受託の不満、すごくよくわかります
いただいた相談は、こんな内容でした。
最終的にはクライアントの言うことを聞かないといけない。運用が長い案件だとソースコードがスパゲッティになっていて、リファクタリングしたくても予算外でできない。改善提案をしてもクライアントが理解してくれず、実施許可が下りない。
だから自社メディアを持つ事業会社に行けば、こういうトライがもっとサクサクできるはず、というジレンマだそうです。
気持ちはめちゃくちゃわかります。私も両方やってきたので、その「もっと自由にやりたい」という感覚は、本当によくわかるんです。
私も昔、事業会社にいました
その方は「名村さんはライフルホームズを作っていたから事業会社側もご存知ですよね」と書いてくださっていました。
ただ、ちょっと夢を壊すようで申し訳ないんですが、私一人で作っていたわけじゃないんですよ。当時は一制作部の人間で、ディレクター兼フロントエンドエンジニアみたいな感じでした。
当時のライフルという会社は、ホームズの事業が黒字になる前は受託事業もやっていて、チームもまだ分かれていなかったんです。
不動産会社さんのシステムを作ったりランディングページを作ったりしながら、本体のホームズの大きな改修で設計やデザインもやる、という働き方でした。
だからこそ、受託も事業会社も両方、内側から見てきたつもりです。
むしろ受託のほうが、手を入れられます
そのうえで正直に言うと、受託の方が、最終的にはできることが多いんです。事業会社のほうが、もっと手を入れられないんですよ。
特に閲覧件数が多かったり、サイト規模が大きかったりすると、本当に一行直しただけで何か起こる。バグったら最低ですよね。
だってメディアとして収益に直結しているわけです。私がいた不動産業界だと、資料請求1件の獲得単価が下手したら万単位になってくる。
だから止められないし、安定していることが何よりも神なんです。手を入れなければ、昨日と同じ今日が来る。よっぽど準備をしないと、なかなか手をつけられないんですよ。
スタートアップやメルカリさんのように日進月歩で改修しているところもありますが、表から見えている裏では、その100倍くらいの企画がボツになっているんじゃないかと思います。
「身内だから話せばいい」が通じない理由
受託事業のクライアントなら、話せばいいじゃないですか。メリットを10個か20個わーっと言えば、採用はされるんです。
でも自社のものだと、そのメリットがもっとお金にならないんですよ。
受託なら「これが何万円でこの改修ができます、どうですか」という話になります。でも事業会社だと、その「何万円」が見えないんです。パッと見、人件費しか見えないから。
毎回、人件費から制作費を計算して、やるやらないを判断している事業会社って、そんなにない気がするんですよね。
だいたい「いつできるの?」という話になる。「3日くらいです」「あ、そうなの?」とか、「1ヶ月かかります」「無理無理、そんな暇ない」みたいな。
結局、受託事業よりも感覚論で「なんかダメ」と言われてしまう。だから身内だから話せばいい、というのはちょっと幻想じゃないかなと思うんです。
それでも転職するなら、別の理由で選んでほしい
受託の会社に行った後、事業会社に行きたくなる人ってすごく多いんですよね。気持ちはわかります。私も両方やってきて、今だからこそ両方やってよかったなと思っています。
ただ、今感じている不満を理由にすると、たぶん行った先もそんなにキラキラしてはいないと思うんです。
なので、まずは今の受託の仕事で、その関係だからこそできることのいい面と悪い面を、もう一度考えてみるのがいいんじゃないでしょうか。
そのうえで、いま挙げた不満とは別のところで事業会社を選べるなら、それはきっといい選択になると思います。
まとめ
受託から事業会社へ、という道はよくある憧れですが、少なくとも私が見てきた範囲では「自由に手を入れられる」わけではありませんでした。いまの時点では、不満を裏返した理由での転職はあまりおすすめしないかな、と考えています。
- 運用中の大規模サイトは、収益直結ゆえに一行の修正も慎重になる
- 事業会社では改善の「メリットがお金に見えにくく」、感覚論で判断されがち
- 受託は金額として提示できるぶん、話せば通りやすい面がある
- 転職するなら、不満の裏返しではなく別の理由で事業会社を選んでほしい






