無駄に歴が長い、30年もののIllustrator使い
野島さんの自己紹介を聞いて、僕がまずびっくりしたのがデザイン歴でした。
『Illustrator』を使い始めて「29年か30年ぐらい」だと言うんです。僕がこの仕事を始めて28年目なので、それより長いんですよね。
20歳、21歳の頃に一度制作会社に勤めて、映像制作や音声編集をやっていた。その時に『Illustrator』を使い始めたそうです。
当時のバージョンは2.5とか3。レイヤーもなくて、戻るが1回しか効かない時代です。僕も同じ時代を通ってきたので、この話はもう笑ってしまいました。
「自分で戻るを作らないといけないですよね」と野島さん。保存しまくって、ファイル名が100番台までいく、あの感覚です。分かる人には分かるやつですよね。
声優で食えなくなったら、の保険だった話
驚いたのは、野島さんがデザインを続けてきた理由でした。
20代前半で声優になろうと転職したとき、「ぶっちゃけ食えると思ってなかった」んだそうです。だから手に職は落としちゃいかんと思って、サラリーマン時代に貯めたお金で『Mac』を買い、『Photoshop』と『Illustrator』を買った。
声優で食えなくなったらすぐこの2つの使い手になろう、と。舞台をやったときには「僕作れるんで作ります」と自ら志願して、劇団のポスターやチラシを作っていたそうです。
「これ聞いてる人たちね、みんなびっくりするよね」と僕が言ったら、野島さんはこう返してきました。「安心は一生訪れない仕事ですから」。
これ、僕が言っても説得力ないんですけど、第一線でやってらっしゃる野島さんが言うと妙に響くんですよね。
野島さんは「声優に限らず、あらゆる自営の仕事は安心を一生得られない」とも話していました。僕自身も会社をやっているので、これはもう全く同じ気持ちです。
デザインの原点は「企業ロゴが好きすぎた」少年時代
じゃあなぜ、仕事でもないのにデザインを続けられるのか。ここがすごく面白かったんです。
野島さんがデザインに目覚めたのは、15か16歳の頃。きっかけは企業ロゴだったそうです。
好きな企業ロゴを、まだブラウン管だったテレビCMからカメラで撮って、それを紙に起こしていたと言うんですよ。ロゴ集の雑誌を買って、誰がデザインしたか調べたりもしていたそうです。
好きこそものの上手なれって、こういうことなんだなと思いました。
『Illustrator』の何が好きかという話も印象的でした。少し日を置いて違う目線で見たときに、修正がめちゃめちゃ細かくできるところが気に入っているそうです。
アンカーポイントを動かせばいい、その手軽さが好きすぎて、20年ぐらい前に始めたブログのタイトルを「アンカーポイント」にしたんだとか。声優なのにアンカーポイント。当時その理由が分かる人はいなかったでしょうね。
趣味の断捨離と、楽しくやるということ
野島さんは本当に多趣味です。デザイン、写真、自転車、作曲、ミニチュア造形まで。
でも「趣味が増えすぎると本当にやばい」ので、趣味の断捨離をしているそうです。手間がかかる、モチベーションが上がらない、そういうランキング低めのものは切っていく、と。
そのうえで、仕事で大事にしていることを聞くと「とにかく楽しくやること」だと話されました。
ただ、僕はここで一つ、聞いている方に誤解してほしくないなと思ったんです。楽しむって、キャッキャウフフとやることじゃないですよね。
野島さんもそこは同じでした。「もちろんめちゃくちゃ辛いこともいっぱいある」。好きなことをやってるからには、辛いことがたくさんあるのは前提だ、と。
そのうえで野島さんには特技があって、何かしら楽しいところを見つけるのが得意なんだそうです。
米袋を一日5トン積み下ろしするバイトをしていたとき、最初は辛いだけだった。でも、どうやったら力を使わずに重心をかけて持ち上げられるか研究しながら何百袋も持ち上げていたら、だんだん楽しくなってきたと言うんです。「今のうまくいった」「これ違うんだ」と、自分の上達が見えてくる。
これ、僕はすごくよく分かるんですよね。本来は面白くもなんともないことを、自分なりの楽しみに変える。そのアイデアを出すのが、野島さんは得意なんだと思います。
まとめ
しんどいことからは逃げていい、というのも僕は間違ってないと思っています。でも、好きなものの中にも辛さはあるし、逆に辛いだけに見えることの中にも、自分で見つけにいける面白さがある。まだうまく言葉にしきれていないんですが、いまはそんなふうに考えています。
- 野島さんは声優で食えなくなったときの保険として、30年近くデザインを続けてきた
- デザインの原点は15、16歳で企業ロゴに夢中になったこと。好きが上達につながっている
- 多趣味ゆえに「趣味の断捨離」をして、注ぐエネルギーを絞っている
- 「楽しむ」はキャッキャすることではなく、辛さを前提に自分なりの面白さを見つけること






