なぜ薬の知識は積み上がらないのか
たいぞーさんが今回のテーマに選んだのは、10年間ちゃんと積み重なる薬剤師としての働き方です。
これは、自身が10年ほど現場で薬剤師として働いてきた実感をもとにした話だと語られています。10年に限らず、もっと長い期間で積み重なるものにも通じる内容だといいます。
まず前提として、薬剤師の能力を測る一つの指標に「どれだけ薬のことを知っているか」があると話します。知識は薬剤師にとってとても重要なものです。
ただし、その知識には弱点があると指摘します。薬の情報は日々アップデートされ、新しい薬も次々と開発されていくからです。
5年前、10年前に覚えた薬が、今の臨床現場ではメジャーに使われなくなっていることもあります。中には薬価収載 ── 薬が公的医療保険で使えるものとして国の価格表に載ること。ここから外れると保険診療では使えなくなる。から外れ、使えなくなった薬もあるといいます。
更新し続ける知識と、磨かれ続ける思考
知識だけを頼りにすると、常に新しいものをインプットし続けなければならない、とたいぞーさんは言います。
その結果、自分の中に何かが積み重なるというより、更新と上書きの繰り返しになってしまいます。これでは積み上がる感覚を得るのは難しい、と話します。
一方で、知識そのものではなく、その知識を使って考える思考法は違うといいます。頭の中で何かを考え、それをアウトプflットする思考は、時代とともに古くなりにくいものだからです。
たいぞーさんは、この思考は普遍的なものとして自分の中に軸足を定めてくれる、と表現しています。
日々アップデートされ、年々陳腐化する。更新と上書きの繰り返しになりやすい。
時代とともに古くなりにくく、普遍的なものとして自分の中に積み上がっていく。
薬学的思考が「経験値」に変わっていく
たいぞーさんが軸に置いているのが、薬学的な視点で物事を読み解く思考、すなわち「薬学的思考」です。
これを薬剤師の中に体系的なものとして持ち、日々の現場で使い続けることが大切だといいます。思考力は、使えば使うほど磨かれるものだからです。
専門的な知識を使って患者さんのことを読み解く。その思考を現場で続けていくと、5年、10年、15年と薬剤師人生を重ねるほど、自分の中に経験値として積み上がっていくと語られています。
そしてこうした積み重ねができると、後輩から見て「あの先輩みたいにやるのはなかなか難しい」と思われるような薬剤師になれるのではないか、と話します。
それは若手にとってのロールモデルにもなり、薬剤師としてのキャリアをより具体的にイメージするきっかけにもつながる、という見方です。
思考が「面白さ」と「やりがい」に変わる瞬間
たいぞーさんは、この思考をしているときこそ、薬剤師の仕事が面白いと感じると話します。
ただし、読み解いて考えて終わるだけでは、クイズを解くようなものになってしまうと注意します。薬剤師は目の前の生身の患者さんに向き合う医療職だからです。
だからこそ、患者さんが思い描いた理想のとおりに進んでいるか、進んでいないならなぜたどり着けないのかを、常に考え続けて関わることが大切だといいます。
そして自分の考えたとおりにうまくいったとき、この仕事をやっていてよかった、面白いと実感できると語られています。
まとめ
今回は、知識は上書きで消えていく一方、薬学的思考は現場で使い続けるほど経験値として積み上がっていく、という話でした。10年後に効く働き方を考えるきっかけになりそうです。
- 薬の知識は日々更新され、年々陳腐化していくため、更新と上書きの繰り返しになりやすい
- 知識を使って考える薬学的思考は、時代とともに古くなりにくく、使うほど磨かれていく
- 薬学的思考を現場で続けると、5年、10年と重ねるほど自分の中に経験値として積み上がる
- その積み重ねは後輩のロールモデルにもなり、キャリアを具体的にイメージする助けになる
- 考えて終わらず、生身の患者さんと真剣に向き合うことが、面白さとやりがいの実感につながる



