20年以上ファイナンス一筋、鈴木CFOの経歴とスムーズの事業
今回のゲストは、株式会社スムーズのCFOを務める鈴木さんです。20年以上にわたり、一貫してファイナンスの仕事に従事してきた人物です。
鈴木さんのキャリアは、新卒で現在の三菱UFJ銀行に入行したところから始まります。15年ほど日系事業法人のファイナンス面をサポートし、営業セクションや特別なファイナンス案件を扱うプロダクツ部、海外駐在なども経験してきました。
その後は外資系不動産デベロッパーに転職し、不動産に投資する投資信託を金融機関や機関投資家に売る仕事に携わります。そして3社目として、スタートアップであるスムーズに財務責任者として参画し、収録時点で2年ほどが経過したタイミングです。
これまで20年以上にわたって、一貫してファイナンスの仕事に従事してきました。
聞き手のフレックスキャピタル菅井さんとは、三菱UFJ銀行時代の先輩後輩にあたります。菅井さんの3つか4つ上の先輩ですが、行内で一緒に仕事をする機会はあまりなく、むしろスタートアップに入ってから関係が密になったといいます。
当社が開催したイベントに鈴木さんいらっしゃってて、名刺交換をさせていただいた時に、まず年次を確認しないことにはどういうスタンスで話したらいいかわからないみたいな。
銀行出身者同士では、まず相手の年次を確認するのが一般的だと菅井さんは話します。若林さんは、WBCで大谷翔平選手がチームメイトの年齢をまず聞いていた話になぞらえていました。
スムーズの事業は、個人が賃貸住宅に住む際に支払う敷金・礼金や仲介手数料といった初期費用を、一括払いではなく分割払いにできるサービスです。全国の不動産仲介会社と協力しながら届けています。
このビジネスは、事業が伸びるほど立て替えの元手となる資金が会社に必要になります。資金の仕入れが必要になるビジネスであり、だからこそCFOである鈴木さんが日々資金調達をしているのです。
「人脈が通用しない」——メガバンク出身CFOが受けた洗礼
鈴木さんは、20年以上のファイナンス経験からそれなりの経験とスキルがあるという自負を持って入社しました。年齢的にもファイナンスのプロフェッショナルとして適齢期だと自分では考えていたといいます。
入社後すぐ、代表の小泉さんと話して資金調達ルートを広げる活動を開始します。融資や投資を受けるには、金融機関やベンチャーキャピタルの窓口担当者と接点を持つところから始まるため、前職・前々職で懇意にしていた知り合いに部署の紹介を相談しました。
ところが、昔のよしみで相談に乗ってくれる人は多かったものの、その知り合いたちはスタートアップ向けの投融資部署からは遠いところにいました。紹介しようにも部署が遠すぎて行き着かないことが多かったのです。
これまでの人脈を生かせなくて、入社直後、自分の力では何にも価値をもたらせないなってことに気づいて非常に焦った記憶があります。
菅井さんも似た感覚を語ります。フレックスキャピタルも金融事業を営むため、自社の資金調達や銀行とのアライアンスを日々交渉していますが、そこで感じるのが立場の非対称性だといいます。
(銀行との関係が)百対一の関係なのか、一対百の関係なのかみたいなところってよく感じていて。
昔のよしみとかネットワークだけで(金融機関を)突破しようと思ってもなかなか通用しないみたいなところっていうのは、結構やっぱ壁としては感じる部分は多いかなと。
銀行側から見れば数多くある取引先の一つに過ぎない一方、依頼する側にとっては大事な一件です。それぞれの持ち場で追うミッションが違うため、人脈だけでは突破しきれないという壁があると菅井さんは指摘します。
事業急成長のなかで起きた資金ショートの危機
鈴木さんはネットワークが通用しない洗礼を受けながらも、さまざまなネットワークイベントに積極的に参加していました。若林さんも行く先々で鈴木さんを見かけ、ランチミーティングをするなど、そのアクティブな動きを目にしていたといいます。
そうしたなか、入社直後に大きなピンチが訪れます。いい意味で事業がすごく伸びていたため、立て替えの元手となる資金が必要になり、その原資を賄えなくなってきていたのです。
入社直後ってですね、いい意味で事業はすごく伸びていたんですよね。そうすると元手となる資金っていうのが非常に必要になってくると。
鈴木さんは、上限金額の中で自由に借りたり返したりを繰り返せる融資枠を使って度々融資を依頼していました。しかし、その融資枠での新規実行が停止されるという事態に直面します。
家賃や初期費用の分割を提供したくても、元手となる資金が足りなければ事業成長そのものが止まってしまいます。財務責任者としてかなり焦る状況だったと鈴木さんは振り返ります。
本当に事業を止めなきゃいけないので、財務責任者としてはかなり焦りましたね。
超迅速なデット調達での打破——相談から実行まで1ヶ月足らず
この危機を打開するために活用したのが、フレックスキャピタルの融資でした。スピードが速く、相談から承認、実行まで1ヶ月もかからなかったといいます。
(フレックスキャピタルへの)相談から承認から実行まで確か1ヶ月もなかったんじゃないかなと思いますけれども、なんとかそれで資金をつなぐことができたっていうのは本当にありがたかったですね。
菅井さんは、鈴木さんの気持ちが痛いほどわかると受け止めます。同じ金融事業として、立て替え資金の調達が事業成長に直結することが身に染みてわかっているからです。
フレックスキャピタルはスタートアップ向けの融資を中心に、スタートアップの成長を支援することに根ざしたサービスだと菅井さんは説明します。成長を止めないための資金を届けたいからこそ、スピードを重視しているのです。
成長を止めないための資金を届けたいので、スピードも重視するっていうことをやっていて。今欲しい時にっていうところのニーズにまさに応えられたいいケースだったんじゃないかなと。
「お金は寂しがり屋」——融資と信用の連鎖の本質
ピンチをくぐり抜けながら少しずつ信用を積み重ね、直近のファイナンスにつながっていった鈴木さん。その過程で、既存株主から心に響く言葉を授かったといいます。
これは入社して間もない頃、既存の株主から頂いた言葉です。ファイナンス取引を擬人化した比喩表現で、寂しい気持ちを紛らわすために誰かと寄り添いたくなる心理になぞらえています。
お金も同じで、集まるところには集まるんだけれども、集まらないところには集まらないっていうのを表した言葉かなと思ってます。
鈴木さんはこれをさらに咀嚼します。そもそも融資とは、将来性に賭ける行為だと考えているのです。物品の購入は買う時点で価値が可視化されている一方、融資は将来返ってくるかもしれないし返ってこないかもしれない不確実な将来性を購入する行為だといいます。
だからこそ融資担当者は、自分が貸そうとしている企業を他の金融機関がどう見ているかをとても気にします。全く借入のない企業には不安を感じるため、融資が集まっていないと次の融資は来ないし、集まっていれば次の融資につながるという連鎖が生まれるのです。
融資は将来性の購入
返済されるかわからない将来性に賭ける行為
他社の見方を気にする
融資担当者は他の金融機関がどう見ているかを重視
借入実績が信用になる
融資が集まっている企業ほど安心材料になる
次の融資につながる
集まるところにさらにお金が集まっていく
若林さんは、これをお金がお金を呼ぶ状態だと言い換えます。フレックスキャピタルも会計データや仕訳データを見ながら、次回調達の蓋然性をクイックに見ているといいます。
菅井さんによると、フレックスキャピタルが支援するのはシードからミドルの比較的若いスタートアップが多いため、次のエクイティラウンドが回るための成長トラクションが出ているか、投資家が集まりそうかを見て判断しているといいます。
当然我々自身だけでその会社を支えきる事っていうのは不可能なので、他の金融プレーヤーさんがどれぐらい一緒になって支援していただけるかみたいなところも視野に入れながら判断してる。
若林さんも、この言葉を今後使わせてもらいたいと共感します。人としても寂しがり屋なので、という軽口に、鈴木さんは「みんなで寄り添いましょう」と応じ、ネットワーキングに足しげく通うのも寂しがり屋の一面かもしれないと話が広がりました。
鈴鹿サーキットで出待ち——「資金調達はもう営業だ」
話題は、鈴木さんの古風なコミュニケーションスタイルに移ります。鈴木さんは、資金調達は昭和的な古風なコミュニケーションが引き続き残っている世界だと考えています。
融資担当者は返ってこないと思われるリスクを極力見極めたいため、昔ながらの対面コミュニケーションを重視しているというのが鈴木さんの見立てです。
そのスタイルを象徴するのが、前澤友作さんを捕まえるために鈴鹿サーキットで出待ちしたというエピソードです。前澤さんが事業の傍らでレースに参画しており、鈴鹿サーキットに出るという話を聞いて、代表の小泉さんと一緒に行って出待ちをしたといいます。
(前澤さんが)鈴鹿サーキットに出るっていうふうな話をしましたので、代表の小泉と一緒に行って出待ちをしたということがありまして。
若林さんは、たくさんの案件がある中で自分の優先順位をいかに上げてもらうかが重要だと指摘します。オンラインやテキストで済む面談が増えるなかで、わざわざ鈴鹿まで会いに行く行動力は、相手に強いインパクトを残すと感じたといいます。
まさにこう、資金調達ってもう営業だなっていうふうに思ってるんですよね。相手の懐に飛び込んでいくと。
東京から鈴鹿まで行くのは大変だと相手にも簡単に想像できます。だからこそ、あなたとの関係を重視しているという気持ちをコンテクストで伝えられると考え、思い切って行ってよかったと鈴木さんは振り返ります。
信用力を決めるのは、データに表れない定性情報
菅井さんは、最後はその会社とその人が信用信頼できるかどうかにかかっていると話します。対面のコミュニケーション、コミュニケーションの頻度、熱意を伝えることは、最後の場面で重要になるといいます。
当落線上ラインみたいなものがあった時に、そのラインを超えるか越えないかの境目はそこで決まってるかもしれないぐらい、結構重要なポイントなんじゃないかな。
鈴木さんも、自分が誰かにお金を貸す場面を想像すると、会わないで貸すのは難しいと語ります。銀行残高で稼ぐ力がわかったとしても、会わずして貸せるかというと難しいというのです。
会わずして貸せますかっていうとなかなか難しいと思うんですよね。であれば、こちらから積極的に会って、人となりを理解してもらってるのは結構大事なんじゃないかなっていうふうには思うんです。
一方で菅井さんは、フレックスキャピタルのアプローチも紹介します。直接会うかは別として必ずオンライン面談を挟み、語られる戦略や資金計画が理にかなっているか、出てきた財務の数字と整合的かを必ず確認するといいます。
フレックスキャピタルはかなりデータを深く取っているため、面談回数を省略しつつ発言内容との整合性を確認して融資に踏み切ることもあります。それでもデータの流動と、それを補う面談による定性情報で会社の信用力を評価するのが伝統的な金融のスタイルだと菅井さんは考えています。
財務数値や仕訳データから読み取れる定量的な情報
面談・対面で伝わる人となりや熱意、戦略の整合性
まとめ
メガバンク出身のプロでも、スタートアップの資金調達では人脈が通用しない洗礼を受けます。急成長期の資金ショートを迅速なデット調達で乗り越えた鈴木さんの経験は、融資が信用の連鎖で回ることと、データに表れない対面の熱意が最後の決め手になることを示しています。
- 20年以上のファイナンス経験や人脈も、スタートアップ向け投融資の現場では直接は通用しない
- 事業の急成長は立て替え資金のショートを招き、迅速なデット調達が事業継続の生命線になる
- 「お金は寂しがり屋」——融資は集まるところに集まり、借入実績が次の融資を呼び込む
- 資金調達は営業であり、鈴鹿サーキットでの出待ちのような対面の熱意が優先順位を左右する
- 信用力は財務データだけでなく、面談で伝わる定性情報を合わせて評価される




