「気にかけてくださってありがとう」はなぜ慎重に扱うべきか
たいぞーさんは、薬局で働いていると患者さんから感謝の言葉をもらう場面が結構あると話します。服薬指導の中で「あなたに話を聞いてもらえてよかった」と言われたり、フォローアップの電話で「わざわざありがとうございます」と言われたりする場面です。
(感謝の)言葉をいただいた時には、心の芯がこうじんわりと温まるような、嬉しい気持ちになってきます。
最近の具体例として、たいぞーさんは排便コントロールに困っていた患者さんの話を挙げます。新しい薬が追加されたため、排便コントロールがうまくいったかが気になり、経過を確認する電話をかけたそうです。
その電話で患者さんから「気にかけてくださってありがとうございます」と言われ、たいぞーさんは薬剤師をやっていてよかったと思える場面の一つだと振り返っています。
一方でたいぞーさんは、感謝をされるという現象は、うれしい反面、少し慎重に扱ったほうがいいものだとも考えています。
人は褒められると、その行動を繰り返したくなります。
たいぞーさんによれば、感謝の言葉も同じで、「こうしたら患者さんが喜んでくれた」という経験が、だんだんと自分の仕事の基準になってしまうことがあります。注意が必要なのは、感謝される行動が必ずしも薬剤師の本来の仕事とは限らないからだといいます。
話を聞くだけでは足りない、薬剤師の本来の役割とは
たいぞーさんは、丁寧に話を聞くことはもちろん大事で、それだけで感謝されることもあると認めています。そのうえで、薬剤師は患者さんの聞き役にとどまる専門職ではないと話します。
たいぞーさんが考える薬剤師の役割は、聞き取った内容を薬学的な視点から読み解き、治療の質を上げるために何ができるかを考えて、患者さんに介入していくことです。
感謝をされる行動ばかり追いかけていると、そのような薬学的な介入の部分が後回しになってしまう、そんなことに陥ってしまうことも起こりかねません。
たいぞーさんが本来すべきこととして挙げるのは、患者さんから聞き取った情報を、薬の作用時間、体からの排泄速度、副作用の発現のタイミング、症状などと照らし合わせることです。そうして治療がいい方向に向かっているかを解釈していくのが、薬剤師の大きな役割だといいます。
たいぞーさんの話す、聞き取りから治療の質の向上までの流れを整理すると、次のようになります。
聞き取り
患者さんから症状や様子などの情報を聞き取る
薬学的な解釈
作用時間・排泄速度・副作用の発現タイミング・症状と照らし合わせ、治療の動きを読み解く
変化の発見
患者さん自身が認識していない変化まで拾い上げ、薬剤師にしか見えない姿が見えてくる
医師と共有
得られた情報を医師と共有し、治療の質を高めることにつなげる
たいぞーさんは、この解釈をしっかりやることで、薬剤師にしか見えない患者さんの姿が見えてくると話しています。
感謝の言葉を「栄養剤」にするという考え方
たいぞーさんは、感謝の言葉の使い方として、「ここからさらに踏み込んで、患者さんにもっとしっかり関わろう」と自分の気持ちを向かわせるための栄養剤のような役割にするのがいいのではないかと提案しています。
言葉には温度があります。その温度に気持ちがほぐれるというのも当然のことだというふうに思います。
ただ、そこで立ち止まるのではなくて、薬学を携えた専門家として、その先に一歩踏み込めるかどうか、ここがとても大切だというふうに思います。
たいぞーさんは、感謝をゴールではなく入り口として意識できれば、薬剤師の仕事はもっと大きく広がり、患者さんの役に立つものになっていくのではないかと締めくくっています。
まとめ
この回でたいぞーさんは、患者さんからの感謝をうれしく受け止めつつも、それを仕事の基準にしてしまう危うさを指摘し、感謝を薬学的な介入へつなげる視点の大切さを語りました。
- 感謝される行動が、必ずしも薬剤師の本来の仕事とは限らない
- 薬剤師の役割は聞き役にとどまらず、聞き取った情報を薬学的に解釈して治療の質を上げること
- 作用時間や副作用のタイミングと照らし合わせることで、患者さんが気づいていない変化まで拾える
- 感謝の言葉は、さらに踏み込むための栄養剤であり、次のアプローチへの入り口と捉える



