独立したときの「次どうしよう」という不安
相談をくれた方は、制作会社で3年ほどディレクターをやって、その後フリーになってそろそろ1年目だそうです。
一人でやっていると、今の仕事が終わったらどうしようという思いがとても強くて、企業人だった頃にいかに守られていたかを痛感した、と書いてくれていました。
いや、この不安、私もすごくわかります。
フリーランスの経験ではないんですが、17年ほど前に会社を立ち上げたとき、これはもう本当にめちゃめちゃ思ってましたもんね。
正直に言うと、この不安って一人で独立したりすると、意地でも抜けきれないものなんじゃないかと思うんです。
だからそこは、ある意味付き合っていくものなのかなと。
ちなみに私自身は、社員を守ってるつもりはあんまりないんですよ。企業人であることも、ある意味その人の権利ですからね。
単発で終わらせないための「当たり前品質」
では、単発で仕事が終わらないようにする工夫って何でしょうか。
うちの会社の中で言っているセリフに、「当たり前品質を当たり前にやろう」という言葉があります。
お客さんが思っている当たり前を、ちゃんと当たり前にやりましょう、ということです。
だから、淡々と粛々と、当たり前であることをやり続ける。これが一番の大前提なんじゃないかと思うんです。
ここで難しいのが、ディレクターの仕事ってアウトプットが見えづらいことなんですよね。
デザイナーさんやエンジニアさんなら、いいデザインとか、早く書けるプログラムとか、わかりやすいスキルとして出てくるじゃないですか。
でもディレクターって、社内定例を滞りなく回して仕事が進んでいることを、どうやって評価するの、という話になる。横でずっと聞いてない限りわかんないんですよね。
トラブルが起こらず粛々と進んで、粛々と終わった場合って、予定通りに終わったので「そうだね」で済んでしまう。
逆にプロジェクトが炎上したり、スケジュールが遅れたりすると、そこはすごく目立つ。
当たり前にやったことが当たり前に終わったときって、目立ちもしないし、まあまあ頑張ったのに誰も褒めてくれない。これがディレクターの仕事のつらいところなんじゃないかなと思ったりします。
痒いところに手が届く、が当たり前
その当たり前を当たり前にやるって、最終的には先読みができるとか、段取りがいいというところにつながっていくと思うんです。
ちょっと痒いところに手が届く、というのがディレクターに当たり前に求められていることじゃないかなと。
たとえば丸投げしないで、AかBかだけど僕はAだと思います、とちゃんと言えるか。
連絡を見ていて、どこにボトルネックがありそうか、燃え上がる前にどう火消しに回れるか、とか。
最近、社内でこんな話をしていました。テストアップをしたとき、「確認してください」とお客様に投げる。これ自体は合ってると思うんです。
でもそのときに、NGがあれば何月何日の何時までにご連絡をいただければ助かります、問題なければこれで本番にアップしますね、と言えるかどうか。
そうしないと、お客さんはリリース日を決めていても頭の中で一緒になっていなくて、「見終わりました?」と聞くと「はい、見終わりましたよ」で終わってしまう。
いやだから、見終わったら返事をくれよ、と思うわけです。
相手にとっては、私に返事をしていただくことまでがゴールなんだよ、というのをタスクとしてちゃんと説明できるか。
これはオープンクエスチョンじゃなくてクローズドクエスチョンになってくるんですよね。相手はこれをやればいい、次にこうすればいい、とわかる。
目立ちはしないけど、この人とやると自分の終わりもゴールもはっきりしてやりやすいね、というところに繋がるんじゃないかと思います。
だから変な飛び道具的なアピールは、あんまり良くない気がします。私はずっとそう思って仕事をしてきました。
成長が見えない、と迷ったときに
もう一人、ディレクター5年目の方からも相談をもらいました。
自分が成長しているのか停滞しているのかわからなくなってきた、企画を作って通っても、実装に入ってからは単なるスケジュール管理役なのでは、と感じることが多くなったそうです。
私自身、ディレクターという仕事でモチベーションが下がって迷った感覚って、あんまり覚えてないんですよね。
理由はシンプルで、私は自分のスキルに自信を持ったことが一回もないんです。
同年代に、私よりすごい人がむちゃむちゃいたんですよ。森田優さんや阿部さんとか、そういう方々のスキルも知識も経験も、もう圧倒的で。
その方たちに対する劣等感みたいなものがすごかったので、もう一生懸命やるしかなかった、というのが実際のところで。
あの人に追いつきたい、というのが今も含めて私の大きなモチベーションなんです。だからそこで迷うことはあんまりなかったかなと。
ただ、言いたいことはわかります。私らの仕事って、成果が見えにくいんですよね。
ヒアリングシート、提案書、WBS、ワイヤー、ガントチャート、バックログでのやりとり、テスト、定例。この途中の経過やノンバーバルなところが、私らのやってる仕事なので。
遅延率が5.428パーセントでした、なんて数値化はできなくはないけど、それを聞かされてもだからなんだよ、という感じもしますしね。
だから、自分の仕事はアウトプットが見えづらい仕事なんだ、ということ自体を納得して受け入れないと、またバタバタしちゃうんじゃないかなと思うんです。
それよりは、この人みたいになりたいとか、こういうサイトを作ってみたい、という目標を見つけられる方がいい。
私にとっては、そういう人にお会いしたい、お話をしてみたい、というのが結構大きな原動力だったので、はるかにやりやすくなると思いますよ。
まとめ
今もらっている仕事を終わらせない工夫も、成長が見えない迷いも、行き着く先はけっこう似ているのかもしれません。派手なアピールより、当たり前を当たり前に積み重ねること。そして、追いつきたいと思える誰かを見つけること。いまの私はそんなふうに考えています。
- フリーになったときの「次どうしよう」の不安は、抜けきれないものとして付き合っていく
- 単発で終わらせないコツは、飛び道具ではなく「当たり前品質を当たり前に」淡々と積み重ねること
- 相手が迷わないクローズドな伝え方で、ゴールと終わりをはっきりさせると「やりやすい人」になれる
- 成果が見えづらい仕事だと受け入れたうえで、追いつきたい人や作りたいサイトを目標にする





