橋梁の知識は勉強ではなく「失敗の繰り返し」で身についた
今回は前回の続きとして、ゲストの永瀬さんの「今」を掘り下げていきます。橋梁点検を知るには永瀬さん自身を知ることにつながる、という切り口です。
永瀬さんは美術系の大学出身です。それなのに、わからないことがあれば「永瀬さんに聞く」という状態になっているほど、橋梁の知識を持っています。
だから美術系の大学とか出てたのに、ようあんなルールとか覚えられました?橋梁。
吉田さんは、本に載っていることと実体験から得た知識を永瀬さんがたくさん持っていて、聞けば即答してくれると話します。
大体聞いたら(永瀬さんに聞いたら)即答っていうか、これはこうやったみたいな、すぐに。よう覚え、そんな全部蓄積して覚えてるなって思う。
ところが本人は、特別な勉強はしていないと言います。むしろ勉強は嫌いで、知識の源は経験だと話します。
失敗ちゃいます?知らないこと言われたらもちろん調べますけど、でもすごく深く調べるわけではなくて、最低限のことしか調べないんですね。
最低限だけ調べ、あとはお客さんと話しながら進め、時には勝手な判断で怒られ、失敗する。その繰り返しだけだと永瀬さんは振り返ります。
線路を歩き、違う橋を説明する。伝説的な「おちゃめ」エピソード
若手の頃の永瀬さんには、現場でわからないことが山ほどあったと言います。聞ける人もいない中で、めちゃくちゃ怒られていたそうです。
無茶苦茶ありますよ。だってめちゃくちゃあるし、めちゃめちゃ怒られてるし。聞ける人おらへんしね。
中さんは、当時の永瀬さんを「そんなことするかみたいなことを平気でする人」のイメージだったと振り返ります。踏切のない線路の中を普通に歩いていたこともあったそうです。
意外に電車って来えへんねんな。
方向音痴も強烈で、点検対象とは違う橋を説明してしまうこともあったと言います。
役所の方とかお偉さん来て、今日は(点検で)見に来るっていう橋をじゃない、別の横の橋をずっと説明して。
しかも最初は誰も気づかなかったほどで、間抜けな部分が多く、そこを突っ込まれることが多かったと中さんは話します。
現場から移動する場面でも、全員が左を向いて永瀬さんの車を見に行く、という定番の光景があったそうです。
集合場所から今から現場行くぞって言ったら、みんな左向いて永瀬(の車)を見に行く。
永瀬さんの車が完全に逆方向へ走っていくため、みんなが釣られてしまう。だからこそ永瀬さんは、自分を先頭にしてはいけないと言います。
ああいう時、僕を頭にしちゃダメです。反対に(進んで)みんな別方向に行っちゃダメ。
ミスは今もある。それでも慕われるのは「愚直さ」ゆえ
吉田さんたちが入社する頃には、永瀬さんはもう仕上がっていたと言います。ただし本人は、失敗がなくなったわけではないと否定します。
(若い頃のおちゃめなところは)なくなってないです。全然。現場に出る頻度は少なくなった。それは少なくなってると思いますけど。
中さんは、愚直にやっていく中でミスが減っていったのではと問いかけます。しかし永瀬さんは、ミスは今もあると答えます。
ミスは今も全然あると思いますよ。ただ、口が多少上手くなっただけじゃないです。あと雰囲気で乗り切るみたいな。
中さんは、その愚直さこそがお客さんに可愛がられる理由だと分析します。自分は小賢しく見られやすく、相手に警戒心を持たれやすいと対比します。
(永瀬さんは)警戒されない。しかも愚直に応えはるんで、常に。だから、お客さんの信頼をめっちゃもらってるのかなみたいな感じはしますね。
絵で教え、隙がある。永瀬さん流の教え方と人望
お客さんだけでなく、社内でも永瀬さんの人望は厚いと吉田さんは言います。教えてほしいところをうまく優しく教えてくれる、というのがその理由です。
なんか分からへんねやったらもう一回教えたろかみたいな感じのスタンスを感じる。
教え方にも特徴があります。永瀬さんはすぐに絵を描いて説明してくれるそうです。芸大出身だけあって、その絵がとても上手いと評判です。
すぐ絵描いて教えてくれる。
この教え方や人望から、吉田さんは永瀬さんが実はリーダーに向いているのではと切り出します。しかし本人はリーダーは無理だと否定します。
基本そんなに初対面の人とかとすごく仲良くいきなり盛り上がってとかできるような人でもないし。
これに対して吉田さんは、隙がある方が人が入り込めると返します。入り込める隙がある方が、みんなが安心できるという見立てです。
令和の時代に合う「安心安全」なリーダー像
中さんは、強く引っ張るタイプよりも、令和の時代には永瀬さんのようなリーダーが合うのではと語ります。
めちゃくちゃ強く引っ張っていくぜみたいな人よりは、なんかこういう感じでいい(のかな)。
現場ではペアで動くこともあり、相性の合わない人が出ることもあると言います。しかし永瀬さんの場合はそうしたトラブルがあまり出ないそうです。
そういうの実はリーダー向いてるんですよ。みんなも安心安全。
吉田さんは、永瀬さんを心理的安全性を確保してくれる人だと表現します。ミスをしても、パンと責められるのではなく許容してくれそうな空気があるからです。
いくつになっても、初めてのことにはミスがつきものです。それを咎めずに受け止めてくれる存在だからこそ、周囲は安心できると吉田さんは話します。
事務所の人気投票センターは永瀬さん。「小賢しさゼロ」の可愛さ
上司が来ると身構えることも多い中で、永瀬さんは逆だと言います。週間工程を見て「今日おらんわ」となると、事務所に寂しさが広がるのだそうです。
今日おらんのかって(悲しく)思う感じの。
その人気ぶりを、メンバーは人気投票のセンター、1位だと表現します。本人は自覚がないと言います。
僕自身は自覚がそんなないんでね、別に。僕は僕がやりたいようにやってるので。
自覚がないままそれができるのはすごい、と樋上さんは返します。狙ってできることではないからです。
話の中で、永瀬さんは自分にも小賢しいところはあると主張します。しかし、それが完全に見透かされていると笑いを誘います。
僕は小賢しくやってるつもりが見透かされてるんですね。多分ね。
小賢しさゼロですよ。超絶下手。下手くそなんですよね。
何かしようとしてもぞもぞしているのがすぐ伝わってしまう。その不器用さこそが、永瀬さんの可愛さであり、愛される理由につながっているようです。
最後に、樋上さんは永瀬さんの今後について尋ねますが、それは次回に持ち越しとなりました。次回は永瀬さんの今後がテーマになります。
まとめ
美術系出身で、ミスも失敗も多かった永瀬さん。それでも社内外で愛される理由は、深く調べず経験と失敗を重ねてきた歩みと、警戒されない愚直さ、そして隙のある安心感にあると語られた回でした。
- 永瀬さんの橋梁知識は特別な勉強ではなく、最低限だけ調べて失敗を繰り返す経験から身についた
- 線路を歩く、違う橋を説明するなど、若手の頃は伝説的なおちゃめエピソードが多かった
- ミスは今もあるが、愚直に応える姿勢がお客さんの信頼につながっている
- すぐ絵を描いて優しく教える教え方と、隙のある人柄が社内の人望につながっている
- 強く引っ張るより、心理的安全性を確保する「安心安全」なリーダー像が令和の時代に合うと語られた




