「お金がもらえるから仕事」の順番を、ひっくり返して考える
「仕事はお金がもらえるからやっている。お金がもらえないなら仕事ではない」。この気持ち自体は、わかります。
でも私は、この順番が本質的には逆なんじゃないかと思っているんです。
給料って、会社が出しているように見えますよね。毎月きちんと振り込まれるので、会社からもらっている感覚になる。
でも本質的には、お金を払ってくれているのはお客様です。会社に払われるのが先で、給料はその後なんですよね。
ということは、お金をもらえるかどうかを決めているのは、お客様に価値を提供できているかどうか、ということになります。
もし「僕はスキルがないので価値を提供できません。でもお金は払ってください」という理屈が通るなら、それでいいんですよ。でも、たぶんお客さんは払ってくれないですよね。
スキルがないなら、なんであなたのいる会社にお金を払わなきゃいけないの、と言われてしまう。
だからこそ、アウトプットするスキルがないとお金はもらえない。それだけの話なんじゃないかと思うんです。
会社は学ぶ場所じゃなくて、結果を出す場所
もう一つ大事にしている考えがあります。会社って、そもそも学ぶ場所ではないんですよね。
会社の本質的な定義は、みんなで利益を追求する集団です。結果を出すところなんです。
もちろん、まったく何も教えないわけではありません。うちの会社でも新卒研修はやりますし、ビジネスマナーや名刺の渡し方、メールの書き方みたいなものは普通に教えます。
エンジニアの基礎研修も、2ヶ月くらいは給料を払ってやっています。
ただそれは、うちの会社が「そうする」と決めているからなんですよね。
基礎的な勉強は小中高や専門学校で学んできている、という前提が世の中にはあります。会社が全部の学習コストを持つ義務があるわけではないんです。
だから、教えてもらってないからできない人と、自分で勉強してできるようになった人がいたら、できるようになった人が評価される。これはもう、そういう仕組みなんです。
冷たく聞こえるかもしれませんが、自由競争の中では、やれる人がどんどんやっていってしまう。自分のために勉強している人が、勝手に勝っていく世界なんですよね。
企画が通らないのも、根っこは同じ話
実はこの日、別の方から「会社で改善の企画を出しても、年配の担当者が取り合ってくれない」という愚痴ももらいました。
一見別の話に見えるんですが、私の中では根っこは同じなんです。
企画が通らないときって、だいたい「説明」しかしていないんですよ。これはこうです、費用対効果があります、だからやりましょう、という具合に。
でもそれは、あなたが費用対効果があると思っているだけかもしれない。判断する側にとってのメリットが見えていないと、社内だろうと社外だろうと企画は絶対に通らないんです。
私はディレクター育成講座でもずっと言っているんですが、大事なのは「説得」です。強い語気で押すことではなくて、説明して納得してもらうこと。
相手が相手の土俵の上で「これはいい」と思えるようにパッケージングするスキルがないと、いい企画でも通らないんですよね。
昔見た「ラブジェネレーション」というドラマで、木村拓哉さんの役がコンペに負けたあと「でも俺たちはいい仕事をした」と言うシーンがあるんです。
それに対して上司が「いい仕事だから勝てると思うな。勝ったからいい仕事なんだ」と返す。若い頃の私はこれを見て、社会人になるのが怖いなと思いました。
でも30年くらい仕事をしてきて、今思うとまあ事実なんですよね。いい仕事をするのは当たり前で、それを評価するかどうかは評価者側が決めることなんです。
結局、最後は人と人で回っている
自分のスキルを上げるのも、企画を通すのも、突き詰めると同じところに行き着く気がしています。
自分の尺度で「いいもの」を作っただけでは、価値としては弱いんですよね。相手が何を「いい」と思うのかを逆算できるかどうか。
企画を評価する年配の担当者にも、さらに上の部長や社長がいるかもしれません。その人たちに「なんでOKしたんだ」と言われるわけにはいかない。
だとしたら、評価する人がなぜOKを出すのかまで先読みした企画を出さないと、絶対に通らないと思うんです。
最後は人と人で仕事は回っているし、人の感情を全部除外することはできません。
特にディレクターは「あなたと一緒に仕事をしたい」と思ってもらう要素が大事だと私は思っているので、感情としてどう伝えるかは大切にしてほしいんですよね。
まとめ
自分で勉強しなきゃいけない理由を、やりがい搾取だと感じる気持ちはわかります。でも私は、お客様に価値を届けられるかどうかがすべての起点で、そのためのスキルは自分で積むしかない、と今のところ思っています。少し厳しい言い方に聞こえたらごめんなさい。少なくとも私はそう思って仕事をしてきました。
- 給料は会社からではなく、本質的にはお客様の価値提供から生まれている
- 会社は学ぶ場所ではなく利益を追求する場所なので、学習を全部会社が持つ義務はない
- 企画もスキルも、相手が「いい」と思う理由を逆算できるかで結果が変わる
- 最後は人と人。感情としてどう伝えるかも、ディレクターには欠かせない






