見えないパンチは耐えられない
大阪の制作会社でディレクター兼エンジニアとして働いているシノさんから、こんなおハガキをいただきました。
平日は朝早く出社して終電まで、土日も何かとトラブルが起きないか心が休まらない、と。
正直、これはちょっと厳しい感じがして、体調も気持ちも含めてつらくならないでほしいなと思いました。
土日にトラブルが起きないか気になるのは、もう職業病みたいなものじゃないかと思うんですよね。私もありますよ、普通に。
ただ、30代の頃と比べると、それを引きずることは減ってきた気がします。あの頃はメールを見ている自分が「かっこいい」みたいな、ちょっと中二病的な感覚もありましたけどね。
トラブルへの向き合い方で、私が思い出すのがボクシングの話です。見えているパンチは耐えられるけど、見えないパンチは耐えられない、という話があるんですよ。
こういう状態ならこんなトラブルが起こるかも、と予想できていれば、仮に発生しても「うわ、そうなっちゃったか、やるか」と思えるんですよね。
でも、絶対大丈夫だと思っていた時にいきなり起こると、頭の中がパニックになってしまう。だから私は、現状から起こり得るトラブルを結構考えていると思います。
SSL証明書で真っ青になった話
過去に一番焦ったのは、土曜日のお昼にお客さんから電話がかかってきて、SSL証明書が切れていると言われた時ですね。あれは本当に真っ青になりました。
当時のSSL証明書は、申請してお客さんの担当者に電話連絡が行って、やっと発行されるようなものだったんです。
今のLet's Encrypt ── 無料でSSL証明書を発行できるサービスのように、クレカで払ったらすぐ発行、すぐインストール、というものじゃなかったんですよね。
「今日有効期限が切れているって言われても、今日の今日でできないんじゃ?」と思って、八方に電話をかけて焦りまくって、なんとかなりましたけど。
この嫌な経験があるから、SSL証明書やドメインの更新は絶対に2、3週間前には終わらせる、というのが私の中でトラウマになっているんですよ。
こういう失敗を何度か経験して、トラブルシュートできるようになっていくんじゃないかなと思います。
ハンドリングできるトラブルは潰しておく
シノさんはディレクター兼エンジニアということなので、エンジニアの感覚で「これはやっちゃいけないよね」とわかることを、ディレクターの立場で潰していけるはずなんです。
土日に起こり得るトラブルって、実際にはバグくらいじゃないかと思うんですよね。
サーバーがどこかから集中アクセスを受けて落ちた、みたいなのは想像できないし、そもそも自分たちの責任じゃない。主たる原因が自分の責任じゃなければ、しょうがないと思えるんですよ。
最たる例が、金曜日にリリースするのは絶対に避けるということです。
金曜の夕方5時に新しいプログラムをデプロイして、テストも不十分なまま土日を迎えたら、そりゃ落ちるわ、という話になり得ますからね。
こういうディレクターがハンドリングできる部分って、結構あると思うんです。
もっとも、朝早く出社して終電までというのは、最終的にはスケジュールとコストの話に帰結します。人がいないのもお金の話に行き着くんですよね。
そこの決済権が全くないなら頑張るしかないのですが、朝早くから終電までという働き方は、中長期的に誰に交渉すれば変えていけるかを考えてほしいなと思います。
年収を上げたいなら、お金が動く業界へ
もう一通、ポジティブシンキングのアラサーさんから、清々しいほど直球のおハガキをいただきました。ディレクターの年収の相場と、上げるために何を積むべきか、というものです。
相場は、実はとても言いづらいんです。事業会社か制作会社か、その事業会社がどんな業界かで、平均年収は全然違うと思うので。
その上で、年収のことだけで言うなら、はっきりしていることがあります。ちゃんとお金が動いている業界の仕事をする会社に行くべきだ、ということです。
同じ作業をしていても、払ってくれる対価は業界やクライアントによって違うんですよね。
私が不動産にこだわり続けているのも、実はそういう理由があったりします。日本で3番目から5番目くらいに大きなお金が動いている産業なんですよ。
もちろん、最初に勤めたライフルで井上さんが「人と住まいのベストマッチング」という言葉を言っていて、それが自分の中で達成したいものになっている、というのも大きいのですが。
希少性は「評価する人」にとっての希少性
その上でスキルや経験ですが、周りを見渡した時に希少性があるものを身につけるべきだと思います。
100人に1人のスキルを3つ掛け合わせると、1万人に1人のスキルになる、という話がありますよね。
私で言えば、ディレクターと声優の掛け算をしている人ってそんなにいないと思うんです。役者や声優をやっていたことを、この仕事に明確に生かしているつもりがあります。
ただし大事なのは、その希少性が評価してくれる人にとっての希少性かどうか、ということです。
たとえばディレクターの私がフォークリフトの資格を持っていても、お客さんにとっては価値がないですよね。「フォークリフト関係なくね?」で終わってしまう。
自分の仕事に役立って、かつできる人が少ない。この2つを満たすものを、もう1つ、2つ、3つと持っていくのが大事なんだと思います。
不動産で言えば、免許番号の括弧の意味とか、新築マンションの予告広告と本広告の違いとか、そういうことを知っているから要件定義で話が早い。それが価値になるんですよね。
直接のスキルそのものでなくても、ファシリテーションやロジカルシンキング、経済ニュースが得意、といったものでもいいかもしれません。
まとめ
49歳になっても、精神的なところは30代半ばからそんなに変わっていない気がします。まだ答えが完璧に出ているわけではないですが、いまの私が思うことを書いてみました。プレッシャーとの付き合い方も年収の話も、少しでも参考になれば嬉しいです。
- 見えないパンチは耐えられない。起こり得るトラブルを先に考えて潰しておく
- 金曜リリースを避けるなど、ディレクターがハンドリングできる部分は結構ある
- 年収を上げたいなら、まずお金が動いている業界の会社を選ぶことが早い
- 希少性は、それを評価してくれる第三者にとって価値があるかで決まる






