好きなのに見続けられないドラマもある?
この回のバタやんさんは、「最近どんなドラマを観ていますか?」という問いかけから話を始めます。配信ではNetflixの『匿名の恋人たち』を見終えたところだといいます。
同じくNetflixの『ウンジュンとサンヨン』は、バタやんさんにとってすごく好きな作品です。けれどラストがわかっているため、先を想像して途中から辛くなり、今は視聴を止めているそうです。
なんかそういうすごく好きなんだけど、見続けていられないっていうのは皆さんもありますか?
バタやんさんによると、本や小説でも、登場人物が死ぬと分かっているタイプの作品は途中で止まってしまうことが時々あるといいます。
最近までハマっていたのは、U-NEXTで配信されている『ポーカー・フェイス』です。1話完結で事件を解決するシリーズで、バタやんさんはコロンボ形式 ── 刑事ドラマ『刑事コロンボ』に代表されるミステリーの型。冒頭で犯人と犯行を視聴者に見せ、探偵役が真相に迫る過程を楽しませます、古畑任三郎形式だと説明します。
犯行を先に見せる
視聴者には最初から犯人と殺し方がわかっている
主人公が巻き込まれる
探偵でも刑事でもない、少しならず者の女性が事件に関わる
真相にたどり着く
主人公がどう気づき、解決するかを楽しむ
バタやんさんが特に感心しているのは、探偵でも刑事でもない主人公が、なぜ事件に巻き込まれて解決する羽目になるのかという必然性の作り方です。毎回見事だと話し、見ている人がいればぜひコメントしてほしいと呼びかけています。
『じゃあ、あんたが作ってみろよ』が絶妙な理由
地上波の10月クールでは、バタやんさんは『フェイクマミー』『じゃあ、あんたが作ってみろよ』『ちょっとだけエスパー』『緊急取調室』を特に楽しみにしているそうです。
なかでも『じゃあ、あんたが作ってみろよ』について、バタやんさんは主人公・勝男役の竹内涼真さんを「最高」と評します。さらに、あゆみ役の花帆さんの存在感にも触れています。
(あゆみ役の)花帆さんってなんであんなこう、絶妙な立ち位置にキャラクターを置くことができるのかなって思っていて。
バタやんさんによると、あゆみ役の俳優は、女性が嫌いな女性になりそうなギリギリのラインにいながら、「これは私のことだ」と重ねられるラインも踏んでいるといいます。ヒロインを陰で支える二番手も、実は超意地悪な二番手もハマるという見立てです。
作品そのものについても、バタやんさんは「絶妙な立ち位置」だと話します。問題提起的なニュアンスとラブコメのバランスがちょうどよく、勝男は「なんでそういうこと言うかな」と思わせつつも嫌いにはなれない人物になっています。
勝男が嫌いになれないのはドラマでは竹内涼真さんの力が大きいとしつつ、バタやんさんは登場人物の気づきが早い展開も心地よいと語っています。
作品はなぜ「社会問題」の枠で語られがちなのか
『じゃあ、あんたが作ってみろよ』の原作は、谷口菜津子さんの漫画です。バタやんさんは谷口さんの『今夜すき焼きだよ』もすごく好きな作品だったといいます。
ドラマの話で終わると思わせて、今夜の「勝手に貸出カード」としてバタやんさんが選んだのは、BNN編集部編『多様で複雑な世界を、いまどう描くか』です。サブタイトルのとおり、12人の漫画家・イラストレーターの表現と思索を記録したインタビュー集で、その一人に谷口菜津子さんがいたことから手に取ったそうです。
バタやんさんは、多様性やポリティカルコレクトネス ── 人種・性別・障害などによる差別や偏見を含まない、中立的な表現や行動を求める考え方。略して「ポリコレ」とも呼ばれますが議論される機会が増えたと話します。こうしたキーワードは好き嫌いが分かれるとしつつ、エンタメで主流だったものに疑問を投げかける作品に注目が集まる傾向もあると見ています。
具体例として挙げられたのは、昔ながらの結婚観や男らしさ・女らしさ・母親らしさを問い直す作品です。LGBTQや障害のある人物の描き方にも変化を感じているといいます。
センセーショナルな山場や、お涙頂戴的な扱い
いち登場人物の個性として扱う作品が増えている
ただしバタやんさんは、こうした作品が「社会問題を提起している」「マイノリティに寄り添う」と紹介されることに、作者自身は違和感を持っているのではないかと気になっていたといいます。
いや、そういうことじゃなくてとか、そういう単純な枠に当てはめて欲しくないって思ったりしないのかなって気になっていたんですよ。
『多様で複雑な世界を、いまどう描くか』は、ジェンダー平等やフェミニズム、ルッキズム ── 人の価値を外見で判断したり、容姿で差別したりすること。外見至上主義とも訳されます、LGBTQなどを扱うと評される作り手に話を聞いた本です。本人に当事者意識があったのか、過去の表現が誰かを傷つけた経験があるのかまで踏み込んでいる点を、バタやんさんは貴重だと評しています。
「今ならこうは描かない」作り手の正直な声
バタやんさんは、作家やイラストレーターの表現したいという信念の源は変わらないだろうとしつつ、仕事には発注がつきものだと話します。編集者やクライアントの要請で「こう描いてほしい」と言われ、納品されて世に出ていく作品も多いからです。
『多様で複雑な世界を、いまどう描くか』では、数年経った今の考えや、今ならこうは描かなかったという思いが正直に語られています。バタやんさんはその点を非常に興味深いと感じたそうです。
たとえば、若い女の子や綺麗な子を描くのが楽しいのは自然なことだという声がある一方で、ルッキズムに加担したのではないか、悪い人を悪い容姿で描いたことを後悔している、という声もあります。こうした「今ならこうは描かない」という話に、バタやんさんは心を打たれたと語ります。
印象的だった例として、スケラッコさんの児童書『どどんと、どんと、ねこ』の相撲大会のシーンが紹介されます。スケラッコさんは小さい子の裸を描くことに抵抗や恐怖があり、Tシャツを着ていたほうがいいのではないかと話しているそうです。
BNNはデザインやビジュアルアートに携わる人を支援する出版社で、この本もクリエイター向けです。それでもバタやんさんは、子どもに読ませる絵本に悩む人や、広告やビジュアルの仕事でわかりやすさと正しさの間でモヤモヤする人にもすすめたいといいます。
嫌いになる前に、自分に「お問い合わせ」する
最後にバタやんさんは、『多様で複雑な世界を、いまどう描くか』に収められた谷口菜津子さんのインタビューから神フレーズを紹介します。
谷口さんは「全作品を通して言いたいことは、プライドとかじゃなく、どうして悲しいのか、怒っているのかをちゃんと言葉にできるようになってほしいってこと」と語り、自身も日頃から自分になぜそう思うかを問い合わせ、問題の芯を探すようにしていると答えています。
自分にお問い合わせをして問題の芯を探すってすごい言葉だな、いいなと思いまして。
バタやんさんは、ムカッとしたりちょっと嫌だと思ったりしても、自分に問い合わせずにやり過ごすことのほうが圧倒的に多いと認めます。けれど、それが積み重なると「この人が嫌だ」になってしまうと話します。
具体例として挙がったのは、バタやんさんが作った料理に家族がソースをドバドバかける場面です。悲しいと思っても見なかったふりをしていると、関係が少しずつ変わっていくといいます。
スルーする
作った料理にソースをかけられても、悲しさを見なかったふりをする
作る料理が変わる
味が濃いめに決まった料理しか作らなくなる
共有が減る
新しい料理を作って一緒に食べることもしなくなる
苦痛になる
向かい合ってご飯を食べることさえ苦痛になる
『じゃあ、あんたが作ってみろよ』のあゆみは、プロポーズされた時点で「無理」となります。バタやんさんは、その瞬間がもっとずっと後にやってくる人のほうが多いのではないかと話し、自分に問い合わせて問題の芯を探すことを心に刻んでおきたいと締めくくりました。
まとめ
ドラマの近況から始まったこの回は、谷口菜津子さんのインタビューを入り口に、作り手が表現と正しさの間で揺れる姿、そして自分の感情を言葉にすることの大切さへと話が広がりました。
- 『ポーカー・フェイス』や『じゃあ、あんたが作ってみろよ』など、バタやんさんが今楽しんでいるドラマが紹介された
- 『多様で複雑な世界を、いまどう描くか』は、12人の漫画家・イラストレーターが「今ならこう描かない」まで正直に語るインタビュー集
- 作品を「社会問題提起」という単純な枠で語ることへの違和感が、この本を読むきっかけになった
- 小さな「やだな」を放置せず、嫌いになる前に自分に問い合わせて問題の芯を探すことが大切だと語られた





