薬剤師の学びをどこで積むか、という学生の視点
薬局薬剤師のたいぞーさんは、外来対応や在宅医療に取り組みながら、社内の新人育成やセミナー開催にも携わっています。今回は、薬剤師にとっての学びをテーマに話が進みます。
たいぞーさんによると、見学に来た学生から職場選びの話を聞くと、様々な薬に触れて学べる環境を重視する視点がよく出てくるといいます。
薬局には様々な医療機関の処方箋が届くため、来局する人も本当に多様な疾患を抱えています。医師のように特定領域を極めるより、幅広く網羅的な知識が求められる点が薬剤師の特徴だと、たいぞーさんは話します。
だからこそ、複数店舗を経験できる薬局や、様々な診療科を扱う総合病院の処方箋を多く受ける薬局が、いろんな薬に触れて学べる「良い環境」と見られることがあるようです。
いろんな薬に触れることは、本当に「良い環境」なのか
ただ、たいぞーさんはこうした話を聞くたびに、少し疑問を感じるといいます。様々な薬に触れて学べることは、はたして良い環境と言い切れるものなのか、という点です。
(様々な薬に触れられることは)重要は重要なんですけど、それっていい環境って言えるものなのかなっていうことには、少し疑問を感じることがあります。
もちろん、薬に触れながらその薬を知り学ぶ姿勢は、とても大切だとたいぞーさんは前置きします。薬をきちんと認識していないと、正しく取り扱うこともできないからです。
ただ、薬剤師の役割は、薬を知って正しく取り扱うことだけではないはずだ、というのがたいぞーさんの問いかけです。
患者にとって一番大事なのは、薬が体で働いているかどうか
ここでたいぞーさんは、そもそも患者が薬を飲む理由に立ち返ります。患者は健康上の問題を解決するために、薬を使って治療をしているはずだという視点です。
だとすれば、薬を安全に取り扱うこと自体は大切でも、患者にとって一番大事なのは、その薬を飲んで本当に体が良くなったのかどうか、薬がきちんと体で仕事をしているのか、という点になります。
薬剤師は、そうした患者の体への薬の働きを、専門的な視点で見極めて評価していく役割を担う。そして、その評価に基づいてより良い治療を届けることも、また役割の一つだとたいぞーさんは話します。
健康上の問題
患者は自分の健康上の問題を解決したい
薬による治療
その問題を解決するために薬を使う
薬剤師の評価
薬が体で働いているかを専門的に見極める
より良い治療
評価に基づいてより良い治療を届ける
診療科の数に関係なく共通する「薬学的思考」
患者の体に今どんな状態があり、薬を使ってどう変化したか。この薬がこう働いてうまくいっている、あるいはうまくいっていないのはなぜか。たいぞーさんは、こうして薬学的視点から患者を見ていく思考を挙げます。
そして、こうした思考は診療科が複数あるかどうかとは実はあまり関係なく、様々な薬や患者に関わる際に共通した思考方法になる、というのがたいぞーさんの見方です。
つまり、扱う薬の種類の多さそのものより、患者一人ひとりに向き合って考える思考の型が、どんな場面でも効いてくるということです。
情報は陳腐化するが、思考は積み重なる資産になる
たいぞーさんは、薬の情報と思考を区別します。薬は日々新しいものが出て、情報も更新されるため、一度インプットした情報は時間とともに陳腐化していきます。
一つの領域を学んだら次の領域へ、と一生勉強が付きまといます。それ自体は大切なことですが、それと並んで、思考という普遍的なものを身につけておくことも大切だとたいぞーさんは考えています。
情報と違い、思考は普遍的なものなので、鍛えるほど自分の中に継続的に積み重なる資産のようなものになっていく、とたいぞーさんは表現します。
新しい薬や更新で陳腐化し、一生学び続ける必要がある
普遍的で、鍛えるほど自分の中に積み重なる資産になる
さらに、思考が鍛えられると情報を取り扱う力も増すため、薬の情報をより効果的に扱い、より安全に適切に薬を扱うことにもつながっていくといいます。
だからこそたいぞーさんは、様々な診療科の薬に触れることだけでなく、患者一人ひとりに向き合い、自分の専門性を使って患者を考える経験を積み重ねられる環境も、成長のための良い環境の選択肢に加えておくことが大切だと話します。
まとめ
この回でたいぞーさんが伝えたのは、様々な薬に触れることは大切でも、それ以上に、患者一人ひとりに向き合って考える薬学的思考を鍛えることが、薬剤師の学びの核になるという視点です。
- 薬局には多様な疾患の患者が来るため、薬剤師には幅広い知識が求められる
- 患者にとって一番大事なのは、薬が体で本当に働いているかどうか
- 薬学的思考は診療科の数に関係なく、様々な場面で共通して使える
- 情報は陳腐化するが、思考は鍛えるほど積み重なる資産になる
- 患者に向き合って考える経験を積める環境も、成長の良い選択肢に加えたい



