがZUUを辞めたのは2019年3月です。その後、1年ほどを起業準備期間にあて、どの領域をやるかをフラットに考えました。
財部さんがあえて「何もしない期間」を作ったのは、ZUUでの経験から、始めた後には大変なことが多いと知っていたからです。本当にその領域でやりきれるかを見定めて決めたかったといいます。
ZUUでの5年間を振り返った財部さんの反省は、営業やマーケティングの中のPDCAは回せていた一方、開発チームと営業チームの間で部門を超えた改善サイクルを作れなかった点でした。
営業
お客様からのフィードバックや課題を集める
開発
集めた声を製品開発に還元する
営業へ還元
製品ビジョンや考え方を営業チームに返す
財部さんは他のスタートアップの話も聞き、プロダクトマネージャー100人ほどにインタビューしました。どの会社にも必要な仕組みなのに、当時はスプレッドシートなどアナログに回っていたといいます。
財部さんは、セールス領域のベストプラクティスを体現する会社としてセールスフォースがある一方、部門を超えて製品やサービスを改善する領域のベストプラクティスを持つ会社はまだないと考えました。こうしてプロダクトマネジメントの領域から始めると決め、2020年後半にベータ版、2021年の頭に正式版をリリースしています。
「難しいことをやっている」から投資の決め手へ
立岡さんと財部さんが最初に会ったのは2022〜2023年ごろで、立岡さんの前職時代のことでした。当時はPM向けSaaSの時期で、今の顧客ターゲットにはなっていなかったといいます。
立岡さんは当時、物はいいが「結構難しいことをやっている」という印象だったと話します。セールスは数字に落とし込みやすい一方、プロダクトづくりはセンスや暗黙知のような定性的な面が多く、SaaSとの相性はよくないと考え、投資は見送りました。
PM向けSaaS。定性的な領域でSaaSとの相性に疑問があり、前職時代は投資を見送り
売り先を変え、膨大な顧客の声を分析できる先鋒に。ALPHAとしてリード投資
今回の投資について、立岡さんはまず、フライルがシンプルに大きくグロースしており、PMF ── プロダクト・マーケット・フィットの略。製品が市場のニーズに合致し、顧客に強く求められている状態を指しますが明らかにできている点を挙げます。売り先を変え、ここ2〜3年でできるようになった顧客の声の分析で、先鋒の立ち位置にいることが大事だといいます。
立岡さんは何社かの顧客にヒアリングし、みんながフライルの熱心なファンで「これがないともう困ります」という感覚だったことに驚いたと話します。
立岡さんが評価したのは、データを可視化して渡すだけでなく、それを前提にしたワークフローや進め方を作り直す部分まで、フライルが個社ごとに一緒に作りに行く点です。PM向けにやってきた経験から、組織の動き方や意思決定への解像度が高いことが、顧客の信頼につながっていると見ています。
AIネイティブに作り直したプロダクトと、顧客に入り込む提案
フライルが汎用的なSaaSより個社に入り込む製品なのかというおいなりさんの問いに、フライル側は、大量のVOCを活用する領域はLLMの進化なしには成り立たなかった世界であり、顧客も他のベンダーもまだ十分な解を持っていない市場だと説明します。
そのためフライルは、国内最速で事例を作りながら、ベストプラクティスのない領域で解を積み上げ、他の顧客に提案できる仕組みや組織体制を整えてきたといいます。顧客がどんなデータを持ち、どんなゴールでCX変革をしたいかをヒアリングすれば、かなり寄り添った提案ができるという考えです。
プロダクトの設計も、既存のSaaSにAIを付け足したものではなく、AIネイティブに完全に作り直したといいます。LLMのポテンシャルを損なわず、仕様上の制約でワークフローやデータベースを変えられない状態をなるべくなくすことを目指しています。
LLMでやりたいことを一通りできる、制約の少ない設計
顧客の状況に合わせ、最短でベストプラクティスやユースケースを示す
柔軟性だけでは顧客が迷ってしまうため、この両輪を回すことがフライルの価値になっていると説明されています。営業でも開発でも顧客の理想に寄り添えることが、やりがいのある面白さだとも語られています。
「PM向け」では大企業に届かなかった、ピボット前の苦しみ
順調に伸びているように見えるフライルですが、ピボットの前後で状況は大きく違ったといいます。PM向けの領域は国内スタートアップのPM層には刺さった一方、売上は立ちにくかったと語られています。
立ち上げ当初から、大企業にどう広げるかは課題として意識され、さまざまな手を尽くしたそうです。しかし「プロダクトマネージャー向けSaaS」と打ち出すと、問い合わせてくるのは大企業の中でも感度の高い新規事業責任者などが中心でした。
フライルのプロダクトの価値は、大量のデータを組織を超えて活用する点にあります。そのため「PM向け」というコンセプトはミスリードになってしまい、結果的に2022年ごろまでは苦しんでいたと振り返られています。
AIオペレーターはなぜ「顧客理解」から始めるのか?
VOC分析について、フライル側は「Why Now」が明確な領域だったと話します。大企業のコンタクトセンターにはVOCのデータが蓄積し、技術も進化しているのに、それを価値につなげるまでには距離がある状態でした。
そのためVOC分析には自然に顧客が集まり、展示会でもウェビナーでもアウトバウンドでも、すんなり商談が取れて受注につながったと財部さんは話します。受注先からのフィードバックで、必要な機能を先回りして実装できたことも成長を後押ししたといいます。
AIオペレーターの領域では、このVOC分析の優位性が生きると財部さんは考えています。AIオペレーターがうまくいかない理由の1つは、AIで取り組むべき領域が定まっていないことだといいます。
財部さんは、顧客とのコミュニケーションを4つの領域に分けて捉えています。
VOC分析をして、どの領域にAIオペレーターをはめていくのかっていうところの、まずこの理解が先で、その後にAIオペレーターを導入していくっていうのが本来あるべき姿なのかな
ひたすらAIオペレーターで全部生産性上げようぜっていう競技じゃないんですね。
まさにそうです。
財部さんによると、VOC分析が生きるポイントはもう1つあります。AIオペレーターの立ち上げでは、AIが応答できていないやりとりを可視化し、ナレッジやFAQを補充するサイクルを回すことが重要で、これは創業以来のVOC分析の取り組みがそのまま生きる部分だといいます。
「コスト10分の1」ではなく「選ばれ続ける」ためのCX変革
競合が激しいAIオペレーターの市場で、フライルが最も重視しているのはゴール設定だと財部さんは話します。コストが10分の1になった、人の代わりにAIが応対できるようになった、というだけでは、企業が顧客から選ばれる状態になるとは限りません。
財部さんは、企業の究極のゴールを、自社の製品やサービスが顧客から選ばれ続ける状態だと考えています。そこから見れば、あえてコストをかけて顧客との接点を持つという手段もあり得るといいます。
コストを10分の1にする、人の代わりにAIが応対する
自社の製品やサービスが顧客から選ばれ続ける状態を作る
財部さんにとって重要なのは、CX変革のためのAIコンタクトセンターを立ち上げることです。創業以来の経緯があるからこそ、そのゴールから逆算してAIオペレーターを提案できる点を大事にしたいと話しています。
急成長の先にある組織の課題と、求める仲間
今の課題について、財部さんは組織体制の強化を挙げます。名だたる大企業と取引するなかで、既存の取引先にもまだ提案できることが多く、ビジネスサイドにも開発サイドにも「この機能があれば確実に伸ばせる」ものが見えている局面だといいます。
財部さんが求める人物像の1つ目は、グロースマインドセットを体現する人です。フライルは途方もなく高い目標を追い続ける会社で、今のスキルのまま戦うより、できないことをできるようにしながら事業と組織の課題を乗り越える姿勢が大切だと話します。
2つ目は、フライルのバリュー「ユーザーの理想に活路を見出す」に共感できる人です。フライルは自社でもフライルを使い、営業と開発が垣根なく提案やプロダクト開発に取り組む会社で、職種の枠を超えて活躍したい人と話したいといいます。
立岡さんのエールと、財部さんが語る社会的意義
立岡さんは、財部さんが最後に語った顧客への向き合い方こそ本質だと話します。CX領域の事業だからこそ、フライルは顧客の顧客にも、顧客自身にも誰よりも向き合っており、それがカルチャーににじみ出た「すごくいいチーム」だといいます。
財部さんは、フライルの領域は社会的意義が極めて大きいと語ります。少子高齢化で人手不足が課題となるなか、コンタクトセンターの現場の人手不足に直接力になれることが1つ目の意義です。
そして財部さんにとって、その先にあるCX変革を社会実装できることが、もう1つの大きなやりがいです。
財部さんは、このAIコンタクトセンターが普及すれば日本企業の競争優位性が高まり、消費者にとっても素敵だと思える製品やサービスが世の中に溢れる世界を作れるのではないかと話しています。
聞き手のおいなりさんは、効率化に疲れている人も多いAI時代に、社会をより良くすることに直結するプロダクトだと感じ、考え方が変わる時間だったと締めくくりました。
まとめ
フライルは、人手不足に悩むコンタクトセンターに届く膨大な顧客の声を、生成AIでようやく扱える「宝の山」に変えた企業です。PM向けSaaSからのピボットを経て、VOC分析で顧客を理解し、そのうえでAIオペレーターを入れるという順番を大切にしています。財部さんが一貫して目指すのは、コスト削減の先にある「選ばれ続ける」企業づくりです。
- コンタクトセンターは採用難の企業が7割超、年間離職率30%超という人手不足の悪循環にある
- 立岡さんは、月10万件にもなるコールログが生成AIで分析可能になり、VOC市場が「宝の山」に変わったと見ている
- フライルはPM向けSaaSで大企業に届かず苦しんだ後、国内最速クラスでVOC×LLMに踏み出した
- AIオペレーターは、VOC分析で「AIが担う領域」と「あえて人が担う領域」を見極めてから導入するべきだと財部さんは考えている
- ゴールはコストを10分の1にすることではなく、自社の製品やサービスが時代を超えて選ばれ続ける状態を作ること






