インフルエンザ流行期に思い出す、1年目の忙しい薬局
たいぞーさんはこの回で、薬剤師1年目に仕事をしながら感じていたことを振り返っています。きっかけは、インフルエンザが猛威を振るい、感染が拡大しているというニュースでした。
たいぞーさんが現在勤めている薬局には、インフルエンザなどの感染症の患者さんはあまり訪れません。そのため、世間の流行とは少し無縁な環境で働いているといいます。
一方で、たいぞーさんが薬剤師になって最初に勤めた店舗は、ご夫婦が内科と小児科をそれぞれ担当するクリニックの前にある薬局でした。感染症が流行る時期はとても忙しく、インフルエンザや風邪でしんどそうな患者さんが毎日たくさん訪れていたそうです。
毎日ですね、それこそインフルエンザ、風邪、インフルエンザ、風邪というような感じで、もうたくさんの方が薬局を訪れて。
「今日はどうされましたか?」に患者はうんざりする?
薬局でいろいろ聞かれるのは煩わしい、という声を耳にすることがあると、たいぞーさんは話します。体調が悪いときに薬剤師から「今日はどうされたんですか?」と聞かれると、患者さんがうんざりする気持ちも理解できるといいます。
「いやいや、しんどくて来たんやがな」みたいなところで、ちょっとうんざりするというようなところは、僕も正直察するところがあります。
経験の浅かった1年目のたいぞーさんは、漠然とした質問では答える側に労力がかかると考えました。そこで注目したのが、処方されている薬の内容です。
咳止め、痰切り、解熱剤などの処方内容を見れば、患者さんのおおよその症状は想定できます。たいぞーさんは「お薬の内容を踏まえると、今日はこんなことでお困りになってこられたんですね」と確認する形で話を進めていました。
この聞き方なら、患者さんは「はい」か「いいえ」で答えられます。たいぞーさんは、やり取りの煩雑さを減らせることを、当時の自分にできるせめてもの対応だと考えていたそうです。
「今日はどうされたんですか?」と漠然と尋ね、患者さんが症状を説明する必要がある
処方内容から症状を想定して確認し、患者さんは「はい」「いいえ」で答えられる
「よくわかりましたね」と驚かれて抱いた違和感
処方内容から症状を言い当てる対応をすると、患者さんから「よくわかりましたね」と驚かれることもありました。ところが、たいぞーさん自身は、その反応に複雑な気持ちを抱いていたといいます。
薬剤師の仕事って、ちょっとインチキ占い師っぽいなというようなことを思って、この仕事ってどうなんやろうな、この仕事就いてよかったのかなっていうようなことを(感じていた)。
専門知識があれば、処方内容から症状がわかるのは当然です。しかし知らない人にとっては「何も聞いていないのに言い当てられてすごい」と映ります。たいぞーさんは、その点がインチキ占い師のようだと感じていました。
たいぞーさんは振り返って、当時は薬学の専門性を、患者さんからの情報収集を的確かつ簡素にするために使っていたからこそ、そう感じたのだろうと話します。そして「もっと上手な使い方はないのか」という引っかかりが、その後の出発点になりました。
薬学の知識を「情報収集」から「患者の未来を見る」道具へ
たいぞーさんがたどり着いたのは、薬学の知識を情報収集の道具ではなく、患者さんの未来を見るためのツールとして使う考え方です。専門家だからこそ見える「この患者さんはこの先どうなるのか」を見極め、関わりに生かしていくということです。
処方内容から症状を推測し、患者さんからの情報収集を簡素にする
専門家だからこそ見える患者さんの先行きを見極め、関わりに生かす
この使い方であれば、モヤモヤした感覚が解消され、自分の力を十分に生かして患者さんに関われているというやりがいと実感を持てるのではないか。たいぞーさんはそう考えて取り組んできました。この十数年間の「薬学で患者を語る」実践は、その延長にあったと振り返っています。
1年目に仕事への課題感を持ち、何とかできないかと考えた経験があったからこそ、薬学の専門性を生かして患者さんに関わる今のスタイルを見出せたのだろうと、たいぞーさんは話します。
目の前の仕事に感じるモヤモヤは、突破口になるかもしれない
たいぞーさんは自身の経験を踏まえ、目の前の仕事に「これってどうなんやろう」「嫌やな」と感じている人に向けて言葉を送ります。くじけずに工夫してみることで、突破口が見つかるかもしれないという呼びかけです。
仕事の中でモヤモヤを抱えている人にとって、この放送がその先にある宝物を見つけるきっかけになればうれしい、とたいぞーさんは語っています。
2月14日・姫路の講演会で語る、専門性を極める薬剤師のキャリア
放送の最後には、たいぞーさんが共同主催する講演会の告知がありました。2月14日に兵庫県姫路市で開催予定で、会場や具体的な時間は決まり次第伝えるとしています。
講演会では、たいぞーさんが現場で実践してきた「薬学で患者を語る」ことを通じて仕事のやりがいや面白さに気づいた経験を紹介する予定です。薬剤師だからこそできる健康への貢献を実感した、臨床現場での経験談にも触れるといいます。
もう一つのテーマが、専門性を極める薬剤師のキャリアです。薬剤師のキャリアプランはマネジメント職へ進む道として示されることが多い一方、専門性を極めることは賃金などの外的報酬にはつながりにくく、やりがいや面白さといった内的報酬にとどまりがちだと、たいぞーさんは指摘します。
キャリアプランとして示されることが多い
やりがいや面白さという内的報酬にとどまり、賃金などの外的報酬に結びつきにくい
専門性を目指す若いスタッフが育つためには、賃金と結びついたキャリアプランが大事だと、たいぞーさんは考えています。ただし「お金を出してほしい」と求めるだけでは、永続的な仕組みにはなりにくいといいます。
そのため講演会では、制度や会社運営の枠組みとも整合する形で、専門性を極める薬剤師の能力や実績が認められ、報われる未来をどう作るかを話す予定だそうです。
まとめ
薬剤師1年目のたいぞーさんは、処方内容から症状を言い当てる対応に「インチキ占い師っぽい」という違和感を抱きました。その引っかかりが、薬学の知識を患者さんの未来を見るために使う、十数年にわたる実践の原点になったと振り返っています。
- 処方内容から症状を想定して確認する聞き方は、患者さんの負担を減らす1年目なりの工夫だった
- 一方で、言い当てて驚かれることに「インチキ占い師」のような違和感を覚えていた
- 薬学の知識を情報収集ではなく、患者さんの未来を見極める道具として使う方向へ転換した
- 仕事へのモヤモヤは、工夫次第でやりがいを見つける突破口になるかもしれないと語られた
- 2月14日の姫路での講演会では、専門性を極める薬剤師のキャリアと報われ方について話す予定


