夜の自由参加なのに40名が集まった褥瘡勉強会
たいぞーさんが勤めるぼうしや薬局では、社内の有志スタッフを集めた勉強会が不定期で開かれています。前日の回では、たいぞーさん自身が講師となり、褥瘡 ── 寝たきりなどで体の同じ部分が長時間圧迫され、血流が悪くなって皮膚や組織が傷つく状態。いわゆる床ずれのことですをテーマに話しました。
勉強会は夜7時半から1時間の開催で、参加は自由です。それでも業務を終えたスタッフが総勢40名近く集まりました。
これだけたくさんのスタッフが夜業務が終わった後、お疲れのところにも関わらずですね、集まってくれる。
たいぞーさんは、熱心な仲間と働ける環境をありがたいと感じています。薬剤師という仕事に誇りを持って働けていることを改めて実感した時間だった、と振り返っています。
「得意ではない」講師が褥瘡を語れた理由とは?
たいぞーさんによると、褥瘡は薬剤師にとってとっつきづらく、「難しそう」「介入しづらい」と苦手意識を持たれやすい領域です。
講師を務めたたいぞーさん自身も、褥瘡を得意分野だと言えるほど深く勉強してきたわけではないといいます。臨床現場で褥瘡の患者さんに手探りで関わってきた経験がもとになっています。
大学で学ぶような本当に基本的な知識を駆使しながらですね、なんとか患者さんにより良いものをと思ってやっている。
大学で学んだ基本的な知識を使いながら関わるうちに、褥瘡の患者さんへの介入がうまくいく経験が少しずつ積み重なりました。勉強会では、その知見をまとめて話しています。
先輩の「まずは皮膚を見せてもらいなさい」が意味していたこと
たいぞーさんは昔、以前勤めていた会社の先輩薬剤師から、皮膚科の領域は薬剤師が大きく貢献できると教わりました。首元や手、腕など、皮膚に困りごとを抱える患者さんがいれば、まずは見せてもらうよう言われたそうです。
当時は理由を少し聞いただけでした。臨床経験を積み重ねるうちに、皮膚疾患がなぜ薬剤師の介入できる領域なのか、たいぞーさんはなんとなくわかってきたといいます。
内服薬と塗り薬、効果の確かめ方はどう違う?
たいぞーさんは、まず内服薬の効果の確かめ方を説明します。血圧の薬を飲むと血管の筋肉が緩んで血管が広がり、血管の圧力が減ることで血圧が下がります。
ただし、医師も看護師も薬剤師も、血管が広がっている様子を直接目で見て確認しているわけではありません。血圧という数値から、血管が広がっているだろうと間接的に推定しています。
一方で皮膚疾患では、薬を直接塗り、その結果を目で見られます。皮膚が良くなっている、悪くなっている、変わらないといった変化が見てわかります。
体の中の変化は直接見えず、血圧などの数値から間接的に推定する
使用前後の皮膚の状態を目で見て、効いたかどうかを直接確かめられる
使い始める前と後の皮膚を見比べれば、塗り薬が効いたかどうかがまずわかります。たいぞーさんは、この点を情報として得られるものが多いと話しています。
塗り薬が効かないとき、薬剤師はどこを見る?
塗り薬を使っても皮膚の状態が回復していなければ、薬が効果を示していないとわかります。そこから「なぜ効かないのか」を考えられるのが、皮膚疾患の特徴です。
効かない理由には、炎症をより強く抑える薬が必要だというように、薬そのものが合っていない場合があります。ただ、たいぞーさんは、塗り薬は使い方も非常に重要だと強調しています。
塗り方であるとか、塗る量とか、そういったところが適切なのかどうかというような手技のところにも非常に薬効を左右する要素がたくさん絡んでいます。
医師が診察して薬を選ぶ判断だけでなく、服薬指導で使用方法を伝え、経過を見ながら問題点を見つけてサポートすることが、塗り薬の効果を左右します。
観察
使用前後の皮膚の状態を目で見て比べる
判断
回復していなければ、薬が効果を示していないと気づく
原因の検討
薬の選択だけでなく、塗り方や塗る量などの手技も確かめる
サポート
服薬指導と経過観察で問題点を見つけて支える
皮膚疾患は、治るかどうかを左右する要素に薬剤師が関われる領域です。たいぞーさんは、先輩が皮膚を見せてもらうよう勧めた理由を、今になって実感しているといいます。
褥瘡で製剤学が力を発揮する理由とは?
たいぞーさんによると、褥瘡も皮膚疾患と同じく、薬を塗った結果で治療がうまくいっているかを目で見て判断できる領域です。
ただし褥瘡は、皮膚の表面に炎症が起きる一般的な皮膚疾患とは違います。皮膚がえぐれ、深いところまで傷が広がっている点が特徴です。
そのため褥瘡の治療では、薬の主成分だけが重要なのではありません。どのような基剤を使った製剤なのかという製剤設計の影響も大きいといいます。
製剤学を学んでいる薬剤師がとても介入しやすいというか、介入して力を発揮していきやすい領域なのではないかなというふうにも思います。
新しい知識より、大学で学んだ基礎で関わる
今回の勉強会は基礎編だったため、難しい話はあまりしていません。たいぞーさんが伝えたかったのは、褥瘡に関わるために新しいことを勉強する必要はないという点です。
薬剤師が大学で学んだ薬理学、薬物動態学、製剤学の基礎だけでも、褥瘡は案外しっかり介入できる領域だとたいぞーさんは話しています。
まずは自信を持って患者さんに関わることが大事だと、たいぞーさんは勉強会で伝えました。スタッフが積極的に介入する勇気になればという思いがあったそうです。参加者は1時間、真剣に話を聞いていたといいます。
アドバンスド編と「皮膚疾患に強い薬局」という目標
社内の有志勉強会には、続きとしてアドバンスド編も企画されています。具体的な介入方法や薬剤選択の細かな使い分けなど、たいぞーさんが日ごろ考えながら実践していることを伝える予定です。
たいぞーさんは、こうした学びを通じて、地域で薬剤師が褥瘡や皮膚疾患に関わる質を上げたいと考えています。目指しているのは、相談すれば皮膚疾患がよりよく改善していくと思ってもらえる薬局です。
放送の締めくくりでは、完璧でなくても、まずは自分の持っているものを使うことが大切だと語られます。その中で患者さんへの価値が生まれ、皮膚疾患は薬剤師が幅広く関われる領域だというメッセージです。
12月のWEBセミナーと2月の姫路講演会の告知
最後に、たいぞーさんは2つの告知をしています。1つ目は12月8日の薬学的アセスメントに関するWEBセミナーで、患者さんへの薬学的介入をテーマに90分で話します。
このセミナーでは、薬理、動態、製剤の知識に、患者さんから聞き取った情報や生活背景を組み合わせて見立てる考え方が扱われます。たいぞーさんが日々行っている介入と、その成果も紹介される予定です。
2つ目は、2月14日に兵庫県姫路市で主催を予定している講演会です。時間と場所は確保に向けて動いている途中で、決まり次第、放送で知らせるとしています。
姫路の講演会では、臨床能力を鍛えた薬剤師が、やりがいという内的な報酬だけでなく、賃金などの外的な報酬にもつながる仕組みを考えます。会社の温情ではなく、社会制度や会社の利益と結びついた形を目指すという問題意識です。
まとめ
褥瘡を含む皮膚疾患は、薬の効果を目で確かめられ、塗り方や製剤設計にも薬剤師が関われる領域です。たいぞーさんは、大学で学んだ基礎知識を使い、自信を持って患者さんに関わることの大切さを勉強会で伝えました。
- 夜の自由参加の社内勉強会に、40名近くのスタッフが集まった
- 内服薬は数値から効果を推定し、塗り薬は皮膚の変化を目で見て確かめられる
- 塗り薬の効果は、薬の選択だけでなく塗り方や塗る量にも左右される
- 深い傷になる褥瘡では、基材などの製剤設計が重要になり、製剤学の知識が生きる
- 新しい知識より、薬理学、薬物動態学、製剤学の基礎を患者さんに届けることが出発点になる


