フォローアップは「やらなければならない業務」になった
今回のテーマは、薬剤師が行う患者のフォローアップの意味をどう捉えるかです。たいぞーさんはまず、2019年に行われた薬機法 ── 医薬品や医療機器の品質・有効性・安全性の確保などを定めた法律の略称。正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」ですの改正に触れます。
この改正で薬剤師法の第25条の2が改正され、薬剤師は継続的かつ的確に、薬学的知見に基づく指導を患者に行わなければならないと明記されました。
これ(法改正)は、薬剤師が患者の経過のフォローアップを、やってもいい業務ではなくて、やらなければならない業務に変わったという一つの大きな転換点だったなというふうに思います。
患者の経過のフォローアップは、薬剤師が「やってもいい業務」
継続的かつ的確な薬学的知見に基づく指導が明記され、「やらなければならない業務」に
たいぞーさんは、こうした背景もあって、この頃から患者に経過の確認を積極的に行う薬局や薬剤師が増えてきたのではないかと見ています。
聞き取った情報を並べるだけの情報提供でいいのか
フォローアップでは、患者に経過を確認したあと、医師に情報提供を行う場合があります。たいぞーさんが気にしているのは、その情報提供の中身です。
医師への情報提供が、患者から聞き取った情報をそのまま書き並べて伝えるだけになっているケースも少なくないのではないか、とたいぞーさんは指摘します。
もちろん、患者の最新情報を確認して共有すること自体の価値は、医療の中でとても大きいとたいぞーさんは認めています。最新情報があることで、医療の専門家としての見立てが変わることも往々にしてあるからです。
ただ、その最新情報を共有するという役割、これはテクノロジーが発達すると簡単に代替されてしまうものだなというふうにも一方で思います。
たいぞーさんは、患者が自分でアプリを使って医師に伝えることもできるうえ、自分の医療情報をデジタルで管理するPHR ── Personal Health Recordの略。個人が自分の健康診断結果や服薬歴、生体データなどの医療・健康情報を、デジタルで記録・管理する仕組みですも進んできていると話します。
生体データが医師へ自動的に転送される仕組みができれば、薬剤師が情報を把握して伝える仲介役の必要性は大幅に減ってしまう、というのがたいぞーさんの見立てです。
アプリ
患者が自分でアプリを使って医師に伝えられる
PHR
自分の医療情報をデジタルで管理する仕組みが進む
自動転送
生体データが医師へ自動的に送られる仕組みができる
仲介の減少
薬剤師が情報を把握して伝える必要性が大幅に減る
だからこそたいぞーさんは、薬剤師がやるべきことは聞いた情報を届けるだけでなく、薬学的にどう考えたかを添えて伝えることだと考えています。
「薬学的に考える」とは何をすることか
法律にも薬学的知見に基づく指導をしなければならないと書かれていることから、たいぞーさんは、薬学的知見を薬剤師自身が持つこと、そしてそれを医師と共有することが重要なポイントだと話します。
では、薬学的に考えるとは何なのか。たいぞーさんの答えは、フォローアップで確認した患者情報を、薬の性質や作用の発現時間と照らし合わせて判断することです。
具体的には、期待される効果がどう出ているか、副作用がどんなふうに起こっているか、その症状が発生したタイミングはいつかを、薬の特性と突き合わせて薬剤師が考えていきます。
患者から聞き取った内容をそのまま書き並べて医師へ伝える
症状の発生時期などを、薬の性質・作用の発現時間・効果や副作用の出方と照らし合わせて判断し、視点を添えて伝える
効果が出るはずの時期に確認すると何がわかるのか
たいぞーさんは具体例として、新しい薬が追加された患者の経過を見るためにフォローアップを行った場面を挙げます。
この例の患者には飲み忘れもなく、困るような症状も出ておらず、症状は改善に向かっていました。たいぞーさんは、こうしたことが確認できるだけでも、とても意味のある情報だと話します。
ただ、たいぞーさんが重視するのは確認のタイミングです。薬の特性から見て、ちょうど効果が出るだろうという時期にフォローアップを行い、状態の改善を確認できた場合、その情報の意味はさらに深まります。
これ(改善の確認)は薬がきちんと効果が得られているということでもありますし、薬を飲み忘れなく飲めているということによって、薬がきちんと体で働いたということの証拠になるのではないかなというふうに思います。
たいぞーさんは、薬がちゃんと働いたことを評価して意味づけるのは、薬剤師にしかなかなかできない役割だと考えています。
確認のタイミングを誤ると医師をミスリードする
反対の例として、たいぞーさんは効果発現までに1週間などの時間がかかる薬を挙げます。そうした薬を始めた患者に、2日後から3日後に電話で状態を確認した場合を考えます。
その時に患者さんの状態の変化というのはもしかしたらあるかもしれません。ただ、その状態の変化は、薬とは無関係な状態の変化である可能性が高い
たいぞーさんによれば、この場合は聞き取った内容を正しく評価できないまま医師に情報提供することになります。ただ情報を伝えるだけでは、医師の思考をミスリードしてしまう可能性すらあると指摘します。
| 確認のタイミング | 得られる情報 | 情報の意味 |
|---|---|---|
| 効果が出るはずの時期 | 飲み忘れなく、状態の改善を確認 | 薬がきちんと体で働いた証拠になる |
| 効果発現に1週間ほどかかる薬で2〜3日後 | 何らかの状態変化があるかもしれない | 薬と無関係な変化の可能性が高く、医師をミスリードしかねない |
フォローアップに薬学を乗せるということ
たいぞーさんは、フォローアップを電話で様子を聞くことだけではないと捉えています。薬のタイムラインに基づいてどの時点で何を確認すべきかを考え、何が起きているかを薬学的な視点で読み解くことだと話します。
得られた情報に薬学的な知見を加えて医師にフィードバックする。たいぞーさんは、そこまでやって初めて薬剤師の介入に意味が生まれ、患者の治療に薬剤師が関与する価値がはっきり形になっていくと話します。
たいぞーさんによれば、同時期の改定では医師への情報提供が努力義務として法律に記載されました。その背景には、薬剤師が患者の継続的な治療に参画し、その効果が期待されていることがあると見ています。
この役割を十分に発揮するには、単に情報を集めるだけでは足りない、というのがこの回のたいぞーさんの結論です。
まとめ
2019年の薬機法改正で、薬学的知見に基づく継続的な指導は薬剤師がやらなければならない業務になりました。たいぞーさんは、聞いた情報を医師へ届けるだけの役割はテクノロジーに代替されうるからこそ、薬のタイムラインに沿って確認し、薬学的な解釈を添えて伝えることに薬剤師の価値があると語っています。
- 2019年の改正で、薬剤師法第25条の2に継続的かつ的確な薬学的知見に基づく指導が明記された
- 患者から聞いた情報を並べるだけの情報提供は、アプリやPHRで代替されうる
- 薬学的に考えるとは、症状のタイミングを薬の性質や作用の発現時間と照らし合わせて判断すること
- 効果発現に時間がかかる薬で早すぎる確認をすると、薬と無関係な変化を伝えて医師をミスリードしかねない
- 確認時期を決め、読み解き、薬学的知見を添えてフィードバックして初めて介入に意味が生まれる



