「手を抜く」って、実はすごく主観的な言葉なんです
まず前提として、価値観は人それぞれだと思っています。
生活費が稼げればいいというライスワーク的な考え方もあるし、余暇を大事にしたいという人もいますよね。
欧米では今さらライフワークバランスなんて言う人はあまりいなくて、生活と仕事はきっぱり分けられるものじゃないから、両方が自分の人生にとって良いものになるように働こう、という考え方が主流だと聞きます。ライフワークインテグレーションみたいな言い方もあるらしいです。
しゃかりきに働くのが人生だとは私も思わないので、どっちでもいいかなと思うんです。
ただ、この「ほどほどに手を抜く」という言葉、実はすごく主観的なんですよね。
おはがきをくれた木工用ジェームズボンドさんが、他の人よりずっと仕事ができる状態で手を抜いているなら、それでも他の人より働いているかもしれない。
逆に、普段からあまり仕事をしていない人が、この言葉を真に受けてさらに手を抜いたら、本当に解雇される可能性だってあります。
だから言葉尻だけ取って「そうか、手を抜けばいいんだ」とやるのは、ちょっと危ないなと思うんです。
給料が上がらないのは、下がらないことの裏返しでもある
もう一つ、「給料が上がるわけではないから」という部分についても書いておきたいです。
これはよく言われることですが、今もらっている給料分は働かないと評価が下がるというリスクはあります。
給料の3倍とか5倍の粗利を上げておかないといけない、という会社もありますからね。
たとえば給料30万円なら、月に90万円が自分一人の稼働分。それを大きく下回っていると、給料分は稼げていない計算になってしまうわけです。
ただ、給料が上がらないというのは、実は急には下がらないことの裏返しでもあるんですよ。
失注したからといって、明日から手取りが22万5000円になります、なんてことはないわけです。
これはみんなでやっているがゆえのセーフティネットにもなっているんですよね。
そして給料が上がる原資は、その年の売上や利益から出てくるので、大きな意味では椅子取りゲームです。
自分が成果を出しても、周りがもっと出していれば、相対評価で上がらない。それは会社の収支構造の問題なのか、上司の評価の問題なのか、いろいろな要因が絡んでいるんですよね。
アルバイトだった私が、手を抜こうと思わなかった話
では自分が社員だった頃はどうだったのか、という質問もいただいたので、振り返ってみます。
最初に勤めたのはライフルという会社で、実は5年いたうちの最初の3年半はアルバイトでした。当時は声優もしていて、急に台本を取りに来てくださいと言われることもあったので、正社員では働けなかったんです。
でもアルバイトだけど名刺は持っていたし、営業さんと同行してディレクションもしたし、デザインも作ったし、Perlでプログラムの開発もしていました。
働いているときは真面目にやっていたと思うんです。
不思議と、給料が上がらないから手を抜きたい、みたいな気持ちにはならなかったんですよね。
むしろ、仕事がどんどん回されること自体が楽しかったんです。
いろんなことをやらせてもらえるし、「もっと高度なことをやらせてくれ」「あの会議に出たい」って、アルバイトのくせに思っていたくらいで。
後半の1年半で正社員になったのですが、そのままの気持ちだったので、正社員になれたから安泰だなんて全然思わなかったですね。
今振り返っても、「あの時もっと真面目にやっておけばよかったな」とはあまり思わないんです。
やれるだけやってきたなと思うし、結果的に今の方が良かったと思っているので。
手を抜くなら「ポジティブに」手を抜いてほしい
だからといって、手を抜くこと自体が悪いとは思いません。
肉体的にしんどいとか、今の価値観がそうだとか、いろいろあると思うので。
ただ、私はこの番組でよく「ポジティブに諦める」という言葉を使うんですけど、手を抜くならポジティブに手を抜いてほしいんですよね。
「やってらんないから」って惰性でダラダラ手を抜いていると、たぶんどこかでしんどくなります。
たとえば、同じくらいのキャリアなのにすごくできる人が入ってきて、「あいつはなんであんなにできるんだ」と思ったときに、「彼はカメのようにずっと努力してきたのか。あの時なんで俺は真面目にやらなかったんだ」ってなったら、結構つらいと思うんです。
それが3年後に来るのか、5年後か、10年後かは私にもわかりません。
でも取り戻せない時間だからこそ、今ちゃんと頑張っておく方がいいんじゃないかな、というのが私に言えることかなと思いました。
まとめ
「ほどほどに手を抜く」が良いか悪いかは、正直その人の価値観次第だと思っています。ただ、言葉尻だけを真に受けてほしくないというのが、今の私の正直な気持ちです。惰性でなく、自分で選んで手を抜けるなら、それはそれでいいんじゃないでしょうか。
- 「手を抜く」は主観的な言葉で、自分にとってのほどほどを分かって言っているかどうかで意味が変わる
- 給料が上がりにくいのは、急には下がらないというセーフティネットの裏返しでもある
- アルバイト時代の私は、仕事が回されること自体が楽しくて手を抜こうと思わなかった
- 手を抜くなら惰性ではなく、ポジティブに選んで手を抜いてほしい





