80年・1300人超の研究がたどり着いた「たった一つ」の答え
今回池田さんが紹介するのは、ロバート・ウォールディンガーとマーク・シュルツの共著『グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない』(辰巳出版)です。
著者のウォールディンガーは、ハーバード大学医学大学院の精神医学教授で、ハーバード成人発達研究の現在の責任者だと紹介されています。
この研究は、ハーバードの学生とボストンの少年たちから始まり、その子どもや配偶者も含めて1300人以上を、何世代にもわたって追いかけ続けてきたと池田さんは説明します。
そして、この本の答えはたった一つだと池田さんは言います。人生で投資すべきものは人間関係である。健康で幸せな人生を送り続けるには、いい人間関係が欠かせない、という結論です。
この本を手に取ったきっかけは、コミュニケーションデザインの師匠である佐藤直樹さん(サトナオさん)が推薦していたことだと池田さんは話します。
加えて池田さん自身が「朝キャリ」というコミュニティを8年運営しており、人間関係の大切さを感覚的に感じていたため、それを理論としても知りたくなったのだそうです。
コミュニティのアンケートで腹の底からわかったこと
池田さんは運営する朝キャリのリニューアルにあたってアンケートを取ったところ、「安全安心なかけがえのない居場所」という声がたくさん届いたと話します。
朝キャリでは、朝活やアウトプットなどの動画を毎週配信し、アーカイブは300以上あるといいます。そのうえで「あえて朝キャリにいる理由の一番はどれか」を尋ねました。
結果として一番に挙がったのは、300個以上あるコンテンツの力ではなく、メンバー同士の居場所だったと池田さんは振り返ります。
八年やってきた本人が今更何言ってるんだっていう感じなんですけども、ノウハウよりも一番優先としているのは(朝キャリの)場なんだなって、初めてこのアンケートの結果から腹の底からわかったんですよね。
この本で特におおっと思った点は2つあると池田さんは挙げます。1つ目は、50歳のときに人間関係の満足度が高かった人ほど、80代で健康で幸せだったというデータです。
もう1つが「読み書きそろばん」に関する話です。アメリカの教育の世界では、学びの基礎として3つのRが大事だと言われているそうです。
本書はそこに4つ目のRとして、リレーションシップ、つまり人間関係を加えるべきだと述べていると池田さんは紹介します。読み書きそろばんと並ぶほど、人間関係は土台だという主張です。
なぜ人間関係だけはAIに代われないのか
この4つ目のRについて、池田さんはこれはAIには代えられないものだと感じたと話します。
読むこと、書くこと、計算することは、今もこれからもAIが相当やってくれる。けれど、人と関係を結ぶことだけは生身の自分がやるしかない、というのが池田さんの考えです。
だからこそ人間関係は、これからますます大事なことになってくるのではないか、と池田さんは述べています。
「友達がいない」と凹んでしまう朝の正体
ここから池田さんは、自身の悩みを打ち明けます。「私には友達がいない」といつも思ってしまう、というものです。
人間関係が大事だと頭ではわかっているのに苦しい、ということは多くの人にあるのではないか、と池田さんは投げかけます。
池田さん自身、朝キャリという居場所はあるものの、いつも孤独を感じることがあるといいます。浅い付き合いだと好かれるのに、深く踏み込むと引かれたり嫌われたりすることが密かな悩みだと語ります。
余計な一言多いのかなとか、お節介でやりすぎなのかなとかね、くよくよすることがいまだにあります。
そしてこの悩みは自分だけではないはずだ、と池田さんは言います。SNSを開くと、仲良くしていた人が誰かのパーティーや食事をしている写真が流れてきて、密かにショックを受けることがあると打ち明けます。
(SNSで写真を見て)あ、私呼ばれてないわと密かにショックを受けるみたいなことって結構ありますよね。
本書では、心身の健康に運動が必要なのと同じように、健全な人間関係にもメンテナンスが必要だと書かれていると池田さんは紹介します。
問いを「多いか少ないか」から「お手入れしているか」へ
池田さんは、人間関係を自分に問いかけるときの視点そのものを変える必要があると言います。
自分は友達が多いか少ないか、という視点でいると、延々と落ち込んでしまう。そうではなく、今ある人間関係をしっかりお手入れしているかへ問いを変えるのがいい、というのが池田さんの提案です。
友達が多いか少ないか。他人と比べて延々と凹んでしまう
今ある関係をお手入れしているか。自分の行動に焦点が移る
その具体例として、池田さんはポッドキャスト「ネオアラフィフの休憩室(アラキュー)」を3年ほど一緒にやっている、投資家のリエさんを挙げます。
リエさんは人間関係のお手入れがとても上手で、いつもいろいろ誘ってくれるため、周りに素敵な友達が多いのだと池田さんは話します。
リエさんの秘訣は、友達と定期的に約束を入れることだといいます。整体に行くときは近くの友達の家に寄る、といった形をあらかじめ決めているそうです。
アラキューの収録も、月に1回会って1か月分をまとめて録るため、その場で次に会う約束を決めてしまう。「次どうする?」と必ず会える形にしていくのだと池田さんは説明します。
これがなかったら、また今度ねとか、いつか会おうねって言って、そのまま一年とか三年とか、下手すると五年、十年経ってる方ってめちゃくちゃ多いと思うんですよね。
つまり、待っていても関係は続かず、働きかけて初めて続くというのが池田さんの結論です。
だから呼ばれなかったと凹むのではなく、自分が呼ぶ側に回ると決めることはできるのではないか、と池田さんは投げかけます。
誘うのが重い人へ。「お手入れの一段手前」から始める
とはいえ、誘えばいいと言われても、断られたら凹むし、しつこいと思われるのも嫌だ、という気持ちがある、と池田さんは受け止めます。
特に友達がいないと感じている人にとって、誘うというアクションはとても重い。だからそれがまだ難しい場合は、一段手前から始めましょうという提案です。
その手前とは、自分自身のお手入れだと池田さんは言います。本書で幸せな人生を送った人たちに共通していたのは、関係を当たり前にしなかったことだと紹介します。
この人がいてくれることは当たり前じゃないと気づき、感謝を思っているだけで終わらせず、口に出して伝える。それは誰かを誘うよりもずっと簡単だと池田さんは話します。
池田さん自身も本書を読んで、感謝を思っていても十分に伝えきれていない関係があるかもしれない、当たり前になっていないか、と振り返ったといいます。
会いたいと思ってもらえる自分を維持できているか、という問いは、人に聞いても答えが出ないと池田さんは言います。会いたいかと直接尋ねても、本音は返ってこないからです。
だからこそ自分の内側に聞くしかなく、まずはノートに感謝を書いてみるところから始めるのがいい、と池田さんはすすめます。
このように人との関係や自分との関係を棚卸しすることは、人間関係の準備運動になる、と池田さんは言います。筋トレ前のストレッチのようなイメージです。
8年運営して気づいた「ノウハウより場」という反省
ここで池田さんは、あらためて朝キャリの話に戻ります。8年間、メンバーは自分が届ける朝活のノウハウを学びたいのだと思っていたそうです。
ところがアンケートを読むと、メンバーが受け取っていたのは動画のノウハウよりも「場」だった。それが結構衝撃だったと池田さんは打ち明けます。
朝キャリってめちゃくちゃいい人ばっかりいて、こんなに治安がいい場所ってないなっていう風に感謝してもらえたんですよね。
ノウハウは渡せば終わりで、いいことを聞いたと離れていくこともある。一方で朝キャリは滞留度が高く、一度入ると数年ずっと居心地がいいと言ってくれる人が多いといいます。
この「場」は、お手入れし続けないと消えてしまうものだと池田さんは気づきます。だから今、一番お手入れしようと思っている関係は、朝キャリメンバーとの関係だと語ります。
もう一つ反省したのは、アンケートで多くの人が「参加できなくてすみません」「動画を視聴できなくてすみません」と、罪悪感のある言葉から書き始めていたことでした。
謝らないでほしいと思う一方で、すみませんと言わせてしまう場にしていた自分の責任だと池田さんは受け止めます。いるだけでOKの場を作れていなかった、という反省です。
参加した回数とか、ワークを出したかどうかで、メンバー自身が自分を採点してしまう場にしちゃってたんだなって思って反省したんですね。
そうではなく、いるだけで本来の自分に戻れる場を作りたい。それが自分にとっての場のお手入れだと、この本を読んで改めて思ったと池田さんは話します。
点数をつける関係ではなく、本来の自分に戻れる関係を
この気づきは、聞いている人の人間関係も同じだと池田さんは言います。呼ばれてないと凹むのも、参加できなくてすみませんと謝るのも、関係の中で自分に優劣の点数をつけてしまっているのだ、と指摘します。
大切なのは点数を上げるための関係ではなく、そこにいるだけで本来の自分に戻れる関係だと池田さんは言います。
そんな場所が一つでもあれば、友達の数や、何かに呼ばれた数はもう関係なくなる、というのが池田さんの結論です。
本書のタイトルにある「幸せになるのに、遅すぎることはない」について、池田さんは、80年の研究が感情論抜きにデータで言い切っている点がすごいと評価します。
五十代からお手入れ始めた人もちゃんと八十歳で幸せ。だから、もう友達を作る年齢じゃないって思ってる人にこそ、人は何度でも関係結び直せるんだなと勇気もらえる本です。
朝10分でできる、2つの問いのワーク
最後に池田さんは、朝からできる問いのワークを紹介します。朝の10分、ノートでもスマホのメモアプリでもいいので書いてみてほしい、と提案します。
1つ目の問いは「一緒にいると本来の自分に戻れる人は誰ですか?」です。名前を1人でいいので書く。家族でも同僚でも、しばらく会っていない友達でもいいといいます。
池田さん自身は、15年ほど会っていない高校時代の友達「翔ちゃん」を挙げます。会っていないのに、名前を思い浮かべるだけでホッとする存在だそうです。
2つ目の問いは「その人に今日伝えられる感謝は、一言で言うと何ですか?」です。直接伝えなくてよく、ノートに書くだけでも、大げさな恩でなくてもいいといいます。
例として、しばらく会っていない友達からの「大丈夫?」というLINE、会議で自分の意図を汲んで発言してくれた同僚、毎朝黙ってコーヒーを淹れてくれる家族などが挙げられます。
(スリッパを)家帰ってきたらフカフカだったんですよね。ちっちゃいことほど書いた時に「ああ、この人いてくれてよかったな」みたいな感じで、自分がちょっとホッとするんですね。
さらに池田さんは、感謝ではなく反省でもいいと付け加えます。自身の後悔として、友人が家族の悩みを打ち明けてくれたときのエピソードを語ります。
そのとき池田さんは友人に同調して、友人のパートナーを一緒に悪く言ってしまったといいます。当人がパートナーを悪く言うのはいいが、自分まで悪く言うのはダメだった、と反省します。
半年後に会ったとき、池田さんは友人に謝りました。友人は覚えていない様子でしたが、それでも気持ちがすっきりし、モヤモヤした関係がストレートに話せる関係に戻った気がしたと振り返ります。
あの時本当悪かったなっていうことを後で言ってもいいんですよね。後で言って人間関係を修復することもできると思うので。
この関係に名前が1人でも出てきたら、あなたにはお手入れできる関係がある、と池田さんは言います。
いきなり誘い出すのではなく、感謝の気持ちをLINEで伝える、一言言ってみる、次に会ったとき少し話してみる。それだけでも関係は変わる、とすすめています。
まとめ
80年以上続くハーバード成人発達研究がたどり着いた答えは「人生で投資すべきものは人間関係」でした。池田さんは、問いを「友達が多いか少ないか」から「今ある関係をお手入れしているか」へ変え、その手前にある自分自身のお手入れを、朝10分のノートから始めることを提案しています。
- 本書の結論は「人生で投資すべきものは人間関係である」の一点に集約される
- 待っていても関係は続かず、働きかけて初めて続く。呼ばれなかったと凹むより、呼ぶ側に回ると決められる
- 誘うのが重い人は、まず自分自身のお手入れ(当たり前を感謝に言い換える)から始める
- 点数をつける関係ではなく、いるだけで本来の自分に戻れる関係が一つあればいい
- 朝10分で「一緒にいると本来の自分に戻れる人は誰か」「その人に伝えられる感謝は何か」を書いてみる






