「機械より私のほうが早い」は正しい判断か
たいぞーさんは以前、医療機器の展示会に参加したことがあり、そこでは薬局の調剤をサポートする調剤機器のメーカーも様々な機械を出展していました。
展示会の調剤機器ブースで、ある薬剤師がメーカーの担当者に「この作業をこの機械は何秒でできるのか」と尋ねている光景を、たいぞーさんは見かけました。
担当の方が大体これぐらいの時間でできますというようなことをその方にお伝えすると、「そんなに遅いんやったら私がやった方が早いな」と。
「現場ではこんな機械ちょっと使いにくいな」というようなことを言われてました。
このやり取りを見たたいぞーさんは、その薬剤師が「薬剤師vs機械」という構図で物事を考えているのだろうと感じたといいます。
たいぞーさんによれば、調剤機器を作業の速さで薬剤師と競わせる見方をしてしまうと、導入の価値を正しく判断できなくなってしまうのではないか、ということです。
機械が調剤している間、薬剤師は何ができるのか
たいぞーさんは、調剤機器を導入する本質は、薬剤師と機械のどちらが優れているかという作業の対立構造で考えるものではないと話します。
調剤を機械が担えば、薬剤師はその時間を、安全に薬を届けるための確認作業や患者対応に使えます。逆に、薬が揃うまでの空白の時間をただ待つだけに使うと、それはとても無駄な時間になるとたいぞーさんは指摘します。
特に患者対応に時間を回せれば、患者さんの待ち時間が空白でなくなり、より有意義になると考えられます。今までの経過や今の症状を、時間をとってしっかり聞けるようになるかもしれません。
機械が何秒で調剤できるかを比べ、自分より遅ければ「使いにくい」と判断する
機械が調剤している間に、薬剤師が確認作業や患者対応に時間を使えると考える
服薬指導は「薬が全部揃ってから」なのか?
たいぞーさんが大きなポイントとして挙げるのが、服薬指導は薬が全部揃ってから行うものという固定観念を捨てることです。
この固定観念に縛られている限り、調剤機器が遅いことは服薬指導の開始が遅れることを意味し、導入は難しいという判断に陥ってしまう、とたいぞーさんは話します。
固定観念
服薬指導は薬が全部揃ってから行うもの
機械が遅い
服薬指導の開始が遅れる
判断
導入が難しいと考えてしまう
しかし、たいぞーさんの考える服薬指導の本質は、薬を渡すための時間ではなく、患者さんの状態を把握して治療を支えるための時間です。だからこそ、薬が全部揃っていなくてもできることは数多くあるといいます。
たいぞーさんが具体的に挙げたのは、薬が揃う前でも進められる次のような業務です。
- 前回からの経過を伺う
- 副作用の症状が出ていないか確認する
- 生活習慣やアドヒアランスの状況を聞く
- 必要に応じて疑義照会を行う
- 聞き取った情報を薬歴に記載する
アドヒアランス ── 患者さんが治療方針を理解し、納得したうえで、薬を指示どおりに続けて使えているかどうかを指す言葉ですや疑義照会 ── 処方内容に疑問がある場合に、薬剤師が処方した医師へ問い合わせて確認することですも含め、こうした業務には調剤が終わるまで待つ必要がない、とたいぞーさんは言い切ります。
待ち時間を患者と向き合う時間に変えると何が起きるか
たいぞーさんは、仮に患者さんとのやり取りが早く終わってしまっても、あとは機械が薬を作りきるまで待ってもらえばいいだけだと話します。
これまでは調剤が終わってから服薬指導が始まっていたことを考えると、機械が少し遅くても、トータルの時間はむしろ早く終わることもあるのではないか、というのがたいぞーさんの見立てです。
薬が全部揃うのを待ち、その後から服薬指導を始める
機械が調剤している間に経過の聞き取りなどを進め、薬が揃えば渡す
機械が後ろで黙々と作業をしてくれることで、薬剤師はより質の高い仕事に集中できます。多少待ち時間が伸び縮みしても、患者さんの満足度には大きな変化があるのではないか、とたいぞーさんは考えています。
機械と人間は競争ではなく協働する
たいぞーさんがこの回でたどり着く発想は、機械が人間の時間を生み出すという見方です。
機械と人間が競争するのではなくて、機械が人間の時間を生み出して、人間はその分より創造的な仕事、薬剤師は患者さんに向き合ってより質の高い仕事をしていく。
この発想が導入の前提にあると、機械の導入というのは大きな価値を生み出すものになるのではないかなというふうに思います。
たいぞーさんは、固定観念を手放すことでテクノロジーの価値は広がり、薬剤師の介入の質も上げていけると話します。
この視点を持てるかどうかで、薬局の働き方も、患者さんに提供できる価値も大きく変わる。展示会での経験を思い出してそう感じたことを、たいぞーさんはリスナーに共有しています。
まとめ
今回のエピソードでたいぞーさんは、調剤機器を作業速度で薬剤師と競わせる見方を問い直し、服薬指導は薬が揃ってからという固定観念を捨てれば、機械の待ち時間が患者と向き合う時間に変わると語りました。
- 調剤機器の価値は「何秒で調剤できるか」ではなく「その間に薬剤師が何をできるか」で考える
- 服薬指導の本質は薬を渡すことではなく、患者さんの状態を把握し治療を支えること
- 経過の聞き取りや副作用確認、薬歴記載などは薬が揃う前から進められる
- 機械と人間は競争ではなく、機械が生んだ時間で薬剤師が質の高い仕事をする協働関係になりうる



