3人のゲストは、それぞれどんな立場で北区に関わっているのか
この回のゲストは3人。まず畑川麻紀子さんは、北区でJimoKidsという活動をしています。
JimoKidsは、滝野川にあった元は石蔵の建物を改装した2階建ての一軒家です。放課後に毎日子どもたちが集まる場所として運営されています。
子どもだけの場所ではなくて、大人も集まって、地域の子どもたちを社会や大人みんなで育てていけるような、そんな環境を北区で作っていきたい。
2人目の山田浩太さんは、北区役所に勤める公務員です。その一方で、地域に「はみ出す」活動もしています。
山田さんは、北区役所内の部活動である「北区部」の運営を行っています。渋沢くんFMでは別番組「公務員ただいまはみ出し中!」のパーソナリティも務めています。
今日は行政と地域活動の両方に関わる者として、ノースゲート構想について楽しくお話ししたい。
3人目の梶谷篤史さんは、株式会社みのりプロジェクトの代表取締役です。北区王子で飲食店を6店舗経営しています。
梶谷さんが目指すのは、単なる飲食業ではなく「この街にこういう店があったらよかった」と思える街づくりの一部としての飲食業です。
この街にこういう店があったらよかったなっていう、その街としての価値、街づくりとしての一部としての飲食業を目指してやっております。
なぜ「North Gate」なのか。北端という立地に見た可能性
この回の収録は、番組初のビデオポッドキャストとして行われました。舞台は、梶谷さんが経営する店の一つ「Bar purest note」です。
North Gate構想は、3人が同じ未来塾のチームAで生まれた事業提案です。畑川さんによれば、北区について調べる中で「23区の北側に位置する」という地理的なメリットに注目したことが出発点でした。
この北にあるという地理的なメリットを生かさない他はない、という話から始まりました。
そこから、東北など北日本からいろいろなものが流れ込んでくる、その入り口としての北区をPRできないか、という発想につながっていきます。
「ゲート」という言葉にこだわったのは山田さんです。バス、電車、新幹線といった交通の便が、北区を門のように見せていると話します。
(門が)ただの人の行き来、電車の行き来ってことだけじゃなく、情熱の入り口と出口になって、その通り道になればいい。
梶谷さんは、23区の中での北区を、住む場所も職業もバランスが非常に良い街だと捉えています。ただ、その良さが住んでいる人にも外にもうまく伝わっていない、という課題感がありました。
(北区が)北の玄関口なんだよ、入り口なんだよというところで、いろんなものが集まってきて、文化の交わりが生まれて、ここ面白いよねとなっていくのが目指す形です。
全員が北区外から。それでも「北区はいい」で一致した理由
興味深いのは、3人とも北区の出身ではないという点です。畑川さんの活動拠点も、どちらかといえば池袋寄りの滝野川にあります。
それでも North Gate と言い切って進める原動力は何か。畑川さんは、未来塾の間、自分の心はいつも北区にあったと振り返ります。
自分のいろんなところで活動してますけど、でも心は北区で、北区のメンバーと北区について語ることにすごい楽しみを得てました。
山田さんは役所勤めのため、どうしても王子から物事を見がちだったと言います。ただ、今回の異動で赤羽に移ったこともあり、視点が広がったと話します。
王子赤羽滝野川って要所の言葉はありますけど、それ以外にもマインドとして根付いて、北区中に広がらないかなと思ってます。
象徴的な場所として飛鳥山を挙げつつ、そこからじわっと北区全体へ広がっていく景色を作りたい、というのが山田さんの願いです。
気軽に飛び込んだ未来塾で、見えていた世界の狭さに気づく
3人が出会った北区担い手みらい塾は、参加者がチームに分かれ、北区への事業提案を考える場です。3人はチームAとして活動しました。
畑川さんは、そもそも気軽な気持ちで参加したと打ち明けます。しかし、やってみて自分の見えていた世界の狭さに気づいたと言います。
(参加して)自分の見えてたものの本当に狭さ(に気づきました)。公務員の方や飲食店の方と仲良くなれると、語る内容も見えるものも全然違って。
みらい塾はすでに3期目に入っています。畑川さんたちは1期生ですが、1年で終わりではなく、その後の関係のほうが大きいと語ります。
北区のことをおしゃべりできるお友達が増えて、あの時ではできなかったアクションができてるのが、すごい今楽しい。
こしのさんは、民間のイベントに役所の人が入ってくることは、これまであまりなかったと指摘します。北区内でこうした連携が数年続いていること自体が珍しいと言います。
役所から背中を押される。「はみ出す公務員」が動きやすくなった空気
行政側の山田さんにとっても、みらい塾は追い風の中で始まりました。役所の中に「みらい塾に行っておいで」という空気があったと言います。
その背景には、新しい区長のもとで、役所の人もどんどん外に出ていくべきだという方針がありました。山田さんは、その方針が少しずつ現場に浸透していると感じています。
新区長になられて、民間や役所の人もどんどん外に出ていきなさいよ、というところが方針になって、みんなちょっとずつ血が通ってきた感じもあります。
梶谷さんは、関東に住んで20年ほどになる中で、北区の人のぬくもりや考え方が自分に合うと感じてきました。そのうえで、行政と一緒に未来を作れる点に強く惹かれたと話します。
何か動かそうと思ったら行政の力は絶対必要なので、そこ(行政も一緒に)でやるっていうのができた時に、これは絶対面白いだろうと思って参加しました。
3年目を迎えた今、その広がりはNorth Gateの取り組みにとどまりません。イベントの手伝いや紹介、仕入れの増加など、具体的なつながりも生まれていると言います。
気持ちいい・痛い・痒いがわかる。民と官の距離が縮まった感覚
畑川さんは、行政と組んだことで大きな変化を感じたのは、大きな話よりも身近な部分だと言います。リスナーや知り合いの中に、相手の気持ちがわかる関係が増えたことです。
お知り合いだけじゃなくて、どんなお話だったら喜んでくれるかがすごいわかるようになった。
こしのさんは、かつて民と官が対立関係にあるかのような空気が長く作られていた時代を振り返ります。そのうえで、互いを理解しながらできることをやる今のあり方を画期的だと評します。
山田さんも、行政と民間が互いの事情を体感でわかるようになった、と手応えを語ります。
気持ちいいと痛いと痒いがわかるような、それはすごいあります。行政ニーズがわかるし、一緒にいろいろできる。
公務員批判が通りやすく、民と官が対立関係にあるかのような空気があった
互いの立場や「気持ちいい・痛い・痒い」がわかる、お友達のような共創関係
GDPではなくGDW。幸福度を指標に置くという発想
この構想が何を目指すのかを語るうえで、山田さんは「GDW(グロス・ドメスティック・ウェルビーイング)」という言葉を持ち出します。これはチームAのもう一人のメンバーが持ち込んだ考え方でした。
GDPプロダクトが生産量やお金の指標だったのに対して、ウェルビーイング、まさに幸福度を持って測っていこうじゃないか。
構想は、そもそも「自分たちはどうだったら幸せなのか」というディスカッションから始まったと畑川さんは言います。かなり熱く議論した、そのものの起点でした。
地域のものが流れ込んできたら、北区に住んでいながらいろんな体験ができる。これって幸せだねって出てきたのがノースゲートです。
食が産地と地域をつなぐ。行政と組むことで生まれた役割
梶谷さんは、産地と地域を食でつなぎ、全体をプロデュースする役割を担っています。行政と組む意味について、こしのさんが尋ねます。
山田さんは、民間の自分一人では地域的な広がりまでは届かないと言います。営利である以上、そこには限界があるからです。
一方で、行政と組んだことで見えたものがありました。行政が本当はやりたかったことや、使えていなかったリソースが明らかになったのです。
行政としては実はこういうことがやりたかった、こういうリソースを持ってるのに使えてなかったんだ、みたいのがすごい分かった。
そのうえで、漁師や居酒屋といった民の現場を動かせるのは民間側です。民でやれることが行政につながっていった点に、一緒にやれた意味があると山田さんは語ります。
バラバラな個性を一つに束ねた「北区愛」というパズル
畑川さんは、資料上ではプロジェクトリーダーとして方向性を決め、チームビルディングを担った人物とされています。本人はその役割をどう受け止めていたのか。
畑川さんは、未来塾には本当にいろいろな個性の人が集まっていたと振り返ります。過去にもチームでビジネスプランを立てた経験はあったものの、ここまでバラけたのは初めてだったと言います。
いい意味でバラバラの中で、その個性をいかに生かしていくんだろうっていうのは、すごい楽しかった。
それでも、全員に共通していたものが一つありました。全員が北区の外から来ているのに、「北区はいい」という点だけは誰も譲らなかったのです。
山田さんは、地域とつながりたいと大声を出す自分がいて、すでにそれを行動でやっている梶谷さんがいて、形にしてくれる人がいた、と振り返ります。
自分が大声出して外とつながりたいんだって出してよかったなっていう。それをもうやってる人がいて、形にしてくれる人がいてっていう、パズルが合わさった感じ。
山田さん(行政)
外とつながりたいと大声を出し、行政のニーズとリソースを持ち込む
梶谷さん(食)
すでに食で地域とつながる行動を実践し、産地と地域を結ぶ
畑川さん(束ね役)
バラバラな個性を「北区愛」でまとめ、構想を一つの形にする
こしのさんは、役人の代表のような顔をしながら特殊な存在だった山田さんのような人が増え、その成果が評価される流れができつつあると見ています。山田さん自身は、まだ役所では浮いていると笑います。
まとめ
North Gate構想は、北区担い手みらい塾のチームAで出会った民間3人と行政が、23区の北端という立地を「情熱の門」に変えようとする取り組みです。全員が北区外の出身ながら「北区はいい」で一致し、GDPではなく幸福度(GDW)を指標に据えた点に特徴があります。対立ではなく「お友達」として組む民と官の関係が、その出発点になっています。
- North Gate構想は、北端という立地を生かし、北区を「北の玄関口=情熱の門」にしようとする発想から生まれた
- 3人とも北区外の出身だが、「北区はいい」という思いだけは全員が共有していた
- 指標にGDPではなくGDW(幸福度)を置き、「どうだったら幸せか」の議論から構想が始まった
- 民と官が「気持ちいい・痛い・痒い」までわかる関係になり、対立から共創へと変わった
- 行政のニーズやリソースと、食で地域をつなぐ実践、束ね役の個性が噛み合って構想が形になった






