唐辛子は「辛い野菜」なのか
この回のテーマは唐辛子です。親方は、インド料理といえば唐辛子と言えるほど、唐辛子が中心的な食材だと切り出します。
(唐辛子は)入ってきたからまだ3、4年しか経ってない割にはすごい普及してますよね。
一方で日本では、唐辛子はそれほど使われません。親方は、せいぜい鷹の爪や七味唐辛子を使う程度だと指摘します。
そこから親方は、日本人が唐辛子をどう捉えているかへ話を進めます。
日本って唐辛子をただただ辛い野菜、辛いアイテムとしてしか捉えてないんかなって。いつも思ってて。でも違うんですよ。
インドがなんでこんなに唐辛子を使ってるかっていうと、辛いとかもあるけど、美味しいからなんだよね。そもそも。
親方は、インドが唐辛子を多用する理由を、辛さではなく美味しいからだと言い切ります。ここがこの回の出発点です。
昆布に匹敵するグルタミン酸
親方は、唐辛子の旨味の正体をグルタミン酸の含有量に求めます。野菜の中でもトップクラスで、昆布と同じくらい含まれているといいます。
味噌汁にできるぐらい出汁が出ますね。唐辛子は。
カレー哲学は、実際に唐辛子で味噌汁を作っていた経験も語ります。
唐辛子を焦がすだけ焦がして、水を入れて煮て、味噌を溶かすだけで味噌汁になるから。
辛味よりも旨味の方が立ってて、すごい美味しいんだよね。
昆布と同等の旨味成分を持つなら、出汁が取れて味噌汁になるのも当然だという流れです。
なぜ真っ黒になるまで火を入れるのか
ここから本題の「焦がし」の話に入ります。カレー哲学は、この回のテーマを「なぜガンガン火入れするのか問題」と表現します。
親方によると、インドでは唐辛子を焦げて真っ黒になるまで火入れすることがよくあります。しかし他の国では、そこまではしません。
親方は、日本・中国・イタリア・韓国などの共通点を挙げます。油を通して皮がパリッとし、香りが立つまでで火を止めるのだといいます。
鮮やかな赤が維持されてる色でもう止めるんだよね。焦げると苦味が出ちゃうよねとか。
一般的には、焦がすと苦味が出るのを避けます。ですが、インドの焦がしはその常識とは逆の発想だと親方は続けます。
焦げるまでやると、メイラードではないかもしれないけど、そういう旨味がすごい出てくるんですよ。
苦みもあるんだろうけど、油や他のスパイスでマスキングされる側面もあって、唐辛子の香ばしさと旨味をちゃんと使えるっていうことかな。
インド料理では、焦がしで出る苦味を油やスパイスで抑えつつ、強烈な旨味と香ばしさを引き出しているという整理です。
皮がパリッとして香りが立ち、鮮やかな赤が維持される状態で止める
真っ黒に焦げるまで火入れし、苦味は油やスパイスで抑えつつ強い旨味を引き出す
辛いから人気ではなく、辛くて美味しいから人気
親方は、日本人には辛さのせいで旨味が認識しづらいと前置きしつつ、身近な例を挙げます。
蒙古タンメン中本とかが人気なのも、唐辛子由来の旨味成分を認知できる人が一定数いるからだと思うんだよね。
辛いから人気じゃなくて、美味しいから人気なんだよ。辛くて美味しいから人気なんだよ。
カレー哲学は、唐辛子を入れるほど旨味が増すことに加え、辛さが脳に働く効果も補足します。
辛さ由来のあの脳の報酬系に作用するやつもあると。脳内麻薬出るからね。
旨味と、辛さによる報酬系への刺激。この2つが重なって、辛くて美味しい料理の人気につながっているという見方です。
唐辛子だけでグレービーを作るカレー
親方は、焦がしを意図的にとことん行う料理をカレー哲学に尋ねます。カレー哲学は、タミルのチェティナードで受けた料理教室の体験を語ります。
一番びっくりしたのが、マトンとカレーリーフと唐辛子と油と塩だけで構成している料理があって。
この料理はチンタマーニ、あるいはウプカリと呼ばれると、カレー哲学は説明します。唐辛子だけでグレービーを作る料理だといいます。
親方は、材料だけ聞くと唐辛子はトッピングにしか思えないと驚きます。
肉焼いて唐辛子とカレーリーフをちょっとテンパリングしてかけるのかなとか、そういう風にしか聞こえないもんね。
作り方は強烈です。カレー哲学によると、唐辛子を30個ほど用意し、種を取ってから油で真っ黒になるまで炒めます。
真っ黒焦げにして、大気中に唐辛子の成分がめちゃめちゃ出てくるから、本当に目に染みてくる。
親方は、シェアハウスでカレー哲学がこの料理を作ったときの様子も振り返ります。作り手も周りで待っていた人も全員むせる、地獄絵図のような光景だったといいます。
これをガンガンやって炒めていくと、グレービー状態になって、肉にちょっと溶けた唐辛子がまとわりつくみたいな。
水を少しずつ加えると、赤黒いグレービーになります。辛いことは辛いものの、強い旨味があって美味しいと、カレー哲学は語ります。
焦がした唐辛子をイタリアンにも
親方は、この焦がしを他の料理にも応用しています。他国のレシピは「香りを立たせるまで」という表記が多いなか、真っ黒に焦がして旨味をブーストした唐辛子を、もっといろんな料理に使ってよいはずだといいます。
パスタを作る時とかも狙って黒焦げにすることは俺の場合よくあるんだよね。
親方は具体的な相性のよい料理も挙げます。肉系で赤ワインを使うボロネーゼやラグーソース、そしてアラビアータなどです。ペペロンチーノでも、辛くはなるが美味しいと話します。
イタリアンシェフには怒られるやつですかね。
怒られるというか、イタリアにない概念だろうね。多分これは。
親方がよく作るのが、テンパリングオイルへの応用です。油にマスタードシードとカレーリーフ、そして黒焦げにした唐辛子を合わせ、カレーの仕上げにかけるといいます。
親方は、この技法は日本の唐辛子でも試せると呼びかけます。ご家庭の野菜炒めの時とかでもいいので、一度焦がしてみてほしいと締めくくりました。
まとめ
唐辛子を「辛いだけの食材」ではなく、昆布に匹敵する旨味を持つ食材として捉え直す回でした。真っ黒に焦がすインド流の技法は、苦味を油やスパイスで抑えつつ強い旨味と香ばしさを引き出します。イタリアンや家庭料理にも応用できる、身近な楽しみ方が語られました。
- 唐辛子はグルタミン酸を野菜の中でもトップクラスに含み、昆布と同等の旨味を持つ
- インドでは唐辛子を真っ黒に焦がして火入れし、苦味は油やスパイスで抑えて旨味を引き出す
- タミルのチェティナードには、マトン・カレーリーフ・唐辛子・油・塩だけでグレービーを作る料理がある
- 焦がした唐辛子はボロネーゼやアラビアータ、テンパリングオイルなどにも応用できる
- インドの唐辛子でなくても、日本の唐辛子や家庭の野菜炒めで焦がしを試せる







