「いい学びでした」の声に満足していいのか?
薬剤師のたいぞーさんは、発信活動のほか、研修会やセミナーの企画運営、社内研修の講師などを日常的に行っています。人に学びの機会を届けることが、たいぞーさんの普段の活動の一部になっています。
たいぞーさんが勉強会のあとに受け取るのは、「今日はとてもいい学びでした」「すごくためになりました」といった参加者の声です。たいぞーさんは、こうした声を講師冥利に尽きるうれしいことだと話します。
今日はですね、学びへの満足だけではなくて、臨床での実践っていう話をしたいなというふうに思います。
一方で、たいぞーさんは、講師が参加者の満足度に満足してしまうと、本当の意味でいい研修ができなくなる可能性があると考えています。この考えは、自分自身への自戒を込めたものだと語られています。
研修の成果は患者に届く価値で決まる
たいぞーさんによると、薬剤師に提供する学びの最終目的は、受講者が賢くなることや成長することではありません。学んだことを現場で実践し、患者さんに提供する医療の質が高まって初めて、研修は本当の意味を持つといいます。
つまり、たいぞーさんが考える研修の成果は「学んで満足した」ことではなく、患者さんに届けられる価値が向上したことです。
学ぶ
研修やセミナーで知識やスキルを得る
現場で実践する
学んだことを臨床現場の患者さんへの関わりに活かす
患者さんに変化が届く
感謝される、治療がより良くなるなど、医療の質が上がる
そのため、たいぞーさんは、話を聞いた人が現場で実践できたかどうかにも思いを馳せるようにしています。研修そのものも「いいことを学べた」で終わらせず、実践につながる設計を盛り込むことが、学びを提供する側として大事だと感じているそうです。
この学びがあったおかげで患者さんにめちゃめちゃいい関わりができたであるとか、(そういう体験に)繋がっていくように、そういった設計をきちんと研修の中にも盛り込んだものにしておく。
たいぞーさんは、週末にバイタルサイン ── 血圧・脈拍・体温・呼吸など、生命の状態を示す基本的な指標。薬剤師が患者の状態を把握する手段として講習会も開かれています講習会を開催する予定です。バイタルサインの分野でも、学んだ人のうち実践している人がどれだけいるのかが、学会の中で課題として挙がっているといいます。
たいぞーさんは、自分がセミナー参加者として学ぶ立場のときも同じだと話します。学びに満足して終わらず、臨床現場で患者さんに貢献し、医療の質を上げることを念頭に置いて学びの機会に飛び込みたいという考えです。
学会シーズンで多くの薬剤師が学んでいる時期だからこそ、たいぞーさんは、学ぶ意義と臨床で活用する視点を考えるきっかけにしてほしいと呼びかけています。
専門性を極める薬剤師はキャリアになり得るか?
たいぞーさんは、2月14日の日曜日に兵庫県姫路市で講演会を主催・企画しています。収録時点では、日程と場所以外の詳細は調整中とされています。
姫路市の講演会でたいぞーさんが話す予定なのは、薬学で患者を語る実践を通じて患者さんに届けられた価値や、薬剤師の仕事のやりがいと面白さです。そのうえで、専門性を極める道が薬剤師のキャリアの選択肢になり得るのかを考えたいといいます。
たいぞーさんの見立てでは、薬剤師のキャリアプランは、プロとして能力を磨く道よりも、組織やチームを束ねるマネジメント職へ進む道として示されることが多いそうです。たいぞーさんは、一般企業でも同様の考え方が多く、それ自体は間違いではないとしています。
組織やチームを束ねる立場に進む。キャリアプランとして示されることが多い
専門性を極めていく。内的な報酬はあるが、外的な報酬に結びつきにくい
ただ、たいぞーさんは、薬剤師のような職人には職人として生きる道があってもいいと考えています。その道に進みたくても、内的な報酬 ── 仕事そのものから得られるやりがいや面白さなどの満足感。賃金や地位のような外から与えられる「外的報酬」と対比される言葉ですだけで外的な報酬がないために断念する薬剤師がいるなら、それは社会資源の活用という観点でもったいないと話します。
やりがいや面白さみたいな内的な報酬はあるけど、外的な報酬がないが故にその道を断念している薬剤師がいるとするのであれば、それは社会にとって社会資源の活用という観点でも非常にもったいない。
たいぞーさんは、専門性を極めることを賃金などのキャリアアップに結びつけるのは、現行の報酬制度を考えると簡単ではないとも理解しています。そのうえで、プロとして能力を極める薬剤師が生まれる土台となるキャリア制度をどう作るかを、講演会の参加者と一緒に考えたいと語っています。
講演会の詳細は決まり次第報告するとしたうえで、たいぞーさんは関心を持った人に2月14日の予定の確保を呼びかけ、10分講座を締めくくりました。
まとめ
たいぞーさんは、研修の価値を受講者の満足度ではなく、学びが臨床で実践され患者さんに届く変化で測るべきだと語りました。その視点は講師としての自戒であり、学ぶ側としての姿勢でもあり、専門性を極める薬剤師のキャリアという問題意識にもつながっています。
- 「いい学びでした」という満足度に講師が満足すると、本当にいい研修ができなくなる可能性がある
- 薬剤師の研修の成果は、患者さんに提供する医療の質が上がって初めて生まれる
- 研修には、学んだことを現場で実践し、患者さんへの変化を体験できる設計を盛り込むことが大事
- 専門性を極める薬剤師の道を、外的報酬も伴うキャリアの選択肢にするにはどうすればよいかが課題とされた
- 2月14日に兵庫県姫路市で、このテーマを扱う講演会が予定されている


