プレオープン招待と一人での2時間、二人はどう店を見た?
この回は、福井県の文具店「HORITA BUNGU Flagship」の訪問レポートから始まります。いちがみさんは、店のInstagramアカウントをフォローしていたところDMが届き、プレオープンイベントに招待されたといいます。
9月15日オープンだけど、私(が店に)行ったのは9月11日ですね。
いちがみさんが参加したプレオープンは、冒頭の社長の説明や各コーナー担当者の案内、座談会が中心で、買い物に使えた時間は10分か15分ほどだったそうです。
一方の薄明さんは、取材ではなく一人の客として訪れました。誰にも気を使わずに店内を回っていたら、いつの間にか1〜2時間が経っていたといいます。
一人で行ったから、誰に気を使うでもなく、マジでぐるぐるぐるぐる回ってたら、いつの間にか1、2時間は経ってたんで。
9月11日のプレオープンイベントに招待。説明や座談会が中心で、買い物時間は10〜15分ほど
オープン後に一客として一人で訪問。気兼ねなく店内を回り、1〜2時間滞在
「書くは伝える」で変わった売り場とは?
薄明さんがまず感じたのは、文房具店でありながら一種の企画展のような見せ方をしている点でした。品ぞろえも豊富で、リニューアルによって体験や「書くことについて考える」方向へ舵を切った売り場づくりが伝わってきたといいます。
展示や広報に関わる仕事の一端を手伝っている薄明さんにとって、HORITA BUNGU Flagshipの店づくりは本当に勉強になるものだったそうです。
薄明さんは、以前の業態「LifeCanvas」の時代にも何度か訪れています。建物の外装や大きな作り、象徴的な「ペンストリート」は変わらない一方で、テーママップを作ってテーマ設定を拡張した点が大きな変化だと話します。
店舗に入って右端のイベントスペースにはスクリーンのような設備があり、トークイベントなどをやりやすく見直したのだろう、と薄明さんは見ています。
LifeCanvas時代。建物やペンストリートなど基本の作りは現在と同じ
テーママップによるテーマ設定の拡張、スクリーンを備えたイベントスペースへの見直し
9・10月のテーマは「向き合うきっかけに出会う」で、テーマ展示は「書くは伝える」です。大テーマに体験テーマが付き、さらに売り場は23個ほどの小テーマに細かく分けられていました。
大テーマ
向き合うきっかけに出会う/テーマ展示「書くは伝える」
体験テーマ
ペン選びの世界、用途に合わせてペンを使い分ける
小テーマ
23個ほどの売り場テーマ。手書きを見て、試筆して感じる
土橋さんの手書きサンプルと「感覚で分ける」売り場
HORITA BUNGU Flagshipの各コーナーには、手書きのサンプルが置かれています。手帳をのぞくのが好きな薄明さんにとって、うれしい仕掛けでした。
この手書きを担当したのは、ブログやYouTubeチャンネル「peninfo」を運営する土橋さんです。土橋さんは「編集型MD」として売り場づくりに関わっています。
(土橋さんの)生の手書きで、書くことであったり、書き残すことっていうのを、よりダイレクトに感じられるっていうのがなおいいなって。
コーナーの名前は「情報を正確に伝えるためのペン」「人に気づいてもらうためのペン」「感情を豊かに表現するためのペン」のように付けられ、それぞれに筆記サンプルと試筆用のペンと紙が置かれていたと、いちがみさんは紹介します。
薄明さんが面白いと感じたのは、メーカーが打ち出す「製図用ペン」のような機能別の分類ではなく、ユーザーがどう感じ、どうアウトプットするかという感覚的な部分をテーマのタイトルにしている点でした。
薄明さんは、この売り場の分け方を石川県立図書館になぞらえます。石川県立図書館では、中央の円形の本棚が「好奇心」や「仕事を考える」など12のテーマで構成され、分類番号や著者で機械的に並べるのとは違う見せ方をしているそうです。
メーカーの「製図用ペン」のような機能別、図書館の分類番号や著者順など、機械的な分け方
石川県立図書館の12テーマの本棚や、HORITA BUNGU Flagshipの「自分の好きな色で伝える」など、選ぶ目線から組む分け方
2か月ごとの入れ替えと、福井がうらやましい理由
HORITA BUNGU Flagshipのテーマが入れ替わる期間について、薄明さんは、オープンが9月半ばだったので9・10月にしているのかもしれないと推測します。毎月の入れ替えは店側も大変だろうと話します。
金沢在住の二人にとっては、通う側の事情もあります。金沢からは片道1時間半、往復3時間ほどかかり、店で1時間過ごせば一日仕事になります。
せめて2か月か3か月ぐらいのスパンでやってくれたらなとは思いますけどね。まあ福井の方は近いから。
いちがみさんは、プレオープンの座談会でも「福井の方がうらやましい」という話をしたそうです。金沢ではジムキチやロフトに足を運ぶものの、薄明さんは福井でしか展開していない規模の店がこれほど洗練された見せ方をしていることを「かっこいい」と評します。
店の一角には福井の地元産品もありました。瓦屋さんが作った瓦のトレイは値段も高くなく、いちがみさんは購入を考えましたが、硬い素材にペンを置きたくないと見送ったそうです。万年筆がメインの薄明さんも、傷がつきそうだと感じたといいます。
ほかにも、越前和紙に関連した商品や、HORITA BUNGUオリジナルのインクが並んでいました。
新色「曇天」は冬将軍とどう違う?
HORITA BUNGUのオリジナルインク「色鼓」シリーズには、これまで「水面」「薫風」「夕凪」の3色がありました。リニューアルのタイミングで、グレー系の新色「曇天」が加わりました。
発表時から曇天のグレーが気になっていた薄明さんも、現地で買ういちがみさんも、二人とも曇天を購入しています。
薄明さんは自作のインクカードで手持ちのインクと比べています。色味はパイロットの色彩雫「冬将軍」に近いものの、並べると曇天のほうが緑みのあるグレーだったそうです。
こうやって並べるとよくわかるんですけど、冬将軍はもっと青っぽいグレーなんですよね。
緑みのある、青緑寄りのグレー
より青っぽいグレー
買ったもの、買えなかったもの
いちがみさんはHORITA BUNGU Flagshipで、短い買い物時間に慌てて選んだといいます。購入したのは曇天インク、富国筆業の正方形のノート、それにペンコの小さなシャープペンシルでした。
正方形のノートは縦にも横にも置ける作りです。ペンコのシャープペンシルの近くにはゼブラのショート軸ボールペンなど短いペンが集まっていて、薄明さんも悩んだものの買わなかったそうです。
薄明さんが買ったのは、パイロットのフレンドショップ限定の万年筆「writiv」のサターンブラウン、F字です。HORITA BUNGUはパイロットのフレンドショップに認定されている店で、この限定品は去年発売されたものでした。
帰ってからなんか、いや、あのサターンブラウンめっちゃ良かったなって。
薄明さんは以前、大丸店でwritivを見かけたものの買わずに帰り、後から心残りになっていました。クリアブラウンの軸が好きで、カスタム74の株主優待限定のブラウンやカスタム823のブラウンも好みだといいます。
writivのサターンブラウンは3000円ほどで手に入るうえ、去年の限定品の売り切りなのか割引もされていたそうです。ほかに、ツバメノートの縦罫のノートも購入しました。
ノートや紙ものの在庫はとても豊富で、便箋やステッカーまで見だすときりがなかったと薄明さんは振り返ります。店内の雰囲気に浮かれ、品数の多さに目移りして、結局ほとんど買えないまま店を出たそうです。
万年筆と手帳の品ぞろえ、物足りなさと面白さ
いちがみさんは、買い物時間が始まると真っ先に万年筆コーナーへ向かいました。ただ印象としては、品ぞろえは日本の三大メーカーの主要モデルと、カヴェコなど海外製が少しある程度だったといいます。
ちょっと前に大阪の伊東屋でほぼ全部の種類並んでんじゃないかぐらいのを見てたから、そこはちょっと物足りなく思いましたね。
システム手帳のコーナーにも、いちがみさんは同じ印象を持ちました。置いてあるだけで貴重だとしつつ、KNOXの数種類・数サイズに限られていて、多くのブランドを見比べられる感じではなかったそうです。
一方で薄明さんは、万年筆コーナーにあったブルーインクの特集に注目しました。ペリカン、パイロット、プラチナのブルーインクがアクリルケースに並び、土橋さんの直筆で実際の色が示されていたといいます。
価格の手頃な万年筆では、シュナイダーの406やペリカンのジュニアのカラー違いなど、金沢の店頭ではあまり見ない顔ぶれが面白かったそうです。薄明さんは406のゴールドクリップ版が欲しかったものの、在庫がなく見送りました。
高価格帯の金ペンは、以前は福井の焼き物コーナーの壁沿いにディスプレイごと並んでいたといい、通路の作りも含めて見た目が変わっていたと薄明さんは話します。
店内ではLINEで答えるクイズラリーやInstagramの企画もあり、「書くは伝える」や堀田文具のロゴのステッカーがもらえたそうです。プレオープンではこうした企画はなく、いちがみさんは土橋さん自らの売り場説明を聞いたといいます。
フィラーレ ディレクションとユニボール エア、描くためのペン
話題はHORITA BUNGU以外で最近買ったペンに移ります。いちがみさんが紹介したのは、ゼブラのサインペン「フィラーレ ディレクション」です。
これ、キャップレスで、こう、ねじ(って)出す。
フィラーレ ディレクションはツイスト式で、キャップがなくても乾かないそうです。いちがみさんは、HORITA BUNGU FlagshipでA3の紙に書く展示を見て、自分もA3に書くための太いペンとして選びました。金属製で高級感もある一方、持った薄明さんは「そんなにめちゃくちゃ重くない」と感じています。
薄明さんがふだん使うサインペンは、ぺんてるのサインペンやパイロットのプチなどです。最近よく使っているのは、ボールペンの「ユニボール エア」だといいます。
ユニボール エアは表記上0.5ですが、筆圧をかけると太く、立てて力を抜くと細く書けます。薄明さんはこのペンでスケッチブックにスケッチをしており、水性顔料なので後から色を塗っても滲まず、200円ほどの定価で使い潰せる点も気に入っています。
さらに薄明さんは、ミリペンのピグマ系「ポイントライナー」の0.1を使い始めました。0.05や0.03もあるものの、細すぎると芯がすぐ潰れそうで、0.1でも十分細いと感じているそうです。
本当は、私も万年(筆)で絵描きたいなっていうのがあるんで、ちょっとこっち(のペン)も使い慣らしていきたいんですけどね。
KOKUYOのファインライター、気に入った色と惜しい点
いちがみさんは、薄明さんが以前の回で気になると話していたKOKUYOの「WP ファインライター」も購入しました。薄明さんも欲しいと思っていたペンです。
書いてみると、ファインライターの線は思ったより細く、筆圧をかけたり斜めにしたりするとやや太くなる程度だったそうです。いちがみさんが一番気に入ったのは、ブルーブラックのリフィルの色でした。
一番気に入ったのはこのブルーブラックリフィルが入ってるやつ買ったんですけど、これがね、割とグレーっぽいというか。
薄明さんもこのブルーブラックを「これこそ曇天っぽい色」と評しました。ほかに、高級感があることや、グリップが直線的な三角形で持ちやすいことも、いちがみさんの気に入った点です。
ファインライターの価格は5500円ほどで、薄明さんも購入をためらっていたといいます。いちがみさんにも気になる点が1つあり、大きな金属のキャップを開け閉めするたびに金属がこすれる感触が苦手だそうです。
これだから樹脂製が欲しいです。ファインライターの。
薄明さんは、それくらいなら自分は大丈夫だとしつつ、無印良品の丸軸アルミ万年筆の音は絶対にだめだろうと応じ、二人で黒板に爪を立てる音にたとえて笑っています。
プレフォンテとプレピー、writivとプレラ、入門に向くのは?
樹脂製のペンの話から、薄明さんはプラチナ万年筆の「プレフォンテ」に話を振ります。プレフォンテは、300〜400円ほどの「プレピー」に対し、990円の見た目をリッチにした版です。
いちがみさんは0.5ミリのプレピーを気に入り、次に0.3ミリを買いました。ところがその数日後に店頭でプレフォンテを見つけ、結局プレフォンテの0.3ミリも買い直したそうです。
薄明さんもプレフォンテの0.3を購入しています。書き味はプレピーと同じで見た目はプレフォンテのほうがよいものの、二人とも本体のプリントがすぐ剥げることに不満を持っていました。
ここもうちょっとなんかあの、コーティングかけてほしいなーっていう気はしますね。プレピーはだってこんな剥げなかったんですけどね。
薄明さんによれば、プレフォンテは海外展開の商品で、以前はハンズに逆輸入版が置かれていたそうです。気密については「1年は乾かない」とうたっているものの、スリップシールかどうかは二人ともはっきりしませんでした。いちがみさんは引っかかりが気になった0.3のペン先を研磨し、滑らかにしたといいます。
入門用の話になると、薄明さんはパイロットのwritivを推します。この価格帯にしては密閉性がしっかりしていて乾きにくいからです。いちがみさんが挙げた「プレラ」にも薄明さんは同意し、短さが気にならないならプレラ、ペンらしい長さが欲しいならwritivと整理しました。
いちがみさんは、プレフォンテは見た目こそかっこいいものの、プリントが剥げることに加えてキャップの開け閉めが「ちゃっちい」と話します。対照的に、3000円ほどのプレラの開け閉めは評価が高いようです。
あの開け閉めの体験っていう部分だけで価格の大半を費やしていると言っても過言ではない。
上の発言は1826秒付近の、プレラについての薄明さんの言葉です。いちがみさんも、パイロットのペンポイントの安定性を含めてプレラは勧めやすいと話しています。
| モデル | 価格 | 二人の評価 |
|---|---|---|
| プレピー(プラチナ) | 300〜400円ほど | いちがみさんが0.5を気に入っている。プリントは剥げにくい |
| プレフォンテ(プラチナ) | 990円 | 見た目はよいが、プリントがすぐ剥げ、開け閉めがちゃっちい |
| writiv(パイロット) | 3000円ほど | 密閉性が高く乾きにくい。ペンらしい長さが欲しい人向け |
| プレラ(パイロット) | 3000円ほど | 開け閉めの心地が際立つ。短さが気にならないなら勧めやすい |
プロフィットカジュアルLは「中間地点のゴール」?
薄明さんは1〜2か月前に買ったセーラー万年筆の「プロフィットカジュアルL ゴールドトリム」を使い続け、改めて「めっちゃいい」と感じているそうです。使っているのはMF字です。
いや、これは鉄ペンの中でもめちゃくちゃいいわっていうのは本当によく感じまして。
プロフィットカジュアルLの定価は1万3200円ほどですが、実際は1万円以下で買えるといいます。1万円でカスタム74が買える時代ではなくなった今、薄明さんは鉄ペンを中間地点のゴールと考えてもいいと話します。
いちがみさんも、金ペンがなかなか手の届かない価格になったことに同意します。薄明さんは、いろいろ使ってみた結果「これで十分」と思う感覚が自分の中にもあると語りました。
同等クラスでは、パイロットの鉄ペン「カスタムNS」もリニューアルで値上がりしたものの、ペン先の仕上げは金ペンと同様だと公式に案内されています。薄明さんは、収録した週末に鳥羽の瀬戸さんで開かれる試筆会で、カスタムNSを改めて試したいと話しました。
ビターチョコレート万年筆とフォンテ、気になる次の一本
プロフィットカジュアルLのMFが気に入った薄明さんは、もう少し細いFが欲しいと考えていました。そこへ、長澤文具センターから9月25日に「ビターチョコレート万年筆」が発売されました。
薄明さんの見立てでは、ビターチョコレート万年筆のペン先はプロフィットカジュアルLと同じように見え、色合いも好みのブラウンだそうです。定価は鉄ペンで1万7600円ですが、出せない額ではないと迷っています。
いちがみさんは、この価格帯になると「デザイン貯金」をするけれど、プレフォンテのような1000円以下のペンはつい買ってしまうと話します。
手頃な価格帯の話題では、薄明さんが日本ヴォーグ社の書店流通ブランドとみられる日本週間販売の「フォンテ」を紹介します。本屋によくある、組み合わせて買えるカラフルな万年筆で、以前の空色を買い逃した薄明さんは、新色のアイボリーを購入しました。
フォンテの新色はF字とM字の首軸、さらにコンバーターまで付いて1680円です。ペン先はシュミット製のように見え、書き味は想像どおりだったといいます。
悪くもないし、めちゃくちゃ感動的というほどでもないけど、価格から考えると、あの、十分かなっていう。
フォンテはキャップのポストがしっかり固定できず、キャップはねじ式に見えて嵌合式だそうです。薄明さんは、中高生がかわいい万年筆を欲しいと思ったときにちょうどよい価格だと話し、本屋とネットで主に売られる流通の仕方を、いちがみさんは「うまい戦略」と評しました。
「お寺アート金沢」で心に残った作品は?
後半は展示の話です。毎年開かれているアートイベント「お寺アート金沢」が10月4日まで開催され、収録時点で二人とも前期・後期の展示をすべて見終えていました。
薄明さんがまず挙げたのは、前期日程に東岳寺の2階で展示された浜ノ家さんのフィルム写真群です。L判ほどの小さなプリントで、おばあちゃんの家やおじいちゃんの姿など生活感のある写真が、一部屋の壁一面に貼られていたそうです。
興福寺では、イチゴカメラにも出演しているまさゆきさんが、今回のテーマ「告白」にちなんで、吊るされた箱の中に入りダクトに向かって告白する作品を展示しました。
(中は吸音材が)貼ってあったんで、まあ外にはあんま聞こえないんだろうなと思って。中ですごい奇声上げてたな。
ところが箱の外には丸聞こえだったそうで、「箱から薄明の奇声が聞こえる」状態だったと薄明さんは笑います。いちがみさんは、まさゆきさんとLeeさんが今年初めて別々に参加し、どちらも写真ではなく吊るす作品で施工技術の高さを感じさせたと話しました。
薄明さんはほかに、常光寺でのコラージュ作家・加賀さんの、猫をあしらった障子のついたて風の作品も挙げます。石ころが添えられていたのが、石ころ好きの薄明さんには「ずるい」と感じるほど刺さったそうです。
いちがみさんの印象に残ったのは、宗禅寺での金沢美大の沖野さんの作品「君をつぶした長靴」です。小さいころにかたつむりをつぶしてしまったトラウマを元にした作品で、つい見入ってしまったといいます。
谷祐介さんのカラスと「三人で写ってる写真がない」
秋は各所で展示が多く、薄明さんはほかにも心に残った展示を紹介します。野々市市の図書館「カレード」の展示スペースでは、谷祐介さんの写真展が10月4日まで開かれていました。
谷祐介さんの写真展は「通過(パッシング)」をタイトルに、カラスなどをテーマにしたモノクロ写真が中心です。広い空間に大小さまざまな作品が並び、企業とのコラボでブリキ材にプリントした作品では、金属感のある地とモノクロのカラスがよく合っていたそうです。
もう1つは、ギャラリーヒーロでの「三人で写ってる写真がない」という3人展です。いちがみさんも訪れていて、絵やエッセイ、映像作品が並んでいました。
薄明さんに特に刺さったのは、出展者の飯田さんが引用していた詩人・佐川幸さんの作品でした。薄明さんはすぐに本屋へ走って詩集を買い、自分の趣味によく合う「いい出会い」だったと話します。
薄明さんの記憶では、佐川幸さんは1911年生まれで1936年にがんで20代半ばで亡くなった詩人で、全詩集が出たのは2023年ごろと比較的最近だそうです。
ショート動画の時代に「時間をかけて味わう」こと
いちがみさんは、ギャラリーヒーロの展示で、作品説明に書かれた「誰かの一フレーズが刺さって、その後に影響した」という話が印象的だったと振り返ります。
今最近ショート動画全盛で、刺激の強いコンテンツが溢れていますが、そういう静かな中にも人の心に強く刺さるものとかを生み出せるとか、感じ取れるっていうのをね。
薄明さんは、この話をHORITA BUNGU Flagshipの「書くこと」や手書きのテーマにもつなげ、時間をかけて味わうことは自分に必要な要素だと話します。
ギャラリーヒーロの展示はお寺アート金沢と日程が重なり、いちがみさんは一緒に回れたそうです。いちがみさんは出展者のノセさんのZINEを以前ZINEフェスで買っており、今回はフレークシールを購入しました。薄明さんはノセさんのカルーセルの絵に惹かれたものの、ほかの作品を買い込んでいたため諦めたといいます。
こうして9月の話を語り終え、いちがみさんと薄明さんの回は締めくくられます。
まとめ
HORITA BUNGU Flagshipの訪問レポートを入口に、いちがみさんと薄明さんは、感覚で分ける売り場づくりや手書きの魅力、手頃な万年筆の選び方、秋の展示で出会った作品まで語り合いました。手で書くことも作品を味わうことも、時間をかけてこそ残るという感覚が、回全体を通して共有されています。
- HORITA BUNGU Flagshipは「書くは伝える」を軸に、機能ではなく使う人の感覚でペンを分け、土橋さんの手書きサンプルと試筆で体験させる売り場になっている
- 新色インク「曇天」は冬将軍より緑みのあるグレーで、KOKUYOのファインライターのブルーブラックも曇天に近い色として話題になった
- 入門用にはwritivやプレラが勧めやすく、プロフィットカジュアルLのような鉄ペンは金ペン高騰の中で「中間地点のゴール」になりうる
- お寺アート金沢や周辺の展示では、写真・立体・詩との出会いがあり、手軽すぎるものは通過してしまうという実感につながった




