「薬局を経営しないの?」と聞かれる薬剤師
薬剤師のたいぞーさんは、音声配信や講演会で「こんな風に薬剤師として働きたい」というメッセージを発信しています。そうした発信を続けていると、「薬局を経営したいとは思わないのか」と声をかけられることがあるそうです。
たいぞーさんは十数年間薬剤師として働いてきましたが、薬局を経営したいと思ったことはあまりないと話します。この回では、なぜ経営したいと思わないのかを掘り下げています。
(周りから)「薬局経営したいとかって思わへんのかな」っていうようなことを言われることがあります。
たいぞーさんには、薬剤師として現場で届けたい医療の理想像があります。自分で店舗を持てば、理想とする患者さんや地域への関わり方を体現できるという指摘は理にかなっている、とたいぞーさん自身も認めています。
実践できる環境を自分から作りに行くのも一つの手段だと理解したうえで、それでもたいぞーさんは「やっぱり薬局経営はしたくない」と感じているといいます。
開業医のThreadsの投稿が気づかせたこと
この話をするきっかけは、Threads ── Meta社が提供するテキスト中心のSNS。Instagramのアカウントと連携して使えますで見かけた、地域でクリニックを開業した医師の投稿でした。
その医師の投稿には、勤務医の頃は診療に集中できる環境があったが、開業するとスタッフの働き方や院内の仕組み、これからの診療体制まで考えることが増える、と書かれていました。診療以外の仕事も含めてクリニックを運営するとはこういうことなのだ、という内容だったそうです。
勤務医の頃は、診療に集中できる環境があった
開業後は、スタッフの働き方や院内の仕組み、診療体制まで考えることが増えた
開業医のこの書き込みを読んで、たいぞーさんは「やっぱり僕は薬局の経営はしたくない」と改めて思ったといいます。
薬局を経営すると、薬剤師以外の仕事が増える
たいぞーさんが目指しているのは、薬学の専門性を活かして患者さんに理想の医療を届け、患者さんが健康になる仕事です。そんな仕事ができれば、薬剤師の仕事はやりがいがあって面白いものになると考え、日々現場で実践しています。
薬局を経営しても、経営者自身が臨床現場で専門性を活かした関わりを体現することはもちろんできる、とたいぞーさんは認めています。
一方で、薬局を運営するとなると、臨床現場での実務だけでは済まないと話します。たいぞーさんが挙げた経営の仕事は次のようなものです。
- 薬品を仕入れる
- 保険請求を行う
- 資金繰りを立てる
- 従業員を雇い、その雇用を守る
薬剤師以外の仕事が圧倒的に増えてしまう。薬局の経営をするというのは、まあ、そういうことと向き合わなくてはいけない。
たいぞーさんは以前から、薬局経営は自分の思う路線とは少し違うとイメージしていました。Threadsの投稿を見て、その感覚が裏付けられた形です。
会社員として働くほうが理想に近い可能性
たいぞーさんは、経営すると「経営する」という仕事が新たに生まれると整理します。そのため、自分自身が臨床現場で理想を体現したいのであれば、価値観の合う会社で会社員として働くほうが合っていることもあるのではないか、と改めて感じたそうです。
理想の形を体現できる一方、仕入れ・保険請求・資金繰り・雇用など経営の仕事が新たに生まれる
価値観の合う会社の中で、臨床現場での実践に力を注げる
実際、たいぞーさんは今の会社でも前の会社でも、薬学で患者を語り、専門性を届けて患者さんの健康に貢献したいという思いを快く応援してくれる環境に恵まれてきたといいます。
100パーセントができているというふうにはもちろん思わないですが、かなり(理想とする患者さんへの関わりを)認めていただいている。
自分は何をしたいのかを見つめる
たいぞーさんは、会社や薬局の経営そのものをしたいなら、開局して経営するのは一つの選択肢だと話します。ただ、理想の医療を実現したいという夢が目的なら、それが経営で手に入るのか、会社員として臨床の最前線で働くことでも手に入るのかを見つめる必要があると考えています。
その見極めをしないまま経営に踏み出すと、思った感じと違い、理想からかけ離れていく「本末転倒」になりかねない、とたいぞーさんは指摘します。熱い思いを持つ人がそのエネルギーを臨床現場での実現に注ぐことは、業界にとっても大切だと考えているからです。
たいぞーさんの結論は、思いを形にする選択肢は経営だけが全てではないというものです。
臨床現場での実践に不自由を感じるようになれば、将来は開局も選択肢になるかもしれない、とたいぞーさんは含みも残しています。それでも、活動を理解して一緒に取り組んでくれる会社がある限りは、会社員として仲間と理想の医療を実現する道を選び続けたいと話しています。
専門性を極める薬剤師のキャリアをどう作るか
最後にたいぞーさんは、リスナーに対し、理想の医療に必要なのは薬局経営なのか会社員として臨床で働き続けることなのか、自分の理想と照らし合わせて考えるきっかけにしてほしいと呼びかけました。
あわせて告知されたのが、来年2月14日に兵庫県姫路市で、薬剤師革命家のりょうたさんと共同で主催する講演会です。たいぞーさんは、薬学で患者を語る実践から得られるやりがいや面白さを伝えるといいます。
講演のもう一つのテーマは、薬剤師のキャリアです。たいぞーさんによれば、現状の薬剤師のキャリアプランでは、キャリアアップの過程でマネジメント職に就くのが一つの道筋になっていることが多く見受けられます。
専門性を活かす道もないわけではありませんが、それが賃金などの外的報酬に反映されにくく、プロフェッショナルとしての道を極めることが選びにくい状況が今の薬局の現場にはあるのではないか、とたいぞーさんは感じています。
医療の制度や仕組みの中で難しい面があることは理解しつつ、たいぞーさんは突破口を現場でトライアンドエラーしながら模索しているそうです。講演では、その実践の中での気づきや可能性を伝えたいと話しています。
プロフェッショナルとしてのキャリアの道、これがきちんと示せるようになるとですね、そういった道を選んで、より患者さんの治療をより良くしていく薬剤師というのが、これからたくさん生まれてくる。
まとめ
たいぞーさんは、薬局経営で理想の医療を体現できることを認めつつも、経営には薬剤師以外の仕事が大きく伴うことから、価値観の合う会社で会社員として臨床に立つ道を選んでいます。大切なのは、自分が本当に何をしたいのかを見極めることだと語られています。
- 開業医のThreadsの投稿をきっかけに、経営には本業以外の仕事が増えることを改めて実感した
- 薬局経営では仕入れ・保険請求・資金繰り・雇用の維持など、薬剤師以外の仕事が圧倒的に増える
- 理想の医療が目的なら、理解ある会社で会社員として働くほうが実現しやすい場合もある
- 専門性を極める薬剤師のキャリアが選びにくい現状について、2月14日の姫路での講演会で突破口を語る予定


