好きを仕事にするのは、どっちも正解だと思う
いただいたのは、趣味でWebを作っていて、未経験からWeb制作会社に就職が決まった方からのおハガキでした。
「好きを仕事にするから故に楽しい」というのもあれば、「好きを仕事にすると気を抜く暇がなくなる」という声もある。どっちがいいんでしょう、という内容です。
これ、私はどっちも正解だと思うんですよね。
好きだから熱中できるし没頭できる。でも、そのぶん気を抜けなくなるというのも、確かにさもありなんという気がします。
私も、ずっとプログラムを書き続けたり、デザインをやらせてもらえるなら、たぶんやってると思うんですよ。
でも、だからといって24時間365日それしかしていないかというと、そんなことはないんですよね。
クリエイティブは、自分の中だけからは出てこない
この年になって思うのは、クリエイティブなものって、自分の仕事や自分の中だけから全部出てくるわけじゃないってことなんです。
いろんな人生経験や、まったく違うクリエイティブに触れることが、けっこう大事なんじゃないかと思っています。
私はWebディレクター育成講座でも、かなり昔のスライドから「自然なものに触れてください」とか、絵画や音楽に触れてくださいと話してきました。
自分自身、美術館巡りをしたり、漫画を読んだり、舞台や歌舞伎を見に行ったり、クラシックのコンサートに行ったりを、意識的にするようにしているんですよ。
今は座禅を組んだりもしていて、今年の後半には、うちの会社が提携している青森のお寺にまた行こうかなとも思っています。
じゃあ座禅を組んだことが、プログラムの一行に何の影響があるのかと言われたら、そんな直球ではたぶんないんですよ。
でも、トータルとしては、そういう遠回りが効いてくる気がしているんですよね。
イチローさんの「遠回りが一番の近道」という言葉
前にも話したことがあるんですが、イチローさんと元プロ野球選手の稲葉さんが対談していたのを思い出しました。
稲葉さんが「今はスポーツ医学とか、いろんな観点から最適なトレーニングやバットの振り方がわかるかもしれない。それを得ていたら最短距離で素晴らしい選手になれると思うけど、どう思う?」とイチローさんに聞いたんですよね。
そうしたらイチローさんは、即答で「ありえない」と答えたそうなんです。
仮にそれができたとしても「精度がすごく高いだけであって、深みはない」というようなことを言われていて、すごいセリフだなと思いました。
そして最後に、「遠回りするのが結局一番近道じゃないか」ということをおっしゃっていたんですよね。
クリエイティブの深みって、結局は雑味や余計なものがあることで、逆に純度が高まるところがある気がしています。
好きは源泉になる。でも「余白」は残してほしい
好きを仕事にするというのは、続けられる上での源泉にはなると思います。
嫌いなものを続けるのは難しいですし、せっかくならお金を稼ぐためというより、自分のライフワークになるものの方がいいですよね。
気持ちも心も入るし、ラストワンマイルまで突っ込めますから。
なので私は、好きを仕事にする方が、結果的に自分の質が上がる上では近道じゃないかと思っています。
ただ、気を抜く暇がないほど、それだけになってしまうのはもったいないんじゃないかと思うんです。
詰め詰めでいろんなことをやっていくと、余白がどんどんなくなっていってしまうので、私にはあまり合わないんですよね。
昔の私は、仕事でプログラムやデザインをして、家に帰って自分のブログをいじったりPHPで何か作ったりして、それがストレス発散になっていました。
独り身で時間も自由だったからできていたことですけど、それだけじゃないところも持っておくといいんじゃないかなと思います。
今の新卒世代には、早めにたくさん失敗してほしい
もう一つ、新卒世代に言いたいことはあるか、というおハガキもいただきました。
正直、私が厳しいことを言うのを期待されている気もしたのですが、自分が苦労したからお前も苦労しろ、みたいなことは全く言う気はないんです。
むしろAIも使った方がいいし、効率化した方がいい。定時で働いて、給料を上げてもらう説得の仕方を考えててもいいくらいだと思っています。
だから言いたいことというより、何を身につけたらいいんだろうと、私の方が悩んでいるくらいなんですよね。
ただ唯一あるとしたら、早めにたくさん失敗をしてほしいということです。
今の子たちって、失敗がグループLINEで一瞬で流れて、それが魚拓のように残ってしまう。だから悪目立ちしない、失敗しないというのが刷り込まれているように見えるんですよ。
実際に若い子と話すと「その感覚、すごくわかります」と同意されるんですよね。これはとてもかわいそうだなと思います。
求められる速度も昔より速くなっていて、若いうちに一人前を求められる。だからこそ、失敗をする時間がなくなってしまう。
社会人になってすぐのタイミングでどんどん失敗して、「これはダメなんだな」「ここはいいんだな」という境界線を見つけてほしいんです。
もちろん怒られますよ。でも失敗経験をしないまま、ずっと正解をやり続けるなんて不可能だと思うので。
若手の方からすると、どこまで失敗していいかわからないのが怖いんですよね。だから私は「ここまでやってみて、ダメなら俺が頭を下げるから」とできるだけ言うようにしています。
上司やメンターに「これで失敗したらどれくらい怒られるんですか」と聞いてしまっていいと思います。減俸も首もほとんどありませんから。
まとめ
好きを仕事にするのはありか、と聞かれたら、私は「あり」だと思っています。ただ、好きだけに詰め込みすぎず、余白や遠回りを残しておく方が、結果的に自分の質は上がる。いまの時点では、そんなふうに考えています。
- 好きを仕事にするのは、続けるための源泉になる。私はあり派です
- クリエイティブは自分の中だけからは出てこない。遠回りや余白が純度を高めてくれる
- 若いうちは悪目立ちを恐れず、早めにたくさん失敗してほしい
- 上司には「どこまで失敗していいか」を聞いてしまっていい






