見積もりは積み上げるだけ。でも一番難しいのは「納品まで正解がわからない」こと
見積もりの方法自体は、実はすごくシンプルなんです。
それぞれのクリエイティブのメンバーがやることと、それにかかる工数を積み上げていく。ただそれだけなんですよね。
ただ、見積もりの本当に難しいところって、納品のときになって初めて、その見積もりが正しかったか間違っていたかがわかるという点なんです。
見積もりはあくまで、まだやっていないことに対する想定でしかないですからね。
だから多すぎるかもしれないし、少なすぎるかもしれない。でも会社として仕事をやる以上、赤字にするわけにはいかないんです。
かといって、ぼったくりだとお客様に見られてしまったら、それはそれで次の発注がなくなってしまう。だからお客様が納得できる数字になっているかが、やっぱり一番大事な要素だと思っています。
見積もりを難しくしているのは「内在するリスク」
見積もりが全員に作れるかというと、うちの会社でもなかなか難しいなと思います。
現場それぞれにヒアリングが必要ですからね。デザインに何日かかるか、マークアップにどれくらいの時間がかかるか。ちゃんと聞かないといけません。
そしてもっと難しいのが、見積もりの中に内在してくるリスクを、どれだけリアルに感じられるかなんです。
よくあるのが、デザインの修正回数ですよね。1案しか出していないのに、修正、修正、修正で「これ何修正目なんだ」となってくる。
僕らの仕事はどこまでいっても労働集約なので、1案を10回修正すれば、当然その分だけ時間がかかってしまいます。
要件定義ひとつ取っても、お客様がパッと決めてくれるのか、社内で揉んでなかなか決まらないのか。当初聞いていなかった資料を「出してくれ」と言われることもあります。
だからこそ、何を納品するのか、どこまでがこの見積もりの許容範囲なのかを見積書に明示して、お客様とちゃんと握れるかどうかが大事なんですよね。
僕が見積書を「細かく」書くのは、お客様も怖いから
見積もりって、書き方次第で本当に変わります。
僕はかなり項目を細かく出すほうです。100万円の仕事でも10行や20行になりますし、四桁万円の仕事だと、多いときで200〜300行くらいの項目になることもあります。
紙1枚には収まらないので、別添の資料みたいな形になったりしますね。
なぜそこまで細かくするかというと、見積もりって、実はお客様も怖いんです。
ここに書かれた金額で一体どこまでやってくれるのか、相手側にもわからないんですよね。
だから、修正回数ひとつ取っても、制作会社側が思う常識と発注者側が思う回数にはズレがある。それを両方が話しておかないと、必ずズレます。
「これぐらいでご了承いただきたいです。もし不安なら、その分の稼働はかかるので、こういう見積もりにさせてください。その代わりここまでは必ず対応します」。そんなふうに、対応してくれる幅や上限を見積書の中にちゃんと含めているか。そこがすごく大事だと思っています。
安く取るのが悪いんじゃない。でも赤字のリスクは別にある
今回、質問をくださった方の会社では、おそらく安くして仕事を取っている感じだ、と書かれていました。
単価を下げて競争力を持つ。これも一つの仕事のやり方だと思いますよ。
ただ、当然これは薄利多売になってきますよね。利幅が少ないということは、バッファーが少ないということでもあるんです。
だから、想定していないページが2〜3ページ増えた瞬間に、残念ながら赤字になってしまう。そういうリスクが別の意味であるんですよね。
じゃあどうするかというと、僕らの仕事はもう、単価を上げるしかないんです。
でも単価を上げると、今度はお客様がその単価に納得できるだけの別の理由が必要になります。実績があるとか、スキルが高いとか、デザインが超イケてるとか。
そういうものがないまま単価だけ高いと、「他の会社はこれぐらいでやってますけど、御社すごく高いですよね」となって切られてしまう。単価を上げれば、金額じゃない競争優位性がないと勝てなくなる。だから発注量が減る可能性も当然出てくるんです。
結局、見積もりは「企画書」だと思っています
以前、僕がTwitterで、フリーランスの見積もりの漫画に突っ込んでいたのを見たという質問もいただきました。
その漫画では、見積書や料金表は相手に見せるべきではない、という話がされていたように僕は受け止めたんです。
先に自分の料金を出してしまうと、相手が5万円出すつもりでも「3万円でやってくれるんだ、ラッキー」と思われてもったいない、という考え方ですね。
言わんとすることはわからなくもないんです。でも、これって単発で終わるなら成立するんですよ。
同じお客様から次の仕事が来たとき、前回いくらで何を出したかを全部覚えて、整合性を取り続けないといけなくなる。前回5万円が今回3万円だと「随分安くなったね」となって、ボロが出るんですよね。
お客様の数が増えるほど、これは相当きついはずなんです。だからうちは単価を決めていて、あとは何日かかるかを掛けているだけなんですよ。
それにそもそも見積書って、本来は契約書なんですよね。業務委託基本契約書に対する個別契約書という建て付けになるはずなんです。
だから見積書を出さないと、相手の会社は受けられない可能性がある。担当者に決裁権がなければ、上司に出す書類がないわけですから、発注チャンスそのものを逃してしまうと思うんです。
僕にとって見積書は、金額が書いてあるだけのものではなくて、うちの会社にとっての企画書なんです。これだけの工数と金額がかかる、そうでないならどうしましょうか、という話ができるものなんですよね。
だから僕が目指したいのは、値引きでもなく、安く思われることでもなく、「高くてもあなたに発注したい」と言ってもらえること。それが一番だと思っています。
まとめ
見積もりに、はっきりした唯一の答えはないと思っています。安くても高くても、最終的にお客様が納得すればいいんですよね。ただ、その「この金額だよね」と納得してもらえるものが何なのか。僕はそこを考え続けることが、見積もりの答えに一番近いんじゃないかなと、いまは思っています。
- 見積もりは工数の積み上げでしかないが、正解は納品時にしかわからない
- 修正回数など「内在するリスク」を見積書に明示し、お客様と握っておくことが大事
- 安く取ること自体は方針だが、想定を超えた瞬間に赤字になるリスクがある
- 見積書は値段表ではなく企画書。整合性を取り続けられる形で出すことが信頼につながる






