なぜいま、薬剤師の「経過的な関わり」が問われるのか
たいぞーさんは薬局で在宅医療や外来患者対応に取り組みながら、社内の新人育成や研修講師、勉強会やセミナーの開催、オンラインサロンの運営も行っている薬剤師です。
今回のテーマは、薬剤師が患者さんのことを経過的に見ていくときのポイントです。たいぞーさんによると、令和2年だったと記憶している薬機法 ── 医薬品や医療機器などの品質・有効性・安全性の確保について定めた法律。正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」ですの改正で、薬剤師が経過的に患者さんを見ることが法律に明記され、役割・義務として示されるようになりました。
さらに、中医協 ── 中央社会保険医療協議会の略称。診療報酬や調剤報酬の改定について議論する厚生労働大臣の諮問機関ですで進む令和8年度の調剤報酬改定に向けた議論でも、薬剤師が継続的に患者さんをフォローアップする関わりを評価することが議題に上がっているといいます。
窓口で対面したときだけでなく、その後の経過まで責任を持つことは、これからの薬剤師の患者さんとの関わり方として大事なポイントになると、たいぞーさんは考えています。
薬機法の改正
経過的に患者を見ることが薬剤師の役割・義務として法律に明記された
実践する薬剤師の増加
経過を見る活動をする薬剤師が増えてきた
調剤報酬改定の議論
令和8年度改定に向け、継続的なフォローアップの評価が議題に上がっている
1つ目のポイントは「薬学的な視点」で見ること
たいぞーさんが実践の中で大事にしているポイントは2つあります。1つ目は、必ず薬学的な視点で患者さんを見ることです。
たいぞーさんは、ただ患者さんの状態を見たり情報を聞き取ったりするだけでは、情報の齟齬が生じることもあり、薬剤師が介入する意味がむしろマイナスに働く面もあるかもしれないと話します。
状態の観察をして、その人のことをきちんと捉えて状況を共有するというのであれば、僕は個人的には看護師の方とかがものすごいそういった分野に関して専門性を発揮する職種だというふうに思っていて。
じゃあ薬剤師が関わる意味ってなんやねんっていうところになってくるんじゃないかなというふうに思います。
たいぞーさんの考えでは、そこに薬学という学問が入り、その視点で患者さんを見ることで、薬剤師にしかできない役割になります。
たとえば血圧の上下、お通じが出にくくなった、ふらついて転んだといった問題が起きたとき、今飲んでいる薬がその問題に影響しているかを評価し、薬をどうするか提案したり考えたりする。こうした見方には薬学が必要不可欠だといいます。
2つ目のポイントは聞き取りに偏らない情報収集
2つ目のポイントは、情報源のバランスです。薬剤師が患者さんと関わるときの主な情報源は、患者さんからの聞き取りだとたいぞーさんは指摘します。
聞き取りの情報は、客観的な数字に表れない患者さんの思いや、患者さん自身が感じる体調を捉えるうえで大切です。一方で、患者さんの話だけでは捉えきれない面があるのも事実だといいます。
たいぞーさんは、薬剤師は普段から聞き取りに慣れているので、客観的な情報にぐっと意識を向けてちょうどバランスが取れるぐらいだと考えています。
数字に表れない思いや本人が感じる体調を捉えられる。薬剤師が普段から集め慣れている
採血結果やバイタルサインなど。話だけでは捉えきれない面を補う
バイタルサインを自分で取れる薬剤師へ
客観的な情報の集め方として、たいぞーさんは病院の採血結果の確認に加え、普段の血圧や脈拍などのバイタルサイン ── 血圧・脈拍・体温・呼吸数など、生命の状態を示す基本的な指標のことの確認を挙げます。
自動血圧計などテクノロジーの進歩で機械で測れるものは増えていますが、器材がない場合もあります。そのため、必要なタイミングで自分でバイタルサインを取る手技や能力が、これからの薬剤師にとって大切になるとたいぞーさんは話します。
たいぞーさん自身も外来対応の中で、血圧を把握していない患者さんや不整脈など脈拍が気になる患者さんの状態を、その場で確認することがあるそうです。
そうすることで患者さんの状態がぐっと、こうクリアに見えるようになる。そんな経験を今までもう何度もしているので。
2つのポイントは処方提案と薬剤師の価値にどうつながるか
たいぞーさんによると、薬学的な視点と客観的な情報という2つのポイントを大切にして経過に関わることで、薬が患者さんの体に良くも悪くもどう影響しているかに気づけます。そこから、より最適な治療のための処方提案につながっていくといいます。
薬学的な視点で見る
問題に薬が影響しているかを評価する
客観的情報も集める
聞き取りだけでは見えない状態を把握する
薬の影響に気づく
良くも悪くも薬が体にどう作用しているかがわかる
処方提案
より最適な治療のための提案につながる
治療をより良くする介入はこれからの薬剤師に求められるものであり、中医協でも期待されている部分だとたいぞーさんは話します。
患者さんがより健康になるという結果を示せる介入を継続するためにも、こうした関わり方を自分の中で見据えて取り組むことが大切だと、たいぞーさんは締めくくっています。
まとめ
薬剤師が患者さんを経過的に見る意義は、薬学という専門性を生かし、聞き取りと客観的情報の両方から薬の影響を評価することにあると、たいぞーさんは語っています。
- 薬機法改正や調剤報酬改定の議論により、薬剤師の継続的なフォローアップが重視されている
- 状態観察だけなら看護師などの専門性が高く、薬学的な視点で薬の影響を評価することが薬剤師ならではの役割になる
- 聞き取りに慣れた薬剤師こそ、採血結果やバイタルサインなど客観的情報に意識を向けるとバランスが取れる
- 2つのポイントを押さえた関わりが、処方提案と患者さんへの価値の提供につながる



