発注のとき、僕がひそかに感じていた「怖さ」
ゆんさんやワイバンガイラさんから、イラストの依頼についてのおハガキをいただきました。読んでいて、僕自身の中にあった気持ちを思い出したんです。
僕はウェブサイトを作る仕事をしているので、逆に発注される側に立つこともあります。会社の社長さんから「かっこいいサイト作ってよ」と、ふんわり頼まれることってあるんですよね。
そういうとき、似たテイストの参考サイトをお見せすることがあるんですが、それに相手が引っ張られすぎるんじゃないかという怖さも、いつも少し感じるんです。
で、自分が発注する側になると、今度は別の怖さが出てきます。イラストレーターさんに「こんな感じで」と伝えたら、「お前、発注側なのに何もわかってないじゃん」と思われるんじゃないか、と。
抽象的なことを言ったら「そんなんじゃ全然わからない」と呆れられるんじゃないか。だから何を話していいのかわからなくなる。おそらくワイバンガイラさんの「何をどう頼んでいいのか全くわからず」という感覚も、これに近いんじゃないかと思うんです。
北沢さんの「聞きたいタイプなんです」という答え
この怖さを北沢さんにぶつけてみたら、意外なくらいあっさりした答えが返ってきました。
「そのままやりたいことを伝えればいいと思うんですね」と。わからないことがあれば、イラストレーターの側から聞いてくれる。その質問に答えていくうちに、作りたい方向性がだんだん定まっていくんだそうです。
北沢さんは「結構僕は聞きたいタイプなので、いわゆるペラ1で発注されるとめっちゃ困るんですね」と話されていました。ラフ画つきで指示があっても、「本当にこれでいいのか」と不安になるから、コミュニケーションを取ってやりたい、と。
この「不安になる」というのが、僕にはちょっと意外でした。プロの側も、確認しながら進めたいと思っているんですね。
そして北沢さんは「自分たちで描けなかったら聞くと思います。そうしないと描けないので」とも言っていました。発注側が無知なのは前提で、足りない情報はプロが聞いてくる。だから恥ずかしがる必要はない、ということなんだと受け取りました。
ラフを見せてもらう、という安心のつくり方
もうひとつ、なるほどと思ったのが「見せてもらう」という進め方です。
北沢さんは、ふんわり言葉で伝えられると方向性が定まらないので、参考画像を見せてもらったり、逆に自分からラフを一度見せたりするそうです。「こんな感じですよね」と早い段階ですり合わせる、ということですね。
最近は『フレスコ』というアプリを使うようになってから、サササッと描いて「こんな感じですよね」とすぐ見せるようにしているそうです。手描きのラフはあまり人に見せたくないタイプで、昔は尖っていたと笑いながら話されていました。
これはお互いのトーンやマナーが合っているかを、早めに確認するということなんだと思います。僕がウェブで参考サイトをお見せするのと、根っこは同じですよね。
北沢さん自身が「僕に発注していただくときは、来たものでも一応こういうものじゃなくて僕のテイストでいいですよねって聞きます」と話していたのも、印象的でした。相手の要望をそのまま鵜呑みにせず、確認を挟む。そこに安心があるんだなと。
発想の原点は「インプットが滲み出る」こと
発注の話とは別に、北沢さんがイラストの発想をどこから得ているのか、というお話も面白かったので少しだけ。
北沢さんは「発想をどこからするというよりは、今までインプットしていたものが滲み出る」と話されていました。小さい頃のびっくりマンやサンリオのキャラクター、ドラゴンボールやゲゲゲの鬼太郎。そういうものが原点にあるそうです。
ただ、模写や模倣のままでは自分の作品になりません。「自分の絵ですって出したいと思ったときから、真似はもうやめる」と。
『メダロット』の新しいシリーズで全部北沢テイストを出したとき、当時はものすごく叩かれて「メダロットを殺した男」とまで言われたそうです。でも今振り返ると、「今までとは違うテイストを持っているイラストレーターだと思ってもらえた」と話されていました。
似顔絵のように見たものだけを描くのではなく、その人の内から出てくる表情を表現したい、という言葉も残っていて。イラストって、その人やものが「何なのか」を掘るところから始まるんだなと、改めて聞かせてもらいました。
まとめ
発注が怖いと感じていた僕ですが、北沢さんの話を聞いて、少し肩の力が抜けた気がします。わからないことはプロが聞いてくれる。だからまずは、やりたいことを正直に伝えてコミュニケーションを取ればいい。いまはそんなふうに思っています。
- 発注側が全部わかっている必要はなく、足りない情報はプロが聞いてくれる
- ふんわり伝えるだけでなく、ラフや参考画像で早めに方向性をすり合わせると安心
- 北沢さんは指示を鵜呑みにせず「これでいいですよね」と確認するタイプ
- イラストの発想は、インプットが滲み出たものを自分のテイストに消化していくこと






