上司の苦労は、なった人にしかわからない
相談をくれた方は、前任の上司が辞めたことで、今度マネージャー的な立場になるそうです。
今まで「上司なんだからちゃんとやれよ」と思っていた立場に、自分がなるとなった途端、怖くなってきた、と。
この気持ち、すごくわかるんですよね。というのも、上司という立場は、やったことがある人の方が少ないからなんです。
いわゆる会社員という立場で言うと、部長職や事業部長がいちばん上で、その上は執行役員とか本当の役員になってきます。
僕らの親父の世代だと、勤め上げれば8割くらいの方が部長職までいけると言われていたらしいんですが、今は部長職になれる方って3割いるかいないかぐらいらしいんですよね。
つまり、誰かの上に立って、ちゃんと評価をする立場になれる人自体が、そもそも数は多くないんです。
しかも、上司をやった人が下に降りてきて、「俺が部長やってた時は本当に大変だったんだよ」なんて話す人って、あんまりいないと思うんです。
だから上司の苦労って、上司にならないとわからない上に、その大変さを同じ立場の人に伝える機会もほとんどない。
みんな部下の立場では「あの立場なんだからもうちょっとちゃんとやれよ」と言うのに、いざ自分がなると「あわわわ」となって、「前の上司の方、ごめんなさい」と思う。相談をくれた方は、まさにそこにいるんじゃないかと思います。
仕事の延長線上に、マネジメントはない
これは自分が何年かこの立場をやらせてもらって、前職から含めてずっと思っていることなんですが。
『HTML』を書くでも、デザインでも、システム開発でも、ディレクションでもいいんですけど、その仕事の延長線上にマネジメントという仕事はないんです。もうこれは間違いなくないと思っています。
なんとなくキャリアが上がったから、経験が増えたから、年がいったから「じゃあ君はマネージャー」となると、結構な割合で失敗するんじゃないかと思うんですよね。
もちろん先天的にできる方もいらっしゃいます。でも、実装技術がすごいからマネージャーになれるっていうのは、全く違うと僕は思っています。
だからそこは、ちゃんと自分の中で切り替えをしないといけない。「これだけこの会社でやってるし」みたいな気持ちのままマネージャーをやると、結構大失敗するかなと思います。
僕がマネジメントで大事にしている3つのこと
じゃあ具体的に何を大事にしているのか。僕は評価をする部下がいる立場になった時に、絶対しなきゃいけないことを一応決めているんです。
- 部下の育成をする
- 収益責任を背負う
- 会社のコンプライアンスを守る
責任者なので、その事業部のメンバーをちゃんと食わせるだけの収益を作る。自分がお客さんから仕事を取ってくるだけじゃなく、一緒にやってる子たちが仕事を取れるように指導するっていう意味です。
そしてその過程の中で、部下がちゃんと成長することを考えてあげる。当然、儲かれば何でもやっていいわけじゃないので、コンプライアンスを守るのは大前提です。
ただ、この部下を育てるっていうのが本当に難しいんですよね。セオリーもないし、人によっても違う。
ましてや今は多様化みたいなことも言われているので、一人ひとりに全部合わせていったら、上司って神様でも何でもないですから、できることとできないことがありますわな。
全員に適切にできるかというと難しいかもしれない。でも、その人たちを見て「この人たちはどうなると幸せかな」と考えさせてもらえる立場にいるのは、ビジネスパーソンとしては幸せな立場なんじゃないかと思うんです。
承認欲求のよりどころがなくなる、という悩み
もう一つ、マネジメント側に行った時に悩む方が多いなと感じることがあります。
クリエイティブなところにいた人が、マネジメントになってクリエイティブを全部手放すと、自分の存在意義がなくなるみたいな感覚になるんですよね。
デザインを作っている、『HTML』を書いている、システムを開発している。それで「すごいですね」と言われていた人が、いきなりそれを全部外されると、「なんか俺、仕事してる気がしないな」となる。
今まで承認欲求を満たせていたアウトプットが、マネジメントになるとなくなるわけです。
これで悩んでしまう方がいるのは、業界自体がまだ未成熟で、組織のヒエラルキーがなかなかできていないからだと思うんですよね。
自分がマネジメント側に行った時のロールモデルが、はっきり見えている会社さんって少ない気がします。
うちもまだ30人、40人ぐらいの会社ですけど、「5年後にあの立場になったら、あの人たちはこういうことをやってるんだ」と見られる会社さんの方が、たぶん少ないんじゃないかと思うんです。
だからプロジェクトマネジメントはわかるけど、ヒューマンマネジメント側がすごくわからないという方は、僕らの業界に一定数いるんじゃないかと思います。
ちなみに僕は現場を離れたくない人間なので、どうしてもプレイングマネージャーみたいになって、あわあわしてしまうところがあるんですけどね。
まとめ
上司になるのが怖いというのは、責任感がある証拠だと思うんです。せっかく任命された立場なら、一緒に仕事をしている人たちが生き生きできることを目指してほしいし、その難しさに悩めること自体を、いつか楽しめるようになってもらえたら嬉しいなと思っています。
- 上司という立場は、そもそもやったことがある人の方が少ない
- 実装技術やキャリアの延長線上に、マネジメントという仕事はない
- 僕が大事にしているのは、部下の育成・収益責任・コンプライアンスの3つ
- クリエイティブを手放して承認欲求のよりどころを失う悩みは、業界の未成熟さも背景にある





