「わからない」を言えないのは、たいてい自分のプライドのせい
いただいたおハガキに、打ち合わせの内容が記憶に定着しない、という悩みがありました。
原因を考えると、知らないワードが出た瞬間に思考が止まって、そのまま話が進んでしまうんだそうです。
この気持ち、わかるんですよね。今何の話をしてるんだろうという瞬間に、話がわーっと抜けていく感じ。
角掛さんの答えはシンプルで、「わかんないことは全部聞くことにしてる」でした。
相手が話に乗っていても、「ちょっとすいません、ここわからないので教えてください」ってすぐ言うようにしている、と。
わかったふりをすると、相手は「この人はわかってるんだな」と思って話を続けてしまう。それは相手にすごく失礼だ、という理屈です。
ここで私はあえて突っ込んでみました。いいおっさんになってくると、専門家として呼ばれているのに「知らない」と言えない、小さなプライドがあるじゃないですか、と。
そうしたら角掛さんは、「恥ずかしさがないんだよね。だってわからないんだからしょうがないじゃん」と。
そのうえで、「一生懸命説明してくれてる相手に対して誠実でありたい」と言っていて、自分のプライドより仕事に対して誠実でありたいという一点で聞いているんだな、と腑に落ちました。
後で調べてわかっても、それは「理解できただけ」
ここで私は、意地悪な反論を代わりに立ててみました。
今はAIで録音して議事録も作れるし、あとで知らない言葉を調べれば取り繕える。次の打ち合わせでは、わかった状態で相手に接しているんだから、別に不誠実じゃないんじゃないか、と。
これに対する角掛さんの答えが、私はいちばん深いと思いました。
「後で調べて話が理解できたっていうのは、理解できただけなんだよね」と言うんです。
その場で理解できていれば、その場で提案もできたかもしれない。同じ1時間でも、より濃い1時間にできる可能性がある、と。
「あ、それそういうことですね」となったところで思考が回り始めるんだから、そこで初めて手が考えられる。
その場でわかることには、後で調べるのとは別の価値があるという話で、なるほどなあと。
私も可能な限り持ち帰らずに、その場で答えを出すと決めているんです。
めんどくさいからではなくて、その場で結論が出れば、お客さんのビジネススピード的に早くローンチできるじゃないか、と思っているからなんですよね。
「バレてないと思ってるのは、お前だけ」
もうひとつ、角掛さんの言葉で妙に納得したのがあります。
わかったふりをしていても、相手には「こいつわかってねえだろうな」と思いながら喋られている、というんです。
「もう二者択一なのよ。わかったふりをしていることがバレた状態でいるのか、聞くのか」と。
じゃあバレていない状態はないんですか、と聞いたら、「思ってるのは本人だけ」だと。
返事の温度感でわかってしまう、というのはこれは私もわかります。
返事が軽かったり、音がずれていたり、微妙なところに出るんですよね。
しかも大人はみんな優しいから、「わかってないでしょ」とは言わない。でも言わないだけで、ちゃんとわかってはいる。
だとしたら、その小さなプライドで失うもののほうがずっと多いよね、という話でした。
質問は、いちばんいいコミュニケーションツール
角掛さんが最後に付け加えていたのが、質問はいいコミュニケーションツールだ、という話でした。
人はだいたい教えたがりだから、質問すること自体が相手との距離を縮める、と。
ただ、聞き方には差が出ます。淡々と「わからないんで教えてください」を繰り返すのと、興味を持って聞くのとでは、相手の機嫌がまるで違う。
その差は何かというと、角掛さんいわく「興味を持ってるかだよね」。
興味を持って聞いていれば、変な質問にはならないし、相手も機嫌よく答えてくれるはずだ、と言うんです。
ここで私は、若い子で知らないものに全く興味が湧かない、という人もいるよね、と話を向けてみました。
そうしたら角掛さんは、「そう思うんだったらこの仕事向いてないよ」と。
正直、私も同じことを思っていたので、聞けてよかったんです。
角掛さんは続けて、「興味もないのに、人のビジネスにちょっかい出しちゃダメだよ」と言っていました。
相手は大きな悩みを抱えて、ある程度の予算を持って相談に来ている。そこに興味がないなんてことはあってはいけない、というわけです。
そして、「知らないことを知るのは面白いし、それを相手がお金を払って教えてくれる。こんな美味しい話ないでしょうよ」と。
面白がってきたから、長くこの仕事ができている。これは私も本当にそうだなと思いました。
まとめ
打ち合わせで知らない言葉が出てきたときに「わかったふり」をするか、素直に聞くか。今の私は、聞くほうがいいと考えています。取り繕っても温度感でバレているし、その場でわかったほうが、その場で手を打てる。結局そのほうが得なんですよね。
- わからない言葉が出たら、その場で聞く。わかったふりは相手に失礼だし、たいていバレている
- 後で調べて理解するのと、その場で理解して提案できるのとでは、同じ時間でも濃さが違う
- 質問はいいコミュニケーションツール。ただし、興味を持って聞けるかどうかで差が出る
- 人のビジネスに関わる以上、未知のものを面白がれること自体が、この仕事を続ける前提になる







