忙しくてやりたい薬剤師像を実践できない、という転職理由
たいぞーさんは薬局で在宅医療や外来対応にあたりながら、新人育成や社内研修、勉強会やセミナー、オンラインサロンの運営も行っています。
以前勤めていた会社では、現場の実務に加えて社内研修や店舗運営、そして採用も担当していました。
採用の中でも、たいぞーさんが得意としていたのは中途採用、特に卒業後1年から3年ほどの第二新卒 ── 新卒入社してから数年以内に転職する若手層。社会人経験が浅く、ポテンシャルを重視して採用されることが多い。と呼ばれる若手層への対応でした。
そうした若手が転職してくるとき、面接で理由を聞くと、多くの人が似たようなことを話したといいます。
前の環境では業務も忙しくて、自分が思い描いていた「患者さんに関わる薬剤師」という姿が実践できなかったんです。
だから新しい環境で、その思いを達成できる場所を探して、やりがいを持って働けるようにしたい。
熱い思いを持って転職活動をする若手に、たいぞーさんはよく出会ってきました。
その環境で、どれだけ患者さんと関わったのか
自分の思いを達成できる環境を探すこと自体は大切だと、たいぞーさんは考えています。
一方で気になったのは、その置かれた環境の中で、一体どこまでのことをやって転職という決断に至ったのかという点でした。
そこで面接では、今の環境の中でどれだけのことを患者さんにしたのかを、必ず聞くようにしていたといいます。
忙しくて思うように関われなかった、という言葉自体は、その通りかもしれません。ただ、たいぞーさんはそこに数の視点を持ち込みます。
毎日20人から30人ほどの患者に関わり、月に20日勤務すると、1ヶ月で400人から600人と関わる計算になります。
つまり在職の1年から3年の間に、およそ1万人から2万人の患者と関わりながら仕事をすることになります。
たいぞーさんは、なかなか実践できない環境でも、やろうと思えばできた場面はあったのではないかと問いかけます。
転職しても、また「できない理由」を探してしまう
自分にできることをやろうとせず、環境に原因を置いて新しい場所へ移ったとしても、結局は同じことが起きるのではないか。たいぞーさんはそう考えています。
環境に原因を置いて転職しても、結局その先でも、何らかのできない理由を探して、やらないままになってしまうんじゃないか。
総じてできない場面のほうが多かった、というのは事実としてあるかもしれません。
それでも、全く一度も、一ミリもできなかったというなら、そこには自分の努力不足の部分も往々にしてあるのかもしれない、とたいぞーさんは話します。
この視点は、環境を責める姿勢と、自分の行動に目を向ける姿勢の違いとして整理できます。
忙しさや職場のせいにして、新しい環境を探す。転職先でも同じ壁にぶつかりやすい
同じ環境でも、やれる場面を探して積み重ねる。できる範囲を少しずつ広げていける
面接で「もう少しやってみます」と思い直す人たち
たいぞーさんは、こうした話を面接の場でも若手に伝えていました。
すると、およそ半分、多いときはそれ以上の人が、もう少し今の環境でやってみて、また転職を考えたいと思い直したといいます。
採用をしている立場としては、来てくれる人がいたほうがありがたいのは確かです。
人員が欲しいという思いはぐっと押しこらえて、いい環境で働く選択ができるなら、それに越したことはないねと言ってお別れした場面もよくありました。
その人が自分の環境の中でできることを思い直し、薬剤師として活躍できるのなら、それもまた一つの答えだと受け止めていたのです。
100点の環境はない。できることを積み重ねて範囲を広げる
たいぞーさん自身も、まさに同じことを感じてきたといいます。
薬学で患者を語ることを現場で実践してきましたが、12、13年働いてきた中でも、100パーセント思いを実現できる環境は、今でも手に入っていないと振り返ります。
それでも、できることは少なからずあり、それを積み重ねながら少しずつ範囲を広げてきました。
その広がりは、自分の習熟度を上げることでも生まれますし、患者との関わりの中で見つかる工夫や手段の糸口からも生まれます。
今できることをやる
忙しい環境でも、やれる場面を探して実践する
習熟度が上がる
経験を重ねることで、対応できる範囲が広がる
工夫が見つかる
患者との関わりの中で、新しい手段や糸口が見えてくる
できる環境が作られる
積み重ねが、自分の周りにできる環境を少しずつ形づくる
環境に要因があるのは確かでも、自分にやれることをやらずに、環境の影響だけで目指すところにたどり着くのは難しいと、たいぞーさんは語ります。
だからこそ、自分のできることをきちんとやっていくことが大切だと、ふと思い出したことをきっかけに、この回を届けたと話しています。
まとめ
若手薬剤師の転職理由に多い「忙しくてやりたい薬剤師像を実践できなかった」という言葉を入り口に、環境を責める前に自分にできることをやりきったかを問い直す回でした。数の視点や自身の経験を通して、できることの積み重ねが環境そのものを変えていく可能性が語られました。
- 忙しさを理由にした転職でも、1〜3年で1万〜2万人の患者と関わる中に「できた場面」はあったのではと問い直せる
- 環境に原因を置いたままだと、転職先でも同じように「できない理由」を探してしまいやすい
- 面接で問い直された若手の半分ほどが、もう少し今の環境でやってみようと考え直した
- 100点の環境は存在せず、できることの積み重ねが自分の周りの環境を少しずつ広げていく



