1ヶ月AIと開発して分かった「思ったより賢くない」
最近よく「SaaS is dead」なんて言葉が騒がれていますよね。生成AIが使えれば誰でも同じものを作れるから、SaaSはもういらない、と。
でも、それは本当かなとずっと思っていたんです。
連休中、私はClaude Codeを相棒に、毎晩9時から11時くらいまで粛々と開発を続けていました。結構な規模になっていたと思います。
プログラムを書くスピードは、確かにものすごく早いです。一人で作っていたら、あんな時間では絶対に終わらない量をこなしてくれました。
ただ、正直に言うとあんまり賢くはないんですよ。
整合性が取れなかったり、こう書いてくださいと言ったことを間違えたり。「それはあなたから指摘されていたルール何番に違反しておりました。誠に申し訳ありません」というやりとりを、もう何十回聞いたか分かりません。
一定の規模を超えると、AIとの対話をものすごくしなきゃいけない。これが今の時点での私の実感です。
「調整役」ではなく、指示命令系統のいちばん上にいる
いただいた相談のなかに、「ディレクターはAIを使う前提の調整役になっていくのか」という不安がありました。
でも、開発をやってみて思ったのは、調整役どころではないということでした。
バグフィックスをしていても、ここを直しましょうと言えば別のところが動かなくなって、「それは見落としていました」となる。いやいや、ちょっと待って落ち着け、と言いたくなる場面ばかりでした。
だんだん部分最適に入り込んで、そのまま任せていると袋小路にどんどんはまっていくんです。
だから今のタイミングでは、私はずっと指示命令系統のいちばん上にいるなと感じながらやっていました。
「AIを使う前提の調整役」という言い方だと、なんだかもうAIの下に入っているような気がするんですよね。そうじゃなくて、AIに「こうしてください、ああしてください」とちゃんと言えるようになること。これが今後のディレクターの価値になるんじゃないかと思っています。
現場で積んだ原理原則が、指示を出す土台になる
そう考えると、これまでやってきてよかったなと思うことがあるんです。
それは、ウェブがどういう仕組みで動いているのか、という原理原則の部分ですね。
データベースがどうあって、プログラムがどう処理をしたらどういう挙動になるのか。うちの会社はScratchで作る開発案件が多かったので、そのディレクターをやっていたことで、ものすごくありがたい経験を積ませてもらえたなと感じています。
それが分かった上で指示を出すと、テスト設計やコードレビューの精度が変わってきます。
実際、規模が大きくなって増改築みたいになってきた案件で、怖いなと思って「全部リファクタリングしてくれ」とお願いして、2、3日かけてやり直したこともありました。
こういう判断ができるのは、現場で痛い目を見て、メンバーと膝を突き合わせて話してきたことが自分の血肉になっているからだと思うんです。
ここが抜け落ちて「ただ進行役をやっています」になってしまうと、ガントチャートをただ更新している人になりかねない。そうではなく、自分たちが作っているものは何で、お客さんの商売に何が寄与するのか。そこにフォーカスできると、私たちの価値は残っていくんじゃないかと思っています。
デザイナーの次は、迷わずアートディレクターへ
もう一つ、ウェブデザイナー5年目でこの先のキャリアに悩んでいる、という相談もいただきました。デザインの専門性を深めるか、アートディレクターのように企画や管理へシフトするか、決められないと。
これ、1年前や2年前だったら、私は全く違うことを答えていたと思います。でも今なら、間違いなくアートディレクターに行けるようにした方がいい、と言います。
デザインの領域は、プログラムより少し遅れてくるかもしれません。細かいニュアンスの修正がまだ柔軟にはできないからですね。
でも、今プログラムコード側で起きているAIのアウトプットは、間違いなくデザイン側にも来ると思うんです。
手を動かして作る領域は、これから狭まっていく。デジタルのものはほぼそうなるはずです。
そうなったとき、「自分が手を動かせばできます」だけでは、「でもそれ、AIなら数十秒でできるよね」という比較を持ち出してくる人が必ず出てきます。
その人と真正面から戦ってもしょうがないんですよね。だったら、どういうものがいいのか、どういう指示を出せばいいのかというスキルを伸ばして、自分が指示を出す側に回った方がいい。だからアートディレクター的なことができるようになっておく方がいい、というのが私の意見です。
「惰性かも」と感じたら、入り口を思い出してみる
もう一件、ベテランとして見られる分、最近は惰性でやっているだけかもと感じてワクワクが薄れている、という相談もありました。
その気持ち、語弊を恐れず言うと分からなくはないんです。私は今年で31年目になりますが、大きく見たら仕事の流れ自体はもう変わらないので。
ヒアリングして、提案して、要件定義して、設計して、デザインして開発してテストして納品。このフローは変わりません。
ただ私は元々が実装屋、現場の人間なので、設計しているときやUIをお客さんと話しているときが、むちゃくちゃ楽しいんですよ。
マクロで見たら同じことをやっていても、ミクロで見たときに、どうやって自分が楽しめる要素を織り込もうかとずっと考えている気がします。
なので、ワクワクが薄れたと感じたら、元々何にワクワクしていたのかを思い出してみるといいんじゃないかと思うんです。
この仕事を始めたときの入り口はどこだったか。私は始めた頃の記憶がかなり鮮明に残っていて、トラブルばかりだったけど乗り越えたな、なんてことをよく掘り起こしているんですよね。だからたぶん、今も元気にやれているんだと思います。
まとめ
AIをめぐる状況は、来年聞いたら全く違う世界になっているはずで、これはいまの時点での私の手応えにすぎません。それでも今は、AIに使われる側ではなく、はっきり指示を出せる側に回るために動くのがいいんじゃないかと考えています。
- 今のAIは開発スピードは速いが、一定規模を超えると要件定義や整合性の面で細かく指示し続ける必要がある
- ディレクターの価値は「調整役」ではなく、AIに的確な指示を出せる指示命令系統の上側にいること
- デザイナーの次のキャリアは、迷うなら手を動かす専門性よりアートディレクター側に軸を移す方がいい
- 仕事に惰性を感じたら、自分が最初に何にワクワクしていたのか、入り口を思い出してみる






