患者さんの「ぼんやりした情報」をどう読み解くか
薬剤師のたいぞーさんは、この回で「薬剤師の思い込みが判断を誤らせることがある」というテーマを取り上げます。きっかけは、たいぞーさん自身が現場で経験した失敗体験です。
たいぞーさんによると、薬剤師の日々の仕事は、患者さんの状態を聞き、体の中で起きていることを考え、それに薬が良くも悪くもどう影響しているかを判断することです。この積み重ねで最適な薬物治療を届けることが、たいぞーさんの言う「薬学で患者を語る」の実践だといいます。
ただし、患者さんから得られる情報が、いつも今の状態を的確に反映しているとは限りません。たいぞーさんは、ぼんやりした情報から体の中の変化や薬の影響を、ある種想像を膨らませながら考える場面があると話します。
患者さんから得られる情報というのはすべて、的確に今の状態を反映したものとは限らない。
先日も、たいぞーさんは患者さんの状況を読み解いて薬の影響を判断しようとした際に、状況を捉え違え、患者さんにデメリットをもたらしかねない判断をしそうになったといいます。
その判断ミスを防げたのは、医師と密に情報を連携したからでした。医師から「別の視点での変化も想定できるのではないか」という意見をもらったことで、大事に至らずに対応できたそうです。
「お腹が痛い」はおへそか、みぞおちか
医師との連携で判断ミスを防いだ経験から、たいぞーさんは昔の出来事を思い出します。それは、お腹が痛いと言って薬局を訪れた患者さんへの対応でした。
その患者さんは「今日はめちゃくちゃお腹が痛くて」と話し、お腹をさすりながら本当に辛そうな様子で来局したといいます。たいぞーさんは、姿からもお腹の痛みが見て取れたと振り返ります。
たいぞーさんは、お腹のどのあたりが痛いのかを具体的に尋ねてみました。このとき、たいぞーさんは痛みの場所をおへそのあたりだと想定し、頭の中で薬の影響もそのつもりでイメージしていたそうです。
ところが実際に聞いてみると、患者さんが痛いと訴えていたのは、思っていたより上の、みぞおちのあたりでした。具体的に聞き取って初めて、そのことがわかったといいます。
体で起きている変化の想定も、影響を考える薬も、みぞおちとは異なる
体で起きている変化の想定も、影響を考える薬も、おへそとは異なる
たいぞーさんによれば、おへそのあたりの痛みとみぞおちのあたりの痛みでは、体で起きている変化として想定されるものが全く違います。お腹に影響する薬も、部位によって全く違ってくるといいます。
この患者さんの状態というのを捉え違えてしまうと、判断を大きく誤ってしまうということがあるなということを非常に強く感じた。
薬の効果が出ているか、副作用が出ているかを判断するにも、その前提となる患者さんの状態を取り違えると判断全体が崩れます。たいぞーさんは、今回の対応の中でこの経験を思い出したと話しています。
思い込みを防ぐために何をすればいいのか
医師との連携で防げた対応の誤りも含め、思い込みによる判断ミスをどう防ぐか。たいぞーさんは、今回の経験から大きく2つのポイントに気づき、さらにもう1つを加えて語ります。
1つ目は、患者さんから得られる情報を具体的にすることです。「お腹が痛い」と言われても、どのあたりが痛いのかを確かめることで、薬剤師側の思い込みや捉え違いを修正するきっかけが得られるといいます。
たいぞーさんは、具体的な情報から捉え違いに気づくことは日々の仕事でもよくあると話します。だからこそ、患者さんとしっかりコミュニケーションを取ることが大切だと考えています。
2つ目は、患者さんの訴えを表面的な「現象」として受け取るのではなく、体の中で起きている変化、つまり「事象」として捉えることです。
お腹が痛いってことは、体の中のどこがどういうふうに変化する、それを薬はどんなふうに変化させてるからこういったことを引き起こすんだろう。
たいぞーさんは、訴えの奥にある体の変化や、薬が体にもたらすメカニズムの変化に目を向けることで、薬が影響しているかどうかをより具体的に判断できると話します。
3つ目は、多職種や店舗内のスタッフと連携して一緒に考えることです。たいぞーさんは、捉え違いや思い込みから抜け出すうえで、連携もとても重要なキーワードになると述べています。
専門性はキャリアと報酬にどう結びつくのか
放送の最後に、たいぞーさんは2月14日に兵庫県姫路市で講演会を主催すると告知しました。
講演会では、薬学で患者を語る実践によって患者さんに届けられる価値と、その専門性を活かす仕事がキャリアアップにつながる道筋について、たいぞーさんが現場で模索・実践していることを整理して話す予定だといいます。
たいぞーさんは、特に薬局では、キャリアアップの道筋としてマネジメント職につくことが示される場合が多いと感じています。マネジメントという道があること自体は良いとしつつ、それだけではないはずだと話します。
たいぞーさんが目指すのは、専門職として患者さんに貢献することがキャリアとして積み上がり、やりがいや面白さという内的な報酬だけでなく、賃金などの外的な報酬にも結びつく仕組みです。
これは理想論だけではなくて、きちんと経済のシステムとも結びついた仕組みがないと、成立するものにはならないなというふうに思います。
講演会の会場や時間は今後詰めていき、決まり次第告知するとのことです。たいぞーさんは、まず2月14日に姫路市へ来る予定を確保してほしいと呼びかけています。
まとめ
たいぞーさんは、腹痛の部位を確かめて初めて自分の思い込みに気づいた体験から、患者さんの情報を扱うときの注意点を語りました。思い込みを防ぐ鍵は、情報を具体的にし、訴えを体の変化として捉え、周囲と連携して考えることだと話しています。
- 患者さんの情報は、いつも今の状態を的確に反映しているとは限らない
- 「お腹が痛い」も、おへそかみぞおちかで想定される変化や薬が全く違う
- 訴えを現象ではなく、体の中で起きている事象として捉えることが判断の精度を上げる
- 医師やスタッフとの連携が、思い込みから抜け出す別の視点をもたらす


