スポーツファーマシストは何を支える資格なのか
薬剤師のたいぞーさんは、スポーツファーマシスト ── 日本アンチ・ドーピング機構(JADA)が認定する薬剤師の資格。アスリートが意図せずドーピング規則に違反しないよう、薬に関する正しい情報を提供する役割を担いますの資格取得に向けて、eラーニングで勉強している最中です。基礎講習は10月20日ごろまでに完了する必要があり、ちょうど追い込みの時期だと話しています。
たいぞーさんは、同じように更新や新規取得を目指してラストスパートをかけている人が、リスナーの中にもいるかもしれないと呼びかけます。この回では、その学習の中で得た学びや気づきが語られます。
僕自身も何せ、今追い込みをかけて(eラーニングの)動画を見ている最中になりますので、そんな中で学びや気づきとして得られたことについて、今日は少しお話をできたらなと思います。
たいぞーさんの説明では、スポーツファーマシストは、アスリートが薬で体のコンディションを整える際に、ドーピングに引っかからないよう支援する薬剤師の資格です。スポーツの公平性を守ることに加え、薬で体に必要以上の負荷がかかることを防ぎ、安全かつ適正に薬を使いながらパフォーマンスを発揮できるよう支える役割があると、ざっくりまとめています。
そのうえで、スポーツファーマシストの主な役割は情報提供だといいます。アスリートに適切な情報を伝え、薬と上手に付き合っていけるよう支援することが中心にあるという整理です。
情報提供は「正しい情報を伝える」だけではない
たいぞーさんが印象に残ったのは、eラーニングの中で語られていた情報提供の定義です。そこでは、情報提供とは、ただ正しい情報を相手に伝えることだけではないと説明されていました。
(eラーニングの中でも)話されてたのは、情報提供というのはただただ正しい情報を相手に伝えるということだけではないというふうに語られていました。
eラーニングで示された情報提供の条件は、相手の必要性に応じて伝えた情報が、十分かつ正確に理解され、相手の利用目的に対して役に立ったかどうかです。ここまでを満たして初めて、情報提供という仕事ができたといえるというのが、研修での説明でした。
相手の必要性に応じる
相手が何を必要としているかに合わせて情報を選ぶ
十分かつ正確に理解される
伝えた情報が、相手にきちんと理解される
利用目的に役立つ
相手の目的に対して、その情報が実際に役に立つ
たいぞーさんはこの定義について、最初は「言えるんじゃないか」と表現したうえで、「情報提供とはそういう仕事なんだ」とeラーニングで語られていたと言い直しています。研修の中で、情報提供の基準として示されていたことがわかります。
たいぞーさんは、情報提供はスポーツファーマシストに限らず、日々の薬剤師の仕事でも大きな役割だと話します。たいぞーさん自身は「薬学で患者を語る」として、患者の状態を見極め、判断し、対応することを日々の業務で大切にしているといいます。
アセスメントは何のために行うのか?
薬剤師は患者さんに対してアセスメント ── 患者の状態や薬の効果・副作用などの情報を集めて分析し、評価・判断すること。医療の現場で、ケアや介入の方針を決めるための土台になります、つまり評価を行っています。たいぞーさんは、スポーツファーマシストの研修を受けながら、この評価が何のためにあるのかを考え直したといいます。
たいぞーさんがたどり着いた答えは、評価によって患者さんの状態を見極めることが、情報提供の的確性を高めるための重要なプロセスだという考えです。
評価をして患者さんの状態を見極めるというのは、この情報提供における患者さんに的確な情報を届ける、いわゆるその的確性というのを高めていくために非常に重要なプロセスなんじゃないかなというふうに思いました。
たいぞーさんによると、患者さんが今どういう状態にあり、薬からどんな影響を受け、体にどんな変化が起きているのかを薬剤師が的確に評価・判断することで、目の前の患者さんに必要な情報や介入を、より精度高く理解できます。
その精度の高い情報提供や介入によって、薬剤師は患者さんの薬物治療をより良くすることに貢献できるのではないか、とたいぞーさんは考えています。
状態の評価・判断
患者の状態、薬の影響、体の変化を薬剤師が見極める
必要なものの理解
目の前の患者に必要な情報や介入を精度高く把握する
的確な情報提供・介入
的外れにならない対応を行う
薬物治療の改善
患者の薬物治療をより良くすることに貢献する
逆に、情報提供や薬学的な介入で的確性を外すと、対応が的外れになってしまうとたいぞーさんは指摘します。患者さんから見て、薬剤師に関わってもらう意味が感じられなくなるおそれがあるといいます。
患者さんからすると、「薬剤師なんかちょっとピントがずれてるよな」みたいな、「薬剤師に相談してもやっぱりいまいちやった」みたいなことになってしまったり。
だからこそ、今の状態を的確に評価・判断して介入することは、情報提供の役割を果たし、的確な介入を行うために欠かせないとたいぞーさんは話します。薬学で患者を語ることは、的確な介入のためのプロセスだというのが、この回の中心にある考えです。
たいぞーさんは、研修で学んだ情報提供の意義を知ることで、薬剤師の仕事をより質高く行うにはどうすればよいかを、リスナーそれぞれが考えるきっかけにしてほしいと話しています。
専門性を極めるキャリアは仕事として成り立つのか?
放送の最後に、たいぞーさんは講演会の告知をしています。2月14日に兵庫県姫路市で講演会を主催する予定で、時間や場所は調整中ですが、お昼の時間帯での実施を検討しているといいます。
講演会では、たいぞーさんが現場で「薬学で患者を語る」を実践する中で、患者さんにどんな価値を届けているのかを話す予定です。そこから、薬剤師が臨床現場で専門性を活かして関わる価値を伝えたいとしています。
一方でたいぞーさんは、薬剤師のキャリアプランに課題も感じています。専門性を極めるよりも、マネジメントを行い人を動かしていく道筋が示されていることが多いのではないか、という問題意識です。
人を動かしていくキャリア。多くの場合、こちらの道筋が示されている
やりがいや面白さにつながるが、内的な報酬だけでは選びにくい
たいぞーさんは、専門性を極めることは薬剤師としてのやりがいや面白さにつながると認めています。ただ、それが自分の内的な報酬しか生まないなら、人生をかけて極める道として選ぶのは厳しいかもしれないとも話します。
やっぱり薬剤師というのは趣味ではなく仕事なので、やはり生活を豊かにするための賃金、報酬というところとも結びついていかないと、なかなか継続的に取り組んでいくことは難しい(と思います)。
講演会では、プロとして道を極めることが賃金や報酬にも結びつくには、どんな活動が必要なのかについて、たいぞーさん自身の実践や課題、チャレンジから見いだしたヒントを伝える予定です。参加者と一緒に考えを深めたいとして、まずは2月14日の予定確保を呼びかけています。
まとめ
この回では、スポーツファーマシストの研修で学んだ情報提供の定義から、薬剤師がアセスメントを行う意味が捉え直されました。患者の状態を的確に評価することが、的外れでない情報提供や介入を支えるという考えです。
- 情報提供とは、相手の必要性に応じた情報が十分かつ正確に理解され、目的に役立つところまでを指す
- アセスメントは、情報提供や介入の的確性を高めるための重要なプロセスと位置づけられる
- 的確性を外すと、患者から「薬剤師はピントがずれている」と受け取られかねない
- 2月14日の姫路の講演会では、専門性を極めるキャリアを報酬にも結びつける道が語られる予定


