CIRが掲げる「自立支援」という理念
この回で川﨑さんが取り上げるのは、自身が運営するCIR光が行っている「自立支援」というテーマです。
川﨑さんは、自立支援は福祉の世界でよく聞く言葉だと感じていると話します。そのうえで、自分たちのNPOや自立生活センターがいう自立支援が何を指すのかを説明していきます。
その出発点にあるのが、CIR光が掲げる理念です。重度障害者が人として自分らしく輝ける社会を創造するという言葉に、活動のすべてが向けられているといいます。
重度障害者が人として、ってどういう意味だろうって思うんですよね。いや、人じゃんっていう話ですよね。
重度障害者も人であり人間である。聞き手の多くもそう思うはずだと川﨑さんは言います。しかし、いまの社会では違う現状があると続けます。
今のこの社会における重度障害者の現状は、人間ではあるけれど、人として扱われていない現状がたくさんある。
「人として当たり前のこと」ができない現状
川﨑さんは、重度障害者が置かれた具体的な状況を挙げていきます。障害が重いほど、自分で自分の生活や動きをすることが難しくなると説明します。
寝て起きて、ご飯を食べて、トイレをして、お風呂に入り、夜は寝返りを打ちながら就寝する。そうした生理的欲求を自分で解消することができない人がいると川﨑さんは話します。
トイレも自分でできない、ご飯も自分で食べられない。そういう状態の人が、いま日本のどこで生活しているのかを川﨑さんは問いかけます。
その答えとして挙げるのが、育ててくれている親元、あるいは病院、施設、グループホームといった特定の居住様式です。何人かの利用者に対して数名のスタッフで対応するのが通常だと説明します。
こうした環境では、食べたいものを食べる、トイレをしたいときにするといった、人として当たり前のことが実行できないと川﨑さんは指摘します。
人として当たり前のことが実行できない、という状態が、今の多くの日本の障害を持ってる人たちの実際としてある。
施設や親元から地域へ、自立支援が目指すもの
では、「人として輝ける社会」をどう作るのか。文化を醸成するのは何千年もかかる難しいことに思えるが、実はそう難しくないと川﨑さんは言います。
その鍵が、日々の行動として掲げている自立支援だと説明します。施設、親元、病院から、自分が暮らしたい地域へ生活の場を移すことがその中心にあります。
川﨑さんは、自立支援が大切にしている考え方を挙げます。当事者主体で、自分で決め、自分で選び、その責任も自分が持ちながら生活していくというものです。
具体的には、普通のアパートやマンションに、必要な時間だけヘルパーがつく暮らしです。必要な時間が24時間であれば、その時間分の介助を受けながら生活できる人を増やしていくといいます。
施設やグループホーム、親元で時間に縛られたり、不自由な生活を送るんじゃなくて、自分らしく普通の健常者と変わらないように地域の中で生活していく。
川﨑さんは、自立に至る過程だけでなく、自立した後も生活が続いていくよう介助者をサポートし、生活全体を支えることまで含めて自立支援だと表現しています。
これまでの暮らし
施設・病院・親元で、時間に縛られた集団生活を送る
場を移す
自分が暮らしたい地域の普通のアパートやマンションへ
必要な介助をつける
必要な時間だけヘルパーがつき、24時間必要なら24時間つく
続く支援
自立後も介助者や生活全体をトータルにサポートする
一人の自立が社会を変えていく仕組み
川﨑さんは、自立支援を進めることで社会がどう変わっていくのかを、具体的な連鎖として語ります。
まず、一人の当事者が地域で自立すると、その人にヘルパーがつきます。交代制で6名ほどがつくとして、福祉が初めての人も雇われ、自立生活を支える介助者になります。
その介助者の価値観が変わっていくと川﨑さんは言います。地域で生活できる障害者がこんなにいる、それが自然なことだと思えるようになり、これだけで6人の意識が変わります。
さらに、当事者がヘルパーと一緒に買い物へ行くだけで、地域のスーパーの店員や客の意識も変わっていきます。「あの人、この近所に住んでるのかな」と感じ、存在が当たり前になっていきます。
公共交通機関やレジャーの利用、小学校や企業での講演といった発信活動も重なります。重度の障害があってもサポートで地域生活が実現できることを、当事者自身が示していきます。
こうして一人の重度障害者が自立するたびに、変化が輪のように広がっていく。それが、人として輝ける社会を作っていく第一歩につながると川﨑さんは話します。
大きな理念を、目の前の一つ一つの実践へ
川﨑さんは、この大きな理念に向かう道を、果てしなく見えると表現します。それでもみんなで頑張っていると語ります。
では目の前にあるものは何か。それは目の前の介助であり、一つ一つの講演であり、事務所での会議で当事者が抱く気持ちだといいます。
それらを繰り返し考え、実行していくことによって、障害者が地域で生活するのが当たり前の社会が実現していく。川﨑さんは、代表として日々そう感じながら仕事に取り組んでいると話します。
最後に川﨑さんは、障害者の自立生活は奥が深いようで、実は非常にシンプルだと語ります。福祉や介護、介助のこと、そして重度障害者の自立生活について、これからもざっくばらんに話していきたいと締めくくりました。
障害者の自立生活って奥が深いようで、実は非常にシンプルだったりするんですね。
まとめ
川﨑さんが語る自立支援とは、重度障害者が施設や親元を離れ、必要な介助を受けながら自分らしく地域で暮らせるようにする取り組みです。一人の自立が介助者や地域の意識を変え、人として輝ける社会づくりの第一歩になると語られました。
- CIR光の理念は「重度障害者が人として自分らしく輝ける社会を創造する」ことにある
- 重度障害者の多くは、食事やトイレなど人として当たり前のことを自分の望むように実行できない現状に置かれている
- 自立支援とは、施設・病院・親元から地域へ移り、当事者主体・自己決定・自己選択・自己責任のもとで暮らせるよう支えること
- 一人の自立が6名ほどの介助者や地域の人々の意識を変え、輪のように社会を変えていく
- 大きな理念は、目の前の介助や講演など一つ一つの実践の積み重ねによって実現していく




