「自立=なんでも一人でできる」だと思ってた
いただいた質問はこうでした。今後、自立したクリエイターになりたいので、スキルをたくさん身につけたい。どんなスキルがあった方がいいですか、と。
すごく前向きで、いい相談だと思うんですよ。デザイナーがデザインできませんっていったらおいって話になるように、自分の肩書きから想定される最低限のスキルは、やっぱりできなきゃいけない。
でも、読んでいて少しもやっとしたんです。これはもしかして「自分で何でもできる人になろう」という意味なのかな、と感じてしまって。
いや、若い頃の私も同じことを考えていたので、気持ちはすごくわかるんですよ。あれもやりたい、これもできた方がいい、って。
フルスタックが難しくなった時代に
私が仕事を始めた頃、1996年とか2000年代の一桁の頃ですけど、私はいわゆるフルスタックだったんですよね。
デザイン作って、HTML書いて、プログラムもちょっと書いて、データベース設定して、インフラも作って、みたいなことを一通りやっていました。
でも、今それを本当にやれるかというと、私はちょっと無理じゃないかなと思うんです。
フロントだって、昔はセマンティックにHTMLを書こうかという話で良かったけど、今はVueだReactだ、サーバーサイドと連携し始めたらNextだNuxtだ、という世界ですよね。
ちょっと勉強したからできます、という話ではもうなくなってきている。専門職にどんどんなっているんだなと感じます。
だからこそ、全部を一人で抱えるフルスタックを目指すのは、そんなに簡単じゃないというのが正直なところなんですよね。
最近思う「自立」の意味が変わってきた
そういうことを考えていくうちに、私の中で自立という言葉の意味が少し変わってきたんです。年を取ったからなのかもしれませんが。
最低限、自分でやるべきことはやらなきゃいけない。それはもちろん大前提です。
でも、全部自分でやることが自立なのかというと、最近はちょっと違うんじゃないかなと思うようになりました。
仕事をしていて、一人だけで生きていけるわけではないじゃないですか。お客さんもいるし、同僚や仲間もいる。
自分に全部揃っている人なんて、やっぱりいないわけです。私もそうです。
だから、足りないものを頼れる人をちゃんと見つけていく、それが私は自立なんじゃないかなと最近思うんですよね。
協力し合える相手をどれだけ持っているか。そこがむしろ本来の自立に近い気がしています。
仕事のためじゃない関係が、どこかでつながる
これ、人脈という意味ではないんですよ。商売を絡めるための関係性って、私はあんまり好きじゃないので。
たとえば、私は体のことを気にするタイプなので、鍼灸に通ったりしているんですけど、その院長先生とすごく仲良くなって話を聞いたら、今、大学院に通っているんだそうです。
繁盛しているお店をやりながら、修士論文を書いていて大変だ、教授にコテンパンにされてます、なんて話をされていて。こんな方でもまだ勉強するのか、とすごく思ったんですよね。
別に仕事を手伝ってもらうためじゃない。でも、そういう打算のないところでいろんな人と話せると、どこかで思わぬつながりが生まれるかもしれない。
困ったときに誰かが助けてくれて、誰かが困ったときに自分が助けてあげられる。そういう関係が維持できるって、けっこう強いと思うんです。
結局、どんなスキルを身につければいいのか
じゃあ具体的に何を学べばいいのか、という話に戻ると、テクニカルな面はどうしても抽象度が高い言い方になってしまいます。
Photoshopが使えたら、どんなクリエイティブの仕事でも成立します、なんてことはないですからね。
肩書きがデザイナーやフロントとはっきり決まっているなら、それに付随するアプリケーションが使えて、最近のトレンドに沿ったアウトプットが出せること。まずはそこです。
その上で、私が最近いちばん優先度が高いと思っているのは、実は文章術というか、国語力みたいなところなんですよね。
ディレクターにしても、人の矢面に立って、情報を集めて整理して、最後に決断していく仕事です。だから情報収集能力と整理力、そしてちゃんと言語化できるかが効いてくる。
ロジカルシンキングやクリティカルシンキングは、クリエイティブに関係なく役に立つので、学べるなら学んでおいて損はないと思います。
まとめ
スキルをたくさん、と焦る気持ちはよくわかるんですけど、いまの私は「全部一人でやること」を自立とは呼ばないんじゃないかと思っています。まだ答えを出しきったわけではないのですが、自立したクリエイターってどんな人なのか、一度自分の中で言葉にしてみるのがいいのかもしれません。
- フルスタックを一人で背負うのは、いまの時代そう簡単ではない
- 足りないものを頼れる人を見つけていくことが、私の考える自立に近い
- 打算のない関係が、どこかで思わぬつながりになる
- 肩書き相応のスキルに加えて、情報を整理して言語化する力が効いてくる






