小田さんと会社名「Another Time」の由来
番組冒頭、鳥本さんが聞き手となり、株式会社Another Timeの小田さんを迎えて自己紹介から始まります。
はい、それではガンケラジを始めていきたいと思います。本日は株式会社アナザータイムの小田浩一郎さんに来ていただいております。小田さんよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
では、最初に少しだけ自己紹介いただいてもよろしいでしょうか。
株式会社アナザータイムの小田と申します。帯広出身でして、高校まで帯広にいたんですが、大学と最初の仕事はここ帯広の外で働いてまして、その後、約5年前くらいに帯広にUターンしてきました。
前の職としては十勝財団のランドというところで、起業の支援や事業者さんの支援、マッチング、学生さんの起業支援とかをしてたんですけれども、今年の6月に独立して、7月から本格的に株式会社アナザータイムということで、主に十勝の事業者さんの経営の伴走支援や、官民共創みたいな分野で今お仕事をしております。よろしくお願いします。
小田さんには、僕が2年ぐらい前ですかね、ガンケフェスで使える補助金ないかなって探してて、ランドの相談会みたいなのに参加させていただいて、その時初めてお話しさせていただいて。結局ガンケフェスはそれ使わなかったんですけど、あの時、あ、この人はすごいできる人だって(思ったんです)。
本当ですか?
いつかちゃんと話してみたいなと思ってたんですけど、全然喋ったことなくて、先週初めてぐらいにきちんと話させていただいて。小田さんが今日のトピックで『風の谷という希望』という本について語りたいと思ってるんですけど、その本を読んだっていう感想をSNSに上げてて、これは話さないとって思ってて。数週間前に小田さんが独立されるっていう投稿を見て、またコンタクト取らせていただいて、新得までわざわざお話しした感じになります。
しかもこのアナザータイムっていう名前が、星野道夫さんの。
僕も、アナザータイムっていう言葉でピンと来なかったんですけど、星野道夫さんっていうので、あっと思って。僕もすごい『旅をする木』っていう本を20歳ぐらいの時に友達からプレゼントされて。
星野。
素敵な友達。
すごい影響を受けたというか、感銘を受けて。ことあるごとに僕、当時誰かに何かあったらプレゼントしたんですよ。『旅の木』すごい良かったから読んでって。で、その中にありましたかね。
そうでしたよね。「もう一つの時間」っていう説が5ページくらいしかないんですけど。
そう。そこをすごい覚えてたんですよ。星野道夫さんが東京で忙しくしている時に、アラスカのザトウクジラかなんかが同じ時間に別の時間を(過ごしている)。
同じ時だけど全然違う時間が流れてるみたいなところのエッセイがあったなと思って。
せわしなく都会で働いてる中で、一方でアラスカではそういう普遍的な自然の営み、動物の営みがあって、そういう時間が流れてるってことを知ることが、人々の人生を豊かにするみたいな、そういう話ですよね。
星野道夫さんはどういうところが(入りだったんですか)?
これは僕もたまたま、僕が東京いた時ですね、下北沢で古本屋やってた先輩がいて、そこにちょくちょく行っている中で、ふと取ったのがその本で、25歳くらいだったと思うんですけど、まさに東京でせわしなかった(頃です)。
いい話だなっていうか、心に深く刺さる話だなと思って。そこから日々忙しくしてたので、だんだん忘れちゃってたと思うんですけど、ちょうど5年前に北海道に帰ってきた時に、もう一回読みたいなと思って買い直して。
その時「確か鯨の話あったよな」みたいな感じで見てて、あ、これだこれだっていうことで、それが35歳くらいで読んだはずで。10年経って、また読み返して、やっぱり心に刺さるなと思ったし、感じ方もやっぱ変わってるだろうなと思っていて。
感じ方が変わるのは人が変化してく、成長してくから変わるっていうことだと思うんですけど、普遍的な価値に対して感じ方が変わるのは人間の方であって、一方で普遍的な価値っていうのはやっぱ存在するんだなっていうのは、この説が言っている、普遍的な自然があることの価値を知ってることが人間が豊かになるためにいいよね、みたいなことがリンクしたっていうか。
なんかそれを会社名にしたいなという。
すごいですね、会社名にするほど刺さってたんですね。いや、なんか久しぶりに読み返したくなりました。今聞いていて。
2年前に、星野道夫さんの奥様と、あとピアニストの遥香中村さん?が、帯広で星野道夫さんの展示会があって、そのプレイベントで、遥香中村さんがピアノを弾きつつ、星野道夫さんのエッセイを朗読するみたいな。めちゃくちゃいいイベントで、そこでも「もう一つの時間」を朗読されていて。すごいいい体験だなと思って。
帯広、北海道っていうロケーションもそうだし、星野道夫さん自体も北海道に関してすごく(影響を受けていて)。そこに帰ってきて、またこういう体験ができるっていうのは、豊かだなっていうか。
『「風の谷」という希望』との出会いと、読んで感じた「絶望」
話題は本題の書籍へ移ります。鳥本さんは、この本の活動を知った経緯と、読後の率直な感想を語ります。
今日は星野さんの本ではなくて、『風の谷という希望』という本について今日話したいと思ってて。これちょうど見たら去年の7月30日に発売されてるんですよ。ちょうど1年前。
本当だ。そうですね。
風の谷という希望は、安宅和人さんっていう方が書かれたんですけど、安宅さんだけじゃなくて、すごいたくさんの人が関わってこの活動をされていて、確か8年ぐらい前から研究会みたいなのがあって、本になったのが去年ちょうど1年前という形で。僕はこの活動自体をコロナに入ったぐらいで知って。
その時、安宅さんがよく疎空間、密空間みたいなことを言ってたんで、何のことかなと思って。ちょうど僕もずっと上海にいて、地元に帰ってきて住むことになって、コロナの状況と自分が住んでる田舎の状況みたいないろいろなことがリンクして、すごくこの本のメッセージが刺さって。「都市集中は人類の必然なのか」っていうのが問いとしてあって、僕もすごいそこに問題意識があったんですよね。安宅さんが言ってたのが、映画のブレードランナーみたいな未来しかなかったとしたら、それはかなり寂しい、貧しいというかじゃないかっていうところ言ってて。それはそうだなと本当に思っていて。
すごいこの本を楽しみにしてて、出た瞬間に買って、すごい時間かかりましたけど、1ヶ月かけて読んで、あーこれ誰かと話したいなと思ったんですけど、全然周りに読んだ人がいなくて。初めて僕の周りでは小田さんが読んだっていうのが聞いてたんで、っていうので、ちょっと捕まえさせていただきました。
(SNSに感想を)あげてみるもんですよね。
小田さんはなんかきっかけというか。これ結構読むの勇気要りますよね。なかなか手に取りづらいですよね。なんか人が殺せるんじゃないかぐらいの、1000ページぐらいあって。
きっかけですね。僕は知り合いから教えてもらいましたね。去年の秋くらいに東京に行く機会があって、虎ノ門にグラスロックっていうスペースがあるんですけど、そこは社会課題解決に関心のある人たちが結構集まるコワーキングスペースで、勉強会とかゼミとか、いろんな会社員とか組織に所属されている方が任意でちゃんと会員費を払って参加してるようなコミュニティなんですけど。
霞が関にも近いので役人の人とかも参加したりして、いろんなディスカッションやってるコミュニティがあって、そこで「風の谷という希望の読書会をやってるんです」みたいな話をされて、僕もスペースを見学しに行ったんですけど、「何ですか、その本は」みたいな感じで、ぱらっと見せてもらったら、すごい面白そうだなと思って。それでこっち帰ってきて買って読み始めたっていう感じですね。
これ僕的には新得町出身で、まさに疎というか、本当に何もないようなところに対して、将来、未来ってどうなるんだろうっていう純粋な好奇心もあるし、危機感もあるしっていうところなんですけど。僕はずっとアートとか文化的な仕事で活動してきた中で、そういう領域はある程度知見があってリンクするところはあるんですけど、これでカバーしてるのってすごい広いじゃないですか。インフラだったり、エコノミックレジリエンスとか。
正直僕これ読んで、この前もお話ししましたけど、なんか絶望したんですよね。背中を押してもらえるかなと思って読んだんですけど、そういう部分ももちろんあるけど、こんなにいろいろ考えないといけないんだと思って、ちゃんとできるような地域みたいなとこって無理じゃないかな、無理ゲーじゃないかなっていうふうに率直に思ったっていうのが、読み終わったすぐの感想だったんですよね。小田さん的にはどうでした?
そう思いました。すごい幅広くね。インフラとかレジリエンスの話もありましたし、あとやっぱり人をどう作っていくかって、僕そっちの方が関心があったなって。先週お話しした時も、僕はソフト的な話の方が関心があって。一方で、鳥本さんがなんでこんな絶望してるかっていうと、多分このハード系の話とかが多い。考えなきゃいけない側面っていうか、インフラをどうするのか、電力のグリッドの話とかも出てきますけど、そこは確かに個人でどうかっていう話でもないかなと思って。
僕もこれ読んだ時に、全部実現できれば理想的だなとは思う一方で、じゃあまず個人として何を始めるかっていう時に、やっぱり自分としてどうあるべきかとか、後進に対して何を伝えていくべきかっていうところから入っていく。これを意識して自分の行動を変えていくっていうか、そういうところかなと思ったんですね。
「良い場所」があってこそ「良いコミュニティ」がある
小田さんが最初に気になったのは「人」と「場所」のトピック。良いコミュニティより先に、良い場所があるという本のメッセージを語ります。
今日は読んだ中でお互い気になったトピックをちょっと一つずつ挙げていく形にしようかなと思ってたんですけど、そう見ると(小田さんが)人の部分ですか、最初に気になったっていうのは。
その場所っていうところですよね。
その人の話もそうなんですけど、一番最初、第1章のところで「良いコミュニティである以前に良い場所である」っていう話があって、これって安宅さん自身が、その土地固有の自然とか歴史を踏まえて、その場所をしっかり生きてるみたいなことも書いてるんですけど。行政とかって、まずコミュニティを作りましょうみたいなところが先行しがちなんだけれども、そうじゃなくて、ここにある自然っていう場所をまず良い場所にする。
良い場所にするっていうのは自然もそうですし、そこにいる人が面白い活動をしていたり、信念を持ってその地域に根ざした人がいるっていう、そういう良い場所である、その先に良いコミュニティがあるっていうところが、すごく(刺さって)。今までの価値観だと、コミュニティになるような箱を作りましょうとかってなっちゃいますけど、そっちが先じゃないよねみたいな話がありましたよね。
僕もランドにいた時に、高校生も大学生もよく来ていて、大学生は地域外から来た生徒さん多いので、高校生は地元で育った子たちですよね。改めてランドを説明すると、起業を支援しているような。
インキュベーション施設みたいな。
かっこよく言うとそういう感じなんですけど、いろんな相談を受けて。
高校生も来られるんですね。
来るんですよ。それで起業した高校生もいますし。学校、家庭、塾、部活動以外の、大人がいるような、ランドって特によくわかんないようなスペースって言われてたんですけど、そういうところにいきなり飛び込んできて、「こういうことできないですか」って言ってくる高校生、その時点でもうすごいなって思うんですよね。
高校1年生から来て卒業まで見送ったみたいな子もいるんですけど、そういう子たちはもう自分がこういう道に進みたいっていうことが結構はっきり見えていて。自分の興味関心とか好きなものがわかってるって、すごい僕強いなと思ってて。
僕はそうじゃなくて、大学行って社会人になってもまだ見つけられてなかったかもしれないですけど、高校生のうちにそれが正解ではなくとも、ある程度ここに行きたいんだってはっきり言えるってすごいなと思っていて。そういう子たちに、将来的に戻ってきてほしいっていう気持ちもなくはないんですけど、戻ってこなくてもいいなって全然思っていて。だけどやっぱりなるべく外に出た方がいいんじゃないかなっていう話はするんですよね。
外にっていうのはどういう。
十勝外。
できれば北海道外でいいと思うんですけど。そこでいろんな経験するし、いろんな人たちに会うし、高校生だけで、この十勝だけで見えてる世界ってまだまだ狭いので、いろんな経験することによって自分の世界も広がっていく。だから高校を卒業したら外に出るのがいいんじゃないみたいな話はいつもしてたりするんですね。
結局その見送った高校生はどこに行ったんですか?
今、東京の大学行きましたね。その子は女の子ですけど、高校生団体がよくランドを使ってて、夏休み4日間で課題を見つけて、その町の課題に対してどういう解決策ができるか考えるみたいなワークショップイベントを高校生主催でやったりするんですけど。そのイベントをきっかけに「こういう道もあるんだ」っていう風に掴む子もいますし。
風の谷の中でも、そういう子たちをちゃんと受け入れる受け皿を整えるって話もありますし。戻ってこないとしても、そういう子たちがしっかりと故郷に愛着を持っていれば、東京に行ったってそういう行動すると思いますし、僕自身もそうだったので。それって高校時代とか学生時代に地元のこと嫌いだとそんなこと思わないですよね。僕もやっぱり学生時代は楽しい思い出がありましたし。
高校まででしたっけ、帯広に。
そうです。高校の頃から面白いことをやっている大人たちの姿を見ていたので、この土地はそういう人たちが多いよなと思っていたのも、5年前に帰ってきても多分楽しいだろうなって思えたんですね。
新得の高校がなくなり、GANKE FESは「湖の崖という希望」になるか
新得町の高校がなくなった話から、鳥本さんはGANKE FESの拠点をこの本のモデルケースとして読んでいたと語ります。
いや、なんかいいですね。高校生のそういう動きとか。新得町の高校がなくなっちゃったんで。だから高校なくなってやっぱ大きいんだなってのは感じ。僕は新得高校じゃなかったんであれなんですけど、やっぱり高校生と一緒にできるかってなった時に、高校がないとそもそもいないみたいな感じなので。
地域的にはね、浦幌もそうだったと思うんですけど、高校がなくなっちゃって。新得の子たちは近くなんで鹿追?
か清水?帯広行く子も多いんじゃないかな多分。
鳥本さんご自身、そうなると高校生との接点も少なくなって。
そうなんですよ。あまりいないので。ガンケフェスとかで高校生と絡みたいなとかってあるんですけど、なかなかやっぱりいないっていうか、学校と何かやったらできないしってなって。
ちなみにこのガンケフェスの僕の質問というか、これまでやってきた中で、この風の谷のエッセンスっていうか、何か生きてるみたいなことあるんですか?
生きてるというか。まず風の谷という希望って、風の谷のナウシカのあの風の谷じゃないですか。腐海があって、でもその自然とうまく共存している集落があって。風の谷ってすごいいいフレーズだなと思ってるんですけど、僕にとったらもろあれなんですよ、湖の崖なんですよ。
屈足湖の。
そう、にある岩穴。「湖の崖という希望」ってそのまま当てはまるんですよね。だからそれをモデルケースにして読んでました。岩穴を持続可能な形にしてくとしたらどうなるかなっていうのをなぞりながら全部これを読んでったんですよ。
風の谷じゃなくて湖の崖という希望。存続って言うとちょっと言い方違うんですけど、町じゃないので。そこの価値をうまくフックアップして、もっと高めていって。この本でも持続可能じゃなくて存続可能性みたいな話もありましたけど、地域も含めて存続可能な形にどうやったら持ってけるのか、どうやったら可能性を生み出せるのかなっていうところを常に意識しながら読んでたので、あらゆるところでありますし、同じように絶望を感じました。
その話を聞いてると、僕は人とかソフト的な文脈が刺さったので、鳥本さんご自身がこの地域に戻ってきてそういう活動されている、それを面白いってなっていろんな人がここに集ってきてガンケフェスになってるっていうことでもあるのかなと。上海でのアートのお仕事の経験も生かされてるのかなと思いますけど、鳥本さん自身が持ってきたことが価値だよなと思っちゃうんですよね。
でもまあそれはそうですよね。この本でも確かあったと思うんですけど、地元の人間で、ある程度柔軟性があって、本当に未来に対して動いてる人間が5、6人いるかいないかみたいな。
伝説の7人みたいな。
7人でしたっけ?それはやっぱり、すごくわかるなというか。
伝説の7人とかって相当すごいなと思いますし。十勝って19町村あって、各町にそういう人いるんですよね。面白いことからでいいと思うんですよね。あまり気負いしすぎずに、この地域のためにみたいな、あんまり気負いすぎる必要もないんじゃないかなっていうのは、これはまた別の人に言われた言葉なんですけど。
面白いことをまず始めるっていうことの延長線上に、この風の谷でもそういうところに魅力があってっていう、自然と調和した人々の営みっていうところの価値だと思うので、わかりやすく観光地作るとかそういうことじゃなくて、面白い人がいるとか、面白いことが起こってるっていうイメージをもっと押し出していくべきっていうことなのかなと思いましたけどね。
観光地とか、ラグジュアリーな別荘地とかっていうのも、それは違うみたいなのがすごいありましたけど、やっぱり定義の仕方がすごい上手いなと本読んでて思いますね。今までの型にはまった地域創生とか町おこしとはまた違うベクトルで語られていたので、僕的にはすごい刺さる。ちょっと言葉が綺麗すぎるなっていう違いもありますけど、それはすごい面白かったなと思ってて。
疎と密のバランス、道路のコストが突きつける現実
鳥本さんが気になったトピックへ。疎空間と密空間の対比、そしてインフラのコストという生々しい数字の話へ進みます。
僕がちょっと気になったフレーズを挙げてもいいですか。一つやっぱり疎密っていう対比がすごく面白いなと思ってて。地方と都市じゃないんですよね。疎空間と密空間って、東京にも疎密があるし、地方だからって全部疎なわけじゃないっていうのがあって、確かにそうだなと思っていて。
僕はコロナの頃、こっち戻ってきて新得に住んでたんですけど、仕事は東京だったんで、コロナの真っただ中の時に結構渋谷に半分住んでたぐらいの期間があったんですよ。渋谷って今全然行きたくないですけど、その時ほんと人いなくて、すごい面白かったんですよね。快適で。このままずっと続けばいいのにっていう思ったぐらい、街として歩きやすいし、静かだけど面白いのはちょっと残ってて、店もポツポツ開いてたりして。だけどやっぱり戻ったら密、それはそれで経済活動で必要なんですけど、年齢的な部分もあるのかもしれないですけど、密空間にも住みたくないんですよね。
どれだけバランスのいい、ちょうどいい疎と密のバランスで生活していけるのかっていうのは、人類にとってって言い方大げさですけど、結構ポイントになるんじゃないかなって気がしてるんですよ。
いや、わかります。
ここでヘルスケアの話もありますけど、病院とかも考えると、お年寄りもある程度都市部に近いところに住んでないと、何かあって行けないとかあるじゃないですか。とはいえ、老後も密空間に生活できるかっていうと結構厳しいと思うんですよね。ずっと都会で暮らしてた人でも結構きつくなってくると思ってて。そのバランスがどういったとこにあんのかなっていうのはすごい興味があるんですよね。
タニスペックみたいな話もあって、インフラもやっぱ都市水準のものを備える必要はないと。かなり最初の方に、一人当たりの空間維持コストと、一人当たりの付加価値創出っていうのがクロスしていて。都市部では一人当たりの維持コストが低い。
そうですよね、めちゃめちゃ低い。
一方で生産性は田舎よりも高いということで、それが損益分岐点みたいになっていて、クロスする場所はコストと付加価値がトントンなので大丈夫でしょうと。損益分岐点に満たない、コストの方が高い場所の一人当たりのコストをいかに下げて、かつ一人当たりの創出価値を上げるかを考えていかなきゃいけないんだっていうのが前半の方に出てきて、なるほどなと思ったんですけど。(谷に)あったインフラのスペックに下げるべきで、医療インフラもそういうことですよね。
損益分岐点でトントンになる場所を増やしていって、どうしてもそうじゃない場所は出てきてしまうので、そこの扱いは今は税金で、「輸血」っていう表現でしたけど、都市部で稼いだ税収を地方に分配するっていう。そこになるべく頼らずにコストを下げて創出価値を上げるっていうことを考えていくべきだと。一人当たりの創出価値を上げるっていうのは個人でも目指していける方向性だなと思うので、こういうところはすごく自分としても目指せるなと思ってるんですけどね。
ちょっと関連しちゃうんで、ついでにもう一つ言っちゃいますけど、僕やっぱもう一つ道のことがすごく引っかかったというか刺さったポイントで。びっくりしたのが、396ページに道路延長費用っていうのがあって、1キロあたりいくらコストかかってるのかっていう。一番高いのがアクアラインで、1キロあたり934億円かかっていると。一番安いのでも北海道の農道で5.2億円、1キロ作るのにかかってるって、こんなかかるの?と思って。
昔から道路の工事とか、なんでこんなにいろんなとこでやってんのかなって、すごい無駄じゃないかなってずっと思ってたんですけど、こんだけコストかかんだと思うと、これも見て結構僕絶望しました。
これを読んですごい、あ、そうなんだと思ったのが、415ページのところで、道っていうのは人類の文明の重要なポイントだったっていうのはあるんですけど、人類の文明と轍がすごく轍の戦いだったみたいな話があって。轍って、車が走ってタイヤに沿って溝みたいなのができてくるっていう。これ読んでからすごい轍が気になるようになって。
整備されてない道路ってすごい揺れるって。運転したらそうでもないんですけど、助手席とか後部席乗ってるとやっぱすごく感じるんですね、轍の揺れが。整備された道路ってすごく気持ちよく走れる。ここに書いてあってすごいびっくりしたのが、大型トラックと乗用車の、道に与えるダメージの違い。大型トラックが一度通るだけで、乗用車の1800回以上のダメージあると。
確かに書いてる。
大きさの違いはもちろんわかるけど、一回走るだけでこんなにダメージ受けちゃうんだ。そうすると確かに轍って全然出来方違ってくるんだなとか、何回通ったらその道路を整備しないといけないっていうのが計算できてみたいな話があって。インフラってこういうことか。何気なく毎日使ってるけど、そういうことかと思って。
なるほど。僕こう付箋をつけまくってるんですけど、この真ん中くらいのセクションがレジリエンスとかインフラのところなんで、全然僕付箋つけてなかった。
いや、こういうのも面白いですよね。人によって見てるポイントが違う。これすごい面白いなと思って。
言われてみれば確かにね、これはそうだよなと。先週も話してる中で、やっぱりそこの意識が鳥本さんが絶望してるんだなって。
まとめ
この回では、鳥本さんと小田さんが『「風の谷」という希望』をそれぞれの視点から読み解きました。小田さんは「良い場所」があってこそ「良いコミュニティ」があるという人・場所の話に、鳥本さんはインフラや道路のコストといったハードの現実に、それぞれ心を動かされています。同じ本でも見ているポイントが違い、二人ともそこに希望と絶望の両方を感じていたことが印象的でした。地元の高校がなくなった新得で、GANKE FESの拠点を「湖の崖という希望」と重ねて読む鳥本さんの視点も語られました。
- 会社名「Another Time」は星野道夫のエッセイ「もう一つの時間」に由来する。普遍的な自然の価値は存在し、変わるのは人間の感じ方
- 本のメッセージは「良いコミュニティである以前に良い場所である」。箱やコミュニティを先に作るのではなく、面白い人・面白いことがある場所を作る
- 疎と密は地方対都市ではなく、都市にも疎密がある。ちょうどいいバランスをどこに見出すかがポイント
- インフラは都市水準を備える必要はなく、一人当たりのコストを下げ創出価値を上げることは個人でも目指せる
- 道路や轍のコストなどハードの現実は個人では動かしにくく、鳥本さんはそこに絶望を感じた。同じ本でも読む人で刺さるポイントが違う






